“無知こそ無敵”で世界初のiPadレジを開発 【株式会社ユビレジ】 木戸 啓太さんインタビュー

公開日:2018年01月29日

店舗運営において、もっとも重要でもっとも煩雑な作業といえば、売り上げの管理だろう。

大手チェーン店などでは、売り上げデータを1ヵ所に集約して分析し、さまざまな経営管理に役立てるPOSシステムを導入しているところも多い。

今回は、iPadを使って簡単にPOSレジを導入できる『ユビレジ』を提供する株式会社ユビレジの代表取締役社長である木戸 啓太さんにお話を伺った。

目次

世界初のiPadを使ったPOSレジシステム『ユビレジ』

大学時代に20以上のアルバイトを経験

iPad発売後2カ月で『ユビレジ』をリリースするも…

“無知こそ無敵”知らないからこそ何でもできた

お金よりも時間のほうが大切

独立・開業に必要なものは「情熱」

世の中に残るものをつくって死にたい

株式会社ユビレジ

世界初のiPadを使ったPOSレジシステム『ユビレジ』

導入には多額の初期費用およびランニングコストがかかることから、個人経営や小規模チェーンの店舗ではなかなか導入することができないこともある。

そこで近年注目されているのが、iPadなどのタブレットPCと、クラウドサーバーを使用したPOSレジだ。専用の機器を導入する必要がないこと、自社でサーバーを用意することがないことから、導入の初期費用を大幅に削減できるという最大の特徴がある。

ここ数年では、小規模店舗だけではなく、大手チェーンなどでも導入され始めており、今後さらに需要は伸びていくものと思われる。

このような、タブレットPCとクラウドサーバーを利用したPOSレジシステムのサービスを世界で一番はじめに開始したのが『ユビレジ』だ。

大学時代に20以上のアルバイトを経験

木戸さんは、石川県加賀市の米屋の息子として生まれる。小学生の頃はサッカー選手に憧れるという、ごく普通の子どもだったという。

中学、高校と進学するにつれ、漠然と「自分は事業をする」と思っていた。インターネットが普及し、ソフトバンクの孫正義氏をはじめとした、起業家のことを知るようになったのも大きい。インターネットがなかったら、起業家のことを知ることもなかっただろうし、東京に出てこようと思わなかったと言う。

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「田舎だったので、個人商店がいっぱいあるんですよ。私も実家は米屋ですし。商売人が多い土地柄だったのも大きいと思います。むしろ、サラリーマンがいませんでした」

木戸さんは大学進学とともに上京。慶應義塾大学で数理科学を学ぶ。主に、確率論や数理統計学を研究していた。

大学院に進み、数学の勉強をする傍ら、さまざまなアルバイトを経験。その数は20以上になるという。そして、不動産検索サイトをメイン事業とした会社を起業する。大学院2年生のときだ。

iPad発売後2カ月で『ユビレジ』をリリースするも…

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「就職も少し考えてはいました。ただ、就職して1年や3年で辞めるとなったら、その会社にとっては損失になるのではと思ったんです。10年勤めるのだったら就職したほうがいいと思うんですけど、それは無理だなと思って」

起業をした当時は、1年間くらいは受託で売り上げを出しながら、いろいろなサービスのアイデアを出し、それを実験的にやろうと決めていたという。そのとき、アイデアとしてあったのが不動産検索サイトや、現在の『ユビレジ』のようなものだった。

『ユビレジ』の基本的な構想は、大学時代のバーでのアルバイト経験に基づいている。手書きの伝票で毎日終業後に売上計算をしていることが非常に非効率だと感じたのだ。

当初は不動産検索サイトとして立ち上げた会社だったが、『ユビレジ』の構想が持ち上がった時点でユビレジ1本の方向性にシフト。

そして開発された『ユビレジ』は、iPadを利用したレジシステム。初代iPadは2011年3月に発売されたが、『ユビレジ』のリリースは2011年5月。iPad発売後、2ヵ月というスピード感。もちろん、タブレットPCのPOSレジシステムとしては世界初だ。

ユビレジリリース後、すぐに長野県の鯛焼き店で導入されるが、1ヶ月で契約解除となる。当時のユビレジは開発を続けながらサービスを提供していたが、おつりの計算ができない、レシートの発行ができないという、POSレジとしてはかなり機能が少なかった状態だった。

しかし、その後必要な機能をひとつずつ実装していき、徐々に契約数が増加。現在は飲食店を中心に、家電店、旅行代理店など、さまざまな業種で2万件以上の契約数となっている。

“無知こそ無敵”知らないからこそ何でもできた

起業を見据えていろいろな仕事を経験しようと、数々のアルバイトを経験した木戸さん。そのおかげで、『ユビレジ』の基本となる構想が思いついたのだが、自分で会社をつくるとなると不安もあったことだろう。

「不安って、ある程度の知識がないと生まれないと思うんですよね。先をある程度見通せるから、危険だなと思えるという。“無知こそ無敵”という言葉があるのですが、学生で何も社会のことを知らなかったからできたことだと思います(笑)」

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起業当時は3人というこじんまりした会社だった。そのため、3人が食べていくくらいは稼げるという目論みもあったという。実際、最初の1年は受託案件を多くこなしていたため、黒字だった。資本金は3人で300万円ほどあったが、ほとんど手つかずだったそうだ。

「3人とも学生だったので、生活コストが安かったというのも大きかったと思うんです。毎月ちょっと売り上げがあれば、何とでもなりましたから」

『ユビレジ』リリース後は、『ユビレジ』の開発および市場拡大に注力。世界初のiPadを使ったPOSレジサービスということで注目も集まった。

「今思えば、もう少し遅くリリースしてもよかったのかなと思います。システムは、後発有利な面もあるんですよね。一番手が地雷を踏んでくれるので、それを避けていけますから。でも当時は無知だったので、とりあえずやってみたという感じですね」

お金よりも時間のほうが大切

木戸さんの中には、「失敗をしても損失が少ない」という状態だったからこそ、チャレンジができたという想いがあるようだ。その根底には「お金よりも時間が大切」という気持ちがあるという。

「お金と時間を天秤にかけたら、お金よりも時間のほうが大切だと思うんです。本当にやりたいと思っていたら、早くやったほうが時間が得じゃないですか」

人間には寿命というタイムリミットがある。しかもそれはいつ突然やってくるか分からない。残り時間が分からないのだから、時間は有効に使ったほうがいいということだろう。

現在の木戸さんは、『ユビレジ』の社長として、日々忙しく過ごしている。ミーティングや打ち合わせが多いということだが、社長としての一番大事な仕事は「ミッションとビジョンとバリューの浸透」だという。

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「『ユビレジ』には“サービス産業のためのデータインフラを整備する”というミッションがあります。『ユビレジ』という誰もが簡単に使えるツールを世に出すことで、店舗の効率性がアップし、店舗に来るお客さんの満足度が上がる。そして新しいサービスが生まれる環境にしていこうというものです。こういうミッションやビジョンを、会社に浸透させていくのが私の仕事です。例えていうなら、会社のミッションやビジョンは聖書で、それを神父さん的な役割で浸透させるのが私、でしょうか」

独立・開業に必要なものは「情熱」

独立開業をするときに、一番大事な要素は何だろうか。そんな質問を木戸さんにぶつけてみた。返ってきた言葉は「情熱」だった。

「独立・開業には、フランチャイズに加盟して安定した地盤から始めるというものから、今まで誰もやっていなかった領域で新しいことを始めるといったものまで、いろいろあると思います。それぞれ、モチベーションや資金の面などで違いはあると思いますが、共通しているのは情熱をもってやるということが重要だと思います」

『ユビレジ』は、スタート当初から順調に規模を拡大してきたように思えるが、実際にはピンチの連続だったという。特にベンチャー企業は、ピンチが9割ではないかと木戸さんは笑う。

「成長しようと思うからピンチがやってくると思うんです。事業を伸ばしていこうとすると、新規事業の開発や新規投資とか、採用面などでいろいろとやらなければならないことが増えて、それに伴いリスクも増えてきます。いろいろなピンチが訪れますが、それは成長のために必要なことですから」

ピンチは成長の証。そんな風にポジティブに考えられるようになれる人が、独立・開業には向いているのかもしれない。

世の中に残るものをつくって死にたい

最後に、木戸さんの夢を伺った。

「世の中に残るものをつくりたいという夢があります。世界中の人に使われるサービスや事業を残して死にたいという気持ちがあるんですよ。単純に言えばエゴなんですけど。自分の名前を歴史に残したいという」

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木戸さんの夢は、ある意味「世界初のiPadを使ったPOSレジ」を開発、リリースしたことで達成されているとも言える。しかし、木戸さんの目指しているところは、まだまだ遠いところにあるようだ。

POSレジは、大手チェーン店であればあるほど、切り替えが難しい。大量に専用の機器を購入またはリースし、自社にサーバーを整備してデータ管理をしているところが多いからだ。

しかし、徐々に『ユビレジ』のようなタブレットPCとクラウドサーバーを使ったPOSレジを使用する大企業も増えているという。

初期コストもランニングコストも低く、その上さまざまな店舗運営に必要なデータと連係できるPOSレジサービス『ユビレジ』。

これから独立起業を志している方は、売上管理のツールとして選択肢に入れて検討してみてはいかがだろうか。木戸さんの想いが詰まった『ユビレジ』が、店舗運営の大きな力になることだろう。

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株式会社ユビレジ

https://ubiregi.com/

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