コロナ禍で初年度売上5000万円!恵比寿脱サラ飲食経営者が語る“成功の秘訣”
最終更新日:2024年09月20日

「飲食業で独立したいけど、店舗を持つのは不安…」という方は少なくありません。特に先行き不透明なコロナ禍で、今から飲食業を始めて本当に大丈夫なのか心配な方も多いことでしょう。
そこで今回取材したのが、飲食店が苦境に立たされるコロナ禍において、初年度売上5000万円の居酒屋「amme」を経営する関 優司さんです。脱サラして恵比寿で店舗を構える関さんに、開業する際に必要な初期費用の調達方法や利益率、固定費などを詳細に語ってもらいました。
飲食業で脱サラを夢見る人も多いなか、「お金儲け目当てで飲食独立はやめたほうが良い」と関さんが語る理由は一体何なのでしょうか。サラリーマンと脱サラのメリット・デメリットについても詳しくお話を伺ったので、ぜひ参考にしてみてください。
厳しいサラリーマン時代を経て、脱サラし飲食店開業の道へ
コロナ禍において初年度の売り上げ5000万円の居酒屋を経営する関さんですが、もともとは飲食業と全く関係のない会社に勤めていたと話します。車が個人的な趣味だったこと、社会的地位が高い人々と出会えることが理由で、新卒でドイツの高級車メーカーの正規輸入販売店へ就職しました。
「1年目は鳴かず飛ばずでしたね。4月に入社してから、約3ヶ月は研修期間。7月くらいから接客ができるようになって、初めての成約が9月でした。厳しい店長の下で働いていたので、お店が19時に終わってから22時くらいまで接客のロールプレイを毎日していました」
この正規輸入販売店に約3年半勤めた後、大手人材派遣・人材紹介の会社へ転職しました。法人営業の仕事を担当し額面550万円ほどの収入がありましたが、やりがいを感じられず約半年で退職。その後、しばらくフリーター生活を送ることになります。
フリーター生活を送るなかで「やはり、自分は人と関わることが好き。そして、新しいスキルや自分の将来に役立つものを身につけたい」と感じ、Webマーケティングの会社へ転職。
そこで法人営業の仕事を約5年続けた頃、新卒で入社した正規輸入販売店のときに知り合った友人の佐藤さんから「お店をやらないか?」と声をかけられたことがきっかけで飲食店開業を決意します。
「チャレンジするなら若いうちが良い」とコロナ禍で飲食店を開業
-脱サラを決意できた大きな理由は何だったのでしょうか?
「50、60歳くらいになったら、最後の趣味として飲食店を経営したいと思っていました。佐藤から電話をもらったときは、飲食店を始めるにはとても大変なコロナ禍の時期でした。そのため、最初は何を言ってるのだろうと思ったのが正直なところです。
佐藤から話を聞くなかで「脱サラしよう」と最終的に思えた理由は、やはり飲食業は体力勝負なところもあるので、チャレンジするなら若いうちが良いと感じたこと。そして、緊急時代宣言が出た混乱のなかでビジネスを成立させることができれば、このバイタリティーや経験はどんな職種においても役立つだろうなと思ったことが挙げられます」
-Webマーケティングの会社を辞めてから、独立に向けてすぐにお店を立ち上げたのでしょうか?
「2020年の7月にWebマーケティングの会社を退職し、そこからまずは別の飲食店に勤務しました。約1年勤めて、2021年の8月に「自分のお店を持とう」と決意し株式会社志成NEXTを登記。2021年の9月に、ammeをオープンしました」
高額な開業資金が必要なイメージの飲食業…開店費用はどのように調達した?
-飲食店開業というと高額な開業資金が必要なイメージがありますが、どのように初期費用を調達しましたか?
「佐藤が運営している別の会社の子会社として登記しているので、資本金を入れたあとは銀行融資で開店費用を補いました。会社の借金という言い方をすれば、1500万円くらいでしょうか」
-開業当初は黒字でしたか?
「ありがたいことに、オープンからずっと黒字です」
-集客が上手くいったということでしょうか?
「集客自体は、大きく2つの成功要因があると考えています。一つ目は、私や佐藤の知人が来店してくれたり、その知人から別の知人を紹介してもらったりといったパターンです。
そしてもう一つが、Instagramです。SNSで認知され、新規のお客さんが来店するというケースが最近は多いです。いわゆる立地がいい路面店ではないので、SNSなどで認知を獲得できていることが集客につながっていると思います」
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集客に活かされたのは前職のIT知識と経験
-SNSの集客で工夫していることはありますか?
「定期的にきちんと投稿するなど、集客につなげられる体制が組めていたかと思います。また、使用するハッシュタグを自力で100個くらい調べて、そのなかから20個だけ選ぶといった地道な作業もしていました」
-前職の経験で役に立ったことはありますか?
「集客を成功させるために、YouTubeやグーグル検索を活用して、どうしたら一般の方々に知ってもらえる機会が増えるかたくさん勉強しました。
たとえば同じ内容についてグーグルで調べて記事をたくさん読むと、共通の内容がそれぞれの記事に書かれています。その共通項はほぼ間違いない情報なので、その中で得たヒントをどのようなロジックで攻めれば新規の方に目に触れる機会が増えるかをよく考えました。
もともとITの会社にいたので、そういった知識は役に立ったと感じています」
初年度売上5000万円!利益率や固定費を一挙公開
初年度は年商ベースで5000万円が見込まれるammeですが、このまま成果が上がっていけば関さんの年収は480万円程度になるとのこと。
-利益率について教えてください。
「飲食業は「家賃30%、原価食材費30%、人件費30%で利益率10%残れば良いほう」と言われますが、ammeは20〜25%を確保できている状況です。固定費で負担が最も大きいのは家賃です。恵比寿の13坪の物件で50万円ほどなので坪単価は3〜4万。この家賃で小規模な店舗なので、恵比寿で巨大店は運営したくないですね」
-お金の管理は自分で行っていますか?
「経理がいないので、自分たちで管理したり税理士に委託したりしています。家計簿のように1日の支出を全部書き出して自分たちで集計し、スプレッドシートなどで管理。一日の出入りの数字を打つだけで全て累計数が出てくる自動計算を採用しています」
「脱サラ」を夢見る人も多いなか、メリットやデメリットは
-関さんのように脱サラして飲食業を成功させたい方は多くいますが、現実問題として脱サラする上で最も辛かったことを教えてください。
「脱サラする上で、一番辛かったのは勉強です。すでに知識がある本当に好きなことや、サラリーマン時代に十分な知識、人脈を築いたことなどを除けば、独立し事業を始めるときは知らないことが9割で始まります。ゼロから情報収集や勉強をするのは、かなり負荷がかかることだと思います」
-脱サラとサラリーマンのメリット・デメリットについて教えてください。
「サラリーマンのメリットは、自分の時間を確保しやすいことだと思います。ただ、デメリットとしては、規模が大きくなればなるほど権限を委託されるまでに時間を要するので、機会損失につながりかねません。
脱サラのメリットは、全ての原体験が自分の財産になることでしょう。良いことも100%、悪いことも100%全て自分に降りかかってくる。その中で勉強になることや、人の温かさに触れる機会はすごく多いです」
-脱サラするデメリットはあると思いますか?
「デメリットは、どこかで不安な自分と戦わなければいけないことでしょうか。明日も今日の通り売れるかどうか誰にも分からないし、今月立てた売り上げが来月も同じぐらい立てられるのか分からない。現状で満足してしまう癖があると、衰退しか待っていません。誰も後ろからお尻を叩いてくれないので、怠けたい自分と戦う必要があります」
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「金儲け目当てで飲食独立はやめたほうが良い」と語る理由は?
-独立する理由として、主に「お金」と「やりがい」のどちらかを挙げる方が多いです。関さんは、お金とやりがいのどちらが大切だと思いますか?
「やりがいだと思っています。飲食業は利益率が高いわけではないので、正直なところビジネス向きではありません。独立して飲食店でかなりお金を稼げるようになるかというと、決してそんなことはありません。利益率だけを追い求めるのであれば、事業を何にするかも戦略を持って考えた方がいいと思います。
あとはやりがいでしか自分を引っ張ってくれるモチベーションはないと思うので、私は脱サラをするという観点においては、まず考えるべきはやりがいや自分の価値基準が重要かと考えています」
取材の最後に「自分がやりたいことは何なのか、その仕事をする上での報酬はお金だけなのかなど、自分の中で価値基準を見つめ直すことが大切。事業を始める環境を整える上で何が必要なのか、そしてその環境を自分で整えられるのかなどを洗い出して、クリアしなければいけない壁が明確になった場合は挑戦すべき」と話してくれた関さん。
実際に事業を始める前に自分の価値基準を見つめ直したり、課題を洗い出したりすることが成功には不可欠ということを教えてもらいました。飲食業で成功を夢見る方は、まずこの2点について整理するところから始めてみるのも良いかもしれませんね。
公開日:2022年08月12日