公務員の副業が解禁されている?できる副業の内容や解禁事例と注意点を解説

最終更新日:2022年07月26日

公務員は許可なしでの副業が原則禁止されていますが、私企業での副業促進や働き方の多様化などの流れを受けて副業解禁の動きが広がっています。

この記事では、公務員ができる副業を紹介します。公務員の副業を解禁している自治体の事例や、始める際の注意点についても解説していますので、副業を検討している公務員の方はぜひご覧ください。

一般企業の副業については、下記記事で紹介しています。
副業禁止の会社は違法って本当?企業が副業禁止にできる理由とは

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目次

公務員の副業に関する法律

公務員の副業が解禁されている自治体の事例

公務員ができる副業6選

公務員が副業をする際の注意点

公務員の副業解禁についてまとめ

公務員の副業に関する法律

「公務員の副業は原則禁止」という解釈の背景には、国家公務員法と地方公務員法における規定が存在しています。

国家公務員法第103条

職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。

国家公務員法第104条

職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。

引用:国家公務員法 | e-Gov法令検索

地方公務員法第38条

職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。」

引用:地方公務員法 | e-Gov法令検索

公務員は憲法によって「全体の奉仕者」であることが定められており、公共の利益のために働かなくてはいけません。そのため、特定の企業の利益になるような働き方ができないよう、上記のような法律で副業が原則禁止されているのです。

また、副業禁止を裏付ける3原則として、国家公務員法第99条〜101条、地方公務員法第33条~35条にも下記の規定が記載されています。

  • 信用失墜行為の禁止:公務員全体の不名誉となるような行為、信用をなくす行為の禁止
  • 秘密を守る義務:職務上で得た情報の守秘義務
  • 職務に専念する義務

国家公務員は、国と国民のために働く奉仕者であり、職務に対する責任が法律で定められています。本業に支障をきたす行為は避ける必要があり、私的に報酬を得るための副業も、世間のイメージや職務専念といった観点から好ましくないとされています。

副業解禁は今後どうなる?

近年の働き方の多様化や一般企業での副業を受けて、公務員についても副業を解禁する流れが出ています。

2017年3月の「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業研究会提言」にて、公務員の副業解禁に向けて動き出しました。2018年には政府の閣議決定による「未来投資戦略2018」内で、公務員の副業に柔軟対応していく旨が発表され、2019年には、兼業許可基準の見直しという形で公務員の副業が後押しされています。ここ数年の動向を振り返ると、公務員の副業を認める動きは今後さらに浸透していくと予測されます。

また、副業によるスキルアップや地域活性化といったメリットの認識も、副業解禁の流れを加速化させた要因です。公務員数の減少が著しい近年、地域貢献活動や有償ボランティアへの参加により、慢性的な人員不足を解消し、地域活性の好循環が生まれます。

公務員の副業が解禁されている自治体の事例

自治体の中には、独自に基準を設けて副業を推進している市区町村があります。画期的なニュースとして話題を集めた神戸市や生駒市を含め、公務員の副業解禁を進めている自治体の事例を紹介します。

兵庫県神戸市の事例

兵庫県神戸市では、阪神大震災後の復興に関わる地域団体やNPO法人における高齢化、担い手不足が目立っていました。そこで課題を解消する目的で「地域貢献応援制度」を開設し、基準をクリアした公務員の副業を認めています。

公務員が持つスキルや知識を活かした副業活動を中心に、人手不足の解消や社会的課題の解決など、地域の発展や活性化に寄与できる場合に副業が可能です。現在は、須磨海岸での障がい者支援活動や手話通訳活動などさまざまな活動が実施されています。

奈良県生駒市の事例

奈良県生駒市では、2017年より公益性が高い地域貢献活動、または地域の発展、活性化に繋がる場合に副業ができる制度を開始。公務員が地域活動など職務外で報酬を得る上での基準を独自に運用しています。

公務員の在職3年以上の職員が対象で、地域の有償ボランティアや子ども向け講義などを副業として許可しています。

消防士が地元少年サッカークラブのコーチを務めたり、市役所職員が非営利団体の資金調達を担う「ファンドレイザー」として活動するなど、さまざまな副業事例が出てきています。

宮崎県新富町

宮崎県新富町では、2018年11月に町職員の副業を承認したことを発表。人口減少や少子高齢化が著しく、職員が地域で職務時間外に住民と協働することで課題解決へとつなげる意図でスタートしました。

副業許可基準を明確化した内規を作成し、町職員がスポーツ少年団やNPO法人など報酬が発生する活動への参加を後押ししています。また、町内の地域行事や農家の手伝いや高齢者の買いもの支援、コンビニのアルバイトなどが許可されています。

公務員ができる副業6選

公務員ができる副業6選

ここからは、公務員でもできる副業を紹介します。先述した法令に加えて、国家公務員の懲戒制度について定められた「義務違反防止ハンドブック」記載の事例を踏まえ、公務員が取り組める範囲内の副業を厳選しました。副業選びの参考にしてください。

1.ネットオークションやフリマアプリ

不用品や中古品を販売するネットオークションやフリマアプリは、公務員でも利用することが可能です。ヤフオクやメルカリは、特別な許可なしで誰でもすぐに始められます。

ただし、せどりや転売など商品を仕入れて販売する行為や継続的な売買は、営利目的の自営と判断される可能性があります。自営兼業は原則禁止されており、自営兼業承認申請をした上で所轄庁の長等の承認を得られなければ、兼業禁止の規定に違反することになるため注意が必要です。

2.不動産の賃貸

不動産賃貸業は、公務員のメジャーな副業の1つです。家賃収入を目的とした不動産賃貸業で、アパート10室未満、駐車場10台未満など一定規模未満であり、年間収入額が500万円未満であれば、公務員でも申請不要で取り組めます。

なお、職場の許可があれば収入額の上限を超えても問題なく継続でき、安定した副業収入を目指す方法として有用です。

公務員という信用があるため、ローンで不動産物件を購入しやすい点もメリットでしょう。とはいえ、空室や賃料下落、災害などさまざまなリスクがあります。リスクを許容でき、初期費用と不動産投資の知識を持つ人に向いています。

3.太陽光電気の販売

太陽光電気の販売は、人事院規則で認められている公務員の副業の1つです。太陽光発電設備の定格出力が10kw未満であれば、申請や許可なしで始められます。10kWの基準を超えても、人事院の承認が得られれば問題なく販売可能です。

従来の太陽光発電では、パネルの価格が高額で元が取りにくい状況でしたが、近年は価格が低下しており、性能が格段に上がったためハードルが下がっています。

一方で、メンテナンスに高額な費用がかかることや、発電量が天候によって変動するなどのデメリットも考慮する必要があります。

4.小規模な農業

自給目的の小規模な農業に限り、公務員の副業として認められています。地方や農村エリアの公務員で、農林畜産を兼業しているケースが多く見られます。先述のハンドブックでは「大規模に経営され客観的に営利を主目的とする企業と判断される場合」は自営兼業承認申請が必要、と記載があります。

規模が大きくても許可があれば問題なく取り組めるので、各自治体に確認を取って始めることが大切です。一から農業を始めることは初心者には難しいため、自給自足を含めて長期計画として検討しましょう。

5.単発の講演や研究成果の発表

専門知識や経験を活かした単発の講演や執筆活動、研究成果の発表によって謝礼を受け取ることは公務員でも認められています。公務員にも表現の自由が認められており、営利目的の活動ではない限り、謝礼金のある講師活動や作家活動は兼業許可申請は不要です。

学生時代の研究に関する講義活動や同人活動のほか、Webサイトや雑誌への単発の寄稿なども含まれます。ただ、連載のように継続的な契約で報酬をもらう場合は兼業とみなされるので注意しましょう。

守秘義務や信用失墜に抵触しないよう徹底すると共に、職務に支障を来さない範囲で行うことが前提です。公務に関するテーマについての活動は、念のため上長に伝えておきましょう。

6.株・投資信託

株式投資や投資信託も、公務員は許可なく取り組むことが可能です。資産運用としての投資は、営利企業の経営や役員としての従事、報酬を得る事業のいずれにも該当せず、先述の法律における副業の定義からは外れています。

株式だけでなく、FXや仮想通貨などの投資も営利目的とは認められず、問題なく行えます。ただし、利益については確定申告が必要で、申告しない場合は罰則の対象となるため注意しましょう。

公務員が副業をする際の注意点

公務員が副業をする際の注意点

公務員の副業解禁が広がっているとはいえ、細かな規定に抵触すると罰則や懲戒のリスクが出てきます。また、申請書や確定申告などの手続きが必要な場合もあるので、事前に確認することが大切です。公務員が副業を始める上での注意点について解説します。

申請書の提出が必要な場合がある

公務員が副業を始める際には「自営兼業承認申請書」の提出が必要なケースがあります。副業禁止規定に該当する副業では、事前に上長に伝えた上で、申請書を提出することが義務付けられています。

自営兼業承認申請書は、不動産賃貸や太陽光電気の販売など副業の種類によって提出用紙が異なります。人事院規則内で定められた用紙に、必要資料を添えて提出しましょう。先述した副業例のなかには、提出不要で取り組めるケースもありますが、もし提出すべきか悩む場合は上長に相談することが大切です。

懲戒処分を受けるケースがある

副業により減給や停職などの処分を受ける可能性があります。過去には、水道工事会社など複数の事業を経営して免職になった例や、金券ショップ事業で1,500万円の利益を出して停職処分を受けた例など、さまざまな懲戒事例が報告されています。

公務員の副業は慎重に行う必要があります。事前に許可を得ていれば問題なく取り組める副業も多いので、無許可で行って後に懲戒を受けることのないよう、事前相談などの対策を取ることが望ましいです。

許可を得られた場合も、申請内容と乖離のないように努めましょう。

20万円以上稼いだら確定申告する

副業による収入額が年間20万円以上の場合、確定申告が必要です。確定申告が必要で、期限内に申告できなかった場合は追加課税の対象です。また、公務員として処分や罰則を受ける可能性も出てくるので注意しましょう。

確定申告については、下記記事で詳しく紹介しています。
副業の確定申告はいくらから必要?副業時の確定申告のやり方や基本

本業を優先するのが前提である

公務員としての本業を優先することは大前提です。国家公務員は、公共の利益のために勤務し、職務に専念するよう法律内で定められています。

本業に支障を来す副業は規則違反にあたり、場合によっては処罰の対象とされる場合もあります。本職を全うした上で、支障のない範囲で副業に取り組むことが大切です。

公務員の副業解禁についてまとめ

公務員の副業解禁の流れが広がっており、独自の規則を設ける自治体も登場しています。勤務時間外の活動によって報酬を得る機会が増えているものの、原則的に営利目的の活動は禁止されています。

不動産賃貸業や小規模農業など、公務員として取り組める副業も多いですが、後で処分を受けないためにも、上長に事前報告や相談を行い、安全に副業を始めることが大切です。

公開日:2022年07月28日

よくある質問

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