損金算入とは?法人の節税に欠かせない「損金」を学ぼう!
最終更新日:2024年09月20日

こちらの記事では、会社の節税に関わる「損金算入」を紹介します。
損金算入の対象になるもの・対象外のもの・複数年にわたり算入する必要があるものを確認し、適切に会計処理するようにしましょう。
また、損金の対象となる原価・費用・損失についても解説しているので、それぞれの計上タイミングも理解し、計上漏れが起こらないよう意識してみてください。
損金とは
損金とは、「法人税を計算するときに差し引ける費用」のことです。
具体的な内容は後述しますが、法人の資産を減少させる原因となる「原価」「費用」「損失」の3つの額を指します。
損金の中には資本などの取引によるものは含まれておらず、例えば株主への出資金の払い戻しなどは対象外です。
損金額が大きいほど所得が少なくなるため、法人税の節税を考える経営者であれば損金の知識はつけておく必要があるでしょう。
損金算入の対象となるもの
こちらでは、損金に算入できる原価・費用・損失の3つを紹介します。
それぞれが表すものを理解し、適切なタイミングで計上するようにしましょう。
原価
原価とは、製品を作るために使ったお金の総額です。
材料費や部品の購入代、サービス代などさまざまな費用が含まれ、損金の算入対象として計上できます。
原価は下記の計算式で求められるため、損金の計上時期が訪れた際は参考にしてみてください。
売上原価 =(期首商品棚卸高+当期商品仕入高)- 期末商品棚卸高
- 期首商品棚卸高:事業年度の最初(前期末)にある在庫の原価
- 当期商品仕入高:事業年度中に仕入れた商品の原価
- 期末商品棚卸高:事業年度末に残っている在庫の原価
また、原価の計上タイミングは売り上げの益金(法人の資産を増加させる原因となる収益)が発生したタイミングと同じということも合わせて覚えておくようにしましょう。
費用
費用とは、事業を運営する上でかかった全てのコストです。
具体的には「販売費、一般管理費その他の費用」を指し、例えば商品の販売に必要な事務用品の購入代など、少額の経費も損金として算入できる可能性があります。
ただし後述しますが、事業に関係するものであっても損金として算入できない費用がいくつかあるので注意が必要です。
また、費用の計上タイミングは債務確定時(その費用を支払う義務が法的に確定した時点)であり、原価とは計上タイミングが異なることを理解しておくようにしましょう。
損失
損失とは、何らかの理由で会社の資産価値が減少したときに計上される項目です。
資産価値が減少する理由は会社ごとに異なりますが、自然災害によって店舗物件が破損し大幅に価値が下がるケースなどが挙げられます。
損失はどの会社でも必ず起こる事柄ではなく、天災など突発的なケースで発生することが少なくありません。
そのため計上タイミングに特別な決まりは存在しませんが、基本的には損失に関わる事象が発生したタイミングで計上します。
損金算入が不可・または制限されるもの
こちらでは、損金算入が不可・または制限されるものを紹介します。
下記には具体的な事例をまとめているので、計上漏れが起こらないようぜひ参考にしてみてください。
役員給与・賞与
役員報酬は、基本的に損金として算入できません。
理由としては、役員報酬は会社の裁量で自由に操作できるため、法人税を安くするために多く計上する会社が出てくる可能性があるからです。
ただし、支給額が毎月一定額であること、事前に税務署へ届出を出していること、業績指標と役員報酬が連動していることなど、一定の基準を満たした場合に限って損金として算入できるケースもあります。
交際費
交際費とは取引先との関係を良好に保つための費用を指し、飲み会での接待費やお祝いの際の贈答費などが含まれます。
交際費は損金として算入できますが、その場合は下記の条件に従う必要があるため覚えておくようにしましょう。
- 飲食費が1人あたり5,000円までの場合は全額損金可能
- 飲食費が5,000円を超える場合は50%を損金可能
ただし交際費を損金として算入するためには、飲食のあった年月日や参加した得意先の人数が分かる書類を所持していることが前提条件です。
また、資本金が1億円以下の会社の場合は損金として全額算入できるなど特別措置がとられているため、該当する会社は国税庁の公式情報を調べるようにしましょう。
寄付金
寄付金の損金算入限度額は寄付先によって異なり、具体的には下記の通りです。
- 国や地方公共団体:全額損金として算入可能
- 認定NPO法人など:一般の寄付先より多めに損金として算入可能
- 一般の寄付:国の定める計算式によって算出された金額のみ損金として算入可能
どの寄付先でも全額損金として算入して良いわけではないため、どこかに寄付をした際は寄付先ごとの計算式を調べるようにしましょう。
評価損
評価損とは、会社の持つ資産の取得価額または帳簿価額(※)とは異なる価額が生まれた際の差額のことです。
例えば長期間使用し劣化した固定資産は、実際の価額が取得価額や帳簿価額より低いため評価損が発生することがあります。
この評価損は基本的に損金として算入できませんが、資産価値が下がった理由が災害による場合などは算入が可能です。
そのため評価損を計上する際は、なぜ資産価値が下がったのか理由を明確にするようにしましょう。
(※)…取得価額とは、物品を購入したときにかかった額のこと。帳簿価額とは、取得価額から減価償却額を差し引いた額のこと。
貸倒損失
貸倒損失(かしだおれそんしつ)とは、売掛金や貸付金が回収できず損失が発生したときに処理する勘定項目です。
取引先の倒産などで起こる可能性があり、具体的には以下のケースが当てはまります。
- 金銭債権が切り捨てられた場合
- 金銭債権の全額が回収不能となった場合
- 一定期間取引停止後弁済がない場合
上記3つのケースでは、それぞれ損金として算入できる金額や計上ルールが異なるため、計上できるタイミングを逃さないよう早めに手続きを進めるようにしましょう。
複数年に分けて損金算入するもの
会社のコストの中には、複数年にわたり損金として算入するものがあります。
下記の「繰延資産」と「減価償却費」は分割で算入する必要があるため、上記で紹介したコストとは処理方法が異なることを理解しておくようにしましょう。
繰延資産
繰延資産とは支出が発生した後もその効果が1年以上続くものを指し、具体的には開業費や開発費などが含まれます。
開業費や開発費は支出が発生した瞬間に利益が出るのではなく、実際に店舗へお客様が訪れるようになったり、開発した製品の人気が上がり始めたりした段階で利益が発生します。
そのため支出した事業年度だけではなく、複数年にわたって算入しなければいけません。
減価償却費
減価償却費とは、長年にわたり事業で使うことで価値が下がっていく資産のことです。
具体的には、パソコンや自動車、大型機材などが当てはまります。
損金として算入する際は、定額法(毎年同じ金額を計上)と定率法(毎年同じ率を計上)の2パターンから償却方法を選ぶようにしてください。
ただし、減価償却費であっても少額減価償却資産(※)であれば一度に全額損金として処理できるため、複数年にわたり計上する必要はありません。
(※)…使用可能期間が1年未満または取得価額が10万円未満のもの
損金算入の対象を理解し賢く節税しよう
損金算入は会社の節税に関わる重要項目のため、経営者は正しい知識をつけておく必要があります。
原価・費用・損失の概念を理解するのはもちろん、損金算入の対象となるもの・対象とならないものを覚え、適切な会計処理をするようにしましょう。
公開日:2020年11月13日