運転代行の開業には何が必要?費用から資格、成功ポイントまでしっかり押さえよう
最終更新日:2024年04月25日
お客様を目的地まで送り届ける運転代行サービスは、飲酒運転厳罰化の影響などもあり、飲み会後のお客様を中心に安定した需要を維持しています。
こちらでは、運転代行の開業費用や必要な資格、事業を成功させるポイントなどをまとめているので、開業準備を始める前の基礎知識としてぜひ役立ててみてください。
目次
運転代行の開業必要な費用
はじめに、運転代行の開業に必要な初期費用と運営資金を紹介します。
初期費用
運転代行の開業に必要な初期費用は、約80~240万円です。
<初期費用の目安>
項目 | 金額 |
---|---|
車両代 | 50~150万円 |
車両設備費 | 20~70万円 |
認定証の申請費 | 1.2万円 |
広告宣伝費 | 10~20円 |
合計 | 約80~240万円 |
主な費用には、車両代、車両設備費、認定証の申請費、広告宣伝費などが挙げられます。
運転代行業には店舗物件や大型設備が不要なことから、実店舗型ビジネスと比べて初期費用は安めです。
ただし、その代わりに随伴車(※)として使う車両を用意する必要があり、さらに随伴車用の料金メーターやメーター用プリンター、行灯などを購入しなければいけません。
また、運転業を始めるための申請費として手数料が1.2万円かかります。
そのほかには、開業前にチラシを配ったり、公式サイトを開設したりなど、集客のための広告宣伝費も必要です。
(※)…運転を代行する車に随行するための社用車。
運営資金
運転代行の開業に必要な運営資金は、1ヵ月あたり約20~50万円です。
<運営資金の目安>
項目 | 金額 |
---|---|
ガソリン代 | 5~10万円 |
駐車場代 | 2~8万円 |
保険代 | 0.5~1.5万円 |
人件費 | 10~20万円 |
広告宣伝費 | 5~10万円 |
合計 | 約20~50万円 |
主な費用には、ガソリン代、駐車場代、保険代、人件費、広告宣伝費などが挙げられます。
上記の表から分かる通り、運転代行業の運営資金は随伴車関連がほとんどです。
賃貸料や仕入れ費が発生しないためほかの業種と比べてかなり安く、また地方で事業を始めるのであれば、駐車場代や人件費をさらに抑えられる可能性があります。
フランチャイズへ加盟する場合は毎月のロイヤリティが発生しますが、その代わりに営業用の名刺代や広告宣伝費が安く済むことが少なくありません。
フランチャイズでの開業に興味がある方は、まずはいくつかフランチャイズ本部の情報を集めて契約条件を確認するのがよいでしょう。
資金の調達方法
運転代行は開業にかかる費用が少ないため、できれば自己資金や親族からの借入など返済リスクが低い方法で開業するのがよいです。
ですが、どうしても資金が足りない場合は、日本政策金融公庫や民間銀行から融資を受けるのも一つの方法でしょう。
特に日本政策金融公庫は審査のハードルが低く、審査期間が2~3週間と短いため、スムーズに開業準備を進めやすい点がメリットです。
また、消費者金融も手早く資金調達できる点においては日本政策金融公庫と同じですが、金利が高く返済が負担になりやすいため注意してください。
運転代行の特徴
こちらでは、運転代行の特徴を項目別にまとめています。
開業の準備や方法についても触れているので、これから本格的に事業を始める予定の方はぜひ参考にしてみてください。
サービス内容
運転代行の仕事は、お客様の代わりに車を運転し目的地まで送り届けることです。
運転代行の主なサービス内容としては、下記の業務が挙げられます。
- お客様の車の運転
- 随伴車で随行
- 車の安全確認
- 従業員の指導
- 売上管理
- 経理処理
- 集客
お客様から依頼を受けた後は2人体制で指定場所へ向かい、1人はお客様の車を運転し、もう1人が随伴車で随行しながら目的地を目指します。
運転代行の主なサービス内容は運転業務ですが、そのほか売上管理や経理処理、集客などの経営業務にも対応しなければいけません。
メリット
運転代行を開業するメリットは、下記の通りです。
- 初期費用が安い
- ほかの事業とも兼業しやすい
- 安定してニーズがある
運転代行サービスを成功させるためにも、まずは業界特有の強みを理解しましょう。
初期費用が安い
運転代行は、さまざまな業種のなかでも初期費用が安めです。
随伴車の購入費用として1台あたり約50~150万円かかりますが、ほかの業種のように数百万~数千万円の物件関連費用を支払う必要はありません。
また、商品や材料を仕入れなくてよいため、在庫を抱えたり廃棄が発生したりするリスクがないのも大きなメリットです。
やりくり次第では100万円以下で開業することも可能で、初期費用を抑えて開業したい方にとってはぴったりのビジネスだと言えます。
ほかの事業とも兼業しやすい
運転代行業はほかの事業と兼業しやすく、専業はもちろん副業として働いている方が多くいます。
お客様の依頼を受けてから出動するため、依頼がないときは経営業務や別事業の業務を対応しても問題ありません。
そのためいきなり本業を辞めて開業するのが不安な方は、まずは副業として運転代行に挑戦し、業務の流れや感覚をつかんでから本格的に独立するのもおすすめです。
安定してニーズがある
日本では飲酒による事故がたびたび発生しており、2009年には道路交通法の改正で飲酒運転がより厳しく罰せられるようになりました。
このような状況下において、特に運転代行サービスは飲酒後のお客様から安定した依頼を受けています。
また、「出先で体調を崩してしまった」という理由で運転代行を利用し、自宅や病院まで向かうケースも少なくありません。
運転代行は飲酒や体調不良のような日常のなかで使われるサービスであり、ブームに左右されにくいことから、安定してニーズがあるビジネスだと言えます。
デメリット
上記のメリットに対して、運転代行を開業するデメリットは下記の通りです。
- 事故のリスクがゼロではない
- 最初のうちは集客が難しい
特に今まで運転業界で働いた経験がない方は、業界ならではのデメリットを知り事前に対策を練ることが大切です。
事故のリスクがゼロではない
運転代行に限った話ではありませんが、車を運転する以上事故のリスクは避けられません。
特に運転代行は夜間の見通しが悪い時間帯に依頼が増え、さらに普段は運転しない車種を対応することも多いため、安全面には十分な配慮が求められます。
また事故だけでなく、酔ったお客様とのトラブルなども運転代行業を行う上で気をつけたい点です。
最初のうちは集客が難しい
運転代行には店舗や教室のような目印がないため、お客様に存在をアピールすることが難しく、最初のうちは集客に苦労しやすいです。
また、多くの飲食店はすでにほかの運転代行業者と契約を結んでおり、新しく契約を取ることが難しいケースもよく見られます。
運転代行の集客にはチラシやインターネット、飲食店回りなどさまざまな方法がありますが、この宣伝活動の効果が出るまでには、それなりの時間がかかることを見越しておきましょう。
運転代行開業の成功ポイント
運転代行業を早く軌道に乗せるためには、適切な価格設定や他社との差別化、集客の工夫などが不可欠です。
これから運転代行を開業する方は、こちらで紹介する3つの成功ポイントに対する理解を深め、自社ではどういった対応がとれるのか考えてみましょう。
柔軟な料金プラン
料金プランを作成するときは、メーターや時間を基準としたベーシックな料金プランに加えて、顧客層に合わせた独自の料金プランもぜひ取り入れてみてください。
例えば固定客が増え始めた段階で回数券を発行したり、高齢の利用者が多い場合はシルバー割を始めたりすることで、客数が増えリピーターの獲得につながる可能性があります。
運転代行を成功させるためには、ベーシックな料金プランだけに縛られず、利用者のニーズに合った料金プランを柔軟に提供することがポイントです。
他社との差別化
料金プランだけでなく、サービス面の充実度も運転代行の成功に大きく影響します。
例えば接客に力を入れたり、次回乗車時に使えるクーポンを発行したりなど、他社が行っていないサービスを積極的に始めることが大切です。
また、運転代行は飲み会後に利用されることが多いので、その時間帯のお客様にはドリンクを無料で配るのもよいでしょう。
こういった小さな気遣いが評判を呼び、最終的に大きな売り上げにつながることは少なくありません。
インターネットを活用した集客
運転代行は集客が難しく、お客様探しに苦労する経営者が多くいます。
そのためほかの運転代行会社に勝つためには、集客面で一歩リードすることが重要です。
特に多くの運転代行会社はインターネットを活用した集客に力を入れていないため、SNSや公式サイトを工夫することで多くの人の目に止まってもらえる確率がアップします。
また、NAVITIMEのような交通情報サイトに登録するのもよいでしょう。
運転代行の開業方法
運転代行の開業方法には、主に個人・法人・フランチャイズの3パターンがあります。
この3つの開業方法は必要な準備が異なるため、間違った書類や手続きをしないようそれぞれの違いを理解しましょう。
個人で開業
個人で運転代行を開業するためには、まず最寄りの警察署で公安委員会の認定を受けなければいけません。
認定を受けるためには、下記の書類と手数料を持参し警察所へ向かいます。
- 認定申請書(警察署で入手可能)
- 住民票の写し
- 心身の故障がないことの誓約書
- 精神機能の障害に関する医師の診断書
- 損害賠償責任保険契約の証書
- 安全運転管理者等の選任関係書類
- 申請手数料(1.2万円)
上記の書類を提出した後は、約2ヵ月で審査結果がおります。
申請では随伴車の車検証を持参する必要があるため、書類だけでなく車両の準備も早めに進めましょう。
法人で開業
法人も個人と同様に最寄りの警察署で申請手続きできますが、法人の場合はさらに下記の書類が必要です。
- 法人の登記事項証明書
- 法人の定款またはこれに代わる書類
- 役員全員分の住民票の写し、氏名および住所を記載した名簿、心身・精神機能の障害に関する誓約書と診断書
基本的にはこちらで紹介した書類を持参するだけで問題ありませんが、より詳しい情報は警察署の公式サイトに載っているので必ず確認してください。
フランチャイズで開業
フランチャイズの場合も開業方法は基本的に同じですが、本部が開業前から開業後までフォローしてくれる点が個人や法人とは異なります。
例えばフランチャイズの『クレスト運転代行』では、認可申請書の提出はもちろん、車の整備や開店チラシの発注などを本部がサポートしてくれます。
すでに完成された配車システムを使いたい方、研修をしっかりと受けたい方などは、フランチャイズへ加盟するのもおすすめです。
運転代行の開業に必要な準備
運転代行の開業では、資格取得や保険加入などさまざまな準備が必要です。
手続きに漏れがあると開業できない可能性もあるので、余裕を持って準備に取りかかりましょう。
資格取得
運転代行を始めるためには、下記の資格を取得する必要があります。
- 普通自動車第二種免許
- 普通自動車第一種免許(随伴車の運転手のみ)
- 安全運転管理者
お客様の車を運転をする運転手は、普通自動車第二種免許の取得が必須です。
ただし、随伴車の場合はお客様を乗せることがないので、普通自動車第一種免許でも問題ありません。
さらに、社内で安全運転の指導を行う担当者として、安全運転管理者を最低でも1人以上置くことが決められています。
保険加入
国土交通省によると、随行車として使う車両には「対人が8,000万円以上、対物が200万円以上の損害賠償責任保険」に加入することが義務づけられています。
また、この損害賠償の措置については、お客様へサービスを提供するときに必ず伝えなければいけません。
説明は書面で行う必要があるため、うっかり忘れないよう気をつけてください。
随伴車両
ただ後ろから随行するだけのように見える随伴車ですが、メーターで料金を測定したり、料金を精算したりなど細々とした業務が存在します。
特に料金メーターは随伴車の重要アイテムなので、走行距離を基準に料金を測定するのであれば必ず購入しましょう。
そのほかには公安委員会認定の番号が記載されたステッカーや、運転代行車だと周囲に知らせるための行灯などを用意しなければいけません。
随伴車関連備品の多くはネットショップやホームセンターで気軽に調達でき、値段は数千円~数万円のリーズナブルなものがほとんどです。
集客
開業手続きや随伴車の準備と並行して、集客活動も徐々に進めていきます。
集客の方法はチラシや雑誌掲載などいろいろありますが、インターネットを活用したり飲食店を回ったりするのが効率的でしょう。
特に居酒屋は夜遅くまで利用している人が多く、提携先として契約を結べば高い売り上げが見込めるため、積極的に営業をかけることがポイントです。
また居酒屋だけでなく、お客様が来るのを待機する場所として駐車場と契約を結ぶのも戦略の一つです。
運転代行の開業では試行錯誤が大切
安定した需要がある運転代行サービスは、将来性が十分に見込めるビジネスだと言えます。
ただし運転代行に限らず、どの業種も開業後すぐに高い収益を得ることは難しいため、試行錯誤しながら最良の方法を探していくことが大切です。
開業が不安な方はまず副業で始めてみるのもよいですし、フランチャイズへ加盟する選択肢もあるので、本記事を参考に自分に合った開業方法をぜひ考えてみてください。
公開日:2021年02月18日