脱サラ失敗で1,500万円の負債!わずか1年で事業を見切った理由と「後悔しないお金の話」

最終更新日:2023年02月10日

「理想の生活を実現した」や「収入がアップした」など、キラキラとした成功話が目立つ脱サラ・独立。ですが、成功だけでなく、失敗した方が数多くいるのも現実です。

山岡 龍矢さんは、自身の撮影スタジオ開業で独立に挑戦したものの、たった1年でお店を閉めた“脱サラ失敗”の経験者。今回は、そんな山岡さんに独立までの経緯や失敗の理由、後悔など、これから脱サラに挑戦する方に役立つ情報を詳しく伺いました。

目次

カメラの技術は「見て覚えた」、20代のうちにフリーの仕事も経験

フランチャイズを選ばなかったのは「技術があれば何とかなる」と思ったから

大誤算!1,500万円借り入れる予定が、借りられたのはわずか500万円

最初に躓いた段階で「開業をやめれば良かった」と語る理由

黒字化することなく、1年間で事業を見切ることに

独立に失敗して実感する「資金面の見通し」の重要性

カメラの技術は「見て覚えた」、20代のうちにフリーの仕事も経験

50代で初めて独立し、現在はフリーのカメラマンとして活動している山岡さん。小学生の頃、小さなコンパクトカメラを父親に買ってもらったのがカメラマンになったきっかけと話します。

カメラマンとしての最初の仕事は何でしたか。

山岡さん「お寺に飾ってある像の写真撮影です。私の出身地である奈良県には仏像などの国宝が集まっており、多くのカメラマンがいます。それぞれのお寺はカメラマンと契約しているのですが、出版社の方から「阿弥陀如来像の特集をする」という話を受け、大学生の頃に写真撮影の仕事を始めました」

カメラの知識はどこで学んだのでしょうか。

山岡さん「撮影に行くたびに、ほかのカメラマンさんの撮影風景を見て学びました。風景などを撮りに行くと、アマチュアの方に混ざってプロの方もちらほらといたのです。プロのカメラマンと話をするなかで、絞りやISO感度をなんとなく覚えていきました」

大学卒業後は、就職してカメラマンをしていたのでしょうか。

山岡さん「はい。ただ、26歳までカメラ屋で働いていましたが、正社員とはいえアシスタントでは生活できませんから。27歳で退職し、自分でスタジオを作って始めました」

すでに20代のうちに起業を経験していたんですね。

山岡さん「起業というか事務所ですね。私とデザイナー、イラストレーターの何人かで集まって、顧客から写真の相談を引き受ける仕事をしていました。起業や事務所を構えているわけではなく、フリーランスの集まりという感じです」

フランチャイズを選ばなかったのは「技術があれば何とかなる」と思ったから

独立の際、フランチャイズに加盟する選択肢はなかったのでしょうか。

山岡さん「当初はフランチャイズにも興味があり、100件ほど話を聞きました。ハウススタジオが自分のイメージに近かったので、それを始めてみようかなと。しかし、実際に撮影の段階まで全て見せてもらったところ「このレベルでカメラマンが務まるのか」と驚き、フランチャイズはやめました」

カメラマンのレベルが予想よりも低かったと。

山岡さん「カメラマンの“カ”の字もないような人が、撮影をしていたのです。あのレベルでも務まるなら、自分は一人で独立できるのではと感じました」

実際にフランチャイズに加盟せず一人で独立してみて、どうでしたか。

山岡さん「今となっては、加盟すれば良かったです。確かに技術は私が上ですが、技術が高ければ営業が上手くいくわけではありませんから」

なるほど。では反対に、フランチャイズへ加盟しなくて良かった点や、フランチャイズの気をつけるべき点などは何かありますか。

山岡さん「加盟先を探しているとき、説明会で「この業界はブルーオーシャン(未開拓)です」という話をよく本部から聞きました。ただ、この言葉を鵜呑みにするのは少し危ないと思います。その事業に自信があればそんな抽象的な言葉ではなく、具体的な売り上げや実績を話してくれるのではないでしょうか」

大誤算!1,500万円借り入れる予定が、借りられたのはわずか500万円

大誤算!1,500万円借り入れる予定が、借りられたのはわずか500万円

スタジオはどのように始めたのでしょうか。

山岡さん「よく通っていた商業施設のテナントに空きが出たので、そこを出店先に選びました。もともと店内がつまらないレイアウトだったので、自分で全部指示をしてハウススタジオのようにしました」

開業資金がいくらかかったのか、そしてその資金をどのように集めたのかをお聞きしたいです。

山岡さん「事前に会計事務所に相談したところ、政策金融公庫からおおよそ1,500万円は借りられるだろうと話を聞いていました。自己資金が500万円ほどあったので、それぞれ合わせて2,000万円。1500万円もあればハウススタジオを始められるという話だったので、その予定で進めていました」

残りの500万円は、万が一のときに備えた費用ですね。

山岡さん「そうです。ですが、なぜかなかなか1,500万円が降りない。商業施設の改装リニューアルに合わせて急いでオープンする必要があったので、かなり焦りました。商業施設と私の契約書が完成したのが、改装リニューアルから1ヵ月過ぎてからのことです。

ようやくその契約書を政策金融公庫に渡して借り入れができるようになったのですが、借りられたのは1,500万円ではなく、たったの500万円でした」

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最初に躓いた段階で「開業をやめれば良かった」と語る理由

政策金融公庫から1,500万円を借りる予定が、なぜか500万円しか許可が出なかった山岡さん。思いがけない事態でハウススタジオを開業することになり、ここから大きな苦難が待ち構えています。

なぜ500万円しか借りられなかったのでしょうか。

山岡さん「はっきりと理由を言われたわけではありませんが、以前私が勤めていた会社の屋号が関係しているのではと思います。

その会社で私は役員をしていたのですが、その会社の屋号と、過去に問題を起こした全く無関係な某企業の名前が似ていました。それで「共謀して悪いことをしようとしている」と疑われたのではないかと」

それは災難でしたね。もしも山岡さんが過去に戻るとしたら、このときどんな対処をしていたでしょうか。

山岡さん「出店自体を取りやめていましたね。そもそも商業施設と私との契約書が出来るのが遅かったので、契約書が完成する前にオープンを取りやめていれば良かったのです。あのタイミングで辞めていれば、内装費の500万円だけで被害は済みました」

黒字化することなく、1年間で事業を見切ることに

トータルでどのくらい費用がかかったのかお聞きしたいです。

山岡さん「1年間でおおよそ1,300万円です。政策金融公庫から500万円しか借り入れできなかったので、銀行からさらに500万円を借りました。自己資金の500万円を合わせると1,500万円なので、余裕があるとは言えない状況でしょう」

業績はどうだったのでしょうか。

山岡さん「商業施設の下に食料品スーパーが入っていて、2階に私のハウススタジオがありました。この2階まで上がってくる人が全くおらず、集客はかなり厳しかったです。お客さんが少ないことは分かっていたのですが、「なんとかなるかな」と思って始めたことも後悔しています」

初月の売り上げはどのくらいでしたか。

山岡さん「本来であれば100万円は売り上げがあってもおかしくないですが、実際は40万円と少しでした。その40万円のなかから固定で30万円の出費が発生し、さらにスタッフの人件費が15万円。我ながら、よく遅れずに給料を払えたなと思いました」

黒字化はしましたか。

山岡さん「一度もしませんでした。そのため、1年間で見切ることにしました」

独立に失敗して実感する「資金面の見通し」の重要性

独立に失敗して実感する「資金面の見通し」の重要性

商業施設に自分のハウススタジオを出店したものの、経営の問題によりわずか1年で撤退。現在はフリーのカメラマンとして400万円~500万円の収入がある山岡さんですが、ハウススタジオ運営で発生した約1,500万円の借金を現在まだ返済中だそうです。

一番後悔していることを教えてください。

山岡さん「あの商業施設を選ばなければ良かったこと、そして写真館にこだわらなければ良かったこと。あとは、最初に躓いた段階で開業をやめれば良かったということですね。

政策金融公庫から借り入れできなかったことはもちろんですが、商業施設との契約書が遅れたことを見逃すべきではありませんでした。「契約書ができたら借り入れの資金を振り込んでくれる」という形では、契約書ができた後に借り入れ金額を減らされてしまうと、もうこちらは何も対処できませんから」

資金については、甘く考えないことが大切ですね。

山岡さん「そうですね。自己資金が全くない状態で独立するのは、基本的にはやめたほうが良いです。私の場合、もともと自己資金は1,000万円ありましたが、加盟するフランチャイズを探しているうちに500万円まで減ってしまったので。

やはり1,000万円程度は確実に貯めておいて、独立に挑戦するときはその1,000万円を使わないようにするのが良いです。1,000万円を確保した上で、政策金融公庫から借りた資金で思いっきり挑戦するのが良いのではないでしょうか」

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公開日:2022年12月16日

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