個人事業主でも税務調査の対象に?!事前に知っておきたい税務調査の基礎知識や対策など

公開日:2021年04月15日

税務調査と聞くと法人をイメージするかもしれませんが、実は個人の事業や相続税に対して調査が入ることも珍しくありません。そこで今回は、税務調査の対象となる個人事業主のケースや、事前に押さえたい対策をまとめました。

領収書の扱い方なども紹介しているので、「税務調査が不安」「何から準備すべきか分からない」とお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。

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目次

税務調査とは

個人事業主が税務調査の対象となるケース

相続税の税務調査にも要注意

個人事業主が税務調査の対象となる確率は?

税務調査の流れ

個人事業主の税務調査対策

不安を感じる方は早めに税理士への相談を

税務調査とは

税務調査とは、法人や個人事業主などが行う確定申告の内容に対して、税務署をはじめとした国税庁の組織が調査をすることです。帳簿などの会計書類と申告書を比較し、脱税や申告漏れなどの事実があった場合は、追徴課税などのペナルティを科します。

税務調査の時期は特に決められていませんが、一般的には税務署の人事異動が終わる7月頃から増え始め、同年11月頃まで本格的な調査が続くと言われています。また、3月に決算を迎える事業主が多い点も、税務調査が7月以降に集中している一因でしょう。

なお、税務調査には「任意調査」と「強制調査」の2種類があるため、以下ではそれぞれの調査について紹介していきます。

任意調査

税務調査のうち、事前に調査の連絡が届くものを任意調査といいます。事業の規模にもよりますが、一般的な任意調査は1~2人の調査員によって行われ、長くても3日程度で調査が完了します。

任意調査の主な対象は、悪質な脱税の疑いがない法人・個人事業主です。例えば、経営状態に大きな変化があったり、同業他社と比べて収支に違和感があったりすると、調査対象に含まれやすくなります。

任意調査では急に押しかけられることはありませんが、調査員に対して虚偽の申告や黙秘をすると、懲役刑や罰金刑を科される恐れがあります。任意調査の調査員は、対象者から申告内容に関する情報を聞き出せる「質問検査権」と呼ばれる権利をもっているため、調査員からの質問・要望には素直に応じましょう。

強制調査

一方、脱税の疑いがある事業主などに対して、国税局査察部(通称:マルサ)が強制的に行う税務調査を強制調査といいます。強制調査の主な対象者としては、おおむね1億円以上の脱税をしている法人や、悪質な脱税工作をしている事業主などが挙げられます。

強制調査の調査員には資料を押収する権利があり、基本的には裁判所の令状を発行した上で調査が実施されるため、対象者は拒否をすることができません。ちなみに、国内の税務調査はほとんどが任意調査とされていますが、強制調査も年間200件前後は実施されています。

個人事業主が税務調査の対象となるケース

税務調査の対象者は、無作為に選ばれるわけではありません。基本的には何らかの不正や申告漏れ、隠ぺい工作などの疑いがある法人・事業主を中心として調査が行われます。

そこで次からは、個人事業主が税務調査の対象となる主なケースをまとめました。

950~1,000万円未満の課税売上高が毎年続いている

個人事業主であっても、2年前の課税売上高が1,000万円を超えている場合は「消費税」が課されます。

課税売上高とは、消費税を含まない1年間の売上金額のこと。具体的には、「消費税を含む売り上げ」と「免税される売り上げ」を合計したものであり、この課税売上高が1,000万円を超えた個人事業主は消費税の課税事業者として扱われます。

消費税は多くの事業主にとって負担が大きいので、なかには売り上げを不正に調整しようとするケースが存在します。そのため、毎年の課税売上高が950~1,000万円未満の個人事業主は、「売り上げに不審な点がないか?」を調査されやすい傾向があります。

短期間で売り上げが急増している

1~2年の短い期間で売り上げが急増している個人事業主も、税務調査の対象となる可能性があります。

事業内容にもよりますが、一般的なケースでは売り上げが増加すると経費も増えます。つまり、個人事業主にとっては税務申告の負担が大きくなるので、経費の数字に違和感があると「手抜きをしているのでは?」と疑われることが。

特に事業拡大にともなって従業員を増やした場合は、旅費交通費や社会保険料の関係で疑われやすくなるため、細心の注意を払って税務申告をする必要があるでしょう。

現金商売をしている

普段から現金のみでやり取りをしている個人事業主は、銀行口座で売り上げを管理する必要がないので、過少申告をしても発覚しにくい側面があります。そのため、現金商売をしている個人事業主の不正は、税務署側も常に警戒をしています。

具体的なビジネスとしては、バーやクラブの運営、不動産をはじめとした仲介などが挙げられます。現金商売に対する税務調査は非常に多いと言われるので、該当する方は売り上げの管理を徹底することが大切です。

そもそも確定申告をしていない

「そもそも確定申告をしていなければ調査対象に入らないのでは?」と考えている人もいるかもしれません。しかし、事業によって得た収益は、取引先の税務申告の内容から分かるので、確定申告をしていない個人事業主も税務調査の対象に含まれます。

なかでも、過去に申告漏れが発覚している人は細心の注意が必要です。重加算税などの罰則を科された経験があると、税務調査のサイクルが短くなると言われているため、確定申告は毎年必ず済ませておきましょう。

相続税の税務調査にも要注意

個人事業主は事業に関する税務調査だけではなく、「相続税の税務調査」にも注意する必要があります。では、具体的にどのような資産が調査対象に含まれるのか、以下で簡単に紹介しましょう。

  • 預貯金などの現金
  • 被相続人の自宅を含む不動産
  • 生命保険などの保険金
  • 国債や株式などの有価証券

相続税の申告内容に不備や誤りがあると、追徴課税などのペナルティだけではなく、最悪の場合は刑事罰が科されます。そのため、家族などから相続した資産は全て把握し、漏れなく申告をすることが必要です。

個人事業主が税務調査の対象となる確率は?

国税庁が公開した資料「税務行政の現状と課題」によると、2017年度分の所得税に関する税務調査の実施件数は7.3万件、実調率(申告者に対する実施件数の割合)は1.1%でした。また、個人事業主の消費税に関する税務調査は3.8万件、相続税については1.3万件の調査が行われました。

確率的には高くありませんが、税務署は申告書の内容などから調査対象を選んでいるため、対象に含まれるかどうかは確率だけで判断できるものではありません。また、申告内容に問題がなくても調査対象になることは十分に考えられるので、税務調査の流れや対策などはしっかりと押さえておく必要があります。

参照:国税庁「税務行政の現状と課題」

税務調査の流れ

ケースによって多少異なりますが、一般的な税務調査(任意調査)は以下のような流れで進められます。

1. 税務署などから調査実施の連絡が届く
2. 申告書の内容が分析され、実地調査で確認すべき項目などが決められる(準備調査)
3. 実地調査の開始
4. 業務内容や規模、取引先に関してなど、事業の概要を尋ねられる
5. 会計書類などの確認

なお、調査内容に不動産や設備などが含まれる場合は、実地調査の前に外観調査などが行われることも。また、従業員や取引先への事実確認が行われるケースもあるので、調査実施の連絡が届いたら申告内容を見直し、どのような指示にもスムーズに対応できるよう準備しておくことが大切です。

個人事業主の税務調査で確認される項目

税務調査で確認される項目を把握しておくと、不審な点が見つかった場合に対策をとりやすくなります。スムーズに調査を済ませることにもつながるので、以下でまとめた項目はしっかりと押さえておきましょう。

確認される主な項目 調査内容の一例
売上 計上時期がずれていないか、計上漏れがないか。
仕入れ 在庫の計上が漏れていないか、適正な取引をしているか。
給与 架空の人件費が発生していないか。
外注費 水増ししていないか、源泉徴収税の徴収漏れがないか。
交際費 事業と関係がない個人経費が含まれていないか。
そのほかの固定費 前年と大きく変わった固定費はないか、家賃や水道光熱費は平均的な金額か。

また、不動産や自動車などの高額な買い物も、税務調査では確認されやすい傾向があります。

追徴課税などのペナルティについて

税務調査において問題が見つかった場合は、以下のペナルティを科される恐れがあります。

罰則の種類 概要
延滞税 税金の納付が遅れた場合に課される税金。税率は最大14.6%であり、日割りで税額が計算される。
無申告加算税 期限までに確定申告をしなかった場合に課される税金。税率は最大20%だが、自主的に申告すると税率が5%に軽減される。
重加算税 悪質な隠ぺい・偽装に対して課される税金。無申告の場合の税率は40%、申告済みの状態では35%となる。
過少申告加算税 正当な理由などがない状態で、過少申告をしていた場合に課される税金。追徴課税全体に対してかかる税金であり、税率は最大15%。

また、納税を免れることを目的として故意に申告をしなかった人に対しては、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金が科されることも。つまり、無申告は刑事罰にまで発展する恐れがあるので、義務のある方は毎年必ず確定申告を行いましょう。

個人事業主の税務調査対策

追徴課税などのペナルティを避けたいのであれば、事前に対策をしておく必要があります。そこで次からは、個人事業主の税務調査対策を3つまとめました。

書類や領収書をきちんと保管しておく

税務調査をスムーズに済ませるには、過去の申告書や領収書などをきちんと保管しておくことが重要です。これらの書類を年ごとに分けて整理しておけば、仮に税務調査が実施されても大きな手間がかかることはありません。

また、領収書をはじめとした帳簿書類については、以下の保管期間を守ることも大切なポイントです。

  • 白色申告の場合…5年間
  • 青色申告の場合…7年間(前々年分の所得が300万円以下であれば5年間)

なお、2021年4月現在では電子データによる帳簿保存も認められていますが、データで保存する場合は事前の承認申請が必要になるため注意しましょう。

調査員からの質問・要望には素直に応じる

もし税務調査が実施された場合は、とにかく誠実に対応することが重要です。何かを隠そうとするとかえって怪しまれるので、調査員からの質問・要望には素直に応じなければなりません。

そもそも税務調査は、脱税の疑いがない個人事業主に対しても実施されます。ただの確認作業として調査が入る可能性も考えられるため、税務調査を必要以上に怖がらないようにしましょう。

また、一つ一つの質問・要望に丁寧に応じれば、仮に申告漏れなどが見つかっても「悪質ではない」と判断される可能性が高まります。

税理士に相談をする

今回紹介するなかでも、税理士に相談をする方法は非常に効果的です。

税務調査の実施前に相談をしておけば、必要書類や対応に関するアドバイスをもらえるので、調査官に良い印象を与えやすくなるでしょう。相談先によっては、調査当日に税理士が立ち会ってくれることもあります。

また、税理士に確定申告の代行を依頼すると、申告書の第一表に担当税理士が署名をしてくれます。署名つきの申告書は信用性が高いと判断されるため、「そもそも税務調査が入るリスクを抑えたい」と考えている方は、申告書を作成するタイミングで相談をしてみましょう。

不安を感じる方は早めに税理士への相談を

税務調査のリスクを少しでも抑えるためには、毎年きちんと確定申告をすることが大切です。また、欠かさずに確定申告をしても税務調査が入る可能性は十分に考えられるので、過去の申告書や帳簿書類はしっかりと保管しておきましょう。

それでも税務調査に対して不安を感じる方には、税理士への早めの相談をおすすめします。

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