開業資金の返済期間は何年?返済期間の上限や注意点を紹介
最終更新日:2024年09月20日
開業資金を借り入れるときに、ちゃんと返済できるか不安を感じる人もいるでしょう。早く返済したいからと返済期間を短くしすぎると、のちのち計画通りに返済できず行き詰まってしまう場合もあります。この記事では開業資金の返済期間を決める際のポイントとともに開業資金の返済シュミレーションを紹介します。不安を抱えず開業資金の返済ができるように、返済期間を設定しましょう。
目次
開業資金の返済期間や金利はどのくらい?
開業資金を借り入れる際に事前におさえておきたい返済期間や融資限度額、金利、据置期間について紹介します。開業資金の借り入れを申し込む前に確認しておくと良い項目ですので、借り入れを検討している場合ははじめに確認しましょう。
開業資金の返済期間
返済期間は融資制度によって期間が異なるため、本記事では開業時の融資で代表的な、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」を例に紹介します。
新創業融資制度では設備資金は20年、運転資金は7年が返済期間の上限として定められています。通常の融資では設備資金10年以内、運転資金7年以内と定められ、設備資金の返済期間は優遇されています。
融資を締結する際には設備資金はおおよそ5~10年、運転資金はおおよそ5~7年の期間で設定されることが多いです。設備資金については、導入予定設備の償却期間に基づいて返済期間を設定されることもあります。
開業資金の融資限度額
「新創業融資制度」の場合、融資限度額は7200万円に設定されています。そのうち運転資金の融資限度額は4800万円です。
たとえば設備資金を7200万円借り入れると融資限度額に達するため、運転資金の借り入れはできません。また運転資金を融資限度額の7200万円借りることはできず、4800万円までしか借り入れができない仕組みです。
融資限度額は制度上の限度額であり、担保や連帯保証人の状況によって融資限度額を上限とし個別に融資可能額は変化します。無担保での融資の場合、300~700万円ほどが一般的な融資額です。
開業資金の金利
融資を受ける際の金利は市場動向に加え、担保の有無や融資期間によって変動します。参考に令和4年5月2日現在の日本政策金融公庫の新創業融資制度(無担保・無保証人)を確認すると、基準金利は2.01~2.80%と定められています。無担保・無保証人でありながら、ほかの融資制度に比べて低金利で融資を受けることができます。
日本政策金融公庫は政府系金融機関という立場であり、民間の金融機関に比べて、利益を追求する必要がないため、低金利での融資を行っているのです。
また新創業融資制度の場合、定められた要件に該当すると基準金利よりもさらに低利率の特別利率で融資を受けられます。事業内容が要件に該当するか確認してみると良いでしょう。
なお民間の金融機関から融資を受ける場合の金利相場はおおよそ1~10%台と日本政策金融公庫の金利よりも高い傾向です。
金利は固定金利と変動金利の2種類がありますが、融資の多くが固定金利を採用しています。また金利は常に変動する可能性があるので、融資検討先の最新の利率をチェックするようにしてください。
据置期間
据置期間とは元金の返済を行わずに利息のみを支払う期間のことです。元金と利息どちらも返済するのが一般的ですが、据置期間は開業時の資金繰りを考慮し利息のみを支払います。
日本政策金融公庫の新創業融資制度における据置期間は設備資金で最長2年、運転資金で最長1年の設定が可能と決められています。しかし最長2年の据置期間を認められることはほどんどなく、半年前後で設定されるケースが多いです。
また据置期間を設けることで開業当初の資金繰り負担は減少しますが、その分、据置期間終了後の返済に負担が大きくなります。
仮に返済期間が10年、据置期間を2年設けた場合、8年間で10年分の返済をしなくてはいけません。開業時の資金繰りだけでなく、中長期的な返済計画を立てた上で据置期間を設定するようにしましょう。
開業資金の返済期間はどのように決めるのか
開業資金の返済期間はどのように決定すれば良いか迷う方も多いでしょう。基本的には定められた返済期間内で、自身で決めるのが一般的です。しかし必ずしも希望する期間で審査が通るわけではなく、短い期間で設定されることもあります。一般的な返済期間は設備資金であれば5~10年、運転資金は5~7年です。
返済期間を決める際の注意点
返済期間は長いほうが月々の支払いが抑えられるのでキャッシュフロー上、良いと考えることもできますが、実は返済期間は長くすれば良いというわけではありません。借入額に対する返済が30%未満の場合、追加融資が受けられないケースもあるため、返済期間が長すぎるとデメリットになる可能性があります。
適切な返済期間を決めるために、まず毎月の利益はどの程度かを計算しましょう。たとえば月50万円の利益が出るからといって、全てを返済に充てることはできません。利益から事業の運転資金や生活費、税金を支払う必要があるので毎月の必要な金額を細かく確認してください。
また事業運営においては、突発的に資金が必要になるケースがあります。たとえば予期しない設備故障や追加の広告費、人材を雇用するための費用などです。これらのリスクに対処するため、手元に一定の資金を残しつつ、無理のない返済計画を立てましょう。
3つの借入目的別内訳
返済期間を決めるときに、借り入れ目的ごとに返済期間を検討する必要があります。開業時に借り入れる資金にはどのような種類があるか紹介します。資金ごとに返済期間の上限は異なるので、それぞれの特徴を理解し、用途に合わせた返済計画を立てましょう。
開業資金
開業資金とは事業を開始するにあたって必要な一時的な資金のことです。開業資金は大きく「運転資金」と「設備資金」に分かれます。融資を受ける際に事業計画(返済計画)をつくる必要がありますが、「運転資金」と「設備資金」の内訳は必ず明記しなくてはいけません。
また紹介した日本政策金融公庫の新創業融資制度で融資を受ける場合、開業資金と一口にまとめるのではなく、事業計画で必要になる資金を「運転資金」と「設備資金」に分けて考える必要があります。
運転資金
運転資金とは会社を経営する上で必要になる、いろいろな費用をまかなう資金のことです。
運転資金は具体的に以下のような項目があります。
- 人件費(給与・賞与など)
- テナント料や光熱費、通信費など
- 広告宣伝費
- 商品の仕入代金
- ペンやノートなど消耗品費
- ホームページ運営・管理などを外部に委託するときの外注費用
- 税金・社会保険料など
運営資金は継続的に発生する費用のため、先々を見据えて必要な運転資金を計算し、資金を確保しておくことが重要なポイントです。
設備資金
設備資金とは事業を運営するために必要な設備を購入するための資金のことです。
設備資金は具体的に以下のような項目があります。
- 土地や建物、車両の購入費
- パソコン、OA機器、事務用品などの購入費用
- ホームページ作成や電話・FAX回線などの設置費用
- 賃貸物件の入居資金(家賃は除く)
- 事業所や店舗の改修改装費用
注意が必要なのは開業時に事業所や店舗を借りる場合の入居資金です。入居に関わる初期費用は設備資金に該当しますが、入居後に継続的に発生する家賃は運転資金に該当します。
また無形資産のソフトウェアや特許、商標権などは設備資金に該当することを覚えておきましょう。
開業資金の返済方法
借り入れた資金の返済期間を決めるときに重要なポイントの一つが返済方法です。返済方法によって、月々の返済額や金利の支払額が異なります。それぞれの返済方法の特徴を理解し、自社に合った返済方法を選びましょう。
元利均等返済
一つ目の返済方法は元利均等返済です。元利均等返済は借り入れた資金と借り入れた資金に対して発生する利息を足して均等に返済する返済方法です。その都度の返済額が一定になります。
元利均等返済は毎月の返済額が一定で、毎月の資金計画が立てやすい点がメリットです。その反面、返済初期は返済金額に占める利息の割合が大きく、元金部分の減少幅は次に紹介する元金均等返済に比べ遅くなります。そのため、元利均等返済に比べて、トータルでの支払い額は大きくなる点がデメリットです。
また一部の融資では変動金利を選ぶことができます。変動金利の場合、将来の金利上昇により利息の支払い額が想定よりも大きくなり、借入時に予定していた総返済額を上回るかもしれません。元金均等返済も同様のリスクはありますが、元金部分の減少が遅い元利均等返済の方が負担が大きいです。
元金均等返済
もう一つの返済方法は元金均等返済で、元金のみを毎月均等に返済していきます。毎月の返済額は均等に支払う元金と利息を足した額になります。
元金均等返済は返済初期は元金に上乗せされる利息の額が大きく、返済額が大きくなるのがデメリットです。開業したての返済初期は事業が不安定なことが多く、返済額が事業運営の重荷になるかもしれません。メリットは元利均等返済に比べて、返済額に占める元金の割合が大きく、総支払額は元利均等返済に比べて少ない点が挙げられます。
開業資金の返済期間シミュレーション
開業資金の返済期間を決めるにあたって、日本政策金融公庫の事業資金用 返済シミュレーションの活用をおすすめします。
返済シュミレーションを活用し、開業資金500万円を借り入れた際の毎月の返済額を比較してみましょう。同額の融資を受ける場合でも、返済方法や返済期間によって総返済額は大きく変化します。返済シュミレーションを活用して、自社の事業計画に見合った返済期間を設定しましょう。
シュミレーション条件①
借入金額500万円を金利2.1%で借り入れ5年間で返済する場合の比較
返済方法 | 元利均等返済 | 元金均等返済 |
返済総額 | 5,271,467円 | 5,266,875円 |
うち利息 | 271,467円 | 266,875円 |
1年目の総返済額 | 1,054,296円 | 1,095,376円 |
元利均等返済の場合、1年目の総返済額は低いものの、返済総額、支払い利息は元金均等返済に比べて高くなっています。
シュミレーション条件②
借入金額500万円を金利2.1%で借り入れ、元利均等返済にて5年間、10年間それぞれの期間で返済する場合の比較
返済方法 | 返済期間5年 | 返済期間10年 |
返済総額 | 5,271,467円 | 5,547,716円 |
うち利息 | 271,467円 | 547,716円 |
毎年の返済額 | 1,054,296円 | 554,772円 |
返済期間10年の場合、毎年の返済額は低いものの支払い利息は実に2倍に膨らんでいます。返済期間を延ばすことで月々の負担は抑えられますが、トータルでの支払い額では負担が大きくなります。
余裕をもった返済期間を設定しよう
開業資金の返済期間を決めるときに考慮すべきポイントが多いと感じた人も多いでしょう。せっかく融資を受けられても、余裕を持った返済計画を立てなければ資金がショートして、事業が立ち行かなくなってしまいます。必要な資金計画をしっかりと立て、余裕を持った返済期間を設定し、事業を軌道に乗せていきましょう。
公開日:2022年05月30日