個人事業主として開業するメリット・デメリットとは?

最終更新日:2020年05月15日

サラリーマンとして会社で働いていたものの、やりたいことを見つけて独立開業をする方もいるでしょう。個人事業で仕事をするためには、その事業のスキルや知識を身につけることが大切ですが、それ以外にも開業に伴う手続き方法も知っておかなければなりません。ここでは、個人事業を開業することのメリット・デメリットや、手続き方法について詳しくご紹介します。

個人事業主として開業する|目次

1 個人事業主として開業するメリット・デメリットとは?    

2 個人事業主として開業する流れ      

3 個人事業主として開業することと法人化との違い    

4 まとめ

1 個人事業主として開業するメリット・デメリットとは?

会社員として働いていた方が個人事業主として働こうと考えるのには、それぞれ理由があると思いますが、共通しているのは、個人事業主として自分でビジネスを成功に導きたいという意志を持っていることではないでしょうか。個人事業には多くの魅力がありますが、注意すべき点も多くあります。

1-1 個人事業主として開業する魅力とメリット

個人事業主として働くということは、雇用される側から、自身が事業を経営する立場に変わるということです。これまで、上司や先輩の指導を受けながら作業を行っていた方も、個人事業になれば、作業内容も全て自分自身で行うことになります。その分、周りの環境に左右されない自由な働き方ができる点が大きな魅力です。

個人事業の場合、事業に掛かった費用は経費として計上することができます。インターネットの通信費や備品の購入費、電気代、取材に行った際の旅費、ホームページ制作に掛かった外注費なども、すべて経費として勘定されます。もちろん、税金を支払う際には、売上額からこうした経費を差し引くことができます。1年間の売上から経費を指しい引いた額が65万円以下であれば、控除の範囲内となるため、税金も掛かりません。事業に関わる費用は全て経費として計上できるため、経理はきちんと管理しておきましょう。

1-2 個人事業主として開業する際の注意点とデメリット

事業を運営していく中で収益が得られたのであれば、そこには税金の支払い義務が発生します。税金の額は収益額によって決定しますが、その収益額を税務署へ報告するのが確定申告です。申告義務が発生する条件は2つ設定されています。一つは、給与以外に他から20万円以上の所得を得ている場合、もう一つが、2箇所以上の場所から給与を受け取っている場合です。

副業として事業を立ち上げた場合、20万円以下であれば申告の義務はありませんが、それを超える場合には必ず申告が必要となります。また、年300万円以上の副収入があると事業所得として計上しなければなりません。そして、個人事業の開業届出を提出している場合には、20万円以下であっても必ず確定申告をしなければなりません。

申告の義務があるにも関わらずそれを放置すると、税務署から通告が来て、ペナルティが発生してしまうケースもあります。余分な税金を支払うことにならないためにも、申告は必ず毎年行いましょう。

当然のことながら、事業の運命を左右するのは自分自身です。責任も重くのしかかることでしょう。赤字が続けば、事業の存続も危ぶまれます。利益は出ていたものの、税金が払えず廃業に追い込まれてしまうケースも少なくありません。そうならないためにも、きちんと将来を見据えた資金計画を立てましょう。

2 個人事業主として開業する流れ

いざ個人事業主として開業をするとなった場合に、何から始めれば良いのかわからない方も多いのではないでしょうか。次はさまざまな手続きの方法や、事業を運営するにあたって必要な事項についてご紹介します。

2-1 個人事業を開業するビジネスプランを練る

事業を興すのであれば、ビジネスプランをしっかりと練ることは欠かせません。どういった事業にするのかはもちろん、事業遂行に向けて、資金や収支計画を立てましょう。個人事業を成功に結び付けるためには、資金をどう運用していくかを常に念頭に置いておかなければなりません。広告をどのように打ち立てるか、どのような設備が必要になるのかなども、あらかじめ考えておく必要があるでしょう。

また、新規事業を立ち上げるのであれば、市場調査を行っておくことも大切です。現在、その事業を立ち上げた時に、需要はあるのかを調べておかなければ、売上に結び付けることは難しいでしょう。インターネットでニュースサイトを見たり、新聞を見たり、あるいはビジネス雑誌を読んだりしながら、常に社会の動きを追いつつ、お客様となりうる層の調査を行いましょう。必要に応じて市場調査を行い、より正確で説得力のある情報を取得しておきましょう。

2-2 個人事業の開業資金を調達する

事業を立ち上げたものの、運転資金がなければビジネスをスタートさせることはできません。自己資金で不足している分は、金融機関から融資を受けるなどして、資金調達を行いましょう。しかし、お金が借りられればどこでも良いというわけではありません。提供される融資プランは金融機関によっても大きく異なるため、自分に合った融資先を選ぶことも大切です。

銀行融資は、信頼性が高いものの審査が厳しいという特徴があります。収入が見込めない開業時には、その審査に通過することは難しいでしょう。ただし、絶対に融資を受けられないというわけではないため、一度相談してみる価値はあります。

また、日本政策金融公庫といった公的金融機関が提供している創業融資制度を利用するという手もあります。こちらであれば、開業したばかりの事業でも比較的融資が受けやすくなっています。

創業融資制度は自己資金がゼロの状態では融資を受けることができず、必要となる額は、創業資金総額のうち10分の1以上と定められています。つまり、50万円の自己資金を持っていれば、そのうちの10分の9にあたる450万円までが融資可能ということです。ただし、自己資金よりも多くの融資を受け過ぎると返済ができなくなってしまうため、できれば2分の1程度に抑えておくのが安全でしょう。

融資の可否に関してはビジネスプランに左右されますので、しっかりと計画を立てておくに越したことはないです。

2-3 個人事業の開業の手続きなどについて

開業をするにあたっては、まず税務署へ行きましょう。そこで、「個人事業の開廃業等届出書」と「所得税の青色申告承認申請書」という2つの書類に必要事項を記入し、窓口に提出します。個人事業開始等申告書は都道府県税事務所にも提出する必要があるため、忘れずに行いましょう。

もし、自分一人ではなく、従業員も雇う場合には、給与支払事務所等の開設といった書類も合わせて提出する必要があります。

書類提出時は、屋号の設定が必要となります。屋号は、事業の看板となる大事な項目なので、慎重に決めましょう。類似の屋号がないか調べる場合には、法務局で確認が可能です。

3 個人事業主として開業することと法人化との違い

事業を立ち上げる場合に、個人事業主にすべきか法人化すべきか迷うこともあるでしょう。どちらにすべきか決定するためには、それぞれの特徴を知っておく必要があります。

3-1 個人事業主と法人、それぞれの税金について

個人事業主と法人化では、税金の仕組みが異なります。個人事業の場合、所得×5~40%が税金となりますが、法人の場合には、所得×15~25 5%が法人税となっているのです(平成27年9月現在)。これは、所得が低い場合は個人事業の方が負担は少なく、一定の所得を超えると法人の税金負担が減る、という仕組みになっています。

つまり、所得額に応じて個人事業にすべきか法人化すべきかを決定すれば良いのです。
そのほか、住民税や事業税にも両者の違いが見られます。これから新規ビジネスを立ち上げる場合には、まず個人事業から始め、収益が見込めるようになってきたら法人化するのも良いでしょう。

3-2 個人事業と法人化、開業の分岐点

税金以外にも、個人事業と法人化には違いがあります。

まず、社会的信頼の高さです。個人事業は、あくまでも一個人が仕事の責任を負う形になりますが、法人化したら会社が責任を持つことになるため、信頼性が高まります。しかし、一方で会計処理や税務処理が複雑になる、社会保険に入る必要があるなどのデメリットもあります。また、個人事業であれば登記手続きは不要ですから、開業時には資金も掛かりませんが、法人化は登記の際に30万円程度の費用が掛かり、さらに資本金も用意しておかなければなりません。

どちらで起業をするかは、所得の損益分岐点を見極めた上で判断する必要があるでしょう。一般的には、年間1,000万円を超えると会社設立をした方が良いとされています。

また、もう一つ注目したいのが消費税です。個人事業で開業した場合、2年間は消費税の免除を受けることができるため、その期間は個人事業のままにし、2年が経ってから法人化をするという方もいます。法人化後も2年間は消費税免除となるため、最大で合計4年間は免税を受けることができるので事業を興しやすいという点があります。

公開日:2020年04月08日