お祭りで日本を元気に! お祭りのポータルを目指す株式会社オマツリジャパン インタビュー

公開日:2020年04月08日

▲オマツリジャパンのメンバー。(左)山本陽平さん、(中央)代表の加藤優子さん、(右)橋本淳央さん

日本の全国各地にあるお祭り。有名どころでは、東京・浅草の三社祭や青森のねぶた祭、徳島の阿波踊りだ。

しかし、日本にはまだまだ知られていないお祭りがたくさんある。一説には30万以上のお祭りが、日本各地で毎日のように開催されているという。

そんな日本のお祭りをもっと盛り上げたいという志を掲げて、お祭りのプロデュースなどを手がけているのが、株式会社オマツリジャパンだ。今回は、オマツリジャパン代表の加藤優子さんと、加藤さんをサポートする山本陽平さん、橋本淳央さんにお話を伺った。

目次

お祭りは人間の元気の源

加藤さんと山本さんの出会いは田植えイベント

お祭りビジネスでビジコンを総なめ

オマツリジャパン法人化、そして二人が正式にジョイン

目標は「お祭りのインフラになること」

ビジネスに必要なのは、続けること、応援されること、馬鹿になること

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お祭りは人間の元気の源

加藤さんは、武蔵野美術大学油絵科出身。芸術家を目指していたというが、在学中に「昔からあるものをアートの力でリデザインする」ということに興味を持ち始める。

インタビューカット

加藤さんは、母親の実家がある青森に毎年帰省し、いつもねぶた祭りを見ていた。ねぶた祭りの期間中は国内外から約300万人が集まる大きな祭り。2011年、東日本大震災のあった年にも青森を訪れた。そこで見たものは、地元の人たちが元気よく楽しそうにねぶた祭りに参加している様子だった。

「私は小さい時からお祭りに関わったという経験はないのですが、地方に行くほどお祭りを1年の楽しみにしている人たちも多い。それに加えて、経済効果も高い。日本人の元気の源ではないかと思ったんです」(加藤さん)

ねぶた祭り1回の経済効果は、238億円という話もある。それがなくなってしまったら、大きな損失になる。おぼろげながらにそう考えた当時大学3年生だった加藤さんは、お祭りに興味を持ち、Facebookページを立ち上げた。

そのFacebookページでは、自分でお祭りに行き、写真とレポートを投稿するといった、ごく個人的なものだった。そのうち、同じ趣味を持つ人たちとの交流が生まれ、サークルのようなものになっていく。

加藤さんは、大学卒業後に漬物メーカーに就職。商品の企画開発やパッケージデザインなどを担当していた。それと並行して、土日にはお祭りに通い、その様子をFacebookで公開。当時目指していたのは、『お祭り版食べログ』だったという。

「奇祭好きなんですよ(笑)。それで日本全国のお祭りをデータベース化して検索できるものをつくろうと思ったんです。そこでいろいろな人に相談した結果、まずはFacebookから始めようという感じになりました」(加藤さん)

加藤さんと山本さんの出会いは田植えイベント

当初加藤さんは、趣味としてお祭り巡りを行っていた。偶然参加した栃木県の田植えイベントで、山本さんと出会う。山本さんは、NTT東日本で経営企画と国際ビジネスの仕事をしていた。また、学生の頃からバックパッカーを行い、世界約80ヵ国のお祭りを巡っていた。

お祭り好きが偶然にも田植えイベントで出会うことで、徐々にコミュニティが大きくなった。

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「気づいたらサポーターが200人くらいになっていました。参加しているのは我々と同じ20代から30代がメイン。社会人が集まってみんなでお祭りに行ったりしていました」(山本さん)

二人が出会ったのは2012年のこと。しばらくは、個人の趣味の延長線上のような活動が続いた。

お祭りビジネスでビジコンを総なめ

オマツリジャパンとしての転機は、ある商店街のサポートだ。加藤さんの親友の父親が、商店街の副会長をやっており、商店街のお祭りで相談を受けたことに始まる。

「最初は仕事という感じではなく、チラシをつくったり装飾を手伝ったりしていました。そのうち、会議でアイデアを出してほしいと呼ばれたりしているうちにだんだん仕事っぽくなっていきました」(加藤さん)

商店街としては活性化のために定期的にお祭りをやりたい。しかし、人手も足りない上にアイデアも枯渇している。そこでお祭り好きの加藤さんに白羽の矢が立ったというわけだ。

そして2014年7月に加藤さんが会社を辞め、 NTT東日本に在籍中の山本さんとともに任意団体「オマツリジャパン」を本格化させる。

さらに、二人でビジネスプランコンテンスト(ビジコン)にも参加するようになる。お祭りを軸としたビジネスプランで、キリンの主催する「キリンアクセラレーター」や第一勧業信用組合の「東京アクセラレーター」、そのほか三鷹や中野、吉祥寺、品川など参加する7つのビジネスコンテストを総なめにしていく。

そうこうしているうちに、いろいろなところから声がかかるようになり、お祭りの企画などを行うようになる。そこで加藤さんは「ビジネスになるのでは」と思ったそうだ。

オマツリジャパン法人化、そして二人が正式にジョイン

ビジコンで掲げていたビジネスプランは、

1.お祭りのプロデュース
商店会、地方自治体、企業とともにお祭りをつくり上げる

2.情報発信
ホームページ、ブログやSNS活用により、ユニークなお祭り情報発信をする

3.ツアー企画
外国人観光客や日本の若い人たちに向けて、地域で開催されている参加型のお祭りのツアーを企画して実施

というものだ。オマツリジャパンを立ち上げてからも、この3つを軸に運営を行っている。当時は加藤さん一人。そのほか山本さん、そして200人のサポーターたちの協力により、運営していた。

そして2015年の秋、法人化する。法人化はもともと考えていたことだという。

「もともと、『みんなで頑張ろうぜ』ということで始まっているお祭りでも、最近ではやらされている感が強くなってしまっているところも多いんです。そこで、私たちが自立したお祭りのために運営者をサポートする株式会社を始めました」(加藤さん)

当初、加藤さん一人で全てをこなしていたため、かなり慌しかったという。山本さん、そして橋本さんが入社するのは、2017年2月のことだ。

「僕は、ずっとオマツリジャパンにジョインするタイミングを見計らっていて。タイミング的に2月になりました」(山本さん)

山本さんと同時に入社した橋本さんは、もともとCATV会社のJ:COMに勤務。八王子を中心に地元の人と接する機会が多い仕事をしていたという。オマツリジャパンには2015年頃からサポーターとして参加。当時から転職を考えており、ビジネス的にも将来的なビジョンが見えてきたので、転職したとのこと。

インタビューカット3

「中学、高校くらいから、いわゆるサラリーマンには向いてないなと思っていたんです。趣味が多いので、自分で何かをやるのがいいかなと思っていたのですが、なかなか難しい……。そこで、ちょうどオマツリジャパンにある程度後ろ盾ができたということで、転職しようと思いました」(橋本さん)

加藤さんもそうだが、山本さんも橋本さんも、『お祭り』をビジネスにするということに少し不安を感じていた面はあるという。しかし、加藤さんによると

「お祭りって、もともと持ち出しがあまりないので、最初に大きなマイナスを抱え込むことがないんですよ。もしダメになったとしても、大きな借金が残ることもないので」(加藤さん)

とのこと。そのため、加藤さんは他の二人に比べればそれほど不安はなかったようだ。また、3人ともまだ20代、30代前半で若かったことも、不安を打ち消す大きな要因になった。

目標は「お祭りのインフラになること」

ビジネスコンテストをきっかけに、キリンなどからの出資も得て、ひとまずオマツリジャパンは株式会社として出発。いろいろな祭りをプロデュースしたり、大きな祭りの集客のためにツアーを企画したりといったビジネスを展開している。

しかし、プロデュースの仕事は途中で立ち消えになってしまうこともしょっちゅうあるという。地元でも、お祭りをやりたい人たち、やりたくない人たちの派閥があり、資金をどこから引っ張ってくるかについて目処が立たなかったりするそうだ。

それでも、徐々にオマツリジャパンの認知度がアップし、各地からプロデュースの話などがやってきているという。

加藤さんには、明確な将来像がある。それは、「お祭りのインフラになること」だ。

「お祭りを調べるのも、つくるのも、探すのもオマツリジャパンが提供する。お祭りの中心地になることで、日本の祭りを盛り上げて、お祭りそのものの価値をもっと高めたいと思っています。休日に、映画に行くか水族館に行くか、お祭りに行くか。そのくらいお祭りを一般の人にとって身近なものにしたいと思っています」(加藤さん)

お祭りは、東京都内でも365日どこかしらで行われているという。ただ、その情報をみんなが知らないだけであるため、ちゃんと情報提供できるようになりたい。それがオマツリジャパンの使命の一つなのだ。

そして、これからやっていきたいことの一つに『自分たちでお祭りをつくること』があるという。

「お祭りがどんどんなくなっているんです。だから新しいお祭りを生み出して、その土地に根付かせていくという活動をしたいなと思っています。植樹みたいな(笑)」(加藤さん)

現在は、3人に加えインターンが数名いる。そして、頼りになるサポーターが220人。オマツリジャパンは、いつの間にかかなり大所帯になったと言える。しかし、そのほとんどが関東近郊の人たちばかり。実は全国からお祭りのプロデュースの話が来ているというが、マンパワー的にまだできる段階ではないという。

「全国展開すれば絶対ニーズがあるのは分かっているのですが、地方にまでパワーをかけられないのが実情です。全国にサポーターが広がって、私たちのノウハウを提供するというフランチャイズのようなシステムがつくれれば、うまくいくような気はするんですけどね」(加藤さん)

ビジネスに必要なのは、続けること、応援されること、馬鹿になること

集合写真

お祭りをビジネスにする、前代未聞のビジネスを展開しているオマツリジャパンを立ち上げた加藤さん、そしてそれをサポートするために転職をした山本さん、橋本さんに、起業や転職について、アドバイスがあればとお願いした。すると次のような答えが返ってきた。

「最初の1年半は、このビジネスがどうなるか分かりませんでした。でも続けることが必要かなと思います。とりあえずやってみて、続けること。すると、いろいろなところで取り上げられるようになってきたり、仲間が増えてきたりしました。最初はつらいこともあると思いますが、急に状況が変わっていい方向へと物事が進み出すことがあるので、ぜひ飛び込んで続けてほしいなと思います」(加藤さん)

「周りに応援されるビジネスは、うまくいくと思います。例えば『こうすれば絶対良くなる!』という考えから生まれたビジネスは、周囲の人に興味・関心を持ってもらえたり、賛同が得られたりしやすいです。そのため、応援してくれる人も増えていきます。逆に、応援されないような、ただの金儲けではうまくいかないのではないでしょうか。それは起業でも転職でも同じだと思います。どれだけ応援してくれる人を味方につけられるか考えたほうがいいのではないでしょうか」(山本さん)

「二面性が必要だなと思っています。一つはすごく真面目な部分。事業の計画や将来を真面目に考えて、計画していく。でも、それだけでは絶対に踏み込んだ行動は起こせません。そこで必要なのが、馬鹿さです。馬鹿みたいに自分を信じるとか、事業を信じるとか、のめり込むくらいの勢いが必要ですね。この両方のバランスが重要だと思います」(橋本さん)

オマツリジャパンは、日本全国のお祭りのポータルになろうとしている。生活の中にお祭りが当たり前のように存在する世界をつくるために、オマツリジャパンのメンバーは楽しみながらお祭りと向き合っている。

奇祭と呼ばれるお祭りのツアーも多数企画しているので、興味を持った方は、オマツリジャパン主宰のツアーに参加してみるといいだろう。

今年の夏は、お祭り巡りなんていうのも楽しいかもしれない。

お祭り

公式ウェブサイト
オマツリジャパン

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