年商2,600万円!ビール好き会社員が「クラフトビールの醸造所」で脱サラ・独立

最終更新日:2023年07月27日

「脱サラするなら、好きなことに挑戦するのが良い。好きなことだから、大変なときも頑張れる」と語るのは、クラフトビールのビアレストランと醸造所を開業した髙木 千歩さん。

「ビールが大好きだから」という理由で醸造所を開業し、今では年商2,600万円とかなりの事業規模を誇ります。

そんな髙木さんに、脱サラするまでの経緯や未経験から醸造所を開業した方法、資金調達のエピソード、開業資金や収入などを取材しました。

目次

独立の理由は「ビールが大好き」だから?クラフトビールの製造販売で脱サラ

クラフトビールの楽しさを伝えるためにビアレストランを開業

居酒屋とは違うクラフトビール専門店ならではの苦労も

醸造所開業には2,000万円が必要…元上司の言葉をきっかけに資金調達へ

年商は2,600万円!コロナ禍を乗り切った方法はSNSと地域の支え

「個性的じゃないのが個性」脱サラするなら自分の好きなことに挑戦しよう

独立の理由は「ビールが大好き」だから?クラフトビールの製造販売で脱サラ

クラフトビールの販売だけでなく、醸造まで手がける髙木さん。醸造所を立ち上げた理由は、「もともとビールが大好きだったから」だそうです。ビールにかける情熱を、一体どのように事業へと変えたのでしょうか。

髙木さんはもともとビールに関わる仕事をしていたのでしょうか。

髙木さん「それが、全くしていないんです。大学を卒業してからは、繊維の商社で営業事務として受発注業務や発送手配などをしていました。そこで2年半ほど働いてから、次はヒューマンリソースサービスの会社、その次はIT・アウトソーシング系の会社に転職しました」

最初は、飲食やビールとは全く関係ない仕事をしていたんですね。

髙木さん「はい。会社員時代は、営業や現場マネージャーを経験し、プロジェクト全体の収支を見る管理職の仕事もさせてもらいました。今とは全く業種が違いますが、仕事の進め方やスケジュール管理の方法は業種が変わっても通じるものが多いので、会社員時代の経験が今にも活きていると思います」

クラフトビールの楽しさを伝えるためにビアレストランを開業

altクラフトビールの楽しさを伝えるためにビアレストランを開業

脱サラを考え始めた理由が気になります。

髙木さん「東日本大震災の影響が大きいです。当時は計画停電などで東京も大変な時期でしたが、私にとっては長野県に住む両親が被災したことが大きな気がかりでした。両親のことが心配なのもあって、「両親のいる長野に移住するなら今このタイミングしかないのでは」と思ったんです。東京から長野県十日町にやってきたのが、脱サラの始まりですね」

震災がきっかけだったんですね…。長野に移住してからは、何の仕事をされていたんですか。

髙木さん「地域おこし協力隊です。市役所の嘱託職員として山間部の集落に住みながら、地元の人たちと地域活性化について考える仕事をしていました。環境や文化の保護、地産地消の取り組みなどをメインに取り組んでいました」

その地域おこし協力隊の後に、本格的な脱サラをされたと。

髙木さん「はい。地域おこし協力隊は2年半で卒業させてもらい、それから長野でビアレストランを開きました。私は東京で働いていたときからビールが大好きで、会社のビール好きの先輩とよく飲み歩いていたんです。

東京に住んでいたときはクラフトビールのお店にもよく行きましたが、十日町にはクラフトビールのお店がない。それがすごい残念だと思ったのと、クラフトビールの楽しさを他の人にも伝えたいと思って立ち上げました」

居酒屋とは違うクラフトビール専門店ならではの苦労も

開業する際、地域おこし協力隊の経験が活かされたのではないでしょうか。

髙木さん「そうですね。地域おこし協力隊時代に知り合った農家さんから仕入れた野菜を、ビアレストランで出したりもしていました。

ビアレストランは2014年4月にオープンしたのですが、やはり最初は大変でしたね。例えばお店でお酒を飲む人って「とりあえず生ビールで」と注文することが多いじゃないですか。キンキンに冷えたビールが、ジョッキで出てくるのが一般的ですよね。

ただ、うちはクラフトビールのお店なので、小さなコップにあまり冷えていないビールを出すんです。おしゃれなメニューではあるけど、料金もそれなりに高い。泡も乗せないので、お客さんからお叱りを受けたこともありました」

ほかの居酒屋にはない苦労ですね…。ちなみに、ビアレストランを開業するのにどのくらいの資金が必要でしたか。

髙木さん「開業資金は1,000万円くらいでした。創業メンバーみんなでお金を出し合ったのと、銀行からも借り入れしました。具体的な金額は覚えていませんが、内装工事に特にお金がかかったと思います」

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醸造所開業には2,000万円が必要…元上司の言葉をきっかけに資金調達へ

alt醸造所開業には2,000万円が必要…元上司の言葉をきっかけに資金調達へ

ビアレストランを営業するなかで、醸造も始めたいという気持ちが芽生えたんですか。

髙木さん「そうですね。お店に長野県外の観光客も来てくれるようになったのですが、そのときに「新潟のビールを飲みたい」や「地元のビールが飲みたい」とよく言われていたんです。

毎回お客さんに「うちのお店には置いていないんです」と言い続けていたら、何だか複雑な気持ちになってしまって。それで、自分で作るという選択肢を視野に入れ始めました」

なるほど。とはいえ、ビールを作る方法なんて最初は分からないわけじゃないですか。
まずは、何から始めたんですか。

髙木さん「まずは調査ですね。当時、ビールの取引をしていた方に連絡して、醸造所を見学をさせてもらいました。樽の値段や生産量、ビールができるまでの期間などは、実際に作ってる人に聞かないと分かりませんから。結局12ヵ所ほど見学して、2,000万円くらいかかることが分かりました。お金が足りなかったので、醸造条開業はこのとき一度お蔵入りしています」

お蔵入りしたんですか?そこからなぜ再度挑戦する気になったのかが気になります。

髙木さん「お金が足りないと知った元職場の上司が、お金を貸してくれたんです。上司が「あともう1人仲間を見つけて、3人で2,100万円集めてから醸造所をやろう」と言ってくれて。そんなこと言われたら、やる気が出てくるじゃないですか。そこからお金を必死で集めました」

年商は2,600万円!コロナ禍を乗り切った方法はSNSと地域の支え

最終的にお金はどのように集めたんですか。

髙木さん「十日町市で開催されたビジネスコンテストで2位になり、賞金100万円をもらったのがきっかけです。2位は獲れたものの、100万円だけでは足りないしどうしようかなと思っていたら、審査員に銀行融資の担当者がいて後日連絡をくれました。

そこで私が「自己資金は300万円あるから300~400万円を借りたい」と相談したら、じゃあ銀行から融資しましょうという話になって。それでスタートしたという流れです」

すごい話ですね。ちなみに、開業1年目から収入はありましたか。今の年商もお聞きしたいです。

髙木さん「1年目から収入はありましたね。年商は、直近の決算だと2,600万くらいで、昨年が1,600万円、一昨年が1,300円でした。前年対比で130%ほど、段階的に上がってきています」

右肩上がりで順調ですね!

髙木さん「そうですね。ただ、この3年間はコロナ禍で大変でした。一番最初の緊急事態宣言で、お酒がダメというルールになりましたよね。当時、うちの醸造所はレストランに出荷する業務用の樽しかなかったので、お酒が余って冷蔵庫が大量の樽で埋まってしまったんです。

ビールは生ものなので、製造をストップできない。これは困ったと思って、SNSに「緊急事態宣言でビールが売れなくて困っている」と投稿したら、近所の人が駆けつけてくれました」

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「個性的じゃないのが個性」脱サラするなら自分の好きなことに挑戦しよう

では、今はもう黒字なんでしょうか。

髙木さん「ギリギリ赤だったり、ギリギリ黒だったりします。タンクなど減価償却費の割合が大きいのと、消費税に加えて酒税も払っていますから。税金の支出だけでも数百万円あって、従業員を1人雇えるぐらいの金額です。クラフトビールの製造・販売は、量をたくさん作らないと駄目なんだなと学びました」

ビールの醸造は奥が深いということですね。髙木さんが手がけているこの「妻有ビール」と、ほかのクラフトビールとの違いを知りたいです。

髙木さん「うちは地域に根付いた立地で営業しているので、まず地域のお父さんお母さんたちが飲んでくれるかどうかを最優先に考えています。なので、「個性的でないのが個性」というか、この地域の父母が飲んでもびっくりしないことを意識しています。「びっくりしない味」がうちのコンセプトなんです」

なるほど、ありがとうございます。それでは最後に、これから脱サラしたい方へメッセージをお願いします。

髙木さん「最終的には脱サラが1つの選択肢であっても良いと思う一方、脱サラありきで将来を考える必要はないとも思っています。脱サラは、適切なタイミングが来たときに、挑戦したら良いと思うんですよね。

もし最終的に脱サラするなら、好きなことに挑戦するのが良いです。すごく大変な時期、我慢が必要な時期に頑張れるのは、好きなことに取り組んでいるからなんですよね」

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公開日:2023年07月21日