早期退職をすると年金が減るって本当?年金を増やすためにできる対策とは

最終更新日:2022年10月26日

昨今では、早期退職をする人も増えています。しかし「早期退職をすると年金が減るって本当?」と不安に思っている方も多いのではないでしょうか。

確かに早期退職をすると、年金が減額されてしまいます。ただし年金を増やすためにできる対策もいくつかあり、早期退職をしても充実した生活が可能です。

今回の記事では、公的年金の仕組みと早期退職について詳しく解説します。

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目次

まず公的年金の仕組みとは

早期退職で年金が減額される理由

45歳で早期退職した場合は年金がいくら減額になる?

早期退職時の年金を増やすためにできること

老後の年金のことも考えて計画的に早期退職をしよう

まず公的年金の仕組みとは

まず公的年金の仕組みとは

公的年金は、大きく分けて国民年金(老齢基礎年金)と厚生年金の2つです。年金減額の前に、まずは前提として、国民年金と厚生年金について解説します。公的年金の基礎知識を整理しておきましょう。

老齢基礎年金とは

老齢基礎年金とは、名前の通り、公的年金の基礎となるシステムです。20歳から60歳までの40年間、国民年金に加入することになり、その期間に応じて年金額が計算されます。年金保険料を滞納していれば、その分受給される金額も減ってしまうという仕組みです。

国民年金の保険料は、月額1万6,590円です(第1号被保険者の場合)。保険料の納付期限は翌月末となっており、手動の納付だけでなく、口座からの自動引き落としもできます。また、まとめて前払いすれば、保険料が割引される仕組みもあります。

経済的に困窮しており、保険料を納めるのが難しい場合は、様々な救済措置があります。主な項目としては、「全額免除・一部免除制度」「納付猶予制度」「学生納付特例制度」の3つです。

老齢基礎年金の計算方法

老齢基礎年金の支給額は、先ほども触れたように、保険料を納付した期間に応じて決定されます。老齢基礎年金の年間受給額は、以下の計算式によって割り出されます。

老齢基礎年金の年間受給額=年金額×(保険料の納付月数÷480ヵ月)

2022年時点では、老齢基礎年金の満額は78万900円となっています。つまり保険料を毎月支払った場合、年間で約78万円の老齢基礎年金が受け取れることになります。月額にすると、約6.5万円です。

「月6.5万円では生活ができない」と考える方も多いでしょう。そこで用意されているのが、もう1つの年金である、老齢厚生年金です。

老齢厚生年金とは

老齢厚生年金は、日本の年金制度の2階部分に当たる年金です。日本国内では、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2階建てとなっています。老齢基礎年金との主な違いは、「加入する人」「保険料や年金支給額」の2つです。

老齢厚生年金は、会社などに勤務している人が加入します。つまり日本の保険制度における、第2号被保険者です。念のため、年金の被保険者を整理しておきましょう。

  • 第1号被保険者:自営業者や学生など
  • 第2号被保険者:会社員や公務員など
  • 第3号被保険者:会社員や公務員によって扶養されている配偶者

また保険料は、会社(事業主)との折半であり、半額を負担するという仕組みです。厚生年金の保険料は、給与明細などに記載されていますが、実際にはその倍額が支払われていることになります。

老齢厚生年金の計算方法

老齢厚生年金の計算方法は、以下の通りです。

老齢厚生年金の年間受給額=報酬比例年金額+経過的加算+加給年金額

計算式のうち、最も大きな影響を及ぼすのが、報酬比例年金額です。厚生年金は、会社員として働いていた際の給料や、その加入期間によって給付額が決まります。報酬比例年金額は、まさにその報酬額(給料)を考慮する部分です。

経過的加算は、20歳よりも前、もしくは60歳以降に厚生年金に加入していた人が対象になります。ただし、老齢基礎年金を満額もらう場合は、対象にはならないので注意しましょう。

加給年金額とは、厚生年金保険に20年以上加入しており、所定の条件を満たした際に加算されるものです。主に配偶者や子どもがいる人が対象となります。

年金の受給開始年齢

老齢基礎年金の受給開始年齢は65歳です。ただし60歳から65歳の間であれば、繰上げ受給もできます。早期に年金がもらえるメリットはあるものの、繰り上げ受給の請求に応じて、年金が減額されるので注意しましょう。

一方、65歳で年金をもらわず、繰り下げて受給をする方法もあります。繰り上げ受給とは反対に、繰り下げ受給の請求に応じて、年金が増額されます。

元々は老齢厚生年金の受給開始年齢は60歳と定められていましたが、2020年の法改正から段階的な引き上げがあり、2025年(女性の場合は2030年)までに65歳になる見通しです。なお、老齢基礎年金と同様、老齢厚生年金も「繰り上げ受給」「繰り下げ受給」ができます。

早期退職で年金が減額される理由

早期退職で年金が減額される理由

早期退職で年金が減額される理由は、老齢厚生年金に加入している期間が短くなってしまうからです。ここまで確認したように、老齢厚生年金は、会社員や公務員として働いている人が対象になっています。

ここで早期退職をすると、会社に所属しない状態になるため、老齢厚生年金の加入資格がなくなります。たとえば45歳で早期退職をした場合、その時点で老齢厚生年金から脱退し、年金に入っていない期間(45歳から60歳までの期間)が発生します。以後、老齢基礎年金のみの加入となるため、受給額の合計は減少します。

このように、将来の公的年金が減額になる可能性があるため、早期退職をする際は「どれだけ減額されるのか」を確認しておきましょう。

45歳で早期退職した場合は年金がいくら減額になる?

45歳で早期退職した場合は、年金がいくら減額になるのか、シミュレーションしてみましょう。国税庁の調査によれば、40代後半の平均年収は約500万円です。

満期で退職した場合の年金額は、月額25万9,166円・年額311万円です。また45歳で早期退職した場合、老齢厚生年金の保険加入期間が25年となり、月額16万1,979円・年額194万3,750円となっています。

もちろんこれは単純な平均年収をベースにしたシミュレーションであり、実際には、個人の年収や保険加入期間以外の様々な要素が考慮されます。しかし単純計算でも、月10万円近く減額されているなど、老齢厚生年金加入期間の影響の大きさが分かるでしょう。

代わりに早期退職は退職金が割増になることも多い

早期退職には、年金減額のデメリットがある一方で、退職金が割増になるメリットもあります。昨今では、早期退職優遇制度を設けている会社も多く、退職金が優遇されるケースも珍しくありません。

また会社によっては再就職支援をしているところもあるため、次の職場をスムーズに見つけられる可能性もあります。割増された退職金を使って、事業を展開するなど、新しいチャレンジをする人もいるでしょう。

このように早期退職は、年金以外で様々なメリットがあります。もちろん早期退職に関する対応は、会社によって大きく異なるため、事前に情報を集めておくのが重要です。

早期退職時の年金を増やすためにできること

早期退職をすると、厚生年金に加入できなくなるため、将来もらえる年金が減額されます。しかしいくつかのポイントを意識すれば、早期退職時であっても、将来の受給額を増額可能です。

ここでは、早期退職時の年金を増やすためにできる方法を、3つのトピックに分けて解説します。

年金を繰り下げ受給して増額する

まず有効な方法は、年金を繰り下げ受給して増額することです。繰り下げ受給とは、本来の受給開始年齢よりも遅く、年金を受け取る方法になります。老齢基礎年金・老齢厚生年金にかかわらず利用可能です。

繰り下げ受給は、66歳から75歳になるまでの間に請求します。なお年金システムの関係上、昭和27年4月1日以前に生まれた場合は、70歳になるまでに申請しなければなりません。

具体的には、繰り下げした月数ごとに、0.7%増額される仕組みです。たとえば70歳時点で受け取ることになった場合、期間としては5年(60ヵ月)繰り下げていることになるため、42%の増額となります。なお、これらの増額は、生涯変わることはありません。

国民年金基金で老齢基礎年金を上乗せする

国民年金基金で老齢基礎年金を上乗せする方法もあります。国民年金基金とは、国民年金法の規定に基づく「公的年金」として扱われており、老齢基礎年金(国民年金)とセットになったものです。

ここまで見てきたように、老齢基礎年金の年金額は、おおよそ月数万円程度です。老齢厚生年金に比べると、どうしても受給額が低くなります。特に、老齢厚生年金に加入しない自営業者は、生活が難しくなるでしょう。

会社員などの第2号被保険者と、自営業などの第1号被保険者の年金額に、大きな差が出ないよう整備されたのが国民年金基金です。公的年金なので安心感があり、老齢基礎年金のみの場合と比べて、将来もらえる年金額も増えます。

iDeCoで節税しながら資産を運用する

iDeCoで節税をしながら資産を運用する方法も見逃せません。iDeCoとは、個人型の確定拠出年金(私的年金制度)です。公的年金とは異なり任意で加入でき、掛金拠出や運用を全て自分で行います。

国民年金基金と比較されることが多いものの、「公的年金か私的年金か」といった違いや、年金の給付方法も大きく異なります。

  • 国民年金基金:基本終身年金(加入者が死亡するまでもらえる)
  • iDeCo:基本有期年金(60歳以降に一定期間給付を受けられる)

掛け金は月額5,000円以上で、1,000円単位で決められます。資産運用なので、若い時点から取り組むと、より大きな効果を得られるでしょう。ただし掛け金として拠出した金額は、基本的には途中で引き落とせないため注意が必要です。

老後の年金のことも考えて計画的に早期退職をしよう

老後の年金のことも考えて計画的に早期退職をしよう

早期退職をすると、老齢厚生年金に加入できなくなるため、将来的にもらえる年金額が減ってしまいます。しかし年金の繰り下げ受給や国民年金基金、iDeCoなどの活用によって、年金を増額させる方法もいくつかあります。

早期退職をすれば、退職金が割増になる可能性もありますし、再就職や起業も可能です。老後の年金のことを前もって考えておけば、早期退職のハードルもそれほど高くないでしょう。計画的に早期退職をしつつ、新しいチャレンジをしてみてはいかかでしょうか。

公開日:2022年10月26日

よくある質問

Q 早期退職後に再就職をしたら年金は減りませんか? 回答を見る
Q 早期退職するにはいくら貯金が必要ですか? 回答を見る