公務員の早期退職募集制度とは?退職金の相場や注意点を解説

最終更新日:2022年10月21日

終身雇用と年功序列によって支えられた「日本型雇用」が揺らぎ始めている現在、民間企業では早期退職の希望者を募る事例が多く見られるようになりました。早期退職制度によって、人件費の節約を図るとともに、硬直化した人事制度を改革しようとする取り組みとなっています。

こうした動きは民間に限った話ではなく、公務員でも始まっています。この記事では、国家公務員の早期退職募集制度を紹介し、退職金の相場や税金などの注意点を解説します。

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目次

国家公務員の早期退職募集制度とは?

公務員の早期退職金はいくらもらえる?

公務員の早期退職は税金に注意が必要

公務員が早期退職後の資金を作る方法5選

公務員の早期退職制度についてまとめ

国家公務員の早期退職募集制度とは?

国家公務員の早期退職募集制度とは?

国家公務員の早期退職者募集制度とは、2013年11月1日から開始された定年前に退職を希望する職員を募集する制度のことです。民間企業で広く実施されている早期希望退職制度の公務員版といえるものです。

バブル崩壊以降、民間会社の給与水準が低迷する中「公務員は民間に比べ優遇されている」という批判の声は根強く、官民のバランスを取るために採用されました。同時に公務員の人件費節約を実現するものでもあります。

対象者は勤続期間20年以上の職員で、定年前15年以内の者となっています。ただし、定年前6ヵ月以内の者は除きます。認定を受けると、退職金の割り増し優遇があります。

早期退職募集制度の手続き

早期退職募集制度の具体的な手続きは次のようになります。

まず、各省庁の大臣が募集対象者全員に募集実施要項を周知して募集を開始。募集実施要項には、年齢・職位・勤務部署などの対象範囲を特定する事項、募集の期間、募集する人数、退職すべき期日などが記載されています。

要項にもとづき応募が実施されます。応募に関しては職員の自発性に委ねられますので、上司などが関与することはできません。

続いて、各大臣による認定です。早期退職募集制度の認定は、特別な例を除いて原則認定とされています。

次に、認定された者に対して認定の通知(または不認定の通知)を行います。そこで、退職すべき期日が通知されます。

早期退職募集制度に認定された者は、指定された期日に退職します。同時に、退職手当が支給されることとなります。

公務員の早期退職金はいくらもらえる?

早期退職募集制度に認定されると、退職手当はいくらもらえるのでしょうか。退職手当の計算式は以下のとおりです。

退職手当額=退職時の俸給月額×支給率×調整率+調整額

国家公務員の退職手当については国家公務員退職手当法で定められていますが、早期退職募集制度に認定されると割り増しがあり(国家公務員退職手当法第5条の3)、定年までの残りの年数1年あたり3%加算されます。割り増しは最大15年×3%の45%まで認められます。

内閣人事局が発表した2020年度の「退職手当の支給状況」を見ると、一般の定年で支給された退職金が平均2,142万1,000円なのに対し、早期退職者は2,551万9,000円支給されていて、約20%増額されていることになります。ちなみに自己都合退職の場合は、299万4,000円です。

45歳で早期退職する場合

シミュレーションとして、大卒22歳で入庁し、45歳で早期退職募集制度の認定を受けた場合の退職金を試算してみましょう。

45歳退職となると定年まで15年あるので、基本給の割り増しが45%となります。勤続年数が23年となるので、退職金の支給率は29.6となります。仮に俸給月額が40万円だとすると、退職手当額は以下のようになります。

40万円×1.45×29.6=1,717万円

55歳で早期退職する場合

つづいて、55歳で早期退職した場合の退職金をシミュレーションします。条件は同じ大卒22歳入庁とします。勤続年数が33年のため、支給率は45.3となります。

定年まで5年なので割り増しは15%です。仮に俸給月額が56万円だとすると、退職手当額は以下のようになります。

56万円×1.15×45.3=2,917万3,200円

公務員の早期退職は税金に注意が必要

ここまで見てきたように、公務員が早期退職した場合まとまったお金が入ってきます。そこで注意が必要なのは、その退職金にかかる税金です。「思っていたよりも金額が低い」とならないためにも、退職金にかかる税金について把握しておきましょう。 

所得税

退職金には所得税が課税されます。所得税額の計算のために、まず課税退職所得を計算します。計算式は以下のようになります。

課税退職所得=(退職手当額-退職所得控除額)×1/2

1,000円未満は切り捨てとなります。退職所得控除については次のように求めることができます。

勤続年数が20年以下の場合

勤続年数×40万円

控除額が80万円未満の場合は80万円とされます。また、勤続年数の計算にあたって1年未満の端数は切上げます。

勤続年数が20年を超える場合

(勤続年数-20)×70万円+800万円

勤続20年を境に、上記の計算式に変わりますので注意しましょう。

課税退職所得金額別の税率・控除額

課税退職所得に以下の所得税率をかけて、所得税を求めます。

課税退職所得金額 税率 控除額
195万円未満 5%
195万円以上330万円未満 10% 97,500円
330万円以上695万円未満 20% 427,500円
695万円以上900万円未満 23% 636,000円
900万円以上1,800万円未満 33% 1,536,000円
1,800万円以上4,000万円未満 40% 2,796,000円
4,000万円以上 45% 4,796,000円

出典:人事院 1退職手当制度の概要

計算式は以下になります。

所得税額 =(課税退職所得金額×税率-控除額)×1.021

1.021がかけられているのは、復興特別所得税分です。

具体的な事例で試算してみましょう。勤続38年で退職手当額が2,000万円の場合、いくら所得税がかかるでしょうか。退職所得控除額を求めると、以下のようになります。

(38-20)×70万円+800万円=2,060万円

そうすると、退職手当額2,000万円よりも控除額の高くなるので、課税退職所得が0円となり所得税はかかりません。

つづいて、勤続38年で退職手当額が2,500万円のケースで試算します。退職所得控除額は同額の2,060万円です。課税退職所得金額を求めると次のようになります。

(2,500万円-2,060万円)×1/2=220万円

先述した所得税率・控除額の表に当てはめると、所得税額は次のようになります。

(220万円×10%-97,500円)×1.021=125,072.5円

1円未満は切捨てなので、復興特別所得税を含む所得税額は125,072円となりました。

住民税

退職金には住民税も課税されます。税率は市町村民税が6%、都道府県民税が4%、合わせて10%です。(東京都の場合、23区が特別区民税、市町村が市町村民税となります。税率は同一です。)

前節の事例で試算してみましょう。勤続38年で退職手当額が2,000万円の場合は課税退職所得が0円なので、住民税も非課税です。

勤続38年で退職手当額が2,500万円の場合は、課税退職所得が220万円ですので、以下のようになります。

市町村民税(特別区民税)=220万円×6%=132,000円
都道府県民税=220万円×4%=88,000円

合わせて、22万円です。

住民税は、前年の所得をもとに年額が決定され、これを6月から翌年5月までの間に月割りで徴収します。

上記の例のように、退職金には高額な税金がかかる場合があるため、実際手元に残る金額がいくらになるのかを事前に計算しておくと良いでしょう。

公務員が早期退職後の資金を作る方法5選

公務員が早期退職後の資金を作る方法5選

支給される退職金は、退職後の生活に役立てられることになりますが、退職金だけでは不安を感じる人もいるでしょう。特に老後は労働収入もなくなるため、一定の資産を築いておきたいと思うことは自然なことです。

公務員は原則として副業・兼業が禁止されているので、老後資金を給料以外で貯める方法は限られているといえます。

副業以外に公務員が資産形成できる方法を5点紹介します。なお、公務員でもできる副業については以下の記事を参照してください。

公務員でもできる副業8選!公務員が副業できない理由や解禁についても解説

1.つみたてNISA

つみたてNISAは少額から始められる長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度で、20年間税金がかかりません。日本在住で20歳以上であれば、つみたてNISAを利用できます。

つみたてNISAの対象商品は、金融庁が指定した金融商品に限定されています。販売手数料が無料のいわゆるノーロード商品で、信託報酬も一定水準以下、頻繁に分配金が支払われることがないなど条件に当てはまる公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)が対象商品です。

非課税投資枠は、新規投資額で毎年40万円が上限とされています。投資信託を保有している間に得た分配金と、売却して得た譲渡益については最長20年間課税されません。

金融庁が長期・積立・分散投資に適していると判断した金融商品が対象となっていますので、投資の初心者でも比較的安心して取り組むことができます。

2.iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(イデコ)は個人型確定拠出年金で、確定拠出年金法にもとづいて実施されている個人年金制度です。

自分が拠出した掛け金を自分で運用し、資産を形成する年金制度となっており、掛け金は65歳になるまで拠出可能です。積み立てた資産は60歳以降に老齢給付金として受け取ることができます。

iDeCoの特徴として、積立金額が全額所得控除の対象になることが挙げられます。掛け金は月々5,000円から始められ、掛金額を1,000円単位で自由に設定できます。

ただし、iDeCoはあくまでも私的年金制度ということになっているため、60歳になるまで受け取りができず、原則途中解約不可という制約があります。

3.個人年金保険

個人年金保険とは公的年金(国民年金、厚生年金など)以外の私的年金で、保険会社が扱う保険商品です。iDeCoと同じように自分で掛け金を拠出しますが、運用は保険会社が行います。保険商品なので、当然任意です。

個人年金保険の保険料は、一定の要件を満たせば、最高年間4万円の個人年金保険料控除が受けることができます。

個人年金保険は途中で解約すると、元本割れすることがあります。個人年金保険を解約したときに戻るお金を「解約返戻金」といいますが、多くの場合その金額はそれまで積み立ててきた金額を下回ってしまいますので気をつけましょう。

4.不動産賃貸

公務員でも可能な副業として有名なのが、不動産賃貸業です。不動産賃貸業とは賃貸アパートや賃貸マンションなどの収益物件を購入し、それを入居者に貸し出すことで家賃収入を得る方法です。不動産投資や賃貸経営とも呼ばれます。

公務員にとって、不動産賃貸業が副業にならないための条件が3つあります。

1.規模が5棟10室以下であること
2.家賃収入が年500万円未満であること
3.管理業務を管理会社に委託すること

上記の条件を超える場合でも、親から相続したなどやむをえない理由があれば、許可申請を提出して認められることがあります。

不動産賃貸業は、家賃収入を長期にわたって安定して得られるメリットがありますが、入居者が入らない空室リスクなど特有の経営上のリスクがありますので、十分な注意が必要です。

5.株式・FX・仮想通貨

株式・FX・仮想通貨などの金融投資は、当然公務員でも行うことは可能です。特に許可も必要ありません。

株式投資でも、つみたてNISAやiDeCoで紹介した投資信託ではなく個別銘柄への投資の場合は、ハイリスク・ハイリターンに当たる投資になりますので十分な注意が必要です。FX(外国為替証拠金取引)や仮想通貨は、株式投資以上にハイリスクであることを理解しておきましょう。

公務員の早期退職制度についてまとめ

以上、国家公務員の早期退職制度や早期退職前にできる資金生成について見てきました。国家公務員にならって、地方公務員でも早期退職制度が実施されています。

公務員の早期退職制度は、20年以上公務員として働き続けた人しか活用できない特別な制度です。一度きりの人生を謳歌するためにも、早期退職制度の活用をプラスにとらえて、第2の人生を前進していきましょう。

公開日:2022年10月26日

よくある質問

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