クリニックを開業する方法!必須の資格や開業で失敗しにくいポイント5選

公開日:2022年12月20日

初めてのクリニック開業はわからないことだらけですよね。準備を効率的に進めるにはどのような方法がベストなのでしょうか。

この記事では、クリニック開業までにやっておくべき事柄をわかりやすく解説します。開業に必要な資格やあれば役立つ資格や診療科目ごとに必要な資金、失敗を防ぐためのポイントなども合わせて解説するのでぜひ参考にしてください。

目次

クリニックの開業方法と手順

クリニック開業に必要な資格とは

診療科目別!クリニック開業に必要な資金の目安

クリニック開業で失敗しないためのポイント5選

クリニック開業についてまとめ

クリニックの開業方法と手順

クリニックの開業方法と手順

まずはクリニックを開業する方法について手順に沿って解説します。

事業計画を策定する

どういうクリニックにしたいか、提供する医療サービスや経営の方向性を決めます。なぜ開業するのか、他のクリニックとはどう違う特徴を出していきたいのかなどを掘り下げましょう。

次に、クリニックの方向性や特徴、経営理念などを事業計画に落とし込んで作成します。事業計画とともに、開業に向けてどの程度の費用がかかるかの計算も必要です。開業費用は診療科目によっても異なります。開業費用や収支構造、資金繰りなどを詰め、損益計算書や収支予算表なども準備して開業に向けたイメージを固めていきます。

開業場所や物件を選ぶ

事業計画が固まったらクリニック開業に必要な土地や物件を選びます。理想とする地域医療サービスの提供を長期に渡って実現していくためにも物件選びは重要です。開業場所や物件は事業計画で定めた経営理念や方向性などを踏まえながらしっかり吟味しましょう。

開業場所の選定には専門の診療圏調査を利用するのがおすすめです。検討している地域の年齢層や人口増減の見通し、競合となる医療機関の立地状況や患者にとって通院しやすいかなどを分析してアドバイスをしてもらえます。

資金を調達する

物件探しと並行して資金調達の道筋をつける必要があります。金融機関から融資を受ける場合は、事業計画書に加え趣意書の提出が求められます。趣意書とは、医師になった理由や診療科目を選んだ理由、開業する理由などをA4用紙1枚にまとめた文書です。

融資を申請できる金融機関には、民間銀行以外にも独立行政法人福祉医療機構や日本政策金融金庫といった政府系金融機関、医師信用組合などがあります。

内装や医療機器の準備をする

次に、建物の内装と医療機器の準備を進めます。

内装は、クリニックのスタッフや患者が効率的で快適に動き回れるような動線を考慮してレイアウトを考えてください。医療機器は機器類の用途や特徴に合わせて適切な場所に配置しましょう。

医療機器はクリニックで提供したい医療サービスの種類や、品質担保に必要なものを揃える必要があるため費用がかかります。中古の購入やリースにすると導入コストを抑えられるでしょう。

設計や内装では、電気容量や空調設備・水回りなど細部にわたるまでクリニックの機能に必要なニーズを満たしているかのチェックが必要です。医療施設には、医療法や建築基準法などさまざまな法令基準が課せられています。故障や事故などのトラブルが起こったり、法令の不備が指摘されたりといった状況を避けるためにも開業コンサルタントのような専門家の支援を利用するのも一つの手です。

必要な手続きを行う

開業に向けた主な手続きとして、管轄保健所へ提出する「診療所開設届」があります。クリニック開設後10日以内の提出が義務付けられています。保険医療機関としての指定を受けるために厚生局での「保険医療機関申請」の手続きも必要です。

開業に向けてさまざまな事柄が同時進行で動いているため、必要な手続きが漏れて開業に影響する恐れもあります。書類提出から認可を受けるまでの日数の目安など手続きに要する期間をあらかじめ各機関に確認しつつ、開業日から逆算して早め早めの対応を心がけましょう。

スタッフを採用する

クリニックの運営に必要な看護師や受付事務員などを募集します。小児科や内科など、診療科目の患者層にマッチした人材の採用を心がけましょう。

受付事務はレセプトや診療報酬の知識経験がある人材を最低でも一人確保できると現場が回ります。

研修には1ヵ月ほどの期間を要します。スタッフの準備が整った状態でオープン初日を迎えられるよう、遅くとも開業3ヵ月前までには採用活動をスタートすることが大切です。

近年はインターネットでの求人が主流となっています。新聞やフリーペーパーなどの活用も検討しつつ、オンライン求人サービスをフル活用してクリニックのホームページにも求人情報を掲載しましょう。

宣伝活動・開業

多くの患者に利用してもらえるよう、宣伝活動も並行して進めます。クリニックの公式ホームページを開設して概要やサービス内容などの情報を掲載しつつ、チラシのポスティングやフリーペーパーや新聞広告、SNSなど多種多様な情報伝達手段を活用しましょう。

すべての準備が整ったらいよいよクリニックの開業スタートです。余裕ある対応で患者様をお迎えしましょう。

クリニック開業に必要な資格とは

クリニック開業に必要な資格とは

クリニック開業に必要な資格、あるいは持っていると有利に働く資格をいくつかご紹介します。

必須となる資格

「医師免許」があればクリニックの開業は可能です。医師免許を持たない人がクリニック運営を志す場合、医師免許保持者を管理者として院長に据えることで開業できます。

クリニックの敷地面積や収容人数などに応じて防火管理者の設置も必須です。原則として30人以上の収容人数が見込まれ、防火管理者の設置が義務付けられるビルにクリニックを構える場合、防火管理者を設置する必要があります。

一般社団法人日本防火・防災協会が実施する防火管理者講習を受講して効果測定に合格すれば、防火管理者の資格取得が可能です。開業前に防火管理者選任届や消防計画書などの書類を管轄地域内の消防署に提出する必要があります。

持っていると役立つ資格

医師として特定の診療科目を標榜する場合、専門医の資格を取得しておくとその分野での専門性のアピールに役立ちます。専門医の資格を得るには、2年間の初期診療研修の修了後に医療機関の専門医プログラムで後期研修を受ける必要があります。

医療経営士も役立つ資格の一つです。財務や人事など医療機関の経営に必要な医療・経営知識、経営問題を解決する能力を証明する資格です。1級・2級・3級の3等級が設定されています。資格の取得には日本医療経営実践協会が実施する資格認定試験に合格する必要があります。

そのほか、クリニック経営で役立つのが病院経営管理士の資格です。病院管理運営を円滑かつ積極的に実行する能力と適応力が問われる試験で、資格取得には一般社団法人日本病院会が実施する病院経営管理士通信教育を受講して卒業することで付与されます。

医業経営コンサルタントは病院経営の能力向上に役立つ資格として、医師の間でも取得が広まっています。クリニックや病院などの医療・介護施設向けに経営コンサルティングを提供する能力を認定する資格です。公益社団法人日本医療経営コンサルタント協会が実施する講座を受講し、一次・二次試験に合格した上で同協会の正会員になることで資格が付与されます。資格取得後も研修への参加が必須です。

診療科目別!クリニック開業に必要な資金の目安

クリニックの開業に必要な資金の目安を診療科目別に解説します。土地や建物の有無などで変動するため、あくまで参考程度にしてください。

内科

内科でのクリニック開業には、土地・建物の取得に最低でも3,000万円程度、設備には2,500万円から3,500万円程度かかります。内視鏡や超音波検査をはじめとする医療機器の導入に加えて消化器内科や循環器内科などの専門領域も標榜する場合、専用の機器・設備も必要です。

皮膚科

皮膚科での開業の場合、さほど広いスペースを必要しない分、土地・建物の取得には最低でも1,500万円程度、設備には最低でも500万円程あれば開業可能です。美容関連の治療を目的にレーザー機器も導入する場合は1,000万円程度必要です。

小児科

小児科を開業する場合、土地・建物には最低でも3,000万円程度、設備に1,000万円程度のコストが発生します。院内感染を避けるための待機室や専門の出入り口の設置が必要なほか、子連れでの来院者用のキッズルーム、車を利用する保護者に合わせた駐車スペースの確保なども必要です。

耳鼻咽喉科

土地・建物の取得には最低でも3,000万円程度、設備には2,000万円から2,500万円程度かかります。空気感染を避けるための換気システムの設置や、高齢者・小児の患者向けのバリアフリー対策なども必要です。

心療内科

心療内科の場合、医療機器や設備、また配置スタッフも他の診療科目に比べて最小限で済みます。土地・建物の取得に最低1,000万円程度、設備投資に最低400万円程度と見ておけば良いでしょう。

整形外科

整形外科はリハビリテーション用の設備を整える必要があるため、土地・建物に最低限でも3,000万円程度、設備投資に1,900万円から2,500万円程度のコストが発生します。通常の人員に加えてリハビリ専門の人員配置も必要なので人件費を多めに見積もっておきましょう。

クリニック開業で失敗しないためのポイント5選

クリニック開業で失敗しないために押さえておくべきポイントを5つご紹介します。

1.常勤スタッフの人数を絞る

クリニックを開業してから経営が軌道に乗るまではある程度の時間がかかります。運転資金を抑える上でコストダウンが可能な項目の一つが人件費です。常勤スタッフの人数は運営に支障をきたさない程度の最小限に絞りつつ、パートタイムを積極的に雇用するなどの対応で人件費削減に努めましょう。

2.医療機器導入の際は人件費も考慮する

クリニックに導入する医療機器の中には、操作に専門資格が必要な場合もあります。医療機器を操作する人員も雇用するとなるとさらに人件費がかさみます。医療機器の導入とそれに伴う人材の雇用で資金繰りが厳しくなり、経営が破綻するようでは元も子もありません。発生する人件費も考慮に入れながら医療機器の導入を検討しましょう。

3.コンセプトを明確にする

経営体制や医療サービスの展開方法などクリニックのコンセプトを具体化しましょう。コンセプトが明確であればあるほど必要な建物や立地や設備、人員や資金面の計画も立てやすくなります。

コンセプトを元に患者の性別や年齢層・職業・健康上の課題などターゲットとする患者の層も具体化しておく必要があります。ターゲットが明確化すれば、患者が通院しやすい立地条件や必要な設備・広告宣伝の進め方なども見えてきます。

4.周辺地域の医院を調査する

周辺地域に医院がどの程度あるかを事前に把握しておくのも重要です。事前に周辺地域を調査して競合するクリニックがどの程度あるか、どのような医療サービスの需要が高いかなどを把握しましょう。同じ診療科目のクリニックが複数ある地域に開業すると患者の獲得が困難になり、経営が立ち行かなくなる可能性があります。

5.医師会へ挨拶をする

地域の医師会への入会は必須ではありません。ただし、入会することで健康診断や予防接種などの業務を依頼されるようになり、知名度も上がるため経営を軌道に乗せるには有利に働きます。入会希望を地域の医師会に伝えた上で挨拶に赴くと良いでしょう。

クリニック開業についてまとめ

クリニックの開業にはさまざまな準備が必要です。診療科目によって必要な資金も異なります。事業計画の作成から着手して、物件の選定・資金の調達・内装と医療機器の準備、スタッフの採用・広告宣伝の順で準備を進めれば安心して開業日を迎えられるでしょう。

開業で失敗しないためには最小限のスタッフで開業する、人員も考慮しながら医療機器の導入を検討するなどのポイントを押さえて準備を進める必要があります。必須の法的手続きもあるため早め早めのスケジュールで動くのがおすすめです。

よくある質問

Q クリニックを開業する際は専門のコンサルタントに依頼した方が良いでしょうか。 回答を見る
Q クリニックで事務長をする際に税理士資格は必要でしょうか。 回答を見る

関連するタグ