【勘定科目一覧】独立後に必須!勘定科目の基礎知識を学ぼう

最終更新日:2023年03月13日

独立して経営者になることを考えているのであれば、経理・会計に関する基礎知識は必須です。なかでも、日々の帳簿作りに関係する「勘定科目」は、独立前に必ず理解しておきたいポイントでしょう。

そこで今回は、勘定科目の一般的なルールや種類、注意点などをまとめました。勘定科目の一覧も紹介しているので、経理・会計に不安を抱えている方はぜひ最後までチェックしてみてください。

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目次

勘定科目とは

勘定科目一覧表

迷いやすい勘定科目

勘定科目をうまく活用して、誰が見ても分かる帳簿作りを

勘定科目とは

勘定科目とは、会社の日々の取引を記録するために用いる分類項目のこと。一般的な企業は日々さまざまな取引を行いますが、この取引で発生する現金の出入りを各勘定科目に分けておくことで、「何にいくら使ったのか?」や「いつどんな理由で現金が入ったのか?」をすぐに見返せるようになります。

ちなみに、法人税の確定申告では「勘定科目内訳明細書(※各勘定科目の明細のこと)」の提出が義務づけられているため、経営者を目指すのであれば勘定科目に関する知識は必須と言えます。

勘定科目の必要性

会社の経理に勘定科目が必要になる理由としては、主に以下の点が挙げられます。

  • 誰が帳簿に記録しても、各取引を同じように分類できるようにするため
  • 誰が帳簿を見ても、会社の取引実態が分かるようにするため
  • コスト削減や投資先の選定など、経営方針の判断材料にするため
  • 確定申告の際に税金を計算するため

前述の通り、法人には勘定科目内訳明細書の作成が義務づけられていますが、勘定科目の必要性はそれだけではありません。取引を項目ごとに分けておくと、後から見返したときに会社の実態をつかみやすくなる(=現状を分析しやすくなる)ので、勘定科目は企業にとっても重要なものとなります。

勘定科目は自由に設定できる

実は、勘定科目の名称に特別なルールは設けられていないため、会社内で自由に分類項目を設定できます。ただし、あまりにも個性的な分類項目を作ると、金融機関などの第三者が見たときに会社の実態が分かりづらくなるので、基本的には世間に浸透している分類項目を使うことが大切です。

ほかにも、勘定科目の設定時には以下の点を意識するようにしましょう。

  • 「雑費」があまりにも多い場合は、必要に応じて分類項目を作成して分かりやすくする
  • あるコストに関して分類する勘定科目を決めたら、以降はその勘定科目に分類する

勘定科目は、あくまでも企業の実態を分かりやすく整理するために使うものなので、担当者によって名称や分類のルールを変えることは避ける必要があります。

勘定科目一覧表

ここまで紹介した勘定科目は、大きく「資産・負債・純資産・収益・費用」の5つの項目に分けられます。では、それぞれの項目にどのようなものが該当するのか、以下で詳しく解説していきましょう。

資産に分類される勘定科目

将来的に会社の収益になる可能性があるものは、基本的に「資産」の項目に分類されます。もう少しイメージをつかみやすくするために、以下では実際に該当するものを一例としてまとめました。

資産に分類されるもの(勘定科目) 概要
現金 会社にある現金や、通貨代用証券(郵便小為替や他人振出小切手など)による取引を処理するための勘定科目。
預金 普通預金や定期預金など、金融機関の預金を処理するための勘定科目。一般的には、「普通預金」「定期預金」「当座預金」の3つに分けて処理を行う。
売掛金 商品・サービスの売上金のうち、まだ回収できていない現金のこと。
現金過不足 帳簿と実際の残高が合わなかったときに、一時的に使用する勘定科目のこと。原因を突き止めたら、現金過不足の計上分は正しい勘定科目へと分類しなおす。
受取手形 収益のうち、約束手形などの手形債権による取引を処理するための勘定科目。
貸倒引当金 回収できなくなる可能性がある売掛金や貸付金など、債権回収不能見込み額を処理するための勘定科目。
立替金 従業員や役員に代わって、会社が立て替えた現金(社会保険料など)を処理するための勘定科目。
未収金 有価証券や固定資産の売却など、本業以外で発生した未回収の現金を処理する勘定科目。ちなみに、本来の営業活動における未回収の現金は、上記の「売掛金」に計上するケースが一般的。
建物 店舗や事務所、工場をはじめ、事業用の建物を購入した際に使用される勘定科目。ほかにも、社宅や車庫、営業所などを取得した場合にもこの勘定科目が使われる。
土地 事業用の土地を取得した場合に使用される勘定科目。事業用の土地としては、例えば店舗や事務所、社宅を建てるために取得した土地などが挙げられる。
車両運搬具 トラックやフォークリフトをはじめ、事業用の自動車を取得した際に使用される勘定科目。事業用であれば、一般的な自動車の取得費についてもこの勘定科目に計上する。
機械装置 ブルドーザーなど、主に工場で使用する事業用の機械・装置を取得した際に使用する勘定科目。
出資金 株式会社以外の会社や、組合などへ出資した際に使用する勘定科目。有限会社や合同会社への出資金はもちろん、ゴルフ会員権や金融機関への出資金もこの勘定科目に計上する。
長期貸付金 長期にわたって回収される貸付金(回収期間が決算日の翌日から1年を超えるもの)を処理するための勘定科目。
開業費 広告宣伝費や通信費など、会社の設立時に発生した費用を処理するための勘定科目。

資産に該当する勘定科目は非常に多いですが、細かく仕訳をすることで取引の実態が分かりやすくなるので、できれば上記の勘定科目はしっかりと使うようにしましょう。

負債に分類される勘定科目

金融機関からの借入金など、将来的に返済の義務があるものは「負債」の項目に分類されます。では、具体的にどのようなものが該当するのか、以下で簡単に紹介していきましょう。

負債に分類されるもの(勘定科目) 概要
買掛金 受領した商品やサービスのうち、代金が未払いのものを計上するための勘定科目。
支払手形 商品やサービスを、約束手形などで購入した場合に使用される勘定科目。
未払金 商品以外のもの(有価証券や固定資産など)を仕入れ、その代金を支払っていない場合に使用する勘定科目。
預り金 社会保険料などを支払う目的で、役員や従業員、取引先などから一時的に預かった金額を処理するための勘定科目。預かった金額は、本人に代わって第三者に支払うか、もしくは後日返金することになる。
借入金 銀行などの金融機関から借り入れた資金を処理する勘定科目。支払い期限が決算日の翌日から1年未満の場合は「短期借入金」、1年を超える場合は「長期借入金」として処理をする。

上記の負債についても、貸借対照表では以下の2つに分けられているので合わせて覚えておきましょう。

  • 流動負債…買掛金や短期借入金など、流動的な負債のこと
  • 固定負債…長期借入金など、返済期日が長期に及ぶもの

上記を見て分かるように、同じ借入金でも短期借入金は流動負債、長期借入金は固定負債として取り扱うため注意が必要です。

純資産に分類される勘定科目

資本金や資本準備金をはじめ、事業の元手になる資金は「純資産」に分類されます。勘定科目の種類はそれほど多くありませんが、開業にかかわるものが多いため、特に独立を考えている方はしっかりとチェックしておきましょう。

純資産に分類されるもの(勘定科目) 概要
資本金 金融機関からの融資金など、開業時に運転資金として用意した資金を処理するための勘定科目。融資のほか、建物や土地、自動車などの現物出資分についてもこの勘定科目で処理を行う。
資本準備金 開業時に準備した自己資金のうち、資本金に含めなかった資金を処理するための勘定科目。
資本剰余金 資本金・資本準備金を切り崩した際に発生する「剰余金」を処理するための勘定科目。具体例としては、業績悪化後の自己株式の売却分や減資分などが挙げられる。
元入金 個人事業主の開業時に、支出した資金を計上するための勘定科目。
事業主貸・事業主借 個人事業主が事業用資金を個人の生活費に使用した場合は「事業主貸」、個人事業主がプライベートな資産を事業用資金に移した場合は「事業主借」で処理をする。

上記のうち「元入金」と「事業主貸・事業主借」の2つは、個人事業主のみが使用する勘定科目となります(法人は使用しない)。

収益に分類される勘定科目

事業による売り上げや、商品・サービスの販売によって得た収入は、基本的に「収益」の項目に分類されます。では、具体的にどのようなものが該当するのか、以下で簡単に紹介していきます。

収益に分類されるもの(勘定科目) 概要
売り上げ 商品やサービスの販売によって、収益・収入が発生した場合に使用するための勘定科目。
受取利息 普通預金・貸付金などの利息や利子を処理する勘定科目。ただし、債権によって発生した利息については、「有価証券利息」として処理をする企業も見受けられる。
受取配当金 受け取った配当金を処理するための勘定科目。具体的なものとしては、株式の配当金や投資信託の収益分配金などが挙げられる。
有価証券評価益・有価証券評価損 有価証券を保有している場合に、決算時に生じた評価差額を処理するための勘定科目。
雑収入 ほかの勘定科目に当てはまらない収益を処理するための勘定科目。補助金や奨励金など、本来の事業以外で得た収益(事業性と金額が高くないもの)を計上することが多い。

収益に分類される勘定科目はそれほど多くありませんが、経営手法によっては収益を細かく仕訳する必要があるので、各勘定科目の意味は正しく理解しておきましょう。

費用に分類される勘定科目

事業を行うために支払った金銭は、「費用」の項目に分類されます。一般的に、費用の項目には多くの勘定科目を用いるため、以下で一つずつ確認していきましょう。

費用に分類されるもの(勘定科目) 概要
仕入高 本来の事業に必要な商品・材料を仕入れた際に発生する、代金や運賃などを処理するための勘定科目。
期首商品棚卸高・期末商品棚卸高 前期末の棚卸資産を当期へ繰り越す場合は「期首商品棚卸高」、当期の在庫を翌期へ繰り越す場合は「期末商品棚卸高」に計上する。
給料手当 雇用契約に基づき、従業員に支払う基本給や諸手当、残業代などを処理するための勘定科目。
役員報酬 従業員以外の職務に支払う報酬を処理するための勘定科目。具体的には、取締役や監査役、理事などに支払う報酬が該当する。
外注費 社内の業務に関して、外部業者へ委託する場合に発生する費用を処理するための勘定科目。人材派遣サービスを利用した場合も、この勘定科目に計上をする。
交際費 事業の関係者に対する接待費や、お中元・お歳暮などの費用を処理するための勘定科目。
会議費 業務に関する打ち合わせ費用が発生した際に使用する勘定科目。
水道光熱費 事業所や営業所の電気代、水道代、ガス代を処理するための勘定科目。
福利厚生費 社員の健康診断費や慶弔費など、福利厚生の提供によって生じた費用を処理するための勘定科目。
広告宣伝費 不特定多数の消費者に対して、商品・サービスに関する販促活動を行った場合に使用する勘定科目。具体的なものとしては、広告掲載料やCM料、パンフレットの作製費などが該当する。
事務用品費 筆記用具や文房具、印刷用紙などの購入代を処理するための勘定科目。
通信費 社内で発生する電話料金や、インターネット通信料などを処理するための勘定科目。

費用の項目のなかには、仕訳に迷いやすい勘定科目がいくつかあります。後半でも解説しますが、特に交際費と会議費は間違いやすいポイントなので注意して仕訳作業を進めましょう。

迷いやすい勘定科目

ここまで紹介したように、一般的な企業ではさまざまな勘定科目を使用するため、なかには仕訳に迷うケースもあります。そこで以下では、特に迷いやすい3つの勘定科目について、主な判断基準や仕訳のポイントをまとめました。

雑費と消耗品費

数ある勘定科目のなかでも、「雑費」はさまざまな費用を処理できる勘定科目です。そのため、雑費だけで数多くの費用を計上する企業も見受けられますが、実はこれはありがちな失敗例。

基本的に雑費は、ほかの勘定科目に該当しない費用を計上するための勘定科目です。この点を誤解してほかの勘定科目に含まれるものを計上すると、会社や取引の実態が分かりづらくなるので注意しなければなりません。

なかでも特に注意しておきたいのは、「雑費」と「消耗品費」の違い。以下に該当する費用については、消耗品費の勘定科目で処理をすることが望ましいとされています。

  • 事業や業務において、繰り返し消費するものを購入した場合
  • 10万円未満の減価償却資産を取得した場合

誰が見ても分かりやすい帳簿を作成するには、可能な範囲で消耗品費として処理するものを増やし、「雑費に含めるものを減らすこと」が大切なポイントになります。

会議費と交際費

前述した「会議費」と「交際費」には、主に以下のような違いがあります。

  • 会議費…主に社内で行われた打ち合わせ費用のこと
  • 交際費…社外の事業関係者に対して、接待などを行う場合に発生する費用のこと

なお、上記の交際費に該当する場合であっても、1人あたりの費用が5,000円未満の場合は「会議費」として処理をするケースが一般的です。ちなみに、中小企業については交際費の上限が設けられており、年間で800万円までの計上しか認められていないため(※個人事業主は上限なし)、仕訳の際にはこの上限金額も意識しておきましょう。

固定資産

企業が保有する資産は、その特性によって以下の3つに大きく分けられています。

  • 有形固定資産…建物や土地など、形のある固定資産のこと。
  • 無形固定資産…出資金や貸付金など、形のない固定資産のこと。
  • 流動資産…現金や預金など、流動的な(すぐに現金に換えられる)資産のこと。

また、上記の固定資産に該当するものであっても、購入代金が10万円以下であれば基本的に「消耗品費」として処理をします。つまり、企業が資産を取得した際には、「固定資産と流動資産のどちらに該当するか?」や「固定資産と消耗品のどちらに該当するか?」を見極める必要があるので、上記の違いはきちんと理解しておきましょう。

勘定科目をうまく活用して、誰が見ても分かる帳簿作りを

勘定科目は自由に設定できますが、経理・会計を担当する従業員によってルールや基準が異なると、会計資料などから会社の実態をつかみづらくなります。そのため、基本的には本記事で紹介した勘定科目を用いて、「誰が見ても分かる形式」で経理・会計作業を進めることが大切です。

特に最後に紹介した「雑費・交際費・固定資産」は判断に迷いやすいポイントなので、判断基準を設けた後には社内でしっかりとルールを共有しましょう。

フランチャイズを探してみる

公開日:2020年11月12日