ホテル開業の成功に欠かせない!資金や資格など必要なものやリスクを抑えるコツ
最終更新日:2024年09月20日

政府が成長戦略の柱として観光促進に取り組むなか、ホテル業界への期待が高まっています。さらに、インバウンド(外国人観光客)の需要拡大を背景にホテルの開業を検討している方もいるのではないでしょうか。ホテルの開業には「どのくらいの資金が必要なのか」「資金を調達するためにはどのような方法があるのか」気になりますよね。
そこで本記事では、ホテル開業する際に知っておくべき情報をまとめました。開業を成功させるポイントや考えられるリスクなども解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ホテルの開業が人気な理由
ホテルの開業が人気な理由の一つとして、インバウンド(外国人観光客)需要が増加傾向にあることが挙げられます。日本の食文化や歴史、治安の良さなどに魅力を感じる外国人が多く、観光だけでなくショッピングやアニメ・漫画の聖地巡礼のために日本を訪れる方も少なくありません。
日本政府は観光業を経済の基盤とするため観光促進に取り組んでおり、2019年の訪日外国人旅行者は3,188万人、2030年には約2倍にあたる6,000万人を目標としています。旅行者が増えると必要になるのが、宿泊先となるホテルです。ホテルの需要がさらに高まることが予想される今、ホテル開業の人気も高まっています。
参考:訪日旅行促進事業(訪日プロモーション)|国土交通省観光庁
ホテルの種類と開業資金の目安
一口にホテルを開業するといっても、ホテルにはさまざまなタイプがあります。代表的な種類は以下の4つです。
- ビジネスホテル
- シティホテル
- リゾートホテル
- カプセルホテル
それぞれの特徴と開業資金の目安について解説します。
ビジネスホテル
ビジネスホテルは、ビジネスマンが出張で使うことを前提に作られた宿泊施設です。宿泊のみを目的に利用する人が多いため、サービスやアメニティは最小限のものとなっています。また、立地する場所は繁華街や駅など利便性の高いところが中心です。
ビジネスホテルの開業資金の目安は約4億円程度です。ビジネスホテルにはレストランや宴会場、温泉などはないことが多いため、シティホテルやリゾートホテルよりも費用を抑えられます。
シティホテル
シティホテルは観光や接待、デートなど、さまざまな目的で使われることが多い宿泊施設です。シングルやダブルなど客室タイプが豊富であり、高級レストランやスパ、エステなど付帯設備がバラエティ豊かです。また、部屋やレストランから夜景を一望できるよう、街の中心部に立地しています。
シティホテルは内装にもこだわるため、建築費や設備費などが高額になりやすいです。そのため、ほかのホテルよりも多額な開業資金が必要になりやすく、少なくても50億円程度といわれています。都市部にシティホテルを構えるとなれば、さらに高額となります。
リゾートホテル
リゾートホテルは観光地や行楽地にある観光客向けの宿泊施設です。自然に囲まれた場所、テーマパーク、観光名所などの近くに建てられています。華やかなロビーに、魅力的な内装が特徴です。
リゾートホテルは、レストランや大浴場といった付帯設備も充実しています。開業資金の目安は少なくとも6〜7億円程度といわれており、付帯設備をどのくらい付けるのかによっては、さらに高額になります。
カプセルホテル
カプセルホテルは、人一人が横になれるほどのカプセル状の個室に寝泊まりする宿泊施設です。終電を逃した人や、一人旅をしている人などに人気があります。ホテルによっては大浴場や共有スペースを備えているところもあり、近年では女性専用のカプセルホテルも増えています。
開業資金の目安は6,000万円程度です。一人一部屋を用意する必要がなく、小規模サイズですむことから、ほかのホテルよりも安めです。付帯設備を設けても1億円以上になることは少ないでしょう。
ホテルの開業資金を調達する方法
ホテルの開業資金は数千万〜数十億円と幅広いものの、いずれにせよ高額であることは間違いありません。自己資金だけで賄うのは難しいため、ここからは多額の資金を調達する方法を紹介します。
出資を受ける
ホテルの開業資金を調達する方法の一つに、企業や団体、個人などからの出資があります。出資する側は、将来を見込んで資金の援助を行い、その見返りとして株式の提供を求めるのが一般的です。出資は借入れではないので、利息がかからない上に、返済する必要がありません。仮に、事業に失敗しても負債を抱えずにすむところは大きなメリットです。
ただし、出資者に経営権を握られるリスクがあります。経営に口を出されることも多いため、思い通りに事業を展開できないところはデメリットです。
金融機関からの融資
ホテルの開業資金を調達する方法として一般的なのが金融機関からの融資です。メガバンクや地方銀行、日本政策金融公庫などが融資側となり、資金の貸出しを行います。借入側はまとまった資金を確保できます。
融資を受ける場合、融資側が経営に介入することはないため、思うままに経営できるところがメリットです。しかし、利息も含めた返済が必要になります。ホテルの開業資金のように多額の融資を受けるためには、現実的かつ詳細な事業計画書が必要です。審査は厳しく、融資が受けられなかったり、融資額が引き下げられたりする可能性もあります。
補助金・助成金を受ける
国や自治体では事業立ち上げの支援を目的に、補助金・助成金を交付する取り組みが行われています。ホテルの開業資金の全額を賄うことはできませんが、補助金・助成金を活用することで金銭的負担の低減が可能です。
補助金・助成金は基本的に交付されるものなので返済の必要はありません。しかし、公的な資金を受け取るためには、書類の作成や手続きなどが必要です。また、審査は厳しく、通らない可能性があるところもデメリットです。開業資金の集め方については以下の記事も参考にしてください。
ホテルの開業準備に必要なこと
ホテルの開業準備は資金を調達する以外にも次のことが必要です。
- 事業計画書の策定
- 物件の取得
- 申請手続き
- スタッフの採用・管理
具体的にどのようなことをするべきかについて、それぞれ解説します。
事業計画書の策定
ホテルの開業にかかわらず、新しく事業を立ち上げるときは事業計画書があると便利です。事業計画書とは、どのように事業を運営していくのか、文字や数字で説明する計画書のことです。融資や補助金の申請、出資者への説明、物件の取得など、さまざまな場面で必要になります。
ホテル事業計画書を作成する際は、以下6つの要素が必要です。
- コンセプト・サービス内容
- ターゲットとする顧客層
- 競合や市場規模などの環境面
- 資金調達の計画
- 売上計画
- 人員計画
立地の市場分析や競合のリサーチなどを行い、より具体的な事業計画書を作成しましょう。
物件の取得
ホテルを開業するためには、物件の取得が必須です。物件が決まらないことには何も始められません。どのようなホテルにするのか、コンセプトやターゲットとする顧客層に合った物件を探しましょう。
初期費用で大幅にかかるのが物件取得にかかるお金です。少しでも安く抑えたいのであれば、居抜き物件を探すのも一つの方法です。元々ホテルとして使われていた物件であれば、改装費や水回り工事費などを大幅にカットできます。一から建てるよりも費用を抑えやすいので、一度チェックしてみると良いでしょう。
申請手続き
ホテルを含めた宿泊施設を開業するためには、以下の許可が必要です。
- 旅館・ホテル営業の許可(規模にかかわらず、宿泊を目的とする施設に必要)
- 飲食店業の許可(レストランやルームサービスなど、料理を提供する場合に必要)
- 公衆浴場営業の許可(浴場やサウナなどを設置する場合に必要)
これらの許可を取得するためには、ホテルを運営する各自治体の役所にある環境衛生課に問い合わせると対応してもらえます。一般的な取得の流れは以下の通りです。
1. 事前申請をする
2. 申請手続きを行う
3. 施設の検査を受ける
4. 許可が下りる
なお、申請してから許可が下りるまで10日ほどかかります。
スタッフの採用・管理
ホテルを開業する際はスタッフの採用・管理が必須です。また、ホテルの評価は、設備や立地の良さだけでなく、スタッフの質も影響するものです。接客対応が悪ければ、評判は悪くなり、客足が遠のいてしまうでしょう。一般的なマナーとおもてなしの心をもつスタッフなら、安心して任せられます。
採用活動を行う際は、ホテル業界歴の経験が長いベテランスタッフを確保するのがおすすめです。スタッフのまとめ役になってもらえるので、リーダー候補として募集をかけましょう。
また、次のような免許・資格を取得しているスタッフを採用すると経営に有利です。
- 食品衛生責任者
- 防火管理者
- 危険物取扱者
- ボイラー技士
- 消防設備士
- 語学系
- サービス・マナー系
浴場やサウナを設置する場合、ボイラー技士の免許が必須です。経営者自らが取得を目指すのも良いでしょう。
ホテルの開業で考えられるリスク
ホテルの開業には次のようなリスクを伴う場合があります。
- 初期投資を回収できない
- 景気や情勢による経営困難
それぞれ解説します。
初期投資を回収できない
ホテルを開業するためには、多額の費用が必要です。最も安いカプセルホテルでも6,000万円、シティホテルになると数十億もの費用がかかります。開業後も人件費や広告費など高額なランニングコストがかかるため、思うように初期投資を回収できない可能性があるでしょう。
景気や情勢による経営困難
ホテル経営は景気や情勢に左右されることがあります。最近でいえば、新型コロナウイルスによる感染拡大の影響により、ホテル事業は大打撃を受けました。
国土交通省によると、訪日外国人旅行者数は2019年に3,188万人と過去最高を記録しましたが、国内で初めてコロナ感染者が確認された2020年は412万人と大幅に減少しました。その後、入国制限や外出自粛などによって、経営困難に陥ったホテルは少なくありません。
実際、帝国データバンクによると、2020年4月〜2021年3月の間に倒産した宿泊施設は前年度66.7%増の125件。この増加率は過去最高と言われています。
ホテル事業に影響を及ぼす要因は感染症に限らず、災害やいわれのない誹謗中傷などさまざまです。経営者はそのようなリスクに対応できるよう、柔軟な対応が求められます。
参考:訪日旅行促進事業(訪日プロモーション)|国土交通省観光庁
参考:宿泊業の倒産、件数は前年度比66.7%増の125件 増加率が過去最高|PRTIMES
ホテルの開業を成功させるポイント
ホテルを開業するための資金は高額なため、失敗すると多額の負債を抱える可能性があります。リスクを抑えたいのであれば、以下3つのポイントが有効的です。
- 客室以外でも収益を得る
- 居抜き物件も検討する
- フランチャイズで開業する
ホテルの開業を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
客室以外でも収益を得る
ホテルを開業しても、ホテルの種類によっては素泊まりの客が多い場合があります。価格設定が安いため、素泊まりだけでは収益が見込めないかもしれません。
対策として、レストランや宴会場、結婚式場など付帯設備を充実させる方法があります。どのような付帯設備を導入するかは、ターゲットとする顧客層のニーズに合わせて選ぶのがポイントです。また、料理でほかのホテルと差別化できるよう、飲食部門に力を入れるのも効果的です。
居抜き物件も検討する
ホテルを開業する際は、居抜き物件を活用すると開業資金を大幅に抑えられます。宿泊施設として使われていた物件は、内装や設備がそのまま残っているため、新たに設備を導入したり改装したりする必要がありません。設備や内装などにかかる工事費用をカットできます。また、準備期間を短縮できるところも居抜き物件を活用するメリットの一つです。
フランチャイズで開業する
フランチャイズとは、建物の所有者がホテルチェーン本部と契約を結び、バックアップを受けながらホテル経営ができるビジネスシステムのことです。建物の所有者はその対価として、ホテルチェーン本部に加盟料やロイヤリティを支払います。
フランチャイズで開業すると経営者にホテル事業のノウハウがなくても、本部からサポートが受けられるため失敗するリスクを抑えられます。また、定評のあるブランドとして運営できるため、顧客の信頼を得やすいところもメリットです。
ホテル業界で開業できるおすすめフランチャイズ
起業経験がない方や、そもそもホテル事業のノウハウをもっていない方はフランチャイズを検討するのがおすすめです。ホテル業界にチャレンジするなら、以下2つのフランチャイズをチェックしておきましょう。
- ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ
- ホテルキーパーFC
それぞれの特徴とおすすめポイントを紹介します。
ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ
フランチャイズで開業できるホテルとして、『ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ』がおすすめです。北海道から九州・沖縄まで全国に展開するホテルサービスであり、ブランド力が高いため事業を早い段階で軌道に乗せたい方に最適。宿泊に特化したホテルや、内装にこだわったリゾートホテルなど、幅広く対応しています。
ホテルキーパーFC
『ホテルキーパーFC』はホテルの清掃整備を行っているフランチャイズ本部で、客室の清掃・ベッドメイク・備品整備・ロビーなどの清掃が主な業務となっています。ホテル開業ではありませんが、最近では人手不足などの影響でホテルの運営や一部の業務を委託するケースも多く、ホテルの需要増加によってこのようなホテル関連ビジネスの需要も伸びているためおすすめです。
ホテルと同じサービス業でおすすめのフランチャイズはこちら!
ホテル開業についてまとめ
観光事業の拡大が期待される今、ホテル開業をはじめとしたホテル事業への注目が高まっています。収益が見込める新たな事業として、チャレンジしてみたいと考える方は少なくないでしょう。しかし、ホテルを開業するには多額の初期費用に加え、経営に関するノウハウが求められます。
そこでおすすめなのが、フランチャイズの活用です。経営やホテル事業の経験がなくても、ホテル業界で成功を収めている大手ホテルチェーン本部がしっかりバックアップしてくれます。ブランド力を武器にできるところもメリットです。
公開日:2023年03月23日