会社を守るFC(フランチャイズ)法律コラム(3)法定開示書面

公開日:2015年03月24日

FC(フランチャイズ)契約は条文数も多く非常に難解です。ところが、本部と加盟希望者とでは、法律やフランチャイズ・システムに関する知識に大きな差があることから、契約書についての理解にも大きな差が出ます。しかも、多くのフランチャイズ加盟店を統一的に扱うために、加盟希望者の要求によってフランチャイズ契約が変更されることは極めてまれです。

従って、本部と加盟店との無用なトラブルを避けるためには、まず、加盟希望者に対して当該フランチャイズ契約の内容を十分検討する機会を与える必要があります。そこで、中小小売商業振興法は、フランチャイズ契約締結前に、当該フランチャイズ・システムに関する一定の重要事項を記載した書面を加盟希望者に示して説明することを、本部に義務づけています(同法11条以下)。この書面のことを「法定開示書面」といいます。本部によっては、「フランチャイズ契約の要点と解説」「フランチャイズ加盟契約のご案内」などと呼んでいます。法定開示書面についてご紹介いたします。

記事提供:フランチャイズタイムズジャパン

FC(フランチャイズ)本部の実態やフランチャイズビジネスの現状は、フランチャイズ加盟希望者にとって第一に知りたい情報です。そこで、法定開示書面には、まず、フランチャイズ本部の企業としての現状が書かれます。

具体的には、本部の資本金、主要株主、主要取引銀行、沿革、役員一覧、直近3年間の貸借対照表や損益計算書、店舗数の増減、訴訟件数などが書かれます。

次に、法廷記事書面には、フランチャイズ契約書の要点が書かれます。具体的には、売上予測の有無、オープンアカウント制度の採否、商品の販売条件、解除事由、加盟金や保証金の内容、テリトリー権の有無、競業禁止義務や守秘義務の有無、違約金支払義務の有無などが書かれます。 フランチャイズ契約書は抽象的な文言で書かれますが、法定開示書面はできるだけ平易な言葉で具体的に書かれることが望ましいと言えます。

法定開示書面に沿って十分説明されれば、そのフランチャイズ本部の概要やフランチャイズ契約の重要事項について検討するべき情報を入手することができます。

ですから、加盟希望者にとって法定開示書面は非常に重要な情報源です。そこで、法定開示書面の交付を促進するために、行政(経済産業省)は、本部に対して、法定開示書面の有無や交付状況についての「報告」を求めることができます。もし、フランチャイズ本部が法定開示書面を作成していなかったならば、法定開示書面を作成して交付するようにと「勧告」することができ、その本部が勧告に従わなかった場合、行政は、その本部の名称を「公表」することができます。

従来の経済産業省の対応は決して厳しいものではありませんでした。しかし、最近は、フランチャイズ本部とフランチャイズ加盟店との個別の事案にも踏み込んだ詳細な調査を実施しています。では、本部は、加盟希望者に対して、どのようなタイミングで法定開示書面を交付すべきでしょうか。

法定開示書面は加盟を検討するための資料ですから、少なくとも加盟契約締結の1~2週間前までに交付して説明する必要があります。その説明に際しては、単に法定開示書面に書かれた文字をなぞるだけではなく、具体例を示して説明するように心がけてください。この説明を怠ると、本部が加盟店から損害賠償を請求される危険すら出てきます。交付はしてもほとんど説明せずに法定開示書面の受領印だけ押させる本部もありますが、これでは法定開示書面を交付する意味がありません。このように、法定開示書面の作成・交付は現在のフランチャイズ本部には不可欠の責務と言えます。

なお、Webサイト「ザ・フランチャイズ(http://frn.jfa-fc.or.jp/)」では主要本部の法定開示書面が公開されていますので、加盟希望者も本部担当者も参考にしてください。

神田 孝(かんだ・たかし) - 弁護士 -

弁護士法人心斎橋パートナーズ代表社員

チェーンビジネス法務を専門とし、FC(フランチャイズ)チェーン・レギュラーチェーンの顧問を多く務める。

大阪弁護士会所属。(社)中小企業診断協会東京支部フランチャイズ研究会特別会員。

(社)日本フランチャイズチェーン協会講師。