会社を守るFC(フランチャイズ)法律コラム(2)エリアエントリー契約

公開日:2015年03月24日

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多くのFC(フランチャイズ)契約書には「店舗名」とその「所在地」が記載されています。そのため、従来のフランチャイズ契約では店舗候補物件が決まってから契約が締結されていました。ところが、最近、店舗候補物件が決まる前にフランチャイズ契約が締結されるケースが出てきました。

店舗候補物件が決まる前に契約が締結されるケースは、加盟申込契約、フランチャイズ店舗の立地診断を含む契約、優先交渉権を保証する契約など様々なものがありますが、その中でも特に注目される契約形態として「エリアエントリー契約」と呼ばれるものがあります。エリアエントリー契約についてご紹介いたします。

記事提供:フランチャイズタイムズジャパン

加盟申込契約はあくまでフランチャイズ契約とは別個の契約であり、単なる予約契約です。そのため、本契約(フランチャイズ契約)が締結されない限り「加盟店」としての権利義務は生じません。それに対してエリアエントリー契約では、一応FC(フランチャイズ)「加盟店」としての権利義務が定められています。

具体的には、

(1) FC(フランチャイズ)加盟金・保証金

(2) ロイヤルティ

(3) 研修・指導

(4) 商品の仕入れ

(5) 秘密保持義務

(6) 競業禁止義

などと言ったフランチャイズ契約の基本事項が書かれているのです。

ただ、あくまで店舗候補物件が確定する前に締結されることから、エリアエントリー契約の加盟店が有するのは、

(1)特定の地域で優先的に出店できる権利

(2)フランチャイズ出店を条件として加盟店として経営することができる権利です。この点が通常のフランチャイズ契約との違いです。

(1)については、一定期間の優先出店権が定められていることが一般です(すなわち、フランチャイズ本部が、加盟店に対して、一定期間、他の加盟希望者が当該地域での店舗出店を許可しないことを保証するのです)。また、フランチャイズ本部による店舗候補物件紹介業務や立地診断業務とタイアップされているケースも多いようです。

このようなエリアエントリー契約では、エリアの選定についてフランチャイズ本部と加盟店との意思の疎通が重要となります。本部担当者の中には、少しでも多くの契約を取ろうとして「この地域には3エリアを設定しました。3エリア分の契約をしていただければ、この地域全体を独占できますよ。」と説明する者もいますが、そのため、フランチャイズ本部が説明したエリアと加盟店が考えていたエリアが異なったために、フランチャイズ加盟店が地域全体を独占できなかった場合は争いが生じます。

最近でも、フランチャイズ本部が説明したエリアと実際の契約上のエリアが異なるとして、そのエリアエントリー契約が錯誤(民法第95条)により無効とされた事件がありました(大阪地裁平成19年3月23日判決)。

また、エリアエントリー契約では、契約後にフランチャイズ店舗候補物件を探索するので、契約は締結したものの、そのエリア内では店舗候補物件がなかなか見つからず、長期間出店できなかったり、契約書に定めたエリアと異なるエリアに出店する場合が出てきます。これがフランチャイズ本部とフランチャイズ加盟店との間のトラブルの原因になることもあります。

具体的な「物件」と異なり、「エリア」という概念は非常に抽象的なので、フランチャイズ本部も加盟希望者も比較的安易にエリアエントリー契約を締結する傾向にありますが、前述したようなトラブルを起こさないためには、フランチャイズ本部もフランチャイズ加盟希望者もその「エリア」を十分調査してお互いの考えを確認する必要があります。優先出店権の期間や、フランチャイズ店舗出店後の契約期間などもお互いに確認し納得しておく必要があります。

いずれにせよ、一旦契約を締結したならば、フランチャイズ本部としてはフランチャイズ加盟店が実際に出店できるように徹底的にフォローすべきですし、加盟店も本部任せにせず、自ら物件探索のために努力すべきです。エリア権を投機(=エリア権だけの売り買い)の対象にしてはいけないのです。

神田 孝(かんだ・たかし) - 弁護士 -

弁護士法人心斎橋パートナーズ代表社員

チェーンビジネス法務を専門とし、FC(フランチャイズ)チェーン・レギュラーチェーンの顧問を多く務める。

大阪弁護士会所属。(社)中小企業診断協会東京支部フランチャイズ研究会特別会員。

(社)日本フランチャイズチェーン協会講師。