法定福利費とは?福利厚生費との違いは?基礎知識や計算方法などまとめてご紹介!

最終更新日:2020年12月17日

会社経営で発生する費用は数多くありますが、なかでも「法定福利費」は経営者がきちんと押さえておきたいポイントです。ほぼ確実に発生する費用であり、事業計画の作成時にも必要になる知識なので、経営者を目指す方はこれを機に正しく理解しておく必要があります。

今回は法定福利費の概要に加えて、計算方法や社会保険の種類、福利厚生費との違いなどをまとめたので、ぜひ最後までチェックしてみてください。

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目次

法定福利費とは?

法定福利費の計算方法

法定福利費の算出時には、常に最新の情報を

法定福利費とは?

法定福利費とは、法律によって規定された福利厚生費に係る費用のこと。この法定福利費に該当する費用については、会計上では「法定福利費」の勘定科目で処理され、損益計算書上では「販売費及び一般管理費」の部に計上されることになります。

では、具体的にはどのような費用が法定福利費に該当するのでしょうか。代表的なものとしては、健康保険料をはじめとした社会保険料や、労働保険料の会社負担分が挙げられます。

これらの保険料は、日本国内では従業員・企業が決められた割合分を負担するルールになっており、このうち企業の負担分が法定福利費に該当します。ちなみに、従業員の負担分については企業が給与から天引きし、「預り金勘定」の科目で会計処理をする必要があります。

  • 勘定科目…企業の会計時に用いられる、収支の分類項目のこと。
  • 社会保険…健康保険や介護保険などの「公的医療保険制度」と、厚生年金保険などの「公的年金制度」を合わせたもの
  • 労働保険…労災保険と雇用保険のこと。広義では社会保険の一部に含まれる。
  • 預り金勘定… 税金支払い等に用いられる、従業員などから一時的に預かったお金を処理する勘定科目のこと。

法定福利費の算出はどんなときに必要?

法定福利費は企業の会計時に算出するものですが、実はそれ以外にも算出しておくべきタイミングがあります。それは、融資を目的として「事業計画書」を作成する際です。

従業員を雇用する企業では、法定福利費は人件費として必ず発生します。金融機関などの融資元からは、収支を細かくシミュレーションした事業計画が求められるため、売上原価などと同じく法定福利費も細かく算出しておかなくてはなりません。

とはいえ、将来の法定福利費を正確に予測することは非常に難しいので、一般的な事業計画書では概算の金額を計上します。ただし、概算値を実態により近づけるために、以下の点はしっかりと守ることが大切です。

  • 給与だけではなく、通勤手当も含めた形で法定福利費を計算する
  • 賞与がある場合は、その賞与も含めて法定福利費を計算する
  • 退職金は社会保険料の対象外なので、法定福利費の計算には含めない
  • 介護保険料の支払いは40歳以上が対象となるため、40歳未満・40歳以上の従業員の割合から法定福利費を調整する

なお、加入条件が設けられている影響で、アルバイト・パートのなかには社会保険に加入しない従業員も存在します。そのような従業員の法定福利費を計上すると、実態と大きくかけ離れた数値になってしまう恐れがあるので、アルバイト・パートの割合についても慎重に判断しておきましょう。

法定福利費の種類

法定福利費として計上される費用は、大きく以下の5種類に分けられます。種類ごとにそれぞれ特徴が異なるので、算出時のポイントと合わせて以下で詳しくチェックしていきましょう。

健康保険

ケガや病気、死亡などに対する制度である健康保険は、「医療保険」とも呼ばれている制度です。日本では国民皆保険制度が実施されているため、基本的にはすべての国民が健康保険に加入しています。

保険料については、企業と従業員が折半する形で負担するケースが一般的です。つまり、従業員の健康保険料の半額は、企業の法定福利費に含まれることになります。

ちなみに、自営業者や職を持っていない方に関しては、似たような制度の「国民健康保険」に加入し、本人の自費で保険料を負担します。

厚生年金保険

厚生年金保険は、社会保険に加入している会社員などが一様に加入する年金制度です。従業員をもつすべての企業に加入が義務付けられているので、一般的な企業ではほぼ確実に加入しなければなりません。

保険料については、健康保険と同じように企業と従業員が折半して支払います。

介護保険

介護保険は、老化や病気によって介護サービスが必要になったときに、その利用費用の一部を負担してもらえる保険制度です。40歳以上の従業員は強制加入となり、加入者の給与・年金から保険料が徴収されます。

この介護保険についても、企業・従業員の負担割合は折半となります。

労災保険

労災保険は、業務中・通勤中のケガや傷害、死亡などを保障する制度です。ほかにも災害に遭った労働者の社会復帰など、さまざまなケースが保障対象に含まれる制度であり、企業は強制的に加入させられることになります。

ここまでご紹介してきた制度とは違い、労災保険料はその全額が企業負担となるので注意しておきましょう。

雇用保険

雇用保険は、雇用の安定や促進を目的としてつくられた保険制度です。この雇用保険の加入者は、育児休業や介護休業、失業などの影響で収入が減ってしまった場合に、一定額の給付金を受けることができます。

保険料については企業・従業員の双方で負担しますが、健康保険のように折半する形ではありません。それぞれの負担率は年度ごとに見直しされているため、雇用保険料を算出する際には常に最新の情報をチェックしましょう。

法定福利費と福利厚生費の違いは?

法定福利費と似た言葉に、「福利厚生費」と呼ばれるものがあります。いずれも従業員の生活を充実させるための費用ですが、これらの費用には以下のような違いがあるため注意が必要です。

  • 法定福利費…法律で規定された、企業内の福利費のこと。
  • 福利厚生費…各企業の裁量に任されている、企業内の福利費のこと。

ここまでご紹介したように、法定福利費には社会保険料や労働保険料が含まれます。一方で、社員旅行や社員食堂などにかかる費用は福利厚生費に該当し、これらの福利の提供は法律で義務付けられているわけではありません。

ちなみに、法定福利費は基本的に非課税となりますが、福利厚生費のなかには課税対象に含まれる費用もあります。この点を正しく理解しておかないと、福利厚生を充実させる際に多くのコストが発生する恐れがあるので注意しておきましょう。

法定福利費の計算方法

最後に、法定福利費の計算方法について解説をしていきます。法定福利費を計算する際には、各社会保険の料率を用いる必要があるので、まずはその料率から簡単にご紹介していきましょう。

社会保険の種類 保険料率 企業負担分 従業員負担分
健康保険料 10.00% 5.00% 5.00%
厚生年金保険料 18.30% 9.15% 9.15%
介護保険料 1.79% 0.90% 0.90%
労災保険料 0.30% 0.30% なし
雇用保険料 0.90% 0.60% 0.30%

上記のうち「労災保険料」は、企業が営む事業内容によって異なります。そのため、厚生労働省が公開する保険料率表などを参考にしながら、自社に該当する料率をチェックしておくことが大切です。

では、次に法定福利費の計算方法を見ていきます。

法定福利費=(労務費)×(各社会保険料の企業負担分の料率)

上記の「労務費」とは、商品・サービスの製造に直接関わる給与・賞与・手当等の額のこと。つまり、販売費や一般管理費などの人件費は、法定福利費の計算式には用いられません。

法定福利費の計算式はシンプルですが、健康保険料・厚生年金保険料には上限金額が設けられているので注意が必要です。健康保険料は標準月額135.5万円、厚生年金保険料は標準月額60.5万円に達すると上限となるため、その点も加味したうえで慎重に計算しましょう。

法定福利費の算出時には、常に最新の情報を

一般的な企業であれば、法定福利費は必ず発生するコストです。会計時はもちろん、事業計画書の作成時にも算出をする必要があるので、今回ご紹介した計算方法はしっかりと覚えておきましょう。

また、税制改正の内容によっては、将来的に各社会保険料の料率が変更される可能性もあります。そのため、法定福利費を計算する際には、常に最新の情報を確認することが大切です。

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公開日:2020年10月20日