55歳で早期退職するにはいくらあれば仕事を辞められる?必要資金や準備すべきこと

最終更新日:2022年10月26日

50代も半ばを超えてくると、早期退職を考える人が一定数います。「早く仕事を辞めて、自由になりたい」という気持ちが抑えられなくなり、行動に移す人も少なくありません。

早期退職をしてその後仕事に就かないのであれば、労働収入がなくなるため一定の資金を貯めておかないといけません。

この記事では、55歳で早期退職するための必要資金を、生活費と年金受給額・退職金受給額から詳細に試算します。失敗しない早期退職のポイントも解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

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目次

早期退職とは

いくらあれば55歳で早期退職できる?

55歳以降でもらえる年金・退職金以外の収入

55歳以降にかかる生活費以外の支出

早期退職で後悔しないためにするべき準備

いくらあれば55歳で早期退職できるかについてまとめ

早期退職とは

早期退職とは、一般的に定年とされる60歳~65歳を迎える前に仕事を辞めることです。企業側の視点に立てば、従業員が定年前に辞められる制度を早期退職制度といいます。

似た用語で希望退職というものがあります。希望退職制度とは、主に経営不振に陥った企業が、人員整理を目的に期間を定めて早期退職者を募集する制度です。

「希望」という言葉がついているように、あくまで従業員の意思が尊重されるので、人員整理が目的といってもリストラではありません。また、退職金の割増しなどの優遇措置が講じられることが多くあります。

一方の早期退職制度は、どちらかといえば福利厚生の意味合いを兼ねて、キャリアアップを支援する制度となっています。こちらも退職金の割り増しが用意されていることがほとんどで、再就職あっせんなどの支援策が制度化されているものもあります。

この記事では、早期退職・希望退職の違いにかかわらず、定年よりも早くリタイアすることを「早期退職」として表現して解説していきます。

いくらあれば55歳で早期退職できる?

いくらあれば55歳で早期退職できる?

早期退職を望む人が一番考えることは、「いくら準備できれば早期退職しても生活に困らないか」でしょう。ざっくりいうと、早期退職後の生活費を、支給される予定の公的年金額、退職金、預貯金、保有する資産などの合計が上回れば良いことになります。

ここからは、平均寿命までにかかる生活費、もらえる予定の年金額、もらえる退職金を統計から平均値を出し、試算していきます。

早期退職後の生活費をいくらに設定するかについては、人生観・価値観の違いによって大きく変わります。ここでは、「平均的な生活費」として総務省が公表する65歳以上の無職夫婦の支出額、「ゆとりある生活費」として公益財団法人生命保険文化センターが行った「令和元年度生活保障に関する調査」のアンケート結果の平均額の2パターンを生活費とします。

結論としては、平均的な生活費の場合は1,916万3,060円、ゆとりある生活費の場合は5,474万5,460円貯める必要があるという結果となりました。以下、詳しく解説します。

平均寿命までにかかる生活費

総務省統計局の「総世帯及び単身世帯の家計収支 家計調査年報(家計収支編)2021年」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の月々の支出は、食費・住居費・交際費などの消費支出が22万4,436円、納税などの非消費支出が3万664円の合計25万5,100円となります。

厚生労働省の「令和3年簡易生命表の概況」によると、55歳段階の日本の平均余命は男性で28年ですので、生涯をまっとうするまでの生活費は以下のように求められます。

25万5,100円×12ヵ月×28年=8,571万3,600円

また、生命保険文化センターが行った「令和元年度生活保障に関する調査」のアンケート結果によると、ゆとりある老後生活費の平均額は月額36.1万円になります。ゆとりの中身は旅行やレジャー、趣味や教養、日常生活費の充実などです。

この場合は生涯の生活費が以下のようになります。

36万1,000円×12ヵ月×28年=1億2,129万6,000円

もらえる年金額はいくら?

続いて、支給される予定の公的年金額を試算します。ポイントとしては、55歳で退職しその後社会保険料を支払っていないという想定なので、通常の65歳までの加入と比べて10年分低額になるということです。

日本年金機構が発表している計算式を用いて、まず夫の年金受給額を試算します。老齢厚生年金は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2階建てになっています。老齢基礎年金の計算式は以下の通りです(2021年度)。

78万900円×(納付月数)/480ヵ月

会社員の勤務期間が30年間だとすると、計算は以下のようになります(年額)。

78万900円×360ヵ月/480ヵ月=58万5,700円

次に、2階部分の老齢厚生年金の計算です。計算式は以下のようになります。

老齢厚生年金の受給額=報酬比例年金額+経過的加算+加給年金額

年金額のうち報酬比例部分の計算式は以下のようになります。

2003年3月以前:平均標準報酬月額×7.5/1,000×平成15年3月以前の加入月数
2003年4月以後:平均標準報酬額×5.769/1,000×平成15年4月以後の加入月数

年収600万円(月収50万円)の会社員が2003年4月以後の30年間社会保険料を納付し、55歳で早期退職する場合の報酬比例年金額(年額)は以下のように計算できます。

報酬比例年金額=50万円×5.769/1,000×360ヵ月=103万8,420円

老齢基礎年金と老齢厚生年金を足すと162万4,120円となりました。月額にすると13万5,343円です。

次に妻の年金受給額を試算します。妻は専業主婦で、480ヵ月(40年間)納付するとします。そうすると、老齢基礎年金満額の78万900円(年額)となり、月額は6万5,075円となります。

夫婦で合算しますと、年額240万5,030円となり、月額20万419円となりました。

ちなみに前述した「総世帯及び単身世帯の家計収支」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均年金額は21万6,519円となっていますので、若干少ない程度です。

年金支給は65歳からです。さきほどの28年から10年引いて18年で計算します。年金総支給額は次の通りとなります。

240万5,030円×18年=4,329万540円

もらえる退職金

退職金の平均値はいくらでしょうか。総務省統計局の「平成30年就労条件総合調査」によると、定年退職による退職金の平均値は学歴別で以下のようになります。

  • 大学・大学院卒:1,983万円
  • 高校卒(管理・事務・技術職):1,618万円
  • 高校卒(現業職):1,159万円

定年ではなく早期退職する場合は、退職の理由によって支給される退職金の額が大きく変わってきます。

同調査で、大学・大学院卒を見ると以下のようになります。

  • 早期優遇:2,326万円
  • 会社都合退職:2,156万円
  • 自己都合退職:1,519万円

55歳で仕事を辞めるのに必要な資金

以上、平均寿命までにかかる生活費、もらえる年金額、もらえる退職金のモデルケースを見てきました。それでは55歳以降に必要な資金は合計いくらになるのでしょうか。

平均的な生活費の場合
平均的な生活費 -8,571万3,600円
もらえる年金額 +4,329万540円
もらえる退職金 +2,326万円
不足金額 -1,916万3,060円
ゆとりある生活費の場合
平均的な生活費 -1億2,129万6,000円
もらえる年金額 +4,329万540円
もらえる退職金 +2,326万円
不足金額 -5,474万5,460円

年金と退職金のみでは平均的な生活費の場合は1,916万3,060円の不足、ゆとりある生活費の場合は5,474万5,460円の不足という試算結果となりました。

この不足分を預貯金や金融資産・転職や開業などで補う必要が出てきます。

55歳以降でもらえる年金・退職金以外の収入

ここまでは、早期退職後にもらえる年金・退職金に絞って収入を見てきましたが、それ以外にも収入を得る方法があります。下記のような収入が見込める方は、不足金額がさらに減る可能性があることを頭に入れておきましょう。

資産所得

株式、債券、不動産などからの資産所得があれば、家計を助けられます。また個人年金保険などの保険商品が満期を迎え、保険金が支給されることもあります。

相続・贈与

親などの世代からの相続・贈与によって、財産を増やすことがあります。

55歳以降にかかる生活費以外の支出

収入の次は支出です。生活費以外に必要となりそうな支出についても考慮した上で、55歳での早期退職を検討しましょう。

医療費・介護費

自身や配偶者の加齢によって、医療費や介護費がかかってくることが予想されます。

子・孫の教育費

お子さんやお孫さんの生活資金、教育資金などがかかることを予定して、その分の蓄えを用意しておく必要があります。

早期退職で後悔しないためにするべき準備

早期退職で後悔しないためにするべき準備

勢いだけで早期退職をしてしまうと、のちのち大変なことになることが目に見えています。早期退職で後悔しないために、するべき準備を欠かさないようにしましょう。

早期退職後のライフプランを考える

早期退職後のライフプランについては、人生観・価値観の違いによって必要となる金額も大きく変わります。前章では、平均的な生活費とゆとりある生活費の2パターンを試算しましたが、希望するライフステージによって必要とされる金額は変わります。

自分が叶えたいライフプランを熟慮した上で、それに合った早期退職のための資金を用意するようにしましょう。

老後資金を積み立てる

前章で、平均的な生活費の場合は1,916万3,060円の不足、ゆとりある生活費の場合は5,474万5,460円の不足という試算結果となりましたので、55歳までにこうした資金を貯める必要があります。

そのための方法を4つ紹介します。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(イデコ)は個人型確定拠出年金のことです。確定拠出年金法にもとづいて国が実施している個人年金制度です。

自分が掛け金を拠出し、自分で運用して資産を形成する年金制度となっていて、積み立てられた資産は60歳以降に老齢給付金として受け取れます。

iDeCoは積立金額が全額所得控除の対象になるので、節税につながります。運用益も非課税です。掛け金は月々5,000円から始められ、掛金額を1,000円単位で自由に設定できます。掛け金の上限は職業(個人の属性)によって変わりますが、企業年金に加入していない会社員の場合、月額2万3,000円まで掛けられます。

つみたてNISA

つみたてNISAは、長期・積立・分散投資を支援するための制度で、20年間非課税なのが特長です。つみたてNISAの対象商品は、金融庁が指定した金融商品に限定されています。販売手数料無料のいわゆるノーロード商品で、信託報酬も一定水準以下、頻繁に分配金が支払われることがないなどの条件に当てはまる公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)がその対象です。

金融庁が長期・積立・分散投資に適していると判断した優良な金融商品が対象となっていますので、投資初心者でも安心して取り組めます。非課税投資枠は、新規投資額で毎年40万円が上限とされています。

財形貯蓄

勤めている会社が財形貯蓄制度に加入している場合、利用できます。会社を通じて、提携する金融機関へ給与の一部を積み立てることで、確実な資産形成が可能になる制度です。

財形貯蓄制度には「一般財形貯蓄」「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」の3種類があり、財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄には元利550万円までの非課税枠があります。

運用先は定期預金、保険のほか、投資信託・国債・社債などの有価証券があります。有価証券で運用する場合は、元本割れの可能性もあります。

定期預金

定期預金は、1年・2年・10年などの期間をあらかじめ設定した上で、銀行などの金融機関にお金を預ける預金です。満期日まで基本的に引き出しはできませんが、普通預金より金利が高いことが特長です。

ただし、現在の日本は超低金利の時代なので、定期預金に預けていても資産が増えることは期待できません。

事前に収入と支出の計算をする

前章で示した資産は、あくまでモデルケースです。ご自身のライフスタイルにカスタマイズしたうえで、予定収入と予定支出を計算してみましょう。早期退職後の生活が、リアリティをもって感じられるはずです。

生きがいとなる趣味・目標を見つける

早期退職を迎えたその日から、「何もすることがない」状態に陥る人がいます。1日8時間、週40時間労働に費やしていた時間がポッカリと空いてしまうと、不安を抱いてしまう人がいるようです。

早期退職を見据えて、健康の維持と生きがいを見つけるために趣味を持つことをおすすめします。趣味を楽しむために一定の費用をかけることも必要です。豊かなアクティブシニアの生活を満喫するためにも、趣味と趣味に使える資金を事前に用意しておきましょう。

いくらあれば55歳で早期退職できるかについてまとめ

今回は55歳で早期退職をした場合、必要となる資金をシミュレーションしてみました。

平均的な生活を送るのであれば約2000万円、ゆとりのある生活を考えている場合は約5,500万円貯められれば、55歳で早期退職できそうです。自分自身のライフスタイルに落とし込んで試算をしてみれば、さらに腹落ちするのではないでしょうか。

55歳で早期退職し、自身が望むリタイヤ後の生活を実現するためにも、今のうちから資金繰りに挑戦してみましょう。

公開日:2022年10月26日

よくある質問

Q いくらあれば55歳に早期退職で辞めれますか? 回答を見る
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