開業資金わずか2万円!未経験が「ほぼ無料」で農業で独立した理由とリアルな年収

最終更新日:2023年03月31日

都会を出て地方で農業を始めたい方は珍しくありませんが、「未経験者が農業を始めて失敗しないのか」や「開業資金はどのくらいかかるのか」など、さまざまな不安要素がつきまといます。

今回取材した中嶋 勇一郎さんは、アパレル業界という全くの異業種から農業に挑戦した人物。未経験から農業を始めたのに加えて、畑や農機具にほぼお金をかけず「実質0円」で独立したのが驚きの点です。

そんな中嶋さんに農家を始めるまでの流れやリアルな年収などをお伺いしたので、農業で脱サラ・独立したい方はぜひご覧ください。

目次

初期費用が高額なイメージの農業…“無料”で畑を調達できた理由

朝5時に起きて夜中まで働く日々…「とにかく営業」で販路を獲得

農業3年目で年商1,600万円!田舎で“安く農家を始めるコツ”とは

3年で10人に7人が脱落…過酷な農業を続けるための秘訣

農業で成功するためには「真面目すぎない」こと

脱サラしたい人は、まずは一歩踏み出すところから

初期費用が高額なイメージの農業…“無料”で畑を調達できた理由

これから農業を始めたい方にとって、最も気になるのが「何から始めるべきか」という点ではないでしょうか。農家として独立した中嶋さんは、もともとアパレル関係の仕事をしていた農業未経験者。一体どのように独立したのか、その流れを詳しく聞きました。

独立にあたり、何から始めましたか。

中嶋さん「最初に始めたのが、農業をする場所選びです。山梨にはもともと友人がおり、その友人に話を聞くなかで今の場所を選びました。理由としては、有機栽培で無農薬野菜を作っている生産者が多いこと、そして水が綺麗で豊富であることが挙げられます」

今の場所を選ぶにあたり、事前にほかの地域も比較したのでしょうか。また、畑はどのように手に入れましたか。

中嶋さん「比較せず、ピンポイントで山梨に決めました。畑に関しては、家の大家さんに「農業を始めたい」と相談し、自宅からすぐの場所にある畑を見せてもらったことがきっかけです。

畑を見せてもらっていたときに偶然、その畑の持ち主が通りかかり「この畑を農業に使って良いよ」と言ってもらえたのです。条件の良い農地を借りること自体難しいので、かなりラッキーなケースだったと思います」

すごい偶然ですね。農機具はどのように揃えたのでしょうか。

中嶋さん「農機具を揃えるための補助などは何もなかったので、最初はホームセンターで買ってきたクワを使って手作業で始めました。クワ一本で畑を全て耕し、1枚の畑を耕すまでにおおよそ2週間。近所の人から「よく頑張るねぇ」と応援されました」

後半はこちらから

朝5時に起きて夜中まで働く日々…「とにかく営業」で販路を獲得

朝5時に起きて夜中まで働く日々…「とにかく営業」で販路を獲得<br>

畑と農機具を調達後、次に何を始めたのでしょうか。

中嶋さん「トラクターで畑を耕して、それからマルチというビニールの被覆する資材を張りました。あとは種をまいたり、苗を作って植え付けたり。「自分の興味のある野菜は全て種をまいてみよう」と思い、最初は60種類ほど種をまいてみました。最初の1年でいろいろな種をまいてみて、自分の好き嫌いや得意不得意を探っていった感じです」

60種類とは、かなり多いですね。出来上がった野菜は、すぐに販売したのでしょうか。

中嶋さん「はい。地元のスーパーや都内の自然食品店へ営業をかけました。地元のスーパーからは「サンプルの野菜がほしい」と言われることも多かったですが、自然食品店はもう少しゆるい印象でしたね。

1年目、2年目はとにかく営業をするようにしていました。販路を確保しないことには、事業を継続できませんから。ピークの夏なんかは、朝5時から畑へ出て、寝るのが24時という忙しさだったと思います」

独立当初はかなり大変だったのですね。

中嶋さん「そうですね。ただ、昨年までは朝5時には起きていましたが、今年は朝7時くらいにスタートし、18時には仕事を終えています。周りの農家さんは朝4時くらいに起きることも珍しくないので、それと比べるとゆったりとしているほうかなと」

農業3年目で年商1,600万円!田舎で“安く農家を始めるコツ”とは

開業資金について教えてください。

中嶋さん「当初は200万円ほど用意していました。ただ、畑が無料で手に入ったことや、家賃が2万円で済んだことなどから、ほとんど費用はかかっていません。ちなみに、家は空きやバンクというサイトを通して見つけました」

中嶋さんのように畑を無料で手に入れられるケースは、地方では珍しくないのでしょうか。

中嶋さん「最近は高齢化が進んでいるので、年齢的な問題で農業をやめてしまう人が多いです。売るのにもお金がかかりますから「もう全部無料で持っていってくれ」という人もいるのではないでしょうか。今から農業を始めたい人も、根気よく探せば好条件の畑が見つかると思いますよ。

また、資材やトラクター、田植機なども、農業を辞めた人からもらいました。支払ったものといえば、保冷庫の5万円くらいです」

売り上げはどのくらいだったのかお聞きしたいです。

中嶋さん「1年目は200万円に届かないくらいです。ただ、外注もしてないですし、作業で使う袋などもほとんど貰い物だったので。売り上げのほとんどが利益になりました」

現在の年商をお聞きしても良いでしょうか。

中嶋さん「年商は1,600万円です。そのうち人件費が毎月50万円で、あとは社会保険、資材購入費など合わせて、経費は100万円ほどになります。

役員報酬は最初に設定した15万円のままなので、私自身の年収はかなり低いと思います。社員の給料が24万円で、手取りにすると20万円。このエリアの相場としては高いほうですが、やはりスタッフがいてこそ成り立っているので、給料はさらに上げたいと考えています」

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3年で10人に7人が脱落…過酷な農業を続けるための秘訣

地域の人とのご縁により、ほぼ無料で農業を始めた中嶋さん。何の問題もなく農家を経営しているように見えますが、農業は「10人が挑戦したとしても、3年後に残るのは3人」といわれるほど過酷な世界です。

順風満帆に経営しているようにも見えますが、農業を上手くいかせるコツを教えてください。

中嶋さん「自分がやるんだという想い、つまり気合いですね。有機栽培の農業には、アナログな作業がかなり多いです。たとえば虫を駆除するにしても、農薬を使わず自分の手で取る必要があります。それに、炎天下のなかでの作業も大変ですから」

なるほど。最初の1~2年目で挫折する人が多いとのことですが、農家を始めるにあたり、何か問題がおきたときのリスクヘッジは考えていましたか。

中嶋さん「当初の計画の倍の量を作ったり、畑を変えて違う場所で同じ作物を作ったりなど、何かあったときは、作付量を倍にしようと考えていました。

実際大雨で畑が水に浸かってしまい、100万円ほど損害が出たこともあります。農業はいつ何が起こるか分からないビジネスなので、計画の1.5倍の量は作っておこうと考えています」

農業で成功するためには「真面目すぎない」こと

農業で成功するためには「真面目すぎない」こと<br>

実際に山梨で農業に挑戦してみて、良かったことや後悔していることはありますか。

中嶋さん「後悔していることは特にないです。所得は下がりましたが生活費も下がったので、生活を苦に感じることはありません。また、所得はこれから上げていけば良いですから。

良かったことは、野菜をよく食べるようになり、また自炊がほとんどなので風邪を引かなくなったことです。水も空気もおいしいですし、良いことしかありません」

都会ならではのストレスが減ったことも、良い影響を与えていそうですね。

中嶋さん「そうですね。会社として農業をやっているので「社員をどう食わしていくか」という悩みはありますが、満員電車による疲れや人間関係の悩みなどはなくなりました。今は、のびのびとした生活ができています」

中嶋さんの実体験から、農業に向いている性格などは何かあると思いますか。

中嶋さん「農業でバリバリと稼ぎたい人もいれば、自給自足のような生活をしたい人もいるので、一概には言えません。

ただ、私のようにたくさん稼ぎたい人は、真面目すぎると良くないと思っています。最低限やるべきことを押さえて、あとはやらないという潔さも大切。周りの農家さんを見ていても、少しふざけているくらいの人が成功しているイメージです」

脱サラしたい人は、まずは一歩踏み出すところから

やりたいと思ったことは、すぐに実行に移すのが中嶋さん。農業を始めただけでなく、農業系のYouTubeチャンネルを開設し、自分で撮影や編集も行っています。今後は「まずは登録者数を1,000人まで増やしたい」とのこと。

今後の夢は何かありますか。

中嶋さん「昨年に自宅をリフォームしたのですが、その一画をお店に改装し、そこで野菜カレーなどを提供する飲食店を始めたいです。実際に今、自分の持っている加工場を使って、レトルトのカレーやスープを作り販売しています。加工食品の売り上げも、今年はかなり増えてきましたね」

最後に、脱サラしたい人や農業を始めたい人へ一言お願いします。

中嶋さん「脱サラには勇気が必要ですが、一歩踏み出せば、自力で何とかするようになります。目標に対してどんどん動いていけば、なるようになる。悩むくらいだったら、まずは始めてみるのが良いのではないでしょうか」

取材の最後、農業を始めたい人へ一言「まずはうちの会社に応募してみて」と笑いながら話してくれました。

苦労はありながらも、地域の人々とともに農業を営む中嶋さん。これから脱サラしたい人や農業を始めたい人は、まずは自分のやりたいことに向けて、小さな一歩踏み出すところから始めてみてはいかがでしょうか。

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公開日:2022年12月20日