なぜ法人化した?理想の子育てを目指して「小豆島移住で脱サラ・独立」した女性のキャリア観

最終更新日:2023年05月27日

「キャリアと子育ての両立が難しい」や「都会から離れて理想のライフスタイルを実現したい」という方もいるかもしれません。

今回取材した城石 果純さんは、小豆島に移住して4人のお子さんを育てるビジネスウーマン。もともとは名古屋に住んでいましたが、子育て環境と自身のキャリアを考えて2011年に小豆島に移住しました。

移住の経緯や子育てとキャリアの両立、地方移住のリアルなどを取材したので、「移住や脱サラに興味はあるけど勇気が出ない」という方はぜひ参考にしてみてください。

目次

小豆島で4人の子育て!複数の生業を持つビジネスウーマン

小豆島から船で通勤する日々…子育てとキャリアの両立を考え退職

自分の足で立って歩ける人生にしたい…法人化は「勢いだった」

開業当初の売り上げは5.5万円…苦労しながらも会社を立て直す

脱サラする人は「失敗は当たり前」と思うことが肝心

小豆島で4人の子育て!複数の生業を持つビジネスウーマン

小豆島で4人のお子さんを育てながら、複数のビジネスを手がける城石 果純さん。地域の魅力を引き出すビジネスが特徴的ですが、小豆島出身というわけではなく、2011年に移住してきたとのこと。一体どのような経緯で移住し、法人化するまでに至ったのでしょうか。

現在どのような仕事をしているのか教えてください。

城石さん「1つは、高校生に向けた「島の未来プロジェクト」という教育事業です。そのほかには、企業のホームページ制作やSNS運用、ECサイトの運営、ライティングの仕事などいろいろな事業を手がけています」

生業がいろいろあるんですね。そのほかにも今年、自然を活用した施設をオープンしたと聞きました。

城石さん「2022年8月に「ワンダホーひとやま」をオープンしました。私はもともと小豆島で子育てしたくて移住したのですが、この「ワンダホーひとやま」は自分たちがしてきた子育てを、観光客の方々にも体験してもらいたいと思って始めた事業です。

実際にここでは、竹を割って流しそうめんの台を作ったり、松ぼっくりや枯れ葉枝で着火した火を使ってそうめんを茹でたりできます。遊びのなかにある学びを通して、子どもたちが楽しんでくれる場所にしたいと考えています」

なるほど。体験に必要な材料は、お客さんからの体験料で買い揃える感じですね。

城石さん「そうですね。体験料は大人が3,850円、小学生が2,200円、幼児が1,100円。予約していただければ、いつ訪れても大丈夫です」

小豆島から船で通勤する日々…子育てとキャリアの両立を考え退職

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そもそもなぜ名古屋から小豆島へ移住したのでしょうか。

城石さん「地元の名古屋で子育てをしていたのですが、私が子どものときに遊んでいた広場や公園が、どれもコインパーキングやマンションに変わってしまったのです。しばらくは子どもを駐車場などで遊ばせていたのですが、ふと「子どもの成長にとって、これで良いのだろうか」と思うようになりました。

私自身、小さな頃から自然豊かな場所へ憧れていたので、それから岡山や広島、山口、愛媛、香川など瀬戸内エリアで移住先を探すようになりました」

移住候補地は複数あったのですね。

城石さん「はい。なかでも最後に辿り着いた小豆島は、海を渡る非日常感、山や空、海などの自然の景色に一目惚れしました。あとは小豆島に住む30代の方々のブログを読んで子育てへの安心感を得られたこと、年間300~500人ほどの人がUターンやIターンで小豆島へ来ていることなども移住の決め手です」

小豆島に移住先を決めてから、すぐに引っ越したのでしょうか。

城石さん「当時は2人目の子を妊娠中だったので、産休後は高松の部署で復帰できるよう頼み込んで、そのまま小豆島へ引っ越しました。復帰後はしばらく船で小豆島から高松へ通勤していたのですが、会社からある日「九州に転勤してほしい。転勤できるのであればマネージャーのポジションに戻すけど、小豆島に居続けるのであれば昇進はなし」と言われてしまい…。

私は子どもを預けてまで働くのであれば、自分のキャリアにもしっかりと挑戦したいと考えていました。しかしそれが叶わないのは、私のいる場所が私の目指す生き方とは違うんだなと。そこで、退職を決意しました」

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自分の足で立って歩ける人生にしたい…法人化は「勢いだった」

子育てとキャリアの両立を考えて脱サラしたんですね。

城石さん「あと私の場合、脱サラしたほうが稼げると思ったのも理由の一つです。会社と子育てを両立するためには時短勤務の必要があったのですが、当時は時短で働ける職場が多くありませんでした。パートになるのであれば、脱サラしたほうが今までのキャリアも活かせそうだなと感じたのです」

脱サラに対する恐怖はなかったのでしょうか。

城石さん「祖父が事業を経営していたので、抵抗感はありませんでした。実際に祖父が事業に失敗して周囲から責められるところも見ていましたが、私は祖父の生き方が責められるようなものではないと思っていたんです。挑戦した人に対して、挑戦していない人が何か言うのは理解できません。そんな祖父の姿を見て私は、自分の足で立って歩ける人生にしたかったんです」

なるほど。ただ、個人事業主ではなく、法人化した理由は何かあるのでしょうか。

城石さん「言ってしまえば、勢いですね。当時、小豆島で経営者を支援する事業を始めようとしたんです。その際、多くの人を巻き込んで事業を始めようとしたので、意見の収拾がつかなくなってしまいました。そこで「私が会社を作ってその事業をやるので、賛同していただける方はお金を払ってください」という形にしたんです」

決死の覚悟ですね。

城石さん「今思えば、別に法人化する必要はありませんでしたね。それで実際に「しまの塾」という事業を始めました」

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開業当初の売り上げは5.5万円…苦労しながらも会社を立て直す

開業当初の売り上げは5.5万円…苦労しながらも会社を立て直す

ほぼ勢いで法人化し、移住先の小豆島で開業した城石さん。前向きに事業へ取り組む強さを感じさせますが、そんな城石も開業当初の稼げない時期はかなり苦労をしたといいます。

法人化してすぐに上手くいったのでしょうか。

城石さん「全然です。たとえばコワーキングスペースを開業したことがあるのですが、お客さんが全く来ませんでした。お客さんが来ないのに私は施設にいないといけないので、ほかの仕事が全くできない。初期費用はあまりかかりませんでしたが、3ヵ月くらいで撤退しましたね」

先ほど少し教えてもらった高校生向けの教育事業は上手くいったのでしょうか。

城石さん「この教育事業は「高校生のうちに島の魅力に触れてほしい」という思いで始めたのですが、実際に始めてみると月の売り上げはわずか5.5万円。さすがにこのままだと生活できないので、経営者の先輩に相談して会社を立て直すよう工夫しました」

やはり会社で働くのと自分で経営するのは違いましたか。

城石さん「全く違いました。ただ、私は会社で働いているときに早い段階で出産して、ほかの社員と比べて仕事の時間が少なかったので「みんなと同じ仕事を、自分はみんなより少ない時間でやらなければいけない」という感覚を理解していました。独立してから苦労したことも多かったですが、そのときの経験が活かされて処理能力は速かったと思います。

あとは高校時代にダンス部だったのですが、ダンスを創作するなかで0から新しいものを生み出す経験もしていました。それが、事業を運営する上で今の私の礎になっている気がします」

では現在は、ワンダホーの運営で生活できるくらいの収益になっているのでしょうか。

城石さん「そうですね。何とか暮らせているという感じです。ただ、5年後、10年後にどうなってるかは分かりませんから。子どもたちの学費や将来のことを考えた結果、また会社員に戻っているという可能性もゼロではありません」

脱サラする人は「失敗は当たり前」と思うことが肝心

なるほど。実際に小豆島へ来てみて、良かったことと悪かったことを知りたいです。

城石さん「良かったことは、大自然や地域のなかで子育てできることですね。長男を初めておつかいに行かせたとき、そんな長男の姿を見た近所の方々が長男にたくさんの長ネギを持たせてくれたんです。とても温かい関係ですよね。

あとは、私が小豆島で「事業をしています」や「高校で活動しています」、「子どもを4人育てています」と言うと、都会と違って目立ちやすいです。他者と差別化しやすいという面で、小豆島はブルーオーシャンだと思いますよ。

反対に悪いことは、近所の人に行動がすぐばれることですね。あとは輸送費がかかるので、食費が高くつきやすいです。ただ、食費は産地直送のものなどを選べば安く済みますから」

ありがとうございます。城石さんは、何か今後の夢などはあるのでしょうか。

城石さん「今後10年くらいの夢で言うと、東京ディズニーランドに行くような感じでワンダホーにお客さんが来てくれたらうれしいです。あとは、小さな頃の夢だった本を書くことや絵本を描くこと、映像の勉強などもしたいです」

これから脱サラする人に対して、「失敗するのが当然だし、上手くいかないこともいっぱいある」という考え方が大切と話す城石さん。移住でキャリアと子育ての両方を叶えた城石さんの生き方は、夢を叶えたい方のきっと参考になるはずです。

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公開日:2023年01月26日