免税事業者とは?独立前に必ず知っておきたい消費税の基礎知識

最終更新日:2020年12月17日

免税事業者(非課税事業者)とは何かご存じでしょうか?

こちらの記事では、消費税のおさらいをはじめ、免税事業者の基礎知識を詳しくご紹介します。消費税の請求ができるのか、インボイス制度による影響など、さまざまな疑問もここで解決!

特に、免税事業者に該当しやすい個人事業主でのフランチャイズ開業を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

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目次

まずは、消費税のおさらい

免税事業者とは

免税事業者の要件

免税事業者の個人事業主も消費税を請求できる?

インボイス制度による影響は?

課税事業者を選択したほうが良い場合もある

免税事業者以外の知識も身につけて正しい判断を!

まずは、消費税のおさらい

免税事業者とは何かを解説する前に、まずは消費税のおさらいをしましょう。

消費税とは、商品やサービスの購入または利用に対して公平にかかる間接税です。
生産や流通の過程において販売価格に上乗せされていき、消費者が負担し事業者が納付する仕組みとなっています。

ご存知の通り、2019年10月1日から消費税が引き上げとなり、同時に軽減税率もスタートしています。
また、消費税には国税である消費税と都道府県税である地方消費税が含まれており、合わせて10%もしくは8.0%となっています。それぞれの割合は以下の通りです。

項目 標準税率 軽減税率
消費税率 7.8% 6.24%
地方消費税率 2.2% 1.76%
合計 10.0% 8.0%

免税事業者とは

免税事業者とは、消費税の納税義務がない事業者、いわゆる非課税事業者のことです。

基本的に消費税は事業者が消費者から預かり、国や地方に納めることが義務付けられていますが、一定の条件を満たすことで消費税の納税が免除されます。
比較的会社の規模や売上が小さい事業者が該当することが多いです。

一方、消費税の納税義務がある事業者は「課税事業者」と呼ばれています。

免税事業者の要件

税事業者の要件は、国税庁にて「課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者」と定められています。

では具体的にどのような内容となっているのか、基準期間・特定期間・課税売上高に分けて詳しく解説します。

引用:国税庁ホームページ「No.6501 納税義務の免除」

基準期間

基準期間とは、納税義務の判定基準となる期間のことです。
下記期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、免税事業者に該当します。

  • 個人事業主…前々年
  • 法人…前々事業年度

と個人事業主と法人では基準期間が異なるため、注意が必要です。

ちなみに、個人事業主の場合は12月が年度締め、法人の場合は任意(ほとんどの場合は3月)となっています。

特定期間

特定期間とは、課税売上高を計算する一定の期間のことで、

  • 個人事業主…前年の1月1日から6月30日までの期間
  • 法人…前事業年度開始日から6ヵ月

と個人事業主と法人でそれぞれ定められています。

個人事業主の場合は前々年、法人の場合は前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下であれば免税事業者となりますが、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合には課税事業者となります。

また、特定期間における課税売上高に関しては、給与などの支払い金額でも判定することが可能です。

課税売上高

課税売上高とは、消費税の課税対象となる取り引きの売上高です。

海外への輸出など免税取引や返品・値引き・割戻しなどの金額を差し引いた税抜きの金額となります。

日本国内で事業者が対価を得て行う取り引きはほとんど課税の対象となり、原稿料や印税、講演料、出演料、講師謝金、インターネットによるサイドビジネス収入なども含まれます。

一方で、土地の売却や住宅家賃、社会保険診療報酬など、消費税の非課税取引に分類される収入は除外される点もしっかり覚えておきましょう。

新規開業時はどうなる?

先ほどお伝えしたように、個人事業主の場合は前々年、法人の場合は前々事業年度が基準期間です。

つまり、開業から2年間は課税売上高に該当しないため、新規開業時は原則として納税義務がないということになります、

ただし、課税売上高が設立2年目の特定期間中に1,000万円を超えた場合は納税義務が発生してしまうため注意が必要です。

加えて、事業年度の開始日における資本金・出資金が1,000万円以上ある場合や、特定新規設立法人(※)に当てはまる場合は納税義務の免除がないため、設立一期目から消費税を納税しなくてはいけません。

(※)…基準期間がなく、事業年度の開始日において資本金・出資金1,000万円未満の法人のうち、新規設立法人が他の者により株式総数の50%以上支配されており、さらにその他の者と、一定の特殊な関係にある法人いずれかの基準期間相当の課税売上高が5億円を超えている法人。

免税事業者の個人事業主も消費税を請求できる?

「免税事業者には納税の義務がない=消費税の請求ができない」と考える方もいらっしゃると思いますが、免税事業者の個人事業主であっても消費税の請求は可能です。

免税事業者であっても仕入れの際には取引先に消費税を支払うことになるので、商品やサービスの価格に消費税を上乗せずに販売すれば、その分の消費税を自社で負担することになってしまいます。

なお、消費税が10%に引き上げになったタイミングで「区分記載請求書保存方式」が導入されています。
これにより、税率が8%のものと10%のものをそれぞれ分けて請求書に記載する必要があるので注意が必要です。

インボイス制度による影響は?

2023年10月1日より、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として、「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」が導入されます。

適格請求書とは売手が買手に対して適用税率や消費税額などを正確に伝えるためのもので、交付できるのは適格請求書発行事業者のみです。

適格請求書発行事業者は課税事業者でなければ登録できないため、免税事業者が発行した請求書は仕入額控除の対象にならないということになります。

そのため課税事業者が免税事業者と取り引きをする場合、消費税込みの支払いを行っても控除ができず、自社の課税対象に含まれてしまうという影響がでてきます。

このことから、免税事業者においてはインボイス制度が始まることで課税事業者からの依頼が減る、仕入価格の値下げを要求されるなどの影響も考えられるため、課税売上高が1,000万以下でも課税事業者として登録するかどうかを検討しなくてはならないかもしれません。

課税事業者を選択したほうが良い場合もある

消費税の請求ができてさらに消費税の納税が免除される免税事業者は、預かった消費税が利益となるため、課税事業者より有利なイメージがありますが、事業者によっては課税事業者を選択したほうが良い場合もあります。

それは、「支払った消費税が預かった消費税より高い事業者」で、このような場合は多く支払った消費税の還付を受けられる可能性があるからです。

具体的には輸出業者や開業時の設備投資や仕入れなどが多く課税売上が少なくなる場合、課税事業者を選択したほうが良いと言われています。

輸出業の場合、国内で仕入れた商品には消費税が含まれますが、海外への輸出は免税取引となるため、支払った消費税分の還付を受けることが可能です。
また、開業時の設備投資や仕入れに関しても預かった消費税より高くなる可能性があることから、還付を受けるために課税事業者を選択するというケースもあります。

どちらを選ぶにしても、経営状況などをしっかり見極めたうえで慎重に判断することをおすすめします。

申請すれば免税事業者から課税事業者になれる

基準期間の課税売上高が1,000万円以上の場合は課税事業者となりますが、申請すれば免税事業者から課税事業者になることも可能です。

課税事業者となるには、納税地を所轄する税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。
適用したい課税期間の、開始日前日までに提出することが定められています。

この手続きを行った場合、免税事業者の要件を満たしていても2年間は免税事業者に戻ることができないため注意しましょう。

個人事業主の消費税の計算方法

個人事業主の消費税の計算方法には、「一般課税(原則課税)」と「簡易課税」があります。
それぞれ詳しくご紹介します。

一般課税(原則課税)

一般課税(原則課税)とは、売上にかかる消費税から仕入れにかかった消費税を差し引いて、消費税の納付金額を算出する計算方法です。

以下の計算式で求めることができます。

消費税の納付金額 = 売上の消費税額 - 仕入れの消費税額

簡易課税

簡易課税とは、業種ごとに設定された「みなし仕入率」を課税売上額に掛けた金額を、課税仕入れ等に係る消費税額とみなして消費税の納付金額を算出する計算方法です。
基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合は、この計算方法を利用できます。

消費税の納付金額 = 課税売上額 - (課税売上額 × みなし仕入率)

また、業種ごとのみなし仕入れ率は以下の通りです。

事業区分 該当事業 みなし仕入率
第1種事業 卸売業 90%
第2種事業 小売業、農林漁業 80%
第3種事業 農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、建築業、製造業など 70%
第4種事業 飲食店業など 60%
第5種事業 運輸・通信業、金融・保険業、サービス業 50%
第6種事業 不動産業 40%

引用:国税庁ホームページ「消費税のしくみ」

免税事業者以外の知識も身につけて正しい判断を!

消費税の納税が免除される免税事業者は、個人事業主など小規模な事業を営む方にとって消費税や申告事務などの負担を減らせる魅力的な制度です。

ですが、2023年にインボイス制度が始まることで免税事業者に大きな影響がでることも忘れてはいけません。
また、事業者の業種や状況によっては課税事業者を選ぶほうが良いケースもあります。

免税事業者だけでなく、課税事業者やインボイス制度などもしっかり理解したうえで選択するよう心がけましょう。

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公開日:2019年12月26日