ふんどしとの出会いが人生を変えた。日本伝統の下着「ふんどし」を普及する日本ふんどし協会 中川ケイジさん(後編)

公開日:2017年04月24日
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前編の記事では、美容師から会社員への転職、そして中川さんが起業するきっかけになった「ふんどし」との出会いについてのお話でした。後編では、起業開始当時の話や中川さんが描くビジネスモデルについてご紹介します。

ふんどし普及のために協会設立&ふんどしの日制定

ふんどしで起業しよう。中川さんはそう思ってアイデアを練ってはいたものの、心配なことがあった。奥さんのことだ。ふんどしで起業するなんて話をしたら、絶対反対されるだろうと思っていたという。

しかし、中川さんには絶対いけるという確信、やりたいんだというぶれない気持ちがあった。そして満を持して奥さんへ告白をする。

答えは「やったらいいんじゃない」という意外なものだった。

インタビュー1

「言葉上は、『あんたは絶対サラリーマンに向いていない。起業したほうがいいと思う』というものでした。不安もあったでしょうが、手放しで応援してくれたことがありがたかったし、絶対成功させないといけないなと思いました」

奥さんの真意は分からない。精神的に楽になるなら好きなことをやってくれていたほうがいいという考えだったのかもしれない。それでも、彼女の言葉は中川さんにはありがたかっただろう。

一方、起業のための資金はほとんどなかった。当時まだ新婚で、引越し費用に貯めていた30万円しかなかった。奥さんは使っていいと言ってくれて、それを元手に事業を始める。

会社のほうは、会社員時代に仲間と作っていた会社が休眠状態だったので、そのまま使うことに。30万円のうち20万円はオンラインショップ立ち上げのために使った。

「会社はたまたまあったから使っただけで、別に個人事業主でもよかったんです。資金のほとんどはオンラインショップ立ち上げのために使いました」

そのほか、2月14日を「ふんどしの日」にするために日本記念日協会へ登録。その費用が7万円ほど。これで開業資金のほとんどを使ったことになる。それでも、中川さんにとっては最良の選択であったのだ。

月5枚の販売数からのスタート

おしゃれなデザインのふんどしブランド「SHAREFUN®(しゃれふん)」、そして日本ふんどし協会を同時に立ち上げた中川さん。しかし、順風満帆な船出とはいかなかったようだ。

2011年12月にSHAREFUN®(しゃれふん)のECサイトを立ち上げ、ふんどしの通信販売を開始。しかし、12月、1月は5枚ずつしか売れなかった。いや、5枚“も”売れたというべきかもしれない。

「買ってくれた人は2人くらいじゃないですかね(笑)。友だちも買ってくれませんでした。会社を辞めるときも、こういうことをやりますと挨拶に行ったんですが、みんな鼻で笑うか、やめておけと言うばかり。でも、おかげで吹っ切れましたね」

ふんどしの生産に関してはどうしていたのだろうか。受注生産ということではないので、ある程度生産して在庫を持たなければならない。そうなると、管理費もかかる。

「ふんどし工場の方によくしてもらいまして。半分はリスクを追ってくれたんです。分かりやすく言えば、売れたら払いますという感じです」

捨てる神あれば拾う神ありといったところだろうか。

ふんどし

▲「SHAREFUN®(しゃれふん)」には“オシャレなふんどし”という意味だけでなく、SHARE(共有する)とFUN(楽しみ)で、楽しみを共有するという意味も含まれている

SHAREFUN®(しゃれふん)とふんどし協会で描くビジネスモデルとは?

SHAREFUN®(しゃれふん)と同時に、ふんどし普及のために立ち上げた日本ふんどし協会。この2つでどのようなビジネスモデルを考えていたのだろうか。

「営業はしたくなかったので、どうやってメディアに取り上げられるか。文化的な側面もしっかり発信していきたい。その両方を叶えるための協会設立でした。2月14日をふんどしの日にする。ベストふんどしアワードを発表して、ふんどし普及に貢献している団体や芸能人の方を表彰する。そのような活動をプレスリリースとして発表すると、いろいろなメディアが取材にきてくれました」

インタビューカット

ただし、当初はおもしろおかしく、という感じだった。「そういうふんどしがあるんだ」という認知はされますが、実際に購入に至るまでにはいかないという感じだった。

「おもしろアイテムから健康というところに持っていくために、割と時間がかかっています。軌道に乗り始めたのは去年くらいから。」

それまでは、自分一人がぎりぎり生活ができる程度の収入だったという。その風向きが変わったのが、去年くらいのこと。女優や女性声優がふんどしを愛用していると公言したり、医師が健康にいいと語ったりすることで、ふんどし業界全体の認知が上がってきたのだ。

中川さんが思い描いていたことが、やっと形になってきた。しかし、それまでの間をよく我慢してきたなというのが正直な感想だ。普通なら、どこかで心が折れてやめてしまうかもしれない。

「今後さらに一気にハードルが下がる瞬間がきて、今までの苦労が吹っ飛ぶくらいふんどしがあっという間に広まると思っているんです。ふんどしがスタンダードになって、誰も言わなくなるくらい当たり前のものになると思っています」

そういう強い思いがあるから、これまで続けてこられたのだろう。やはり信念がなければいけない。

ふんどしはコミュニケーションツール

これまでの努力の成果はどうなのだろうか。月5枚の販売数から始まったSHAREFUN®(しゃれふん)だが、現在は月1,000枚ほどの販売数となっている。中川さん的にはまだまだという感じだが、これからはオンラインショップでの売り上げアップに注力していきたいと語る。

「僕は、ふんどしは下着というよりコミュニケーションツールだと思っているんです。ほとんどの人がふんどしを締めたことがないと思います。そこで、ふんどしを締める“体験”を広げていきたいという展望があります」

ふんどしは、布と紐、そして布用ボンドがあれば簡単にできるもの。そのメリットを活かし、去年から障がい者施設を巡り、不要になったTシャツや生地などを持ち寄ってもらい、ふんどしを作るワークショップを開催している。

「それは単なる下着を作るということではないんです。ふんどしを作って実際に締めてみるという初めての体験をしてもらうことが目的です。それと同時にふんどしをコミュニケーションツールとして活用し、体験した人の何かが変わるきっかけになってほしいと思っています。ふんどし人口の分母を増やす活動ですね」

ふんどしを下着ではなく、コミュニケーションツールとして見るという視点は新鮮だ。また、海外の人たちへのアプローチもしやすいのではと中川さんは思っているという。

「欧米人は、基本的に裸で寝るんですよね。下着をして寝るのは日本人くらい。下着の締め付けは、血の巡りが止まってしまうので、冷えや肥満の原因につながっています。そのために、下着をつけずに寝る、もしくは締め付けのないふんどしを締めて寝ることを普及していきたいと思っています」

実際、百貨店の催事場でイベントを行うと、海外の人が買っていくことも多いという。ふんどしの海外市場は、まだまだ未開。可能性は無限大と言ってもいいだろう。

人生100年の時代、30代40代でリセットしてもいい

最後に、独立起業を考えている人にメッセージをお願いすると、次のような答えが返ってきた。

「起業と言ってもなにも会社を立ち上げなくたっていいんです。オンラインショップだって、今なら0円でできます。とりあえず会社を辞めなくてもいい。土日だけやるといったスタンスでもいいと思います。そうすればいろいろ分かってくることがあります。難しいと思っていたことが意外と簡単だったり、その逆だったり」

中川さんは、美容師から営業という経歴を経て、ふんどしブランドおよび協会を立ち上げた。一見何も関係のないように見える経歴だが、役に立っていることはある。

「20代をがむしゃらにがんばったこと。それは自信につながっています。転職するときは、今までの経験を活かさないともったいないと考える人は多いと思いますが、今は人生100年の時代。30代40代で一度リセットしてもいいんじゃないかと思います。違う業界にいっても、結局は何かでつながっていてこれまでの経験が活かせることはたくさんあると思います」

中川さんは、現在都内から茨城県水戸市に移住し、奥さんと3歳の息子さんと暮らしている。都内に出てくるのは週1、2回。今の自分に必要なものの優先順を考えたときに、家族の時間が一番だと思ってそうしている。

「こういう働き方があるよということをもっと知ってもらいたい。そう思って、文章を書いたり、どこかでお話ししたりすることにも力を入れています」

自分のやりたくないことを排除した結果、ふんどしが残った。そのふんどしがふんどし業界だけではなく、中川さん自身も変えることとなった。

人生の岐路にたなびいていたのは、ふんどし。そのふんどしでビジネスチャンスを広げた中川さんを見ていると、人生というものは何が転機になるのか分からないと感じた。

もしかしたら、我々の周りにも中川さんにとってのふんどしのようなものがあるのかもしれない。気づくか気づかないか。それだけの違いなのだろう。

インタビューカット3

公式ウェブサイト
一般社団法人日本ふんどし協会

オンラインストア
SHAREFUN®(しゃれふん) 〜ONLINE SHOP〜

Facebookページ
中川ケイジ

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