開業資金の調達方法とは?調達ポイントやメリット・デメリット

最終更新日:2022年04月25日

独立開業を決めたら、事業計画を立てた上で資金計画を進めていきます。
自己資金で足りない場合は、金融機関からの融資や第三者からのサポートを受けるなど、資金の調達方法の検討が必要です。

この記事では、開業資金を調達する方法を、1.出資を受ける、2.金融機関を利用する、3.補助金や助成金を利用するの3パターンに分けて、それぞれの方法とメリット・デメリットを紹介します。
2022年4月時点で、開業する際に活用できる補助金制度も紹介するのでぜひ参考にしてください。

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目次

1.出資を受ける

2.金融機関を利用する

3.補助金や助成金を活用する

自分にあった手法で開業資金を準備しよう

1.出資を受ける

開業資金の調達方法の代表例は、第三者から出資を受ける方法です。
自分のビジネスに賛同してくれる人から出資を受けられれば、事業展開を有利に進められるでしょう。

社債以外の形で出資を受けた場合は返済の義務はありませんが、出資者のアドバイスを尊重しながら事業を進めていく姿勢が求められます。ここでは、どんな相手から開業資金を出資してもらえるかを紹介します。

企業からの出資

第三者から出資を受ける場合、社債や株式を発行してほかの企業から出資を受ける方法が一般的です。出資者が50名未満であれば、発行手続きが簡単な「少人数私募債」も活用できます。
調達できる上限金額について法的なルールはありませんが、社債を発行する場合は償還時に多額の現金が必要となるため、資金繰りを考慮して発行額を決めましょう。

また、株式を発行する場合は、定款に定めた発行可能株式総数の範囲に収める必要があります。展開するビジネスに賛同してくれる人を広く募集できるのがメリットですが、社債の償還や株式の配当といった事務手続きが増えるのがデメリットです。
法人化した上で、将来的に事業規模を拡大したい人に向いている資金調達方法です。

ベンチャーキャピタル(VC)

将来的に株式上場を目指す人には、ベンチャーキャピタルからの開業資金の調達も選択肢となります。
ベンチャーキャピタルとは、将来的に成長が見込まれる企業に出資する組織です。主に金融機関・証券会社などの関連企業が運営していますが、堅実な成長を重視する政府系ベンチャーキャピタルや、地域社会への貢献を重視する大学系ベンチャーキャピタルもみられます。

多額の資金を調達できる可能性がある反面、想定どおりの収益が得られなければ、株式の買い取りによって資金を引き揚げられるリスクが伴います。
ただし、経営ノウハウの提供などのサポートを受けられるので、企業の成長に向けて積極的に活用するようにしましょう。

個人投資家(エンジェル投資家)

個人投資家と出会って、これから展開するビジネスに賛同してもらえれば、開業資金を調達できる可能性があります。資金に困っている人を個人の資産を使って助ける、という意味でエンジェル投資家とも呼ばれています。

調達できる額は投資家の判断に委ねられますが、開業後の運転資金も出資してもらえる可能性があるなど、資金調達の柔軟度が高いのが特長です。
ベンチャーキャピタルと同様、成長が見込まれないと判断されると資金を引き揚げられる恐れがある点には注意が必要です。マッチングサイトや交流会で個人投資家と出会うのは主流ですが、知人などからの紹介やSNSを通じた出会いも少なくありません。

ビジネスに関連するアドバイスを得られるだけでなく、人脈を通じて顧客を紹介してもらえる可能性があるのもメリットといえます。

クラウドファンディング

クラウドファンディングとは、インターネット上で事業計画や提供する商品・サービスを紹介して、賛同してくれた人から資金を集められる仕組みです。上場企業はもちろん、個人事業主でも簡単かつスピーディーに資金を調達できます。調達希望金額は自由に決められますが、出資額に応じたリターン(返礼)を提供する必要があります。クラウドファンディングをきっかけに、将来の顧客を獲得できるかもしれません。

多くの人から出資してもらうためには、他人から見て魅力的に映る商品・サービスの提案が欠かせません。SNSやホームページを活用するなど、自社ならではの特長を積極的に宣伝するようにしましょう。

ビジネスコンテスト

ビジネスコンテストで入賞して授与された賞金や協賛金を、開業資金に充てることも可能です。
ビジネスコンテストとは参加者と事業計画を競い合う競技で、これから開業する人だけでなく事業拡大を考える経営者や学生なども参加します。
仮に入賞できなかった場合でも、斬新なアイデアに注目して業務提携や出資の提案につながる可能性もあります。

入賞者を対象としたセミナーや起業支援サービスを提供する主催者もあり、将来のビジネスの幅が広がるのもメリットです。
コンテストに参加しても必ずしも入賞できるとは限らないので、開業資金を調達する場合は他の方法と組み合わせるのが賢明です。斬新なアイデアでビジネスを展開したいと考える人には活用する価値がある資金調達方法といえます。

親族や知人

第三者から出資を受けることが難しい場合は、親族や知人に相談して開業資金の調達をサポートしてもらうのも一つの方法です。借り入れという形を取るのが一般的ですが、出資(贈与)すると提案してくれる可能性もあります。
多額の資金を調達するのは難しいですが、話し合った上で返済期間や利息を柔軟に設定できます。そのため、開業当初の返済負担を減らせるのがメリットです。
贈与を受けることができた場合は返済の負担がなくなりますが、金額によっては贈与税の課税対象になる点にも留意しておきましょう。

親族や知人との関係性が悪くならないよう事業計画の説明はもちろん、開業後も定期的に事業の経過を報告することが重要です。

社員持株会

株式会社として開業して従業員を雇う場合は、社員持株会を設立して、従業員が購入した株式の代金を運転資金に充てる方法もあります。
株式の公募・売り出しと比べると得られる資金は少なめですが、従業員が毎月株式を買い増す仕組みなので安定した資金源になるのがメリットです。

一方、社員持株会に加入する従業員には奨励金や配当金を支払うため、経営が厳しいときに負担が大きくなる点を意識しておく必要があります。なお、未上場の会社でも社員持株会の設立は可能です。

2.金融機関を利用する

金融機関を利用しているイメージ

金融機関を利用して開業資金を調達した後は、利息と一緒に融資を受けた資金を返済していくことになります。融資にあたっては経営者本人の支払能力も審査されるため、各種ローンや税金・公共料金を滞納しないよう注意が必要です。
自治体や商工会議所が融資制度をあっせんしてくれる場合もあるので、開業前から資金について相談しておくと良いでしょう。引き続き、金融機関で開業資金を調達する方法を紹介します。

銀行での融資

ほとんどの地方銀行では、新たに開業する人や開業初期の人を対象にした創業融資制度を設けています。日本政策金融公庫と連携して融資を行う銀行もみられます。開業を決めた段階で銀行に相談することで、事業計画書の作成や見込み客の紹介など、開業前後のサポートを受けられるのがメリットです。

融資の金利は審査の結果で決まりますが、年1.8~3.5%程度が相場といわれています。信用保証協会による保証を求められることがほとんどで、融資額に応じた保証料が別途必要です。また、融資を受けられる額は自己資金の2倍程度が目安です。

審査では経営者個人の給与振込や定期預金といった取引実績も加味されるため、普段付き合いのある銀行に融資を相談すると良いでしょう。

信用金庫での融資

信用金庫(信金)でも銀行と同様に、開業資金を調達したい人向けの創業融資商品を提供しています。金利は銀行と同じ水準ですが、融資を受けられる金額は銀行よりも少ないといわれています。
信用金庫では地域に密着した営業方針をとっているため、中小企業や個人事業主でも融資を受けやすいのが特長です。銀行と同様に、開業前後のサポートが充実している信用金庫もみられます。

信用金庫で融資を受ける際は、数万円程度の出資金を預けて会員となる必要があります。また、信用保証協会の保証を求められることがほとんどです。

自治体の制度融資

制度融資とは、自治体と金融機関・信用保証協会が連携して中小企業や個人事業主に事業資金を融資する仕組みです。開業の運転資金・設備投資だけでなく、開業資金の調達にも対応しています。

制度融資を申し込む際は、事業の本拠地となる自治体で面談を受け、融資のあっせんを受けるのが基本です。金融機関で直接申し込む仕組みをとる自治体もあります。

融資額の上限は定められているものの、低金利で融資を受けられるのがメリットです。信用保証協会に支払う保証料を補助してくれる自治体や、申込み前に創業支援を受けると金利が優遇される自治体もみられます。

日本政策金融公庫での融資(国民生活事業)

日本政策金融公庫では、新たに開業する人を対象に国民生活事業として新創業融資制度や新規開業資金を提供しています。それぞれの特徴を簡単に紹介します。

新創業融資制度

  • 対象者…新規開業する人、または税務申告を2期分終えていない人
  • 融資額…3,000万円以内(うち運転資金1,500万円以内)
  • 金利…日本政策金融公庫所定の金利

新規開業資金

  • 対象者…新規開業する人、または事業開始後7年以内の人
  • 融資額…7,200万円以内(うち運転資金4,800万円以内)
  • 金利…日本政策金融公庫所定の金利(特別利率あり)

日本政策金融公庫の審査では、経営者本人の面談と事業拠点の現地調査によって事業の将来性を判断しているのが特徴です。全ての資金調達方法に共通することですが、開業を決断した動機や将来のビジネス展開について、明確に伝えられるように準備しておきましょう。

マル経融資(商工会議所)

マル経融資とは、商工会議所で経営指導を受けている従業員5名以下(建設業・製造業は20名以下)の中小企業・個人事業主が日本政策金融公庫から融資を受けられる制度です。

2022年4月時点での金利は年1.23%で、銀行・信用金庫より低い金利で融資を受けられます。開業後1年以上経過した時点で申し込める制度なので、開業資金として別の方法で調達した資金の借り換えに活用すると効果的です。
マル経融資を利用する際は、経営指導を受けている商工会議所に申し込みましょう。

3.補助金や助成金を活用する

a補助金や助成金を活用する

国や自治体の補助金・助成金の活用も、開業資金の調達方法の一つです。2022年4月時点で申請できる補助金・助成金の一例を紹介します。補助金・助成金に関する最新情報は、経済産業省が運営する「ミラサポplus」や自治体のホームページで確認できます。
過去には地域創造的起業補助金など、国の補助金制度も設けられていたため、参考にしてください。

自治体の補助金・助成金制度の一例

一部の自治体では、地域で開業する人を支援する目的で補助金・助成金制度を設けています。たとえば東京都の創業助成金では、2年間にわたって、最高300万円まで設備投資資金や宣伝広告費・事業拠点の家賃を補助してくれます。

募集期間や条件が細かく定められているので、自治体の担当窓口に相談しながら補助金・助成金の手続きを進めることをおすすめします。

過去に公募されていた補助金

中小企業庁では、平成30年度に創業経費の2分の1以内・最高200万円まで支給する「地域創造的起業補助金」を公募していました。産業競争力強化法の認定を受けた市町村に本拠地を置く中小企業・個人事業主が対象で、従業員1名以上の雇用が主な条件でした。

地域創造的起業補助金を申請する際は、開業の動機や開業後6年分の事業計画・収支計画の提出が必要でした。
新たに補助金制度が設けられた際に備えて、開業計画を具体化しておくようにしましょう。

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、現在事業を営んでいる中小企業や個人事業主が経済情勢の変化に対応するための、事業再編や業態変更・新事業の展開に必要な費用を補助する制度です。

設備投資をはじめ、従業員の賃金引き上げにかかった経費や、コンサルティング料など対象となる経費が幅広いのが特徴です。開業した後に売り上げが伸び悩んだとしても、第二創業という形でのリベンジをサポートする制度といえます。

2022年6月30日まで第6回公募が行われていますが、最新の情報は事業再構築補助金の公式サイトでご確認ください。

自分にあった手法で開業資金を準備しよう

開業資金の調達方法は日本政策金融公庫をはじめとする金融機関の融資だけでなく、ビジネスコンテストの賞金や個人投資家からの資金援助など多岐にわたります。
近年では見込み客から開業資金・事業資金を得る、クラウドファンディングを活用する経営者も増加傾向です。自治体によっては新規に開業する人を対象とした補助金・助成金制度が設けられているので、最新の情報を収集するようにしましょう。
状況によっては家族・知人のサポートを得ることも資金調達の一つの方法です。

公開日:2022年04月25日

よくある質問

Q 開業資金はどのように準備すればいいのでしょうか? 回答を見る
Q クラウドファンディングで開業資金を調達できるのでしょうか? 回答を見る