なぜ副業を禁止する会社があるの? 副業を禁止できる根拠や違反処分を解説

最終更新日:2023年03月10日

従事する人が増え、社会的に認知されてきた副業ですが、未だ就業規則で「副業禁止」としている企業があります。

そうした企業は、なぜ副業禁止を謳っているのでしょうか。この記事では、会社が副業を禁止できる根拠と就業規則違反への処分について解説します。

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目次

会社が副業を禁止する理由

法律で副業禁止は認められているのか

会社が副業禁止できるのはなぜか

就業規則の副業禁止を破ったらどうなる?

副業禁止の会社で副業をするには

なぜ副業禁止の会社があるのかについてまとめ

会社が副業を禁止する理由

なぜ副業を禁止する会社があるのでしょうか。会社が副業を禁止する5つの理由を詳しく紹介します。

本業へ悪影響が出る可能性がある

会社が社員の副業で危惧しているのは、本業に悪影響が出てしまうことです。たとえば、社員が副業で疲れてしまって、遅刻・早退・欠勤が増えてしまうといった影響です。

また、本業がデスクワーク中心のオフィス仕事の場合、就業時間内にアフィリエイト(成功報酬型広告)のブログ執筆、SNS運営などパソコンで完結する副業が行われるというようなことも考えられます。

社員には、仕事中は業務に集中しなければならないという職務専念義務があります。職務専念義務に違反し、本業が疎かになってしまう副業は認められないと会社は考えるわけです。

社員の労働時間の管理が行き届かなくなる

労働安全衛生法の定めによって、会社には社員の労働時間を管理する義務があります。これは、適正な勤怠管理によって社員の長時間労働や過重労働を防ぎ、健康と安全な職場環境を守るためのものです。

また、労働基準法第38条では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と規定されており、副業によって複数の会社で働いている場合でも、社員の労働時間を通算して把握することが会社には求められます。

引用:e-GOV法令検索 労働基準法

社員の労働時間の管理が困難になるため、副業を制限したい会社があるようです。

社内の情報が流出するリスクがある

副業を認めることで、業務上の機密情報や顧客の個人情報などの重要な情報が漏えいするリスクが高まるといえます。こうしたリスクを回避するためにも副業を禁止と定めている企業が多くあります。

競合へ技術が漏れてしまうリスクがある

社員は勤務している会社と競合する業務を行わない義務を負っています。これを「競業避止義務」と呼びます。

たとえば、ある薬品メーカーで新薬の研究・開発を行っている研究者が、別の薬品会社で同様の研究・開発を行うことは許されません。

社員の副業の勤務先が競合の場合、本業で培った技術が転用されてしまい、事業に影響が出る可能性が高いと判断されます。こういった場合に備え会社は、自社の利益を守るためにも副業を禁止するのです。

人材の流出を避ける

企業にとって、人材は生命線といえるものです。副業に関心を持つ社員というのは、独立心が旺盛で自ら積極的に動くことのできる人材である可能性が高く、他社に引き抜かれたり、独立してしまうことを恐れがあります。

法律で副業禁止は認められているのか

現在は、社会全体で副業が推奨されている傾向があるように思えますが事実、厚生労働省は副業・兼業を推進しています。個別企業が副業禁止を規定していることについて、法律上の問題はないのでしょうか。

会社員の副業は法律で禁止されていない

まずは最高法規である憲法の規定を見てみましょう。日本国憲法22条1項に次のような条文があります。

何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する

つまり、憲法は職業選択の自由を保障しているので、副業を行うことは何も問題ありません。会社員が勤務している会社以外の所で仕事をしていたとしても、それは職業選択の自由であって、法に背いたものではないのです。

副業は法律で規制されていないので、会社員が副業を行ったとしても法的な罰則は一切ありません。

公務員は副業が制限されている

公務員については法律で副業の禁止・制限が明確に規定されています。

まず国家公務員ですが、国家公務員法第103条と第104条によって、人事院の承認がない場合は営利企業の役員等の兼業、および営利企業の自営の兼業が禁止されています。

次に地方公務員ですが、地方公務員法の第38条に同様の規定があり、任命権者の許可がない限り、副業・兼業が禁止されているのです。

ただし、最近の副業推進の流れの中で、公務員の副業解禁の動きも出てきています。2018年に閣議決定された成長戦略である「未来投資戦略2018」の中で、国家公務員について「公益的活動等を行うための兼業に関し、円滑な制度運用を図るための環境整備を進める」と記載されています。当面は特定非営利活動法人(NPO法人)などの公益活動に限定されますが、国家公務員の副業・兼業を解禁していく流れもあります。

引用:内閣府「未来投資戦略2018」資料

今後は地方公務員も含めて、副業の解禁が進んでいくものと見られています。

公務員の副業が解禁されている?できる副業の内容や解禁の事例と注意点を解説

会社が副業禁止できるのはなぜか

会社が副業禁止できるのはなぜか

前章で、副業は法律で規制されていないことを見てきました。そのなかで、なぜ企業は就業規則で副業禁止を定めることができるのでしょうか。

安全配慮義務のため

労働契約法第5条によって、会社には社員がその生命、体などの安全を確保しつつ働けるように必要な配慮をすることが義務付けられています。これを「安全配慮義務」といいますが、副業が原因で長時間労働となって適正な労働環境が保障できない場合は、副業を禁止・制限することができるとされています。

また、労働契約法第3条第4項(信義誠実の原則)によって、社員には業務上で知り得る秘密を守る義務(秘密保持義務)がありますが、副業によって複数の企業の下で働くようになり、秘密が漏れてしまうことが想定される場合には副業を禁止・制限することができるとされています。

引用:厚生労働省「労働契約法」

さらに、同項にもとづいて、会社が競業避止の観点から副業を禁止・制限することを定めることが認められることになります。

モデル就業規則で示された副業禁止の要件

厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」において、会社が就業規則に副業禁止の条項を盛り込む際の例(モデル就業規則)を示してます。

第67条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合

出典:厚生労働省 副業・兼業の促進に関するガイドライン

上記のように、本業の会社側に不利益が出るような場合を具体的に示しており、これらの項目に当たる副業であれば、企業は副業を禁止または制限できるのです。

さらに詳しく副業禁止・制限ができる理由を知りたい人は下記記事を参照してください。

副業禁止の会社は違法って本当?企業が副業禁止にできる理由とは

就業規則の副業禁止を破ったらどうなる?

就業規則の副業禁止を破ったらどうなる?

就業規則に副業禁止が明記されているにもかかわらず、副業に従事したことで就業規則違反に問われ、懲戒処分が下されたとしても、いきなり解雇や懲戒免職ということはないのが一般的です。

違反内容の程度に応じて、軽い処分から下されることが多いでしょう。
その処分の中でも、副業禁止を破るとどういった処分があるのか解説していきます。

戒告・けん責

懲戒処分の一番軽いものが戒告・けん責で、口頭または文書によって反省を求める処分です。

減給

減給とは、一定の割合で給与を減額する処分です。労働基準法によって、減給額が平均給与の1日分の半額を超えてはならないという規定があります。

出勤停止

出勤停止とは、会社が社員に対して一定期間就業を禁止する処分です。「懲戒休職」「停職」「自宅謹慎処分」とも呼ばれます。出勤停止期間中の給与については、支払われないのが普通です。

降格

懲戒処分としての降格は、就業規則に違反した責任として役職や職務上の地位を下げることを指します。

諭旨解雇、懲戒解雇

諭旨解雇とは、会社側と社員が話し合い、社員に退職届を提出させたうえで解雇する懲戒処分です。それに対し、懲戒解雇は即時に雇用契約を切られるもので、会社の懲戒処分としてはもっとも重い処分となります。

諭旨解雇では退職金の全部、または一部が支給されますが、懲戒解雇では支払われないのが一般的です。

副業禁止の会社で副業をするには

副業禁止の会社に勤めているが、どうしても副業をしたい場合はどうしたら良いでしょうか。

就業規則を確認する

ひとくちに「副業禁止」と言っても、会社によって違いがあります。これまで見てきたように、就業規則の副業禁止規定の根拠は安全配慮義務・秘密保持義務・競業避止義務にありますので、一律で副業禁止としている企業は減ってきています。

先輩社員や同僚から「副業禁止」と聞いていても、会社の就業規則をよく読んでみると条件を満たせばOKという事例もあります。一度、自分の目で自社の就業規則を読んでみることをおすすめします。

上司に副業を相談する

就業規則の条項をよく確認した上で、上司に相談します。上司に話す内容は、以下のことをまとめて話すといいでしょう。

  • なぜ副業をしたいと思ったのか
  • どのような職種の副業を行うのか
  • 副業の労働時間
  • 競合企業ではないこと
  • 雇用なのか業務委託なのか
  • 将来のビジョン、会社へ還元できること

ポイントは、情報流出や競合にはならないこと、会社にとっても利益があることを伝えることです。

すぐに副業が認められることはないかもしれません。それでも、会社に隠れて後ろめたさを抱えながら副業をするよりは、堂々と会社にかけあったほうが精神的にさっぱりするのではないでしょうか。

社会全体の流れは副業解禁の方向ですので、チャレンジしてみる価値は大いにあります。

なぜ副業禁止の会社があるのかについてまとめ

以上、なぜ副業禁止を謳う会社があるのかについて、会社の目線から解説してきました。

会社の就業規則で、一定の制限のもと副業禁止を定めることは合理的な理由があり、不法ではありません。しかしながら社会的な情勢としては、ますます副業が認知されて広がっていくことが予想されます。

しかしこうした現状から、状況がガラッと変わる可能性もあります。今後の副業推移に注目していきましょう。

公開日:2022年07月28日

よくある質問

Q 副業を認めている会社の事例にはどのようなものがありますか? 回答を見る
Q 会社が副業禁止ですがそれでもできる副業はありませんか? 回答を見る