開業資金調達の書類作成方法とは?必要準備や注意点を解説
最終更新日:2022年04月26日

開業を目指している人のなかには、資金を調達する方法やどのような書類を用意すべきか分からないと、疑問に感じる人も少なくありません。
資金調達で扱う書類は数が多い上に、記載する内容が複雑なので慣れていないと準備に時間がかかり、資金の確保が遅れてしまう可能性があります。
本記事では、開業資金の調達を検討している人に向け、代表的な資金の調達方法や書類の概要などをご紹介します。必要なときに使えるお金を手元に用意しておくためにも、資金調達の基本的な項目を押さえておきましょう。
開業資金の調達とは
開業資金の調達とは、独立開業に必要なお金を出資や融資などの方法で集めることを指します。出資は社債を発行したり投資家に会って自社のビジネスに賛同してもらったりしてお金を調達する方法です。一方融資は金融機関などに書類を提出して面談を行い、審査を通過してお金を借りることを言います。
開業資金の調達方法について、下記の記事で詳しく解説しているので、独立開業を予定している人はぜひ参考にしてみてください。
代表的な調達方法
開業資金の調達方法は出資と融資の2つに分けられ、出資の代表的な方法としては次のようなものが挙げられます。
- 他企業からの出資
- ベンチャーキャピタル(VC)
- エンジェル投資家
- 持株会
- クラウドファンディング
- ビジネスコンテスト
- 親族や知人
融資制度を提供している金融機関は主に以下の5つがあります。
- 銀行
- 信用金庫
- 自治体の制度融資
- 日本政策金融公庫(国民生活事業)
- マル経融資(商工会議所)
出資は返済の義務がない場合もありますが、融資に関しては利息と資金の返済が必要です。利率や調達したい金額、要件などと照らし合わせ、どの調達方法が自分に適しているか慎重に検討しましょう。
開業資金調達に必要な書類
出資や融資を利用する際は、開業する事業の概要や売り上げの見込み、販促方法などを明確にして第三者や金融機関に提示し、お金を得るために説得する必要があります。
本章では出資・融資に必要な代表的な書類と、各書類の役割について解説していきます。
借入申込書
借入申込書とは、申込者の名前、希望する融資額や借り入れ希望日、月々の返済希望日、資金の使い道、担保について記載する書類です。民間の金融機関や日本政策公庫で融資を受ける際に提出が必要で、インターネットや窓口で指定のフォーマットを入手し記入します。
事業計画書(創業計画書)
日本政策金融公庫で創業融資を申請する場合は、事業計画書ではなく「創業計画書」という名称の書類を準備し提出します。事業計画書・創業計画書には下記のような項目を具体的に記載しなければなりません。
- 開業、創業の動機
- 経営者の略歴
- 事業経験の有無
- 取得資格
- 提供するサービス、商品
- 取引先
- 従業員数
- 借り入れ状況
- 必要な資金、調達方法
- 事業の見通し
- 経営理念
- 行動計画
どのようなサービス、商品をどうやって売っていくのかなど、事業運営に関する計画を詳細に記載し、説得力を持たせることが審査を受けやすくするポイントです。事業計画書・創業計画書も指定の書式がインターネットからダウンロードできます。
試算表(月別収支計画書)
試算表とは、月ごとの財務情報を記した書類を指し、賃借対照表や損益計算書といった書類の基礎となる情報を記載したものです。資金調達方法によっては、試算表の提出が義務付けられていないケースもありますが、年間の決算書よりも直近の財務状況を示せるのであらかじめ準備しておきましょう。
試算表は大きく分けて、以下の3種類があります。
- 合計試算表
- 残高試算表
- 合計残高試算表
自分で作成が難しければ税理士に依頼するか、会計用システムを利用して作成することもできます。
見積書
見積書とは、取引先と契約を交わす前に作成する書類で、費用の金額、数量、工程、納期などを記したものです。
見積書によって利益の根拠や、調達した資金をどのように使うのかを明確にできるため、融資審査の際に役立ちます。設備資金として融資を受ける場合にも見積書の提出が必要となる重要な書類の一つです。
損益計算書
損益計算書とは年間の収支を記載した決算書類で、年間の企業の経営成績を数値化したものです。損益計算書は、大きく分けて次の3つで構成されています。
- 収益
- 費用
- 純利益
損益計算書は貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書とあわせた財務三表のうちの一つで、会社の成長度合いを把握するのに役立ちます。
貸借対照表
貸借対照表も財務三表の一つで、バランスシートとも呼ばれている書類です。賃借対照表は、決算日において企業が権利や資産をどの程度持っているかを示します。賃借対照表を構成する要素は下記の3つです。
- 資産の部
- 負債の部
- 純資産の部
貸借対照表を確認することで、資金の調達方法、資金の運用状況などを客観的に把握し経営課題の発見につなげます。
銀行取引一覧表
金融機関取引状況表とは、借り入れ状況、預貯金、割引手形など各金融機関での取引の状況を記す書類のことです。月々の返済金額、返済の残存期間、借り入れ金利などを書きます。
返済状況や借り入れしている合計額などを把握でき、融資した場合に月々返済できるのか、借り過ぎていないかといった確認の際に用いられます。
その他
資金調達方法によりますが、たとえば銀行のビジネスローンを利用するときは下記に挙げる書類の提出が必要です。
- 印鑑証明書(印鑑登録証か印鑑登録カード)
- 収入が確認できる書類
- 履歴事項全部証明書の原本(申込人が法人の場合)
金融機関によってはマイナンバーカードの提出が求められる場合もあります。
面談時に必要な書類一覧
前章で、審査に必要な代表的な書類の一例をご紹介しました。ここからは実際の面談時にどの書類を持参するか、日本政策公庫の創業融資を例に解説します。
- 創業計画書
- 月別収支計画書
- 売上高、売上原価、経費といった計算に使用した資料一式
- 預金通帳
- 自己資金が確認できる通帳や有価証券など
- 住宅ローンなどの支払明細
- 固定資産税の領収書(不動産を持っている場合)
- 賃貸借契約書または賃貸借予約契約書
- 勤務している会社の源泉徴収票
- 運転免許証などの本人確認書類
- 水道光熱費の支払いが分かるもの
通帳やクレジットカードの明細履歴で、ローンや公共料金の支払い遅延や滞納がないか、必ずチェックされます。このほかにも、損益計算書などの決算書を作成している場合は持参しておくと良いでしょう。
書類作成時の注意点
サービスや商品が素晴らしくても経営計画が甘いと、出資者や金融機関に不安を与える要因となります。お金を出資・融資してもらうには、綿密な書類を作成して提出することが重要です。
次に、書類を作成する上で何に注意すべきか、2つのポイントを確認していきましょう。
想定質問を洗い出し書類を作る
開業資金を調達するときは、第三者や金融機関に事業内容、サービス、現状、今後の見通しなどを全て説明し、「お金を出資・融資しても問題ない」と判断してもらわなくてはなりません。
面談時には使用用途、返済計画など細かい点も質問されます。スムーズに解答できないと、経営について理解が浅いと思われる恐れがあります。面談で質問される傾向が高い質問項目を想定し、書類を作り込むのが大切です。
客観的で納得感のある書類を作成するために、調達経験のある知人や専門家など自分以外の人にも読んでもらい、アドバイスを受けておくと安心です。
外注に頼りすぎない
煩雑な書類作成を専門家に依頼することで、審査が通りやすくなる可能性が高まります。しかし外注に頼りすぎてしまい、自分自身の事業に関する理解が浅いと、面談時に適切な受け答えができないといったリスクもあります。
専門家に丸投げしたり、テンプレートをそのまま引用したりするのではなく、融資は自分事として捉え、責任者として書類を用意しましょう。
計画的に書類作成を進めよう
開業資金の調達には審査があり、提出する書類の種類が多く、一つ一つの内容も複雑です。書類作成に加えて面談での質疑応答もあるため、早めに書類を完成させて、必要に応じて専門家に相談するのも良いでしょう。
書類や面談の準備が不足していると、審査担当者に良い印象を与えられず、審査が不利になる可能性があります。融資を希望する場合は、計画的に書類を作成し不備や漏れがないよう注意しましょう。
公開日:2022年04月26日