医療費控除とは?個人事業主の節税に欠かせない医療費控除を徹底解説!

最終更新日:2021年04月09日

多くの医療費が発生する家庭において、医療費控除やセルフメディケーション税制は非常に重要な制度です。これらの制度の適用を受ければ、所得控除によって一部の税金が安くなるので、家計の負担を抑えられる可能性があります。

そこで今回は、これらの制度の概要や要件、必要書類などの手続きについてまとめました。

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目次

医療費控除とは

医療費控除額の算出方法

医療費控除の申請方法

セルフメディケーション税制について

要件を満たす方は、領収書などの整理と申請手続きを

医療費控除とは

医療費控除とは、1月1日~12月31日までの間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得控除が適用される制度のこと。要件を満たした上で所定の手続きをすると、課税所得から控除分が差し引かれるので、医療費を支払った翌年の税金が安くなります。

医療費控除の対象は、確定申告をする申告者本人の医療費だけではありません。生計をともにする配偶者や親族が支払った医療費も対象に含まれるため、特に家族が多い方にとっては重要な制度になります。

医療費控除の対象になる医療費

次は、医療費控除の対象になる医療費の種類を見ていきましょう。

対象になる医療費 概要
診療費 医師もしくは歯科医師に支払う診療費や治療費。
医薬品の購入費 風邪薬など、治療や療養に必要な医薬品の購入費。
通院費(公共交通機関) 病院や医療施設に通うための交通費。公共交通機関が利用できない場合は、タクシー代も認められる。
治療のための施術費 はり師やきゅう師、柔道整復師などに支払う施術費。
療養を依頼した場合の費用 主に保健師や看護師、准看護師に支払う対価。家族や親族でなければ、個人的に療養を依頼した場合の対価も含まれる。
分娩介助の費用 助産師に支払う対価のみが対象。
介護福祉士等に支払う費用 一定の喀痰吸引や、経管栄養を行ってもらったときの対価。
一定の施設・居宅サービスの自己負担額 介護保険等制度で提供された施設やサービスのみが対象。
自治体に納付する医療費 身体障害者福祉法や知的障害者福祉法などで規定された医療費や通院費、医療用具の購入費。
移植に関する患者負担金 骨髄移植推進財団や日本臓器移植ネットワークに支払う、骨髄移植や臓器移植に関する患者負担金。
その他 医師の送迎費、食事代を含む入院費、医療用具の購入費や賃借料、特定保健指導に対する自己負担金、おむつ代(※おむつ使用証明書が必要)など。

なお、上記の医療費に該当する場合であっても、次のいずれかを満たしていない場合はその年の医療費として認められません。

  • その年の1月1日~12月31日までに支払った医療費であること
  • 申告者本人が、自身や生計をともにする配偶者・親族のために支払った費用であること

また、12月31日の時点で未払いの費用については、その年の医療費には含まれない(※翌年の医療費控除の対象になる)ので注意しておきましょう。

医療費控除の対象にならない医療費

医療費として支払った費用であっても、以下に該当するものは医療費控除の対象には含まれません。

対象に含まれない医療費 概要
謝礼金 医師や看護師などに支払う謝礼金。
健康診断費 病院などで受けた健康診断の費用。
予防などを目的とした医薬品の購入費 ビタミン剤など、予防や健康増進を目的とした医薬品の購入費。
治療と関係のない施術費 疲労回復や体調管理などを目的とした施術費。
家族などに療養を依頼した場合の費用 家族または親族に療養や付き添いを依頼した場合の対価。また、それ以外の人物に依頼をする場合であっても、所定の料金以外(謝礼金や心づけなど)は対象外となる。
通院費(自家用車) 自家用車で通院した場合のガソリン代や高速代、駐車場の料金など。
その他 使用証明書が発行されていない状態でのおむつ代など。

上記を見ると分かるように、直接的な治療・療養を目的としていない場合は医療費に含まれないので注意しましょう。

医療費控除額の算出方法

医療費控除額の算出方法は、申告者の所得の合計額(総所得)によって異なります。

申告者の総所得 医療費控除額の算出方法
200万円未満 1年間の医療費-保険金などで補てんされる金額-総所得の5%
200万円以上 1年間の医療費-保険金などで補てんされる金額-10万円

上記の「保険金などで補てんされる金額」とは、保険会社などから支払われる保険金や給付金のことです。では、具体的にどのようなものが該当するのか、以下で簡単に紹介します。

  • 【1】社会保険や共済など、特定の法律に基づいて支払われる給付金(出産育児一時金や家族療養費など)
  • 【2】生命保険契約や損害保険契約に基づいた保険金や給付金(医療保険金や入院費給付金など)
  • 【3】保険会社などから支払われる損害賠償金
  • 【4】任意の互助組織から支払われる給付金

上記の【2】~【4】については、「医療費の補てん」を目的に支払われていることが前提となります。

医療費控除の申請方法

医療費控除の適用を受けるには、所定の手続きを済ませることが必要です。そこで次からは、医療費控除の申請方法や必要書類などをまとめました。

申請時期や窓口

医療費控除の申請は、毎年2月16日~3月15日に実施される確定申告によって行います。基本的な窓口は所轄の税務署となりますが、自治体によっては役所などで受け付けている場合もあるので、税務署が遠い方などは各地域の確定申告会場を調べておきましょう。

なお、給与所得者(サラリーマンなど)が医療費控除に関する還付申告をする場合は、1月からでも申請を受け付けてもらえます。

申請に必要な書類

医療費控除の申請時には、確定申告書のほか以下の書類が必要です。

必要書類 概要
医療費控除の明細書(集計表) 1年間の医療費の内訳を記載した明細書。国税庁のホームページから入手できる。
本人確認書類 確定申告書を提出する際に求められる。マイナンバーカードがない場合は、マイナンバーがわかる書類と身元確認書類の2つが必要になる。
源泉徴収票(※年末調整をした人のみ) 前年に年末調整をした人は、勤務先から発行された源泉徴収票の原本が必要。

上記のうち「医療費控除の明細書」は、2017年分の確定申告から提出が義務づけられた書類です。その代わりに、2017年分以降は領収書の提出・提示が不要となりましたが、医療費の領収書は自宅で5年間保存する必要があるので注意してください。

医療費控除の明細書の作成方法

医療費控除の明細書の作成方法をチェックしておくと、申請をよりスムーズに済ませられます。そこで以下では、明細書の主な項目と記入内容をまとめました。

医療費控除の明細書の作成方法

出典:国税庁 確定申告用ホームページ
※「医療費控除の明細書」を加工して作成

主な項目 記入する内容
住所・氏名 確定申告をする本人の住所・氏名を記入する。
医療費通知に記載された事項 「医療費通知」を添付する場合は、通知に記載された医療費や実際に支払った金額、保険などで補てんされる金額を記入する。
医療費の明細 医療を受けた人の氏名や支払先、医療費の金額、保険などで補てんされる金額を記入する。なお、医療費通知を添付する場合は、通知に記載された医療費は記入しない。
明細の合計 明細に記載した「支払った医療費の額」と、「保険などで補てんされる金額」の合計額を記入する。
医療費の合計 「医療費通知に記載された事項」と「明細の合計金額」の合計額を記入する。
控除額の計算 案内に従って、医療費控除の合計金額を計算して記入する。

医療費の明細については、領収書ごとに情報を記入する必要はありません。「医療を受けた人」もしくは「病院」ごとにまとめて記入できるため、領収書の数が多い場合は事前に整理しておきましょう。

セルフメディケーション税制について

直接的な医療・治療が目的ではなくても、予防や健康増進を目的として特定の医薬品を購入している方は、セルフメディケーション税制によって所得控除を受けられる可能性があります。

セルフメディケーション税制とは、「スイッチOTC医薬品」と呼ばれる医薬品を購入した場合に、その購入費用が所得から控除される制度のこと。ドラッグストアなどで購入した医薬品も対象に含まれるので、病院などで治療を受けていない方にも適用されます。

セルフメディケーション税制が適用されるケース

セルフメディケーション税制には、主に以下の要件が設けられています。

  • 購入時のレシートを保存していること
  • スイッチOTC医薬品の購入額が、1年間で12,000円以上であること
  • 対象となる年に、健康のための一定の取り組み(予防接種や健康診断など)をしていること
  • 予防接種や健康診断などの領収書、もしくは結果通知表を保存していること

上記の要件を全て満たせばセルフメディケーション税制を利用できますが、実は医療費控除との併用は認められていません。つまり、「医療費控除を受けていないこと」も要件に含まれるので、どちらの制度を利用すべきかは慎重に判断することが大切です。

セルフメディケーション税制の対象となる医薬品

セルフメディケーション税制の対象となるスイッチOTC医薬品は、2020年9月の時点で1,830品目あります。具体的な品目は厚生労働省のホームページで公開されていますが、医薬品の購入前に毎回チェックすると大きな手間がかかってしまいます。

そこでぜひ知っておきたいポイントが、一部のスイッチOTC医薬品のパッケージには識別マークが表示されていること。該当品目には「セルフメディケーション税 控除対象」と書かれたマークが表示されているので、医薬品の購入前にはパッケージを隅々まで確認することをおすすめします。

要件を満たす方は、領収書などの整理と申請手続きを

医療費を支払っていれば、どのような方でも医療費控除やセルフメディケーション税制を利用できる可能性があります。ただし、実際に所得控除の適用を受けるには、確定申告において必要な手続きを済ませることが必要です。

また、申請にあたっては金額の確認も必要になるので、1年間の領収書やレシートは余裕をもって整理しておきましょう。

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公開日:2021年04月09日