介護タクシーを開業するまでの流れとは?必要な資金や手続き、失敗させないポイントなどを解説
最終更新日:2024年09月20日

介護タクシーは、車いすの利用者や介護が必要な方を目的地まで送迎するサービス。高齢者や障がい者が年々増えていることから需要が拡大しており、介護タクシーの開業を検討する方も多いです。
そこで今回は、介護タクシーで開業するための具体的な流れや開業に必要な資金、失敗しないポイントなど、開業前に知っておきたい情報をまとめて解説します。
介護タクシーの将来性や開業時におすすめのフランチャイズも紹介しているのでぜひ参考にしてください。
そもそも介護タクシーとは?
介護タクシーとは、自力での移動が難しい高齢者や障がい者の送迎を行う福祉車両のことです。介護タクシーのビジネスは、「一般乗用旅客自動車運送事業(ハイヤー・タクシー事業)」に分類されます。
介護タクシーで開業するために必要な国家資格はありませんが、運転免許や管轄運輸局の事業許可取得などが必要です。
介護タクシーは、介護保険が適用されるサービスと介護保険が適用されないサービスの2種類あり、どちらの開業形態を選ぶかによって必要な資格や提供できるサービスなどが異なります。
介護保険タクシーと介護タクシーの違い
介護保険タクシーとは、介護保険が適用されるタクシーサービスのことです。介護・介助が必要な利用者に対し、介助サービスを提供できる特徴があります。そのため、開業時にドライバーへの介護職員初任者研修の受講が義務付けられています。
介護タクシーの場合、利用者に対して介助サービスを提供せず、目的地まで送迎することが主なサービスになるため介護保険は適用されません。一般的に家族などの付き添いの方が乗り降りする際の介助を行う場合がほとんどです。
介護タクシーの開業には、第二種運転免許の取得が必要です。介護タクシーの呼び方には明確な定義や法令が定められていませんが、介護保険に適用されない介護タクシーのことを「福祉タクシー」と呼ぶこともあります。
介護タクシーは廃業率が高い?現状と将来性
2000年代前半に一般タクシーが増えすぎた時期があり、タクシーの減車を目的とした規制強化が行われました。このような背景から、介護タクシーを開業しても廃業率が高いのではと不安に感じる方もいらっしゃることでしょう。
しかし、国土交通省が公開した「福祉タクシー車両の導入状況について」によると、2021年度末時点の介護タクシー(福祉タクシー)の車両数は42,622台。2012年度末の13,856台から比較すると約10年で約28,000台も増加していることが分かっています。
さらに、高齢者や要介護者の人数の増加を背景に、国土交通省は「2025年度末までには約90,000台にする」というバリアフリー目標を掲げ、介護タクシーを増やす取り組みを行っていることから、今後も益々需要が高まるビジネスだと言えます。
介護タクシー開業は儲かる?収入(年収)の目安
需要が高いことが分かった介護タクシーですが、実際開業した場合に果たして儲かるのか、収入(年収)はどのくらいなのか気になっている方も多いでしょう。
介護タクシーの収入源は、運賃や介助料、機材使用料などで構成されます。週に6日稼働すると想定した場合、年収にすると約420万円が目安とも言われており、そこから車両や事業所などにかかる経費を差し引いた金額が手取りになります。
事業所の規模や介護タクシーの台数、従業員数などによっても大きく変わるので一概には言えませんが、介護タクシーの数がまだまだ不足しているという現状から、集客方法の工夫や適切な経費コントロールによって大きく稼ぐことは不可能ではないと言えるでしょう。
介護タクシーを開業するための要件・資格と手順
介護タクシーを開業するためには、事業許可を得るための要件を満たさなければなりません。
そこでここからは、介護タクシーの開業要件や資格、具体的な手順を解説します。
事業許可要件を確認する
介護タクシーを開業するには、まず国土交通省の運輸局から事業許可を得るための要件を確認しておきましょう。
許可を得るための主な要件は、以下の3つです。
- 人的要件
- 設備要件
- 資金要件
それぞれ詳しく解説します。
人的要件
介護タクシーを開業する上で必要な人的要件は以下の3点です。
- 第二種運転免許を取得しているドライバーがいる
- 常勤の運行管理者が1名以上いる
- 常勤の整備管理者が1名以上いる
運行管理者は、ドライバーと整備管理者をそれぞれ兼任でき、整備管理者はドライバーと運行管理者の兼任が認められています。
また、介護保険が適用される介護保険タクシーとして開業する場合は、「介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)」の取得が必要になるので覚えておきましょう。
設備要件
介護タクシーを開業する際、営業所や車庫、休憩スペースに関する要件があります。
- 3年以上の使用権限(土地・建物)を有する営業所である
- リフト・スロープなどの乗降に必要な装置を完備した福祉自動車が1台以上ある
- 営業所に隣接または直線上2㎞以内に事業用車両の車庫がある
- 営業所内にドライバーが休憩・仮眠できるスペースがある
資金要件
介護タクシーを開業する際は、自己資金に関する要件を確認しておく必要があります。
- 所要資金の合計額の50%以上の自己資金がある
- 申請日以降も事業開始当初に必要な資金の合計額の100%の自己資金を確保している
所要資金には、車両・土地・建物などの取得費用や運転資金、保険料などに必要な費用が含まれています。
参照:福祉輸送サービスを行うことを条件とした一般乗用旅客自動車運送事業の申請に関する審査基準について | 運輸局
運輸支局に許可申請書を提出する
事業許可要件を全て満たしたことを確認した後に、営業所の所在地を管轄する運輸支局に許可申請書を提出します。
申請書類は「各運輸支局のホームページ」でダウンロード可能です。申請書はA4版縦・横書き・左とじを指定し、各書類を3部作成します。1部は運輸支局の輸送担当者に提出し、2部は控えとして保管しておきましょう。
法令試験と事情聴取を受ける
許可申請書の提出後は、運輸支局が実施する法令試験と事情聴取を受けます。法令試験は○×方式や簡単な筆記回答方式などが採用されており、法令集の持ち込みが認められています。出題数は全30問となっており、出題範囲は次の通りです。
- 道路運送法
- 道路運送法施行令
- 道路運送法施行規則
- 旅客自動車運送事業運輸規則
- 旅客自動車運送事業等報告規則
- 自動車事故報告規則
- その他一般旅客自動車運送事業の遂行に必要な法令等
合格ラインは正解率80%以上のため、24問以上正解すれば試験を通過できます。不合格の場合は再試験を受けます。
参照:一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシーを除く。)の申請等に係る法令試験の実施要領について|中部運輸局
許可処分と許可証の交付を受ける
運輸支局で許可申請の審査基準に基づいて審査が実施されます。
申請書類に不備がなければ、許可処分として許可証が交付されます。許可証の交付までにかかる期間の目安は2ヵ月程度です。許可証が交付されただけでは事業をすぐに開始できません。
登録免許税の納付と届け出を行う
「四国運輸局のホームページ」に記載されている許可書の交付に関する記述によると、許可証の交付を受けた後に登録免許税3万円を納付する旨が記載されています。
なお、登録免許税は、許可書の交付後に運輸支局から受け取った納付書を用いて税金を収めます。領収書の原本は、届出様式に添付して運輸支局へ提出しましょう。
介護タクシーで使用する車両の検査と登録
登録免許税の納付後は、介護タクシーに使用できる車両かどうかを確認するための検査と登録手続きを行います。介護タクシーとして使用するためには、次のような設備が設けられている車両を用意しておく必要があります。
- 車いす・ストレッチャーを乗降するためのリフト・スロープ
- 回転式・リフトアップ式のシート
車両の検査後に登録手続きをすると、事業用車両を表す緑色のナンバープレートに変更されます。車両を登録する際の注意点は所有者名義の記載です。車両を登録する際の所有者の名義は、許可申請の設備要件によって事業者の氏名(申請者)と定められているため、間違えて使用者の氏名を記載しないようにしましょう。
参照:一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業)の許可の申請に関する審査基準及び細部取扱について|近畿運輸局
運輸開始届を提出する
事業開始後は運輸支局へ運輸開始届を提出します。運輸開始届は介護タクシー事業を開始したことを報告するための書類です。提出期限は許可証の取得日から6ヵ月以内と定められています。運輸開始届のほかに以下の書類を準備しましょう。
- 車検証の写し
- 任意保険本証の写し
- 運行管理者選任届
- 整備管理者選任届
- 指導主任者選任届
- 就業規則の写し
- 労働保険・保険関係成立届の写し
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届の写し
- 営業所・車庫・事業用車両の写真
上記書類一式を添付して提出し、運輸開始届が受理されれば開業に必要な手続きは終了です。
参照:一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の運輸開始届出書|東北運輸局
介護タクシーの開業に必要な費用の目安
介護タクシーの開業には、以下のような車両・事業所にかかる費用や設備・備品・消耗品にかかる費用、運営にかかる費用が発生します。それぞれの費用について以下で解説します。
項目 | 費用目安 |
---|---|
車両代 | 100万円以上 |
車庫の料金 | 20万円前後 |
任意保険料 | 年間10万円程度 |
事業所の賃料 | 10万円前後 |
設備・備品・消耗品 | 15~20万円 |
運輸局登録免許税 | 3万円 |
介護職員初任者研修(任意) | 3〜15万円 |
広告宣伝費 | 5%〜10% |
運営資金(3ヵ月分) | 150万円 |
車両にかかる費用
介護タクシーを開業するには、利用者を輸送するための車両や保管スペースの使用料などが必要です。
車両にかかる費用の項目と目安は以下が挙げられます。
- 車両購入費:100万円以上
- 車庫代:年間20万円前後
- 任意保険料:年間10万円程度
車両購入費の目安は軽自動車なら100万円以上、ワゴン車の場合300万円以上。新車か中古車でも購入費用は異なります。
また、車庫代は保管する車両の大きさや立地の相場によって左右されます。任意保険料は保険会社や加入する保険の種類によって金額が変わるため、比較検討してから加入する保険を決めましょう。
事業所にかかる費用
事業所にかかる費用として介護タクシー事業の拠点となる事業所の家賃が挙げられます。自宅を事業所とする場合は家賃がかからないため、事業所にかかる費用を無料に抑えられるでしょう。ただし事務所だけでなく、ドライバーが休憩や仮眠をとるためのスペースを確保する必要があります。
テナント物件を借りる場合は、毎月10万円程度の家賃が発生します。また、設備要件にある3年以上の使用権限を満たしているかといった契約内容を確認しておきましょう。
設備・備品・消耗品にかかる費用
設備・備品・消耗品も、介護タクシーを開業する際に必要な費用です。
先ほどご紹介した設備要件を満たすよう、事業所や車両の設備を導入する必要があります。また、利用者を乗せて移動するための車椅子など、送迎時に必要な備品や消耗品なども必要になるでしょう。
全て新品で揃えると初期費用が膨らんでしまうので、中古品やリース品の活用も検討してみてください。また、提供するサービス内容によっても異なるので、事前にリストアップするなど計画的に準備を進めましょう。
運営にかかる費用
運営にかかる費用には以下のような項目が挙げられます。管理費用は、事業所で使用する水道光熱費や消耗品費を指します。主な管理費用の内訳は次の通りです。
- 水道料金
- 電気料金
- インターネット料金
- 机・イス・パソコンなどの備品購入費
- 用紙・文房具・印鑑などの事務用品や消耗品の購入費
- スタッフの人件費
- 車両の燃料費
- 事業所の設備の修繕費
スタッフの人件費は事業所によって異なりますが、1人あたりの給与の目安は20~25万円程度です。一般的に運営資金は3ヵ月分を確保しておく必要があるとされています。
介護タクシー開業に活用できる補助金・助成金
介護タクシーの開業に必要な費用は、補助金や助成金を活用して調達することもできます。
介護タクシーの開業には、以下のような補助金・助成金制度を利用することが可能ですので、自己資金だけでは不安な方は、ぜひ検討してみてください。
制度名 | 概要 |
---|---|
福祉タクシー車両導入促進事業費補助金 | ・神奈川県や千葉県などで実施されている補助金制度 ・介護タクシーの車両購入に必要な費用の一部を補助する制度 ※都道府県によって適用範囲や補助金額が異なる |
小規模事業者持続化補助金 | ・小規模事業者が自ら経営計画を策定し、商工会や商工会議所のサポートを受けながら販路開拓や業務効率化を行った際に費用の一部を補助する制度 ・補助上額50~200万円 |
キャリアアップ助成金 | ・非正規雇用の労働者のキャリアップを促進するために行った取り組みに対して助成を行う制度 ・該当者1人あたり最大57万円 |
参照:小規模事業者持続化補助金 | 経済産業省
参照:キャリアアップ助成金 | 厚生労働省
介護タクシー開業を失敗させないポイント
介護タクシー開業を失敗させないためには、下記のポイントを押さえることが大事です。
- 開業予定日から余裕を持って準備を始める
- 利益が出せる料金設定
- 介護事業所の職員との良好な関係づくり
介護タクシーの開業には事業許可要件を満たす人材の確保や設備導入、資金調達、試験、届出などさまざまな準備や手続きが必要になります。そのため、計画的に進めないと想定外の事態が起こったときに予定通りに開業ができなかったり、その分余計なコストがかかったりと開業後の経営にも影響しかねない状況を招いてしまう可能性があるので注意が必要です。
また、利益が出せる適切な料金設定も失敗させないための大事なポイント。料金設定認可申請書の提出後は一度申請するとしばらくは変更できないので、十分に検討した上で利用料を決定することをおすすめします。
そして、介護事業所職員との良好な関係づくりも、介護タクシーを失敗させないために押さえておきたいポイントの一つです。自身で色んな介護事業所に営業をしなくても新規のお客さんを紹介してくれるなどのメリットがあります。
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介護サービスの開業に関する記事
公開日:2022年11月25日