棚卸資産とは?種類や評価方法、会計時の注意点などの疑問を解決!

最終更新日:2020年12月17日

棚卸資産は、会社がビジネスをする上で大切な財産です。
ただ在庫として保管しておけば良いわけではなく、数量や状態を定期的にチェックし、期末には正しく評価・計上しなければいけません。

こちらでは、棚卸資産の基礎知識をまとめているので、フランチャイズでの開業を考えている方はぜひ参考にしてみてください。

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目次

棚卸資産とは

棚卸資産の種類

棚卸資産の取得原価の決め方

棚卸資産の実地棚卸と期末評価

棚卸資産の評価方法

棚卸資産における会計時の注意点

棚卸資産を適切に評価・計上するポイントを押さえよう

棚卸資産とは

棚卸資産とは、会社が一時的に保管している在庫のことです。
具体的には商品や製品、原材料などを指し、最終的にお客様へ販売し収益を上げることを目的としています。

また、お客様への販売を予定していなくても、販売収益を得るために使われる事務用消耗品なども棚卸資産には含まれます。

「在庫」と聞くと売れ残りのような悪いイメージがありますが、会社にとって棚卸資産はビジネスをする上で不可欠な財産だと言えるでしょう。

棚卸資産の種類

棚卸資産は、大まかに下記の5種類に分けられます。

棚卸資産の種類 意味
商品・製品 すでに完成しており、すぐに販売できるもの
原材料 商品や製品のもととなるもの
仕掛品 商品・製品が作りかけのもの

工場で自動車を製造するケースを例に挙げると、商品・製品が完成した自動車、原材料が鉄やアルミなど、仕掛品が完成途中の自動車になります。
その他にも、自動車を販売するために使った事務用品なども棚卸資産に含むことが可能です。

棚卸資産の取得原価の決め方

棚卸資産の取得原価は、購入したものと生産したもので計算方法が変わります。

まず購入した棚卸資産の取得原価は、「購入代価+付随費用」で求めることが可能です。
購入代価とは仕入れた棚卸資産の値段から値引額や割戻額を控除した価額、付随費用とは棚卸資産を販売するためにかかった全ての費用のことを指します。

付随費用の中には、引取運賃や検収・手入れにかかった費用、長期保管するためにかかった費用など様々な費用が含まれるため、見落としのないよう注意しましょう。

一方、生産した棚卸資産の取得原価は「製造に要した全ての費用の合計」であり、これは国の定める適正な原価計算の基準に従って求めなければいけません。

棚卸資産の実地棚卸と期末評価

実地棚卸とは、棚卸資産の現物を担当者が一つ一つ目で見て確認しながら実際の数量を数えていく行為のことです。

多くの会社では普段からデータ上で棚卸資産の残高を管理していますが、盗難や紛失、破損などでデータ上と実際の数値が相違していることが珍しくありません。
実地棚卸の目的は、データ上と実際の数値の相違をなくし当期の利益を確定すること、さらに棚卸資産の保管状態に問題がないか確認することの2つにあります。

そして期末評価とは、実地棚卸による結果をもとに期末時の棚卸資産の帳簿価額を算定することです。

棚卸資産の評価方法

棚卸資産の評価方法は大きく分けて5つあり、「企業会計基準第9号」により明確に定められています。
こちらではそれぞれの評価方法をまとめているので、どの評価方法が自社にとって適切かぜひ考えてみてください。

個別法

個別法とは、棚卸資産の取得価額が価値であるとして評価する方法です。
棚卸資産を一つ一つ個別に評価していくため正確な価値を算出しやすい点がメリットですが、数や種類が多い場合は作業に手間がかかりすぎるため向いていません。

そのため個別法は、棚卸資産の数が少ない場合、または自動車や宝石、貴金属など高価で個別管理しやすい場合に適した評価方法だと言えるでしょう。

先入先出法

先入先出法は、先に仕入れた商品から払い出されたとみなし、現在残っている棚卸資産は期末に最も近いものとして評価する方法です。
ほとんどの会社では先に仕入れたものから払い出すため、実際の物の流れと価値が一致しやすい点がメリットだと言えるでしょう。

ただし、先入先出法は物価に評価が影響されやすく、物価が上昇している時は利益が多く計上されやすい点に注意が必要です。

平均原価法(移動平均法・総平均法)

平均原価法とは、仕入れた棚卸資産の平均価額で評価する方法です。
移動平均法と総平均法の2種類があり、それぞれで計算方法が異なるため違いを理解しておくようにしましょう。

まず移動平均法は、棚卸資産を取得するたびに平均額を算出する方法です。
常に最新の平均価額がわかるため、期末の評価予測が立てやすい点がメリットだと言えます。

それに対して総平均法は、期末にまとめて平均額を計算する方法です。
期末にまとめて算出できるため計算の手間は省けますが、移動平均法のように定期的に価値を評価できないため、最終的な期末の評価予測を立てにくい点がデメリットでもあります。

売価還元法

売価還元法とは、棚卸資産の販売価額に原価率を乗じて評価する方法です。
売価還元法では種類の異なるものをグループにまとめて計算して良いため、スーパーマーケットや百貨店など多様な商品を扱う業種でよく採用されています。

ただ、計算時に棚卸資産を1つのグループにまとめる際は「それぞれの棚卸資産に類似性があること」が条件として求められるため気をつけてください。
類似性には、複数の商品が補完関係にあるもの(片方だけでは売れないもの)、材質が同類のものなど一定の基準があるので、グルーピングをする時に主観が入らないよう注意が必要です。

最終取得原価法

最終仕入原価法とは、事業年度の最後に仕入れた棚卸資産の取得価額をもとに評価する方法です。
企業会計基準第9号によると、最終仕入原価法は「期間損益の計算上弊害がないと考えられる場合や、期末棚卸資産に重要性が乏しい場合においてのみ容認される」と定められていおり、無条件に採用して良い方法ではないため注意してください。

また大きな価格変動が起こった時、最終仕入原価法では実際に取得した時の金額との間に大きな差が生まれる可能性がある点も気をつける必要があります。

棚卸資産の評価方法は届出が必要

棚卸資産の評価方法を決めた後は、税務署へ「棚卸資産の評価方法の届出書」を提出する必要があります。
提出期限は下記のとおりのため、忘れず手続きを済ませるようにしましょう。

  • 新しく法人を設立する場合:設立第1期の確定申告書の提出期限まで
  • 新たに他の種類の事業を始める場合または事業の種類を変更する場合:事業開始または種類変更した事業年度の確定申告書の提出期限まで

届出の提出をしなかった場合は、最終仕入原価法が自動で適用されることになります。

棚卸資産における会計時の注意点

税務調査において、棚卸資産の計算ミスは指摘されやすいポイントです。
こちらでは、特に計上漏れが起こりやすい「付随費用」と「預け在庫」の2つを紹介するので、税務調査時に指摘されないよう知識をつけておくようにしましょう。

付随費用の計上漏れ

棚卸資産の「付随費用」は、特に計算を忘れやすいポイントです。
引取運賃や購入手数料など様々な費用が含まれるため、忘れずに計上するようにしましょう。

ただし、以下の3項目においては、付随費用の合計額が少額(およそ3%)であれば棚卸資産の取得価額に含めなくて良いとされています。

1.買入事務、検収、整理、選別、手入れ等に要した費用の額
2.販売所等から販売所等へ移管するために要した運賃、荷造費等の費用の額
3.特別の時期に販売するなどのため、長期にわたって保管するために要した費用の額

引用:国税庁ホームページ「第1款 購入した棚卸資産」

また、棚卸資産の取得・保管に関わる費用であっても、不動産取得税や地価税、登録免許税など一部の費用は付随費用に含まれないため注意が必要です。
どんなものでも付随費用として計上できるわけではないため、対象範囲をしっかりと確認しておくようにしましょう。

自社の倉庫にない棚卸資産の計上漏れ

棚卸資産には、自社の倉庫で保管していないものも含まれます。
特に外注先や仕入れ先で保管している「預け在庫」は見逃しがちなため、忘れずに確認するようにしましょう。

また、すでに注文は済んでいるもののまだ到着していない運送中の在庫を「未着品」と言い、この未着品も棚卸資産として計上する必要があります。

棚卸資産には実際に目の前になくても計上しなければいけないケースがいくつかあるので、どの在庫がどこにあるのかをしっかりと把握しておくことが大切です。

棚卸資産を適切に評価・計上するポイントを押さえよう

棚卸資産はビジネスを行う上で大切な財産のため、適切に管理するのはもちろん、評価方法や計上のポイントを押さえ正しい会計方法を理解することが大切です。

また、評価方法や計上の仕方に不安がある方は、フランチャイズ本部の担当者へ確認して不明点を解消するようにしましょう。

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公開日:2020年10月28日