フランチャイズとのれん分けの違いとは?メリット・デメリットを徹底比較

最終更新日:2023年03月01日

将来、独立開業して企業オーナーを目指す人にとって、フランチャイズは開業方法の有力な選択肢になるでしょう。

フランチャイズに似たものとして、のれん分けもあります。この2つはどのような点が共通していて、どのような点が違っているのでしょうか。

ここではフランチャイズとのれん分けを比較検討し、それぞれのメリット・デメリットを徹底解説します。

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目次

フランチャイズとは

のれん分けとは

フランチャイズとのれん分けの違い

フランチャイズとのれん分けの共通点とは

フランチャイズやのれん分けがおすすめな人とは

フランチャイズとのれん分けについてのまとめ

フランチャイズとは

フランチャイズとは

フランチャイズビジネスとはフランチャイズ本部に加盟者(開業者)が対価を支払って、ブランド・商標を使用する権利や経営ノウハウを得て行う仕組みです。

フランチャイズ本部をフランチャイザー、加盟者をフランチャイジーと呼び、フランチャイジーがフランチャイザーに支払う対価をロイヤリティといいます。

フランチャイズというとコンビニエンスストアが頭に浮かびますが、カー用品や洋菓子店、ベーカリーショップ、ハンバーガーショップ、牛丼店、レストランなどのフランチャイズ展開も有名です。さらにハウスクリーニングや家事代行、学習塾なども近年増えています。

フランチャイズビジネスのポイントは、次の3つです。

  • フランチャイザーとフランチャイジーは各々独立した事業体で、契約にもとづいて共同事業を行う
  • フランチャイザーからフランチャイジーに「フランチャイズプラン」と呼ばれるブランド名や商標を事業で利用するための権利、経営ノウハウ、経営サポートが提供される
  • フランチャイズプランの見返りとして、フランチャイジーはフランチャイザーにロイヤリティを支払う

これら3要素が一体となって、フランチャイズビジネスが成り立っているといえます。

のれん分けとは

のれん分けとは、長年店舗・会社で働いていた従業員が独立する際に「のれん(屋号)」の使用を許可する制度です。

のれん(暖簾)は、商店などの入口に掲げられた家紋や屋号が染め抜かれた布を指し、店の信用と名声といった意味が込められています。これを従業員に分けることで独立した新店舗に太鼓判を押し、新規開業を手助けすることになります。商品・サービスの提供エリアを広げたい場合や後継者を残したい場合に、従業員にのれん分けするケースが多いです。

のれん分けの制度は江戸時代の商家から始まったとされ、日本では伝統的な事業拡大・事業承継の仕組みです。現代ではお蕎麦屋さんやラーメン屋さん、和菓子屋さんなどに多くの事例が見られます。

フランチャイズよりも店舗運営の縛りが少なく、経営方針などは独立した従業員が決められることが多いです。

フランチャイズとのれん分けの違い

フランチャイズとのれん分けは事業拡大という面では同じですが、違うところもあります。最大の違いはフランチャイズの新規開業者(加盟者)の場合はその事業の未経験者であるのに対し、のれん分けの新規開業者(分家)は長年本家で働いていた熟練者であるということです。

フランチャイズビジネスに新たに加盟してくるフランチャイジーは、多くの場合その事業の実務経験を持ちません。そのためフランチャイザーは新規フランチャイジーに対して開業前研修を行ったり、事業運営マニュアルを配布したりするなど経営ノウハウを周知します。

フランチャイザーが多額のコストをかけてでもこうしたサポートを行うのは、新規フランチャイジーの逸脱した行為がブランドイメージを損ねてしまうことを避けるためでもあります。事業運営マニュアルは規則が事細かに定められていることが多く、フランチャイジーの経営裁量は制限されているケースが一般的です。

一方ののれん分けは新規開業者が本家で長らく働いた実績がある従業員なので、フランチャイズのような事細かなサポートやマニュアルが必要ありません。独立までに培われた信頼関係がバックボーンにあるため、契約やマニュアルで縛らなくても大きな問題にはならないとされています。

適した業界・業種

フランチャイズとのれん分けの違いを見てきましたが、それぞれに適した業界・業種があります。

業界未経験の加盟者を対象とするフランチャイズの場合は、商品を販売する小売業や飲食業、サービス業に適した方法といえます。商品やサービスの提供に高度なスキルがいらず、フランチャイザーが用意するノウハウで開業が可能な業種です。
セブンイレブンやローソン、ファミリーマートなどのコンビニエンスストアが有名ですが、最近テレビCMをたくさん流している個別指導塾のトライプラスなど学習塾も数多くフランチャイズ展開しています。

一方ののれん分けは、商品・サービスの提供に一定のスキルが求められる業種が向いています。いわば「職人技」が求められるような業種です。

具体的な事例として、カレーハウスCoCo壱番屋ののれん分け制度「ブルームシステム」を挙げましょう。CoCo壱番屋のブルームシステムでは、独立を希望する人がまず正社員としてCoCo壱番屋に入社した上で、店舗のオペレーション、人材マネジメントや経営ノウハウを学んでから独立します。
独立が認められるまでは9つの人事考課による基準をクリアする必要がありますが、それをクリアすると資金調達や物件選択、市場調査、店舗建築から開店準備にいたるまで全面的なサポートを受けることができます。

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ビジネスを開始するまでの期間

フランチャイズとのれん分けの違いとして、開業するまでの期間があります。

フランチャイズの場合は加盟者が未経験から始めるので開業前研修を受けることが必須となりますが、たいていは数週間から数ヵ月ほどで開業にまで至ります。のれん分けに比べると、比較的早期に開業することが可能です。
のれん分けの場合はその店舗・会社に正規社員として入社し、最低でも数年間勤務する必要があります。先ほどのCoCo壱番屋の例では、5~6年で独立するケースが多い傾向です。

すぐに開業して経営活動を始めたいという人はフランチャイズ、じっくりと学んで成功を目指したい人はのれん分けがおすすめといえるでしょう。

事業活動におけるルール

事業活動におけるいろいろなルールにおいても、フランチャイズの場合は本部が加盟者に対して制約を課すことが多いといえます。

フランチャイザーはブランドイメージの保持のため、提供する商品・サービスの品質はもちろん、看板の文言・色・形状、店構え、従業員の制服、営業時間などまでマニュアルで細かく定めており、フランチャイジーはマニュアルから外れたことは基本的にできません。

これに対してのれん分けは、フランチャイズほど事業に関する制約はないことが一般的です。のれんに傷がつかなければ、商品・サービスの変更も独自の経営判断によって可能です。

契約条件やマニュアルによって制約が課されているフランチャイズと、比較的自由に活動できるのれん分けでは、経営の裁量権が異なるところに大きな違いがあります。

加盟店の投資

新規開業者が用意する費用についても、フランチャイズとのれん分けでは異なります。

まず、フランチャイズの場合を見ていきましょう。フランチャイジーが開業にあたって用意する費用には、次のものがあります。

加盟金

加盟金はフランチャイジーがフランチャイズに加盟する際に支払う費用です。フランチャイザーが提供する経営ノウハウやサポートへの対価であり、ブランド使用料でもあります。

保証金

加盟金とは別にフランチャイジーは、加盟時に保証金が求められるときがあります。これはフランチャイジーがフランチャイザーに対して月々の商品仕入れ代やロイヤリティの支払いなどの担保のために預けるお金です。

研修費

フランチャイズによっては、加盟金とは別に研修費がかかることがあります。開業前の経営者・従業員のための研修にかかる費用です。

物件取得費

店舗やオフィスのために物件を賃借するための費用です。自宅を改装してオープンする場合はかかりません。

内外装・設備費

営業するための物件を改装する費用です。

ロイヤリティ

これは初期費用ではなく、ランニング費用にあたりますが、月々フランチャイザーに支払うもので、商標やロゴの使用、経営サポートへの対価になります。

のれん分けではフランチャイズと同じく、物件取得費や内外装・設備費などの独立資金は自分で用意する必要がありますが、加盟金・保証金・研修費・ロイヤリティは基本的にかかりません。かかったとしても少額であることがほとんどです。

本部の収益源

フランチャイジーが開業時にかかる費用について、フランチャイザーの視点から考えてみましょう。

フランチャイズというビジネスモデルは、自ら開発した経営ノウハウやブランド・商標をフランチャイジーに提供する見返りに、加盟金やロイヤリティを得る事業形態です。加盟金とロイヤリティの存在が、同じチェーン展開でもレギュラーチェーン(通常のチェーン展開)と違うところです。

フランチャイザーにとっての収益源は、加盟金とロイヤリティになるわけです。

それに対し、のれん分けには加盟金やロイヤリティはない場合が多く、あっても少額になります。のれん分けをする企業は基本的に、フランチャイザーのような仕組みで得られる収益を求めていないといえます。

契約解除の有無

フランチャイズ契約において、気をつけなければいけないことの一つに解約の問題があります。

フランチャイジーが経営難などさまざまな事情で廃業を余儀なくされ、それにともないフランチャイズ契約を終了することになったとしても、簡単には解約できません。

フランチャイズ契約においては契約期間が定められていることが多く、期間の中途で解約するとなるとフランチャイザーから多額の違約金を請求されることがあります。

仮に期間満了で契約を終了させたとしても、競業避止義務(競合を避ける義務)が定められてることがほとんどであるため、フランチャイジー時代の経験を活かして開業することは非常に困難です。

一方、のれん分けは廃業や業態変更、社名・屋号の変更などについて、厳しい制約はないことが一般的です。ただし、本家と同じ業態で同じエリアで営業することは完全に競合にあたるので、現実的には難しいでしょう。

フランチャイズとのれん分けの共通点とは

フランチャイズとのれん分けの共通点とは

ここまでフランチャイズとのれん分けの相違点を見てきましたが、もちろん共通点もあります。新規開業者の視点からフランチャイズとのれん分けの共通点を確認していきましょう。

リスクを軽減できる

フランチャイズとのれん分けの共通点に、新規開業者にとってのさまざまな経営上のリスクを軽減できるという点があります。

未経験の業界・業種の分野で起業することは、一般的には大きなチャレンジになります。事業が思い通りに行かず、倒産・自己破産まで考えられる世界ですが、フランチャイズやのれん分けの場合、すでに成功している店舗・会社のブランドや商品・サービスをそのまま利用できるため、失敗しにくいということが挙げられるでしょう。

集客や評判を得るまでの時間を短縮できるのも大きな魅力といえます。

ノウハウを得られる

フランチャイズにせよ、のれん分けにせよ、新規開業者にとっては貴重な経営ノウハウを得られるというのは大きなメリットです。

新規開業者は商品の仕入れから広告宣伝、接客対応など経営にまつわるすべてのことを経営者自らが行わなくてはなりません。こうした店舗や事業の経営ノウハウを得ることができ、一からやり方を教えてもらえるのは、開業までの時間と労力の節約にもつながります。

商材を得られる

フランチャイズやのれん分けで独立開業する場合、商品や商材を本部(本家)を通じて仕入れることができることも魅力です。

一から商品開発をしたり、商材の調達を考えたりすることが不要になるため、人材育成など他のことに時間を費やすことが可能になります。

商材の仕入れも、本部(本家)が一括で仕入れて各加盟者に供給していることがほとんどなので、スケールメリットを得ることもできます。

ブランドのイメージを利用できる

フランチャイズやのれん分けの場合、すでに確立したブランド力がある状態で事業を始めることができます。知名度の高いブランドであれば、すぐに商品・サービスをイメージしてもらえるので、新規の開業であったとしてもある程度の集客を見込むことができます。

フランチャイズやのれん分けがおすすめな人とは

フランチャイズとのれん分けの違いと共通点を見てきましたが、それぞれどういった人に向いているでしょうか。この章では、フランチャイズがおすすめな人、のれん分けがおすすめの人を見ていきます。

フランチャイズがおすすめな人

のれん分けに比べてフランチャイズがおすすめな人は、なるべく早く開業をしたい人です。フランチャイザーの設定する条件さえ満たせば、早ければ数週間、遅くても数ヵ月で開業することが可能です。

未経験の業種への参入であっても、フランチャイザーから経営ノウハウが提供され、研修制度や業務指導などのサポート体制も充実しているので、安心して臨むことができます。

とはいえフランチャイジーは独立した事業体なので、最終的には経営者の行動が経営の成否を決めます。ノウハウを理解し、マニュアルや指導を徹底して守って経営に落とし込んでいくのは、あくまで経営者本人であることに変わりはありません。

フランチャイズのメリット

フランチャイズのメリットは、開業までのスピードが早く、数週間から数ヵ月で開業できるところにあります。効率良く開業準備を進めたい場合は、フランチャイズを利用するといいかもしれません。

また、フランチャイザーからフランチャイズパッケージを受け取ることで、経営ノウハウ、経営サポートの提供を受けることができます。このノウハウにしたがって経営を進めていけば、大きく失敗する可能性は低くなるでしょう。

営業に専念しやすいのもフランチャイズならではのメリットといえます。

フランチャイズのデメリット

一方、フランチャイズのデメリットとしては、経営の自由度が低いことが挙げられます。経営ノウハウ、経営サポートの提供を受けられるのはメリットですが、裏を返すとマニュアルにしたがうことが求められるので、経営の自由度は下がります。独自のビジネスアイデアが思い浮かんだとしても、それをフランチャイザーの許可なしに行うことはできません。

また、加盟金・ロイヤリティの支払いが必須となります。ロイヤリティの支払いは定率方式と定額方式がありますが、どんなに経営が厳しくても月々の支払いが義務化されており、新規フランチャイジーにとっては一定の負担になります。

のれん分けがおすすめな人

フランチャイズよりものれん分けの方が適している人は、じっくりと時間をかけて独立開業をしたい人や既存店の関係をしっかり構築したい人です。

のれん分けの場合はいったん本家の店舗・会社に入社して、長年修行をすることでその業務の経験を積んで知識・技術を習得し、本家の信頼を得てから独立することになります。

そのためすぐに開業したい人には向いていませんが、本家との信頼関係を構築して安定して独立開業をスタートさせる可能性が高くなります。スピードよりも安定性を求める人にはおすすめの方法だといえるでしょう。

のれん分けのメリット

のれん分けのメリットは、フランチャイズには必須の加盟金・ロイヤリティがない、もしくは少額ということが挙げられます。

のれん分けで独立した経営者は長年本家で働いていたので、フランチャイズのように手厚い経営ノウハウの提供やサポートは不要であることがほとんどです。ロイヤリティも不要なのが基本となります。加盟金・ロイヤリティの負担がないのは、のれん分けのメリットといえます。

また、フランチャイズのようなマニュアルに縛られることなく、経営の自由度が高い点も特長です。

のれん分けのデメリット

のれん分けの場合はいったん本家に入社して一定の年月働く必要があるので、開業までは時間がかかります。早く開業したい人には向かないといえるでしょう。

また、経営の自由度が高いといえども、本家との信頼関係を破壊するような行為はできません。本家と同じ業種・同じエリアで営業するなどは、競合にあたるので実際は不可能になるでしょう。

フランチャイズとのれん分けについてのまとめ

フランチャイズとのれん分けについてのまとめ

ここまでフランチャイズとのれん分けの相違点と共通点を見てきました。どちらも新規開業者にとっては魅力的な仕組みですが、フランチャイズは早期開業を希望する人、のれん分けは時間をかけて知識・技術を習得してから開業したい人に向いている仕組みです。

それぞれメリット・デメリットがあるので、よく見極めた上で自分に合う方を選択するようにしましょう。

公開日:2022年09月26日

よくある質問

Q フランチャイズとのれん分けの違いは? 回答を見る
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