アルバイトの雇用にも社会保険は必要?基礎知識から手続き方法まで徹底解説!

最終更新日:2020年12月17日

アルバイトを雇ったときに、「社会保険に加入する必要はあるの?」と悩む経営者も多く見られます。経営者を目指す以上、社会保険に関する知識は今後常に求められるため、曖昧な状態のまま放置しておくべきではありません。

そこで今回は、雇用保険をはじめとした社会保険に関して、経営者が押さえたい基礎知識を徹底的にまとめました。社会保険に関する注意点もまとめているので、自信のない方はぜひ最後までチェックしていきましょう。

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目次

そもそも社会保険とは?

アルバイトが社会保険に加入するための条件

アルバイトも社会保険への加入は必要?

アルバイトの社会保険加入手続き

アルバイトの社会保険加入における注意点

正しい知識を身につけた上で、必要に応じて加入手続きを

そもそも社会保険とは?

経営者を目指す方や現経営者にとって、社会保険に関する知識は必須と言えます。そこでまずは、「労働保険」と「社会保険」の2つに分けて、社会保険の概要や定義を簡単にまとめました。

労働保険

労働保険とは、主に労働者の雇用や生活を守るために整備された保険制度のこと。従業員を1人でも雇う場合は、事業主に加入手続きや保険料の納付が義務付けられます。

では、労働保険に該当する「雇用保険」と「労災保険」の2つについて、以下で詳しく解説をしていきましょう。

雇用保険

労働保険のうち、雇用の継続が困難になった労働者を支援するものを「雇用保険」と言います。雇用保険が適用されると、例えば被保険者(労働者)が失業や介護などの影響で働けなくなった場合に、収入の減少分を補てんする形で一定の支援金が支給されます。

また、雇用保険は雇用機会の増大や雇用構造の改善も目的とした制度であるため、要件を満たせば事業所側も「雇用を継続するための支援金」を受け取れます。

労災保険

労災保険は、業務によるケガや病気、障害などに対して、必要な保険給付を行う制度です。基本的にはケガや病気の療養費を補償する制度ですが、被保険者が業務によって死亡した場合には、遺族の生活を支援するための給付金も支払われます。

なお、原則として労災保険の対象者は労働者(従業員)となりますが、中小企業に該当する場合は「特別加入制度」を利用することによって、事業主本人も労災保険に加入できます。

社会保険

前述した雇用保険・労災保険は、広義の社会保険に含まれるものです。ただし、一般的に社会保険は「健康保険・介護保険・厚生年金保険」の3つを指すことが多いとされています。

では、これらの保険制度がどういったものなのか、各制度の概要や目的などを紹介していきましょう。

健康保険

健康保険は、年齢や性別を問わず国民全員に加入義務がある保険制度です。企業に勤める労働者とその家族に適用される保険ですが、個人事業主のように労働者として加入できない場合は、同様の制度である「国民健康保険」に加入することになります。

健康保険と聞くと、「ケガや病気の医療費が安くなる」というイメージがあるかもしれませんが、実は出産や死亡に対しても医療給付や手当金が支給されます。

介護保険

介護保険は、介護が必要な高齢者を社会全体で支える目的でつくられた、以下の3つを基本理念とする制度です。

  • 自立支援…単に介護をするだけではなく、高齢者の自立を積極的に支援する
  • 利用者本位…提供されるサービスに関して、利用者が選択できる形にする
  • 社会保険方式…負担と給付の関係性を明確にする

介護保険の被保険者は、65歳以上の第1号被保険者と、40~64歳の第2号被保険者に分けられています。いずれの被保険者も「要支援・要介護状態になること」がサービスを受ける要件になりますが、第2号被保険者は特定の原因(末期がんやリウマチなど)が認められた場合にのみ適用となります。

ちなみに、介護保険料は40歳以上から負担義務が発生するため、全ての労働者が支払うものではありません。

厚生年金保険

厚生年金保険は、企業に勤務する労働者が加入する公的年金制度です。労働者の給与から保険料が毎月天引きされる代わりに、将来的に一定額の年金を受け取れるような仕組みがとられています。

ちなみに、公的年金制度には大きく3つの種類があり、国民一人ひとりの働き方によって加入する制度が異なります。例えば、公務員や教職員は「共済年金」、それ以外の個人事業主などは「国民年金」に加入する形となるので、予備知識として合わせて覚えておきましょう。

アルバイトが社会保険に加入するための条件

ここからは、今回の本題である「アルバイトにおける社会保険」について解説していきます。まずは、アルバイトが各社会保険に加入する主な条件を見ていきましょう。

雇用保険

雇用形態に関わらず、以下に該当する従業員(アルバイト・パートを含む)は雇用保険に加入できます。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 31日以上の雇用見込みがあること

なお、上記に該当する従業員を雇用する場合、事業主側には雇用保険に加入させる義務が発生するので、新たに従業員を雇い入れるときには労働条件の確認を忘れないようにしましょう。

引用:厚生労働省「雇用保険に加入していますか」

労災保険

労災保険に関しては、特に加入条件は設けられていません。どのような労働条件・雇用形態であっても、全ての従業員が加入できるように手続きを済ませる必要があります。

ちなみに、労災保険は派遣労働者にも適用されますが、従業員の派遣サービスを利用する場合は派遣元の事業所が加入手続きを行います。

健康保険・厚生年金保険

健康保険・厚生年金保険の加入条件は、以下のように細かく設定されています。

  • 勤務時間・日数が、正社員の4分の3以上であること
  • 次の5つの条件を全て満たしていること

【1】週の所定労働時間が20時間以上である
【2】1ヵ月あたりの賃金が8.8万円以上である
【3】1年以上の雇用見込みがある
【4】勤務先の従業員が501名以上(厚生年金の被保険者数)である、もしくは地方公共団体に属する事業所に該当する
【5】学生でないこと(※夜間や定時制の学生は除く)

なお、社会保険への加入に関して、2分の1以上の労働者と事業者が合意していれば、上記【4】の条件は満たす必要がありません。

介護保険

介護保険の加入条件は、第1号被保険者もしくは第2号被保険者に該当することです。つまり、誕生日を迎えて40歳になった従業員や、40歳を超えてから新たに雇用された従業員は、介護保険への加入が可能となります。

アルバイトも社会保険への加入は必要?

ここまでは社会保険の概要や加入条件などを紹介しましたが、果たしてアルバイトも社会保険に加入させる必要はあるのでしょうか。結論から言うと、どのような雇用形態であっても条件を満たすのであれば、事業者は社会保険に加入させることが必須となります。

では、なぜ社会保険への加入が必要になるのか、その理由を以下で詳しく解説していきましょう。

雇用者としての義務だから

条件を満たした従業員を社会保険へ加入させることは、「雇用者としての義務」です。つまり、事業所として手続きをすることがルールとして定められているため、コストを削減したいからと言って未加入のまま放置することは許されません。

仮に加入条件を満たしているにも関わらず、その従業員を社会保険に加入させなかった場合は、罰則が科せられる恐れがあるので注意しておきましょう。

優良な人材確保にもつながるから

ここまで紹介した通り、社会保険は労働者の雇用や生活、健康を守るための制度です。そのため、社会保険をきちんと完備することは、求職者へのアピールにつながります。

一方で、社会保険が完備されていない企業では、そのほかの労働環境がどれだけ優れていても、安心して働き続けることができません。社会保険の完備は、結果的に優良な人材を確保することにつながるため、正社員を雇わない場合であっても必ず加入できる状況を整えておきましょう。

アルバイトの社会保険加入手続き

次からは、アルバイトの従業員を社会保険に加入させる手続きを紹介していきます。手続きの方法に関しては、実は正社員とアルバイトの間に大きな違いはありません。

どのような雇用形態であっても、基本的には以下の流れで手続きを済ませられるので、経営者を目指している方は開業前にしっかりとチェックしておきましょう。

雇用保険

雇用保険に加入する場合は、「雇用保険被保険者資格取得届」を管轄の公共職業安定所(ハローワーク)に提出します。期限は採用月の翌月10日までとなるので、忘れないように早めに準備を済ませておきましょう。

なお、書類作成時や手続きの際には、主に以下の情報が必要になります。

  • 1週間の所定労働時間
  • 労働契約期間の定めの有無
  • 前職の雇用保険被保険者番号
  • 従業員のマイナンバー

前職の雇用保険被保険者番号については、公共職業安定所で検索してもらうことが可能なので、もし分からない場合は気軽に相談をしてみましょう。

労災保険

労災保険の加入手続きでは、最初に従業員を雇用したタイミングで「保険関係成立届」と「概算保険料申告書」を管轄の労働基準監督署に提出します。労災保険は事業所単位での加入となるので、この手続きさえ行っておけば従業員ごとに申請をする必要はありません。

ただし、1年に1回は事業所側で申告・納付手続きをする必要があるので、加入後も忘れずに覚えておきましょう。

健康保険・厚生年金保険

健康保険・厚生年金保険に加入する場合は、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 厚生年金保険70歳以上被用者該当届」を管轄の年金事務所に提出します。基本的に添付書類は求められませんが、事実発生(加入条件を満たした時点)から5日以内に手続きを済ませる必要があるので要注意です。

また、加入者のマイナンバーと本人確認(運転免許証など)が必要になる点も、経営者がしっかりと覚えておきたいポイント。仮に手続きを済ませても、本人確認ができない状態では健康保険証を発行してもらえないため、加入する従業員側にも事前に伝えておきましょう。

介護保険

介護保険の加入手順は、上記の「健康保険・厚生年金保険」と同じです。つまり、健康保険・厚生年金保険・介護保険の加入手続きは、同時に済ませることができます。

ただし、健康保険組合に加入している企業については、年金事務所だけではなく組合に対する手続きも必要になる(※健康保険・厚生年金保険も同様)ので注意しておきましょう。

アルバイトの社会保険加入における注意点

アルバイトの従業員を社会保険へ加入させる際には、いくつか意識しておきたい注意点があります。そのなかでも、以下では経営者が特に押さえたい3つの注意点をまとめました。

加入手続きを怠らない

社会保険への加入は、アルバイトの希望や会社の都合などで勝手には決められません。前述したように、条件を満たす場合は加入が義務づけられるので、手間がかかるからと言って加入手続きを怠らないようにしましょう。

ちなみに、加入義務があるにも関わらず正しく加入させなかった場合は、事業者側に「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられる恐れがあります。

アルバイトの労働状況をしっかり把握する

当たり前のことですが、従業員の労働状況を把握しておかなければ、事業者側は「社会保険の加入条件を満たしているかどうか?」を判断できません。その結果、手続きの期限が切れてしまう恐れがあるので、各従業員の労働状況はしっかりと確認しておきましょう。

また、なかには従業員が社会保険への未加入を希望するケースも見られます。例えば、すでに国民健康保険に加入している従業員の場合は、社会保険に加入すると保険料の負担が増大するため、未加入を希望する可能性があります。

このようなケースでは、社会保険の加入条件を満たさないように労働日数・労働時間の調整が必要になることもあるので、経営者の方は注意しておきましょう。

アルバイトへの社会保険の説明を徹底する

社会保険の加入手続きでは、従業員側の協力も必要になります。例えば、マイナンバーや本人確認書類などがないと、スムーズに手続きを済ませられないので、従業員に対しては「社会保険の説明」を徹底することが大切です。

また、社会保険に関する情報をアルバイトに提供しておくと、「この職場はしっかりしているな」といった好印象も与えられます。つまり、優良な人材の確保や無用なトラブルの回避などにつながるので、社会保険について説明できるだけの知識は最低限身につけておきましょう。

正しい知識を身につけた上で、必要に応じて加入手続きを

従業員を1人でも雇って開業する場合、社会保険への加入は義務となります。コストはかかりますが、社会保険が完備されていないと優良な人材も集まりにくいので、社会保険の加入手続きは必ず済ませるようにしましょう。

また、アルバイトなどの従業員に対して十分な説明をするために、今回紹介した社会保険の概要や加入条件、手続きの方法の3つは、最低限理解しておくことが大切です。

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公開日:2020年11月12日