個人事業主と合同会社・株式会社の違いは?メリットとデメリットで比較
最終更新日:2023年02月02日
最近では働き方も広がりを見せており、会社から独立して自分で事業を始めるといった選択肢も一般的になってきています。
独立と一言で言っても、大きく分けて株式会社と合同会社や個人事業主があります。
しかし、その3つの違いは一見分かりづらいと思っている方も多いでしょう。
そこで今回は、株式会社・合同会社・個人事業主をそれぞれメリットとデメリットを交えつつ解説していきます。
ぜひ参考にしてみてください。
目次
株式会社とは
まずは、株式会社について解説していきます。
株式会社とは、株式を発行して資金を集めて作られている会社です。
創業社長が最大株主である場合を除き、経営者と出資者(株主)が別々となっています。
そのため、出資者は経営には全く関与せずに株だけを売買したり配当を得たりすることが可能です。
組織体制としても、株主の同意があれば外部の人物を社長や役員として経営を行なっていく方法もあります。
このように、株式会社では株主が大きな決定権を持っている場合が多く、会社の最終的決定は株主総会で行われています。
この株主総会では、株式を多く持っている株主に大きな権限があるのです。
また、日本の法人の9割は株式会社となっており、そのメリットの多さを裏付けていると言えます。
株式会社のメリット
株式会社の代表的なメリットは以下のようなものがあります
- 対応できない事業がない
- 資金調達がしやすい
- 出資者の全員が有限責任
ひとつずつ解説していきます。
対応できない事業がない
近年では、様々な分野で民営化の広がりを見せています。
それに加えて、一部の株式会社の参入を規制されているものを別にすると、ほとんどの事業が株式会社で対応できるようになっています。
この幅広い事業範囲こそが、法人の9割を株式会社が占める要因の一つでもあるのです。
資金調達がしやすい
資金調達が比較的しやすいのも株式会社のメリットです。
資金調達の方法として銀行の融資はもちろん、新株の発行や転換社債型新株予約権付社債といった株式を使って資金を調達できます。
転換社債型新株予約権付社債とは、転換社債やCBと呼ばれており、一定の条件で企業の株式に変えられる権利が付いた社債のことです。
また、株式市場への上場をしていない場合でも、ベンチャーキャピタルのような未上場の株式会社を投資対象としているファンドもあります。
このようなことから、後ほど解説する合同会社よりも資金の調達方法の選択肢は広いと言えるでしょう。
出資者の全員が有限責任
株式会社の出資者の全員は有限責任です。有限責任とは、会社に対する責任は出資した金額の範囲内に収まるということです。
つまり、万が一の会社の倒産の時にも出資したお金を失うだけに留まり、それ以上の責任はないことになります。
これによって、株主としても出資のリスクを抑えながら株が買えるといったメリットがあります。
株式会社のデメリット
上記のように全体的に資金を集めやすい株式会社ですが、一方でデメリットもあります。株式会社の代表的なデメリットは以下のようなものがあります。
- 設立の費用が高い
- 法令の規定が多い
- 利益配分は株数によって決定される
ひとつずつ解説していきます。
設立の費用が高い
株式会社は設立の費用が比較的高くなっています。
株式会社の法定費用は25万円程度となっており、定款の収入印紙代や認証手数料謄本手数料・設立にかかる登録免許税が必要です。
法令の規定が多い
株式会社には様々なルールが定められています。
たとえば、株主総会の開催や取締役の権限や取締役会の運営についてなどです。
さらに、株式会社は株主総会の決議を重要視しているため、その事項についても細かいルールがあります。
他にも、取締役の任期や決算公告義務があるため、登記や広告の費用も定期的に発生します。
利益配分は株数によって決定される
利益の配分は株数によって決定されます。
「一株当たり◯円」といったように決まっているため、出資が少ない従業員には利益の配分が少なくなります。
そのため、出資が少ないものの会社にとって不可欠な従業員に対しても、出資した以上の株式からの利益配分はできないのです。
合同会社とは
合同会社とは、2006年に新しく作られた法人の形態です。
2006年以前は有限会社が似たような立ち位置にあり、現在では有限会社の設立はできず合同会社になっています。
合同会社では経営者は出資者でなくてはいけません。
これは、合同会社が出資者と経営者が分離していない形態の法人だからです。
合同会社のメリット
合同会社のメリットは以下のようなものがあります。
- 設立にかかる費用が株式会社よりも安い
- 意思決定が早い
- 出資者は全員有限責任で対等な議決権を持ち利益配分もしやすい
こちらも、ひとつずつ解説していきます。
設立にかかる費用が株式会社よりも安い
先ほど、株式会社の設立には25万円程度かかるとお伝えしましたが、合同会社はそれよりも安い費用で設立が可能です。
法定費用は10万円となっており、収入印紙代が4万円・登録免許税が6万円と、かなり安いものになっています。
さらに、電子定款を利用すれば収入印紙代も不要になるので、設立がしやすいと言えるでしょう。
意思決定が早い
合同会社は意思決定が非常に早いこともメリットです。
決算の公告義務もなく、株式会社のような株主総会もありません。
これは、先程お伝えした経営者が出資者でもあるという特徴からくるものです。
意思決定までのリードタイムが短いため、素早い組織づくりや事業計画の実施が可能になります。
出資者は全員有限責任で対等な議決権を持ち利益配分もしやすい
株式会社と同様に、出資者は全員有限責任となっています。
また、出資額に関わらず対等な立場での議決権を持っているので、平等な事業の決定権があります。
さらに、株式会社とは異なり会社の事情に応じた利益配分が可能。
これによって利益を均等に分けたり、特に貢献した人に多めに配分したりなどもできるのです。
合同会社のデメリット
自由度が高いメリットの一方で、合同会社にもデメリットはあります。
主なデメリットとしては以下のようなものです。
- 資金調達の選択肢が限られている
- 認知度が低い
これらは場合によっては大きく事業に影響することです。
解説していきます。
資金調達の選択肢が限られている
合同会社は資金調達の選択肢が限られています。
株式会社の場合だと、先ほどお伝えしたように資金調達の選択肢は多数あります。
しかし、合同会社では株式の仕組みによる資金調達や、ベンチャーキャピタルのような投資の対象にもなりません。
そうなると資金調達の主なものは銀行の融資になるため、選択肢は限られていると言えます。
認知度が低い
合同会社は制度ができてからまだそれほど時間が経っていないこともあり、全国で考えても5万社程度しかありません。
つまり、一般的な認知度は低いと言えます。
株式会社の代表者は代表取締役と呼ばれますが、合同会社の場合は代表社員と呼ばれています。
取引先の中でも、合同会社そのものや代表者印といった呼び名に知見がある方もまだまだ少ないようです。
そうなると、株式会社と比べて何かとやりづらいこともあるかもしれません。
個人事業主とは
個人事業主はその名の通り個人で事業を行っている人のことです。
事業主一人だけで事業を行う場合はもちろん、従業員を雇っている場合でも法人でなければ個人事業主と解釈できます。
法人との大きな違いは税務上の所得区分です。
法人の場合の売り上げは法人の所得ですが、個人事業主の場合はあくまで個人の事業所得となります。
個人事業主のメリット
個人事業主にもメリットがあり、法人とは異なるものになっています。
主な個人事業主のメリットとしては以下のようなものです。
- ある基準までは法人よりも税金が少ないことが多い
- 事業を始めるハードルが低い
- 意思決定が抜群に早い
ひとつずつ解説していきます。
ある基準までは法人よりも税金が少ないことが多い
個人事業主の確定申告はほとんどの場合、青色申告で行います。
この青色申告では複式簿記の帳簿の場合は65万円、簡易簿記の場合だと10万円の控除が受けられます。
加えて、青色申告では所得に応じてある基準までは節税が効きやすい仕組みになっています。
ある基準とは400万円程度の所得で、そのあたりまでなら法人税の税率よりも低い税率の納税が可能です。
事業を始めるハードルが低い
個人事業主は事業を始めるハードルが法人と比べて低いこともメリットです。
個人事業主として事業を開始するには、開業届を税務署に出すだけで済んでしまいます。
細かい審査もなく、税務署の窓口に行けばものの5分程度で完了します。
費用の面でも法人と比べてハードルは低く、ほぼ無料で開始可能です。
意思決定が抜群に早い
個人事業主の最大のメリットは、意思決定が抜群に早いことかもしれません。従業員がいなければ意思決定は自分自身が決めるだけで済みます。
従業員がいる場合でもちょっとした相談や話し合いで決定できるので、法人よりもスピーディーな事業展開ができます。
意思決定が早いということはフットワークの軽さにつながるものです。
個人事業主でも始めやすいフランチャイズはこちらで見ることができます。
個人事業主のデメリット
個人事業主のデメリットとしては以下のものがあります。
- 法人と比べて社会的信用が低い
- 事業の継続性が低い
- 失業保険が出ない
こちらも詳しく解説していきます。
法人と比べて社会的信用が低い
個人事業主は法人と比べて社会的信用が低くなりがちです。
たとえば、クレジットカードを一つ作るのもなかなか難しいですし、家や事務所を借りるのも一苦労です。
また、社会的信用が高い方が取引先の獲得や人材の確保にも有利でしょう。
今後この辺りは変わっていくかもしれませんが、現状では法人と比べ社会的信用が低いとされています。
事業の継続性が低い
個人事業は法人よりも事業の継続性が低くなります。
法人であれば、代表取締役が退任をしても別の人材を代表取締役に就任させることができます。
こうしておくと事業の継続は可能になるでしょう。
一方、個人事業主は事業の継続が難しくなった場合、譲渡や相続を行う必要があります。
つまり、事業主自身によって終了してしまうといったこともあるのです。
そこまで行かなくても、請負で仕事をしている場合、急に仕事がなくなってしまうこともあります。
急に仕事がなくなってしまうと事業の継続も難しくなってしまい、そのまま廃業するケースもあるのです。
失業保険が出ない
個人事業主は自ら事業を行っているため、誰かに雇われているわけではありません。
このことから失業という概念がないのです。
つまり、雇用保険の支払いをしていないといったことになります。
そうなってくると、会社員や一定の条件を満たしたアルバイトが受けられる失業保険の給付はないので、万が一の場合の金銭的リスクはあると言えます。
個人事業主と合同会社の違い
個人事業主と合同会社は区分が「個人」と「法人」であり、個人事業主と株式会社と同じくらい違いが大きいです。
ただ、合同会社は安価で会社設立ができる上に個人よりリスクが分散されるのでメリットのがほうが多い場合があります。
約10万円ほどの設立費用が出せるのなら、合同会社への法人成りを考えても良いでしょう。
個人事業主と経営者の違い
合わせて似た言葉に「個人事業主」と「経営者」がありますが、基本的に「経営者」は法人化している会社の代表取締役のことを指します。
複数人で行っている事業の経営方針を任されているからです。
個人事業主は基本的に1人で行っており、経営判断を行うこともありますがその場合も経営者とは呼ばないことが多いです。
個人事業主と株式会社・合同会社の違いについてまとめ
このように、様々な視点から見ても株式会社と合同会社・個人事業主は大きな違いがあります。
お伝えしたように現代の法人のほとんどは株式会社です。
しかし、それぞれにメリットデメリットもあるの、自分の開業したいものに合わせて株式会社と合同会社個人事業主のうちから適したものにするといった選択の仕方もあります。
この記事を参考に、それぞれの特徴を確認し選択の幅を広げてみるのもいいかもしれません。
公開日:2023年01月31日