農業フランチャイズの開業・運営に必要な資金とは
最終更新日:2021年03月23日

農業フランチャイズの運営は、農地やビニールハウス、農機具などが必要なため「多額の資金が必要なのでは?」と感じる方もいることでしょう。
こちらでは、農業フランチャイズの開業と運営に必要な資金の目安、具体的な内訳について紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
農業フランチャイズ開業と運営に必要な資金の目安
農業フランチャイズの開業に必要な資金の目安は、390~2,930万円です。
この費用は、開業資金(初期費用)と運営資金3ヵ月分を合算した金額で、あくまで目安の一つです。
農作物によって売り上げが伸びるまでの期間に差があること、事業内容によって用意すべき土地の広さや設備が異なることに留意してください。
<開業資金(初期費用)の目安>
項目 | 金額 |
---|---|
加盟金・保証金 | 0万円~ |
農地取得・ビニールハウス建設費 | 50~500万円 |
農機・設備購入費 | 180~1,000万円 |
種苗や肥料の購入費 | 100~1,000万円 |
資格取得費 | 0~30万円 |
研修費 | 0万円~ |
合計 | 330~2,530万円 |
<運営資金の目安 ※3ヵ月分用意した場合>
項目 | 金額 |
---|---|
人件費 | 30~300万円 |
種苗や肥料などの購入費 | 15~40万円 |
農機・設備運営費(リース代や燃料代) | 15万円~60万円 |
ロイヤリティ | 0万円~ |
合計 | 60~400万円 |
※上記の初期費用と運営資金は事業規模によって異なることを前提に、売り上げが月40~200万円規模であると仮定し各項目を計算しています。
以下でそれぞれの項目について一つずつ解説していきます。
農業フランチャイズ開業に必要な資金(初期費用)
農業フランチャイズを開業するためには、農地取得やビニールハウス建設、長期間の研修などさまざまな費用が必要です。
こちらではそれぞれの費用の内訳を詳しく解説しているので、開業を予定している事業の規模や内容に照らし合わせながら、ぜひイメージしてみてください。
加盟金・保証金
フランチャイズへ支払う加盟金・保証金は、それぞれ100万円前後かかるのが一般的です。
ただ、農業フランチャイズの場合は金額の情報が公式サイトに掲載されていないことが多いので、気になる本部がある場合は直接問い合わせましょう。
加盟金に含まれる費用は、商標使用料やシステム利用料など本部によって異なるため、事前に内訳をよく確認することが大切です。
農地取得・ビニールハウス建設費
全国新規就農相談センターが2019年度に公表した調査結果によると、農地購入額の全国平均額は171.5万円、10アール(約302.5坪)あたり73万円です。
酪農などの広い敷地が必要な事業と比べると、野菜に特化した農業は取得費用が安い傾向にあります。
予算に余裕がない場合は賃貸する選択肢もあり、その場合は10アールあたり月1.5~2万円が相場です。
農地の取得は農業フランチャイズの本部がサポートしてくれるので、購入と賃貸どちらが自分に合っているのか迷ったときは相談しましょう。
また、農作物の種類によってはビニールハウスの建設費用もかかります。
できれば建設費用は安く済ませたいですが、あまりにもクオリティを下げてしまうと天災の際に壊れやすく、結果として修理費用がかさむ可能性があるため注意してください。
農機など設備購入費
農業フランチャイズの運営では、下記のような農機や設備を用意します。
- 運搬用自動車(軽トラなど)
- トラクター
- コンバイン
- 田植機
- 噴霧器
- 草刈り機
- クワやカマ
上記はあくまで参考例であり、事業内容によって必要なアイテムは変わります。
このなかでも特に高額な設備がトラクターやコンバインなどの農業機械ですが、スペックによって100万円台~1,000万円以上などさまざまなため、自身の事業規模に見合った商品を吟味することが求められます。
そのほか田植機や噴霧器は100万円以下で済むものがほとんどで、クワやカマなどの小さなアイテムであれば数千円が相場です。
種苗や肥料などの購入費
苗や肥料の費用は、栽培する農作物によって大きく変わります。
例えば和歌山県の新規就農者向け情報サイト「あぐりわかやま」の準備金シミュレーションによると、各農作物の費用には下記のような違いが見られます。
種苗 | 肥料 | 農薬 | |
---|---|---|---|
施設野菜(エンドウやミニトマト) | 12.9万円 | 13.9万円 | 9.6万円 |
露地野菜(ナスやキュウリ) | 10.4万円 | 5.3万円 | 5.2万円 |
水稲 | 0.3万円 | 2.7万円 | 1.2万円 |
果樹(みかんやもも) | 情報なし | 5.3万円 | 6万円 |
※上記の費用は10アールあたりで計算
上記はあくまで目安ですが、初期費用に余裕がない方は出費を抑えられる農作物で事業を始めるのも一つの選択肢です。
また、農業フランチャイズでは種苗や肥料、農薬を安く手に入れるためのルートを本部がすでに確保しているケースがあるため、本部の担当者に話を聞いてみるのもよいでしょう。
資格取得費
農業フランチャイズの開業に際して取得が義務づけられている資格はありませんが、収穫した農作物を運ぶための自動車免許を取得しなければいけません。
事業内容によっては普通自動車免許でも事足りますが、トラクターで公道を走る機会がある場合は小型特殊自動車または大型特殊自動車の免許を取得する必要があります。
教習所でゼロから自動車免許の取得を目指す場合は、20万円前後が目安です。
すでに普通自動車免許を所持している状態から小型・大型特殊自動車免許の取得を目指す場合は、約10万円前後かかると考えてよいでしょう。
そのほかにも、農業フランチャイズの運営では下記の資格の知識が役に立ちます。
- 農業機械士
- 農薬管理指導士
- 日本農業検定
- 日本農業技術検定
筆記試験だけの資格もあれば講習の受講が必要な資格もあるので、各都道府県または協会の公式サイトで取得方法や費用をチェックしてみてください。
研修費
農業の知識は短期で身につくものではないため、1~2年間の研修期間を確保している本部が多いです。
研修期間中は収入がない状態が予想されるため、事前に生活費を貯めておきましょう。
例えばイチゴの新規就農支援をしているGRAによると、2年間の研修費と生活費用を合わせて500~600万円の資金があることを推奨しています。
費用はそれなりにかかりますが、栽培方法のレクチャーから販売先の紹介、ハウス建設のサポートなどを受けられ、万全の状態で開業できるのがポイントです。
また、研修費などの開業準備費の調達には「農業次世代人材投資事業」や「就農支援基金制度」で給付金や融資を受けられる可能性があります。
農業フランチャイズに必要な運営資金
農業で安定した収益を上げるためにはそれなりの期間が必要なため、潤沢な運営資金を準備してから開業することが大切です。
こちらでは、農業フランチャイズの運営資金の内訳を解説しているので、どのような費用を毎月支払う必要があるのかチェックしておきましょう。
人件費
収穫に手間がかからない農作物を扱っていたり、収穫量があまり多くなかったりする場合は、夫婦や家族のみで事業運営しているケースがよく見られます。
特にほうれん草やアスパラガスなど人手をあまり必要としない農作物の場合は、人件費を抑えられるでしょう。
また、それぞれの農作物には収穫シーズンがあり、年間を通して人件費に差が出ることも覚えておきたいポイントです。
人件費の削減方法で悩んだときは、IT技術の導入について農業フランチャイズ本部へ相談してみるのがよいかもしれません。
例えばビニールハウスの温度や湿度を確認できるタブレットなど、最近は人件費削減に役立つIT技術が農業に取り入れられ注目を集めています。
種苗や肥料などの購入費
初期費用でもお伝えした通り、種苗や肥料の費用は農作物によって千差万別です。
また、天候に左右されやすい水稲は定期的なメンテナンスに費用がかかる一方、トマトやメロンなどの施設野菜は温度・湿度管理に費用がかかるなど、栽培方法によって出費がかさむポイントも異なります。
栽培方法が異なれば水道光熱費も変わるため、まずは何の農作物にどのような費用がかかるのか、自分が取り扱う農作物の特性について知識をつけることが大切です。
農機・設備運営費(リース代や燃料代など)
農業フランチャイズを運営するためには、トラクターやコンバインなどの数百万円かかる農機を用意する必要があります。
そのため経営者のなかには、収益が安定するまでリース契約を結ぶ方が少なくありません。
例えば「JAおおいた」ではトラクターを3・5・7年でリースしており、最も安いプランで借りると毎月の支払いは16,900円で済みます。
定期的な点検サービスや保険が付帯されているため、トラクターの調子が悪くなったときでも安心です。
また、「JAひすい」ではトラクターや田植機を1日からレンタルできるなど、短期間だけ利用したいケースにも柔軟に対応しています。
JA以外にも農機の貸し出しを行っている企業はあるので、加盟先の本部や地域の企業にぜひ相談してみてください。
ロイヤリティ
フランチャイズへ加盟すると、本部へロイヤリティを支払うのが一般的です。
経営者はロイヤリティを支払うことで、農地の取得や栽培方法のノウハウ伝授、販売先の斡旋といったサポートを受けられます。
ロイヤリティの費用や支払い方法は本部によって異なるので、いくつかの本部の情報を集めながら相場をつかむのがよいでしょう。
農業フランチャイズのキャッシュフローシミュレーショ
具体的な収支を情報公開しているフランチャイズ本部はありませんが、1ヵ月の売上高が約210万円の農業フランチャイズのキャッシュフローシミュレーションは以下の通りです。
(必ずしも当てはまるわけではないので、参考程度にしておいてください。)
総粗利益高
80万円
=210万円(売上高)ー130万円(原材料費)農園の利益
30万円
=80万円ー50万円(家賃や人件費、水道光熱費など)
農林水産省が実施した2018年の統計調査によると、一つの経営体における農業所得の平均は年間197.5万円でした。
ただし、このなかには兼業で細々と農家を営んでいる方もいれば、専業で1,000万円以上の収益を上げている方もいます。
また、年間を通してさまざまな農作物を育てるのか、それともワンシーズンだけ農作物を育てるのかでも売り上げは変わるでしょう。
ひとまとめに農業と言っても、事業規模や取り扱い農作物は全く異なります。
また、農家フランチャイズを始める際、念頭に置かなければいけないのが「農業はすぐに結果が出ない」ということです。
農作物が順調に育ち売り上げが伸びるまでには2~3年かかると言われているため、長期にわたり腰を据えて事業に向き合う必要があります。
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公開日:2021年03月23日