脱サラで居酒屋を始めるには?よくある失敗と押さえるべき成功のコツ
最終更新日:2024年09月20日

脱サラして居酒屋を始めようと考える人は多いですが、一般的に「居酒屋の経営は難しい」「居酒屋は失敗する」と言われています。
本記事では脱サラして居酒屋の開業を目指す人向けに、居酒屋開業の失敗パターンや居酒屋開業の流れ、繁盛店をつくるヒントをお伝えします。
失敗の共通点や成功のコツを理解してトラブルを未然に防ぎ、安定した居酒屋経営を目指しましょう。
脱サラし居酒屋を始める人は多い
一度きりの人生だから後悔のないようにと、脱サラして居酒屋開業を目指す人は多いです。居酒屋をはじめ、カフェやバー、ラーメン屋など飲食店開業に挑戦し、一国一城の主を夢見る人が増えていますが、お店を開く人の数だけ廃業に陥っている人が多いのも事実です。
今回の記事では「なぜ多くの人が失敗するのか」「なぜ居酒屋を安易に目指す人が多いのか」を取り上げ、どのような準備をすれば成功に導けるかなど、順を追ってお伝えします。
居酒屋開業のよくある失敗ケースを知ろう
脱サラして成功させるコツを解説する前に、まずは居酒屋開業の「よくある失敗談」をご紹介します。失敗しやすいパターンを理解して、失敗を回避できるように備えておきましょう。
居酒屋に関する知識がない
全く知識や経験なしで居酒屋を始める人は、失敗する可能性が高いです。居酒屋で働いたことがない、飲食業や販売業の経験が0の人は居酒屋経営に関する基本的な知識が足りていないかもしれません。居酒屋経営は接客や調理以外に、下記のような業務が発生します。
- 宣伝
- 仕入れ
- 事務仕事
- メニュー開発
- 従業員の採用、マネジメント
売り上げの管理や資金計画など、居酒屋の店長・オーナーは接客や調理だけではなく、さまざまな業務をこなさなくてはなりません。基礎知識がないままお店を始めると、日ごろの業務だけで手一杯となり、集客や新メニューの開発などに手が回らず、失敗につながりやすいです。
まずは居酒屋の仕事の仕組みを理解し、飲食店の経営に関する情報も収集しながら、経営者としての知識を蓄えましょう。
料理や店づくりにこだわりすぎる
居酒屋経営が失敗する理由の1つに、利益率を度外視したこだわりの強さが挙げられます。料理の材料やお店の内装・外装、お皿やグラスなどにこだわりすぎると、コストも高額となるためです。
脱サラして自営業をスタートしてもすぐ軌道に乗るわけではないため、初期費用はなるべく抑え、料理もコストを下げて利益率が高くなるよう工夫することも大切です。
ただし、こだわりはお店のコンセプトでもあり、オリジナリティを出す重要な要素です。コストと利益のバランスを見ながら、こだわれるものはこだわり、他店との差別化を図りましょう。
資金調達や良い人材を採用する知識がない
3つ目の代表的な失敗例は、資金繰りや調達の仕方、人材の採用やマネジメントの知識不足です。居酒屋をはじめ、飲食店を大きくしていくには、資金の準備と人集めが必要不可欠です。
ここでは、居酒屋開業の必要資金と、採用にかかるコストの2点を解説します。
居酒屋の開業資金は次の4点です。
- 1.物件費
- 2.人件費
- 3.広告費
- 4.運転資金
居酒屋の開業には上記を合計し、約1,500万円かかるとされています。ただし居抜き物件を使えば、設備費や工事費が削減でき初期費用を抑えられます。
次に採用にかかるコスト(時間・費用)は以下の4点です。
- 1.求人広告の準備
- 2.応募者への対応
- 3.選考
- 4.人材育成
店の経営が忙しくなって採用の勉強をしても、十分な時間が確保できません。最終的に「誰でもいいから採用しよう」と視野が狭くなり、採用活動が上手くいかなくなる恐れもあります。
脱サラ前に資金繰りや人材に関することを学び、切羽詰まってから焦ることがないよう、十分な知識を得ておきましょう。
脱サラで居酒屋開業を行うステップを詳しく解説
前章では、脱サラして居酒屋が廃業にいたる失敗例を前述しました。失敗のパターンを押さえたら、次は具体的な開業の流れを確認していきましょう。
なお、ステップの順番は必ずしも守る必要はなく、タイミングに応じてできるところから準備をしていくのがおすすめです。
居酒屋開業の目的を考える
開業ステップの1つ目は、居酒屋を開業する目的を見つめ直すことです。なぜ脱サラしてまで居酒屋を開業したいのか、自身のなかで明確な目的があるのか、じっくり考えてみましょう。
居酒屋を開業する目的がはっきりしていれば、お店が経営難になったときでも「居酒屋を守り抜く」という強い意志があるため、踏ん張りがきくでしょう。しかし脱サラそのものが目的だと、会社を辞めた時点で目的が達成されたことになります。
なぜ脱サラをして居酒屋を始めたいのか、自分なりの目的をつかむことが開業の第一歩です。
資金計画をする
脱サラをして居酒屋を構えるには、開業資金の準備が欠かせません。居酒屋を始める際に必要な資金は、大きく次の2つに分類できます。
物件取得費
物件を借りるために発生する費用で仲介手数料や保証金、前家賃などです。店舗投資費用
居酒屋として経営をするためにお店の環境を整備する費用です。たとえば内外装の施工工事、厨房機器、椅子などの購入費用があります。
さらに、運転資金や生活費なども確保しておく必要があるので、居酒屋経営に発生するお金の項目を洗い出して、資金計画を練りましょう。もし貯金だけで全てを補えないときは、金融機関からの融資も検討してください。
お店のコンセプトを考える
次に、どのような居酒屋にしたいのか、具体的なコンセプトを決めましょう。コンセプト作りは、以下の7W2Hを活用するのがおすすめです。
- Why=なぜ脱サラして「居酒屋」を開業するのか
- Where=どこに出店するか
- What=どのような料理やお酒を提供するか
- When=いつ居酒屋を始めるか
- Who=誰と働くのか
- Whom=どのような人たちがターゲットか
- Which=どれを看板メニューとして売り出すか
- How=どのような方針で経営するか
- How much=いくら開業資金を用意し、いくらの価格設定にするのか
これらをもとに、にぎやかなお店にするのか、落ち着いた雰囲気の居酒屋にするのか、学生やサラリーマンをターゲットにするのか、などを決めましょう。
コンセプトは店の内装や備品選び、メニュー開発の基盤となるものです。軸がブレないよう明確なコンセプトを打ち立ててください。
出店エリア・物件探しをする
居酒屋を出店する場所は売り上げに大きな影響が出るので、慎重に決めて物件を探しましょう。人目につきやすい場所か、駅から近いかなどを考慮し、ターゲットとなる人物が使いやすい場所はどこか目星をつけます。たとえば居酒屋は夜のお店なので、「サラリーマンが通いやすい=駅に近い」などです。
客足の見込みを調べるためには、商圏調査(エリアマーケティング)が有効です。無料で利用できるツールもあるので、まずは出店したいエリアの状況を調べてみてください。
内装工事・備品集めをする
居酒屋の概要が決まったら、いよいよ店内の準備を進めましょう。内装工事の流れや、必要な備品を簡単にまとめました。
内装工事の流れは以下の通りです。
- 1.施工業者を決める
- 2.内装のイメージなど打ち合わせ
- 3.プランニング(デザインのイメージ図の作成など)
- 4.見積り
- 5.契約・着工
- 6.引き渡し
なお、居酒屋を始めるには営業許可を申請する必要があり、申請が認められなければ営業ができません。もし工事が終わってから不備が出てきた場合は、やり直しが必要となるので内装工事が始まる前に、保健所へ相談しておきましょう。
次に、居酒屋に必要な備品は主に以下の3種類です。
食器
はし、フォーク、ビールグラス、徳利、平皿、深皿など。厨房
冷蔵庫、調理台、コンロ、スライサー、フライパンなど。客席
椅子、テーブル、メニュー表、調味料入れ、レジ、電卓、電話など。
あらかじめ決めておいたコンセプトを基盤に、内装や備品に統一感を出して、店の雰囲気作りをしましょう。
コンセプトに合わせたメニュー開発をする
次のステップは、メニューの開発です。ターゲットとなる客層にあわせたメニューを開発しましょう。女性客をターゲットにするなら、甘めのお酒やデザートの品数を増やし、学生がターゲットであれば量の多いメニューが良いかもしれません。
調理法や食材の種別(肉料理、魚料理など)など、カテゴリーに分けてメニューを考案します。また競合店を調査して看板メニューや相場観を参考にすると良いでしょう。
各種免許の準備・届出を行う
居酒屋を開業するために必要な資格や届出など代表的なものをまとめました。
個人事業主の開業届出書
自営業を始める前に税務署へ提出し、翌年度の3月に確定申告を行います。飲食店営業許可
食べ物を提供するお店を営むときは保健所の許可が必要です。内装工事前にあらかじめ保健所へ相談に行きましょう。深夜酒類提供飲食店営業開始届出書
深夜12時以降にお酒を提供する場合は警察署に届出ます。防火管理者選任届
収容人数が30人未満であれば届出は不要です。火を使用する設備の設置届
厨房設備、温風暖房機、ボイラーなどを設置・変更するときに消防署へ届出ます。
さらに従業員を採用する際は労災保険の加入が必須です。雇用保険や社会保険は状況によって加入することとなるので、開業前に近所の年金事務所やハローワークで調べておくと安心です。
販促・集客方法を練る
立地の良い場所に店舗を構えて看板メニューを作ったら、どうやって集客をするか方法を決めましょう。集客の方法として代表的なものを以下にまとめました。
- SNS
- ホームページ
- ダイレクトメール
- 食べログ、ヒトサラなどポータルサイトに登録
- 折り込みチラシ
- ポスティング
- ローカル誌に広告を掲載
このほかにも、ショップカードを作って他店に置かせてもらうなど、お客さんに知ってもらう窓口は多めに作っておくのがおすすめです。
人材募集を行う
オープニングスタッフが必要であれば、求人誌などで人材を募集します。人材を募集するには次のような方法があります。
求人誌に掲載
タウンワーク、Workin、しごと情報アイデムなど。求人サイトを使う
indeed、engage、求人ボックスなど。折り込みチラシ
貼り紙
人材募集して従業員を採用したら、オープニングまでに研修を実施し、仕事の流れや道具の場所、かけ声や挨拶の仕方などを指導する時間を設けます。
お客さんに好印象を与え、リピーターになってもらうためには従業員や店長の接客も重要なポイントです。オープンしてからスムーズに仕事ができるよう、採用後は丁寧に指導しましょう。
脱サラで居酒屋を成功させるコツ
居酒屋を成功させるコツを、3つに絞りご紹介します。コツを押さえて効率良く経営を行い、可能な限り早めに経営を軌道に乗せましょう。
フランチャイズを活用する
居酒屋は経営が難しく、経営初心者の方におすすめなのが、フランチャイズの活用です。フランチャイズ経営は本部(フランチャイザー)と契約をして、ノウハウや商品を販売する権利をもらい、その対価を本部へ知らって経営をする仕組みを言います。
たとえば珈琲所コメダ喫茶店と契約をすれば、自身の店舗でコメダ喫茶店のメニューを販売し、看板も「珈琲所コメダ喫茶店」と掲げられます。
フランチャイズを活用すれば、販売する商品はすでにできており、ブランド力を活用して集客が見込めるといったメリットを受けられます。その一方で、対価の支払いやブランドイメージが崩れたときに影響を受けるので、リスクを理解したうえでフランチャイズの活用を検討しましょう。
フランチャイズで経営者を目指したい人や、人気のフランチャイズが知りたい人は、こちらを参考にしてみてください。
コンセプトを明確にする
2つ目の成功のコツは、コンセプトを明確にして貫くことです。居酒屋の開業ステップで、コンセプトの作り方をお話ししました。コンセプトはメニュー作りや居酒屋の雰囲気作りなど、経営の核になる重要な部分です。
コンセプトが明確であれば、ターゲットや出店エリア、メニュー作りなどの芯がブレにくくなり、統一感のあるお店が作れます。特にターゲットを絞っておくと、効果的な集客方法が選択でき、出店エリアの選定やメニューの開発にも役立ちます。
コンセプトを明確にし、ターゲットの心に響く居酒屋を経営するのが、脱サラの成功につながります。
キャッシュレス対応やUSENなどの検討
飲食店を支援してくれるサービスの導入も、成功のコツの1つです。たとえば、次に挙げるようなサービスの活用がおすすめです。
キャッシュレス決済
クレジットカード、デビットカード、電子マネー、スマートフォン決済など。USEN
音楽を配信する有線ラジオ放送のこと。
お店がキャッシュレス決済に対応していなければ、現金を持ち歩かない人は頻繁に足を運びにくいかもしれません。ポイントの貯まるキャッシュレス決済を導入し、客足が離れない工夫も経営には必要です。
またUSENを導入すれば、季節ごとに音楽を用意する手間が省け、飽きることもありません。
さらにSNSマーケティングの事業者と手を組んで販促に取り組むなど、多方面で情報をキャッチ・発信できるスキルが経営の成功に影響します。
さまざまな情報にアンテナを立て、居酒屋経営に取り入れる姿勢を持ち、新しいものも積極的に活用していくと時代の波に置いて行かれにくくなります。
よくある失敗例を理解して居酒屋開業を成功させよう
脱サラして居酒屋を成功させるには、先人の失敗からパターンを学び、あらかじめトラブルへの対策を立てて準備することが重要です。
飲食店を開業してから軌道に乗るまでは、半年~1年かかる場合が多く、赤字が続くことも考えられます。経営を軌道に乗せることに専念できるよう、居酒屋の知識や資金調達、採用に関する最低限の情報は、脱サラ前に学んでおきましょう。
公開日:2021年12月24日