電子帳簿保存法とは?導入前に対象書類やメリット、手続きなどを要チェック!

最終更新日:2020年12月17日

最近ではコスト削減や業務の効率化を目指すために、電子帳簿を導入する企業が増えてきました。電子帳簿の導入にはさまざまなメリットがありますが、実は電子帳簿保存法の適用を受けるには所定の手続きを済ませる必要があります。

そこで今回は、電子帳簿保存法の概要や直近の改正点に加えて、必要な手続きや要件などを紹介していきます。

フランチャイズを探してみる

目次

電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法の対象となる書類

電子帳簿保存法のメリット

電子帳簿保存法の適用には手続きが必要

電子帳簿への移行は、早めの準備がポイントに

電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿書類の保存方法について定められた法律のこと。従来の日本では、国税関係帳簿書類は「紙での保存」が義務づけられていましたが、電子帳簿保存法の制定によって以下の3つの保存方法が認められるようになりました。

【1】マイクロフィルムでの保存
【2】電子データでの保存(DVDやCD、サーバーなど)
【3】スキャナでの保存(スマートフォンで読み取ったデータも保存可能)

この法律はもともと1998年7月に制定されましたが、2005年以降は何度か改正が加えられており、2020年にも一部が改正されています。詳しくは後述しますが、2020年の改正によって一部の要件が緩和された影響で、多くの企業が電子帳簿保存へと移行するようになりました。

電子帳簿保存制度改正の経緯

電子帳簿保存法は、企業の事務負担を軽減するために制定された法律です。しかし、以前は3万円未満の領収書に限定されていたり、電子署名が必要になったりなど、いくつか厳しい要件が定められていました。

その影響で、日本では電子帳簿へと移行する企業が少なかったので、2015年以降は以下のように要件を緩和するための改正が度々行われています。

改正の時期 改正の内容
2005年 領収書の金額など、スキャナ保存の規定が追加される。
2015年 領収書等の金額上限や、電子署名の義務が撤廃される。
2016年 デジタルカメラやスマートフォンによる撮影も可能になる。

そして2020年の改正では、主に以下のポイントに変更が加えられました。

【1】キャッシュレス決済時の紙の領収書が不要になった
【2】データの改変ができない書類については、タイムスタンプ(※)が不要になった

上記のなかでも【1】は、経営者であれば確実に押さえておきたい改正点です。これまでは紙の領収書を保管する必要がありましたが、2020年の改正によりキャッシュレス決済時の明細データを領収書代わりに使えるようになったため、企業にとっては「経理のペーパーレス化」を進めやすい状況になりました。

(※)…定時点でのデータの存在と、改ざんされていないことを証明する印のこと

改正後のタイムスタンプについて

上記【2】のタイムスタンプについても、以下で詳しく解説をしておきましょう。

改正前の電子帳簿保存法では、不正や改ざんを防止する目的で3日以内にタイムスタンプを押すことが義務づけられていました。タイムスタンプは企業側が自由に押せるものではなく、一般的には以下のような工程で発行されていました。

【1】第三者機関のタイムスタンプ局に発行を依頼する(※有料)
【2】タイムスタンプ局が、内容を改ざんできないよう処理したタイムスタンプトークンを発行する
【3】原本の証明時には、タイムスタンプ局から受け取った鍵で暗号化されたデータを復号し、原本と照合する

このように、タイムスタンプの発行にはある程度の手間・コストがかかります。そのため、2020年の改正によって一部の書類でタイムスタンプが不要となった点は、企業にとって大きなメリットといえるでしょう。

電子帳簿保存法の対象となる書類

電子帳簿保存法の制定・改正により、今ではさまざまな書類を電子帳簿で保存できるようになりました。ただし、全ての国税関係帳簿書類が対象に含まれているわけではなく、なかにはスキャナ保存などが認められていない書類も存在します。

そこで以下では、電子帳簿保存法の対象となる書類や認められている保存方法をまとめました。

書類の種類 具体的な書類 電子データによる保存 スキャナによる保存
国税関係帳簿 現金出納帳、仕訳帳、経費帳、売掛帳、買掛帳、総勘定元帳、固定資産台帳など 不可
国税関係書類(決算関係) 貸借対照表・損益計算書・棚卸表など 不可
国税関係書類(証憑) 領収書、レシート、見積書、契約書、納品書、請求書など

ちなみに、以下に該当する書類については、電子データによる保存も認められていません。

  • 手書きで作成した仕訳帳、総勘定元帳等の帳簿書類、請求書の写し
  • 取引先から受け取った請求書

つまり、もともとが紙媒体の書類(手書きのもの)や社外の人物が作成した書類は電子帳簿保存法の対象外となるので注意しておきましょう。

電子帳簿保存法のメリット

ここまでご紹介してきたように、電子帳簿保存法は企業の事務負担を減らすための法律です。では、電子帳簿を導入することで、企業側には具体的にどのようなメリットが発生するのでしょうか?

コストの削減

これまで紙で保存していた書類を電子帳簿に変えると、以下のようにさまざまなコストを削減できるようになります。

  • 印刷をするための用紙代やインク代
  • 印刷作業や手書きによって発生する人件費
  • 金庫やキャビネットの購入代など、帳簿書類の保管コスト

もちろん、パソコンや記録媒体などの購入は必要になりますが、あらゆる業界でIT化が進んだ現代では、すでに電子帳簿の作成・保管に必要なツールがそろっている企業も多いはず。そのため、ほとんどの企業ではさまざまな書類を電子帳簿に変えるだけで、全体的な経営コストを大きく抑えられます。

業務の効率化

経理業務の効率化につながる点も、電子帳簿を導入する大きなメリットです。

例えば、電子帳簿にすると手書きで書類を作成する必要がなくなりますし、保管前の整理も不要です。また、電子データは検索性に優れているため、手作業で1枚1枚の書類を探す手間も省けます。

その結果、手が空いた人員をほかの業務にうまく回せば、経理だけではなく事業全体の効率を高められるでしょう。

リスクの低減

実は重要書類を紙によって保存する方法には、さまざまなリスクが潜んでいます。そもそも書類を紛失する恐れがありますし、盗難や火事、改ざんなどの可能性を考えると、事前の対策も求められるでしょう。

これらのリスクを低減できる点も、電子帳簿ならではのメリットです。また、手書きではなくパソコンなどで入力をすることにより、文字が判別しやすくなる(=誰が読んでも分かりやすい)点も大きなメリットといえるでしょう。

個人事業主の場合、青色申告特別控除額に大きな影響が

個人事業主に該当する場合は、青色申告特別控除額を増やせる点も電子帳簿を導入するメリットになります。

従来の青色申告(2019年分まで)では、個人事業主は最大で65万円分の特別控除を受けられましたが、2020年分以降の確定申告からはこの控除額が55万円に減額されました。ただし、e-Taxによる申告、もしくは電子帳簿による保存のいずれかの条件を満たしておけば、引き続き65万円分の特別控除を受けることが可能です。

特にe-Taxを導入していない個人事業主は、帳簿の保存方法によって特別控除額が変わってくるため、これを機に電子帳簿の導入を検討してみましょう。

電子帳簿保存法の適用には手続きが必要

電子帳簿保存法の適用を受けるには、いくつかの要件を満たした上で、所定の手続きを済ませることが必要です。つまり、単に電子帳簿を導入するだけでは適用を受けられないので、以下で紹介する要件や必要書類、申請期限はしっかりとチェックしておきましょう。

要件

まずは、電子帳簿保存法の要件をご紹介していきます。

要件の概要 帳簿 書類
訂正や削除を行った場合に、その事実内容を確認できること 必要 不要
通常の業務処理期間の経過後に、入力履歴を確認できること 必要 不要
電子化した書類と、関連する書類の関連性を相互に確認できること 必要 不要
概要書や仕様書など、システム関係の書類を備え付けること 必要 必要
保存場所に操作マニュアルを備え付け、記録事項を明瞭な状態ですみやかに出力できること 必要 必要
取引時期や勘定科目など、主要な記録項目によって検索できること 必要 必要
「日付」「金額の範囲指定」の2つで検索できること 必要 必要
2つ以上の任意の記録項目によって検索できること 必要 不要

上記を見て分かる通り、帳簿と書類とでは要件が若干異なります。全ての帳簿・書類を電子データ化する際には、この要件の違いに注意しながら作業を進めることが重要です。

必要書類

電子帳簿保存法の適用を受けるには、以下の書類を税務署に提出することが必要です。

  • 承認申請書
  • システムの概要書や操作説明書などの添付書類

上記のうち「承認申請書」は、帳簿と書類で様式が異なります。いずれの必要書類も、国税庁の公式サイトでテンプレートが公開されているため、申請をする経営者は余裕をもってダウンロードしておきましょう。

なお、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会が認証するソフトウェアを使用する場合は、簡易な様式の申請書で申し込むことができ、さらに一部の添付書類も不要になります。

申請期限

電子帳簿保存法の申請には、以下のように期限が設けられています。

  • 帳簿…備付けを開始する日の3ヵ月前
  • 書類…保存を開始する日の3ヵ月前

例えば、翌年の1月1日から適用を受けたい場合は、前年の9月30日までの申請が必要です。なお、原則として課税期間の途中から適用を受けることはできないので、この点も意識しながら準備を進めましょう。

電子帳簿への移行は、早めの準備がポイントに

電子帳簿保存法の適用を受けると、企業側にはさまざまなメリットが発生します。ただし、そのためには所定の手続きが必要であり、申請が遅れると適用されるタイミングも大きく遅れるので、きちんとスケジュールを立てて準備を進めることが重要です。

コストやリスクの削減、業務の効率化を目指している経営者は、これを機に電子帳簿の導入を積極的に検討してみましょう。

フランチャイズを探してみる

公開日:2020年11月12日