幼児教育4教室のフランチャイズオーナーが語るピンチ打開策! 資金3000万円が1年で500万円に
最終更新日:2024年09月20日

社会貢献度の高い事業を始めたいという理由で、教育関連のビジネスに興味を持つ方は多くいます。特に子どもと関わることができる幼児教育は、次世代を担う人材を輩出するやりがいのあるビジネスでしょう。
そこで今回は、幼児教育のフランチャイズ「チャイルド・アイズ」で4つの教室を運営する加藤 隆さんを取材!今でこそ4つの教室を運営し、事業が軌道に乗っている加藤さんですが、自己資金の3000万円が500万円にまで減る大ビンチを経験しました。
そんな加藤さんに、幼児教育ビジネスの詳細や教室運営で苦労したことなどを語っていただいたので、幼児教育をはじめとした教育業での独立に興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
フランチャイズで脱サラする前は製薬企業のMRとして年収1500万円
幼児教育ビジネスのフランチャイズで脱サラする前は、新卒で入社した製薬企業に35年間勤めていた加藤さん。入社後は医薬品の情報をドクターに伝えるMRという営業職として働き、東京、大阪、そして仙台での勤務を経て営業所長の役職に就きました。
その後、教育関係の業務を担当したいと社内で手を挙げて仙台から本社へ戻り、本社の教育研修室で12年間にわたり業務を続けます。
加藤さん:いろいろなセミナーに参加しましたが、あるセミナーで講師が受講生について「彼らはセミナーの内容を何も覚えてくれないんだよね」と話していたことが印象的でした。
受講者側に責任を押しつけるような言い方をしていますが、受講者が講師に向き合う意識を持つかどうかは教える側の責任。受講者がその意識を持てないのは、教える方が悪いと考えていました
この教育研修室で室長を数年間務めた後、加藤さんは「やりきった!」という達成感が得られたことから早期退職の道を選ぶことになります。
会社員時代の経験が幼児教育のフランチャイズを選ぶきっかけに
- なぜ、早期退職の道を選んだのでしょうか。
「早期退職しなければ、役職定年を迎えます。役職定年とは、その役職を降りて後進に道を譲り、自分はまた上司のもとで指示に従い業務に携わる仕組みのこと。私としてはすでに会社での仕事をやりきったし、このタイミングで早期退職をして新たな場所に踏み出しても良いのではと考えておりました。」
- やりたいことがあって脱サラをしたのでしょうか。
「早期退職を考える1年前くらいから、教育事業または介護事業に挑戦したいと考えていました。そこで、ちょうど開催されていたフランチャイズのフェアに参加することにしたのです。
フェアで教育事業と介護事業のフランチャイズを見た結果、幼児教育のチャイルド・アイズの内容に「会社の教育部門の内容にとても似ている」と共感しました」
- どのような点に共感したのでしょうか。
「教育部門にいたとき、新入社員を育てるなかでキャパシティーのとても大きな人材もいれば、そうでない人材もいることを感じていました。この差は何なのかと考えたときに、幼少期の教育が一つの要素なのではないかと。幼児教育に力を入れることで、キャパシティーの大きな人材を作れるのではないかと感じました」
子どもたちの豊かな発想や表現的思考力を磨くチャイルド・アイズ
- チャイルド・アイズについて詳しく教えてください。
「チャイルド・アイズでは、幼児の知能教育を行っています。1歳半〜小学校6年生までを対象としており、小学校に入る前の就園児が一番多いです。勉強というよりは自頭を良くする発想力や、高度な思考ができる脳を育てます」
- 具体的にはどのようなことをしているのでしょうか。
「教材を使って積み木をしたりパズルをしたりなど、目的を持って考える楽しい遊びをします。子どもは遊びから学ぶので、楽しくないと絶対に吸収しません。たとえば「6個のミカンを3人で喧嘩にならないよう分けるためにはどうしたら良いかな?」などと声をかけます。ここで子どもたちは2つずつ“数を分ける”という発想を学び、“2つずつ”という言葉を理解します」
- 親御さんからはどのような声がありましたか。
「チャイルド・アイズでは、相手に自分の考えてることを伝える表現的思考力を育てていますが、そもそも子どもにとっては、みんなの前で話すこと自体ハードルが高いもの。
親御さんからは「子どもがクラスで手を挙げ、堂々と発表している姿を見たときにすごく感激した」という声がありました。チャイルド・アイズのおかげだと言っていただけたときは、本当にうれしかったです」
資金がどんどん減る焦り…失敗の原因は「オーナーが先頭に立つ強い意志の欠如」
- 開業時の資金はどのくらいをイメージしていましたか。
「フランチャイズの標準モデルとして当初は1200〜1500万円くらいと言われていましたが、実際はそれでは収まりませんでした。フランチャイズ本部が提示したモデルは、開業半年後で損益分岐点に達する絶好調な状態のもの。現実は、モデルのようにうまくマーケットを活かしきれませんでした。開業資金は、全て退職金などの自己資金です。」
- マーケットをうまく活用できなかった理由は何でしょうか。
「本部に言われた「オーナーは特に何もしなくて良い」という話を鵜呑みにして実務をあまりせず、スタッフたちの気持ちを優先しなかったことが大きな間違いでした。オーナーが先頭に立って切り開いていく気持ちがなければ、スタッフたちは「私たちだけに任せるの?」と不満を抱えます。
3ヵ月で70件ぐらいの問い合わせがきましたが、正直なところ私はあまり気にしていませんでした。教室で先頭に立って、何かをしなければという意識がなかったのです」
「今ではフランチャイズ本部も「オーナーがしっかりと先頭に立つ必要がある」というスタンスで指導してくれますが、私が加入した当時は本部の意識も少し物足りなかったです。10月に開校して12月末に約30名の生徒がいましたが、固定費と合わせて毎月100万円近く減っていきました」
自己資金3000万円が500万円に…「講師の立場を理解する姿勢」でピンチを打開
- 資金が減り続けるピンチをどのように打開したのでしょうか。
「初めのうちは本当にどうにもできず、体調が不安定になり眠れないこともありました。ですが、そんなことを言っても仕方がないので、まずは自分自身が勉強しようと決意しました。
はじめに勉強したのが、幼児教育の具体的なやり方です。先生が生徒に対してどのようなレッスンをするのか、自分でも学ばなければいけませんでした。チャイルド・アイズは研修がすごく充実しているので、まずは先生のための研修に参加しました」
- 研修に参加して変わったことを教えてください。
「講師と同じような立場で研修に参加することで、どのようなレッスンをすれば良いのかが分かりました。それと同時に、先生たちの大変さも分かりました。
先生たちに「働いていただいてありがとうございます。このような大変さがあるのですね」と声をかけたことで、講師たちにも“オーナーが一緒に同じ方向を見てくれている”と感じてもらえました」
- そこから赤字を抜け出したのでしょうか。
「生徒が27人くらいの状態が3ヵ月くらい続き、その後の1月と2月の時期は1〜2人しか変動がありませんでした。ですが、3月と4月から生徒が増え、6月には損益分岐を超えた状態です。黒字まではいきませんが、少なくとも資金は出ていかなくなりました」
- 結局いくら資金がかかったのでしょうか。
「約3000万円あった資金が、2500万円ほど出ていきました。1500万円くらいで収まると思っていましたが、1000万円ほどオーバーしましたね」
経営のコツをつかみ現在では1人で4教室を手がけるまでに
2015年に新小岩で1校目をオープンした加藤さんですが、2018年にほかのオーナーから引き継ぐ形で2校目をオープン。当時は、1人のオーナーにつき1つの教室が常識だったそうです。
- 2校目の久が原校を引き継いだときのことを教えてください。
「運営が順調な教室の場合、オーナーチェンジは働いてる人たちにとって不安なもの。スタッフたちにとって、新しいオーナーと上手くやっていけるのかが大きなポイントです。1校目の経験を通してスタッフの気持ちを理解する重要性が身に染みていたので、そこまで大きなトラブルはありませんでした」
- なぜ3校目も手がけようと思ったのでしょうか。
「3校目の南流山校は武蔵野線とつくばエクスプレスが交差する場所で、マーケットとして魅力的だと前から思っていました。もともと興味があったので、即決で返事をしました。1校目と2校目の数字が順調に伸びている状況で、3校目をオープンしました」
- さらに4校目の経営にも携わることを決めた理由は何でしょうか。
「4校目のみらい平校にはマネージャーのポジションに該当者がいなかったので、そこに入らざるを得ませんでした。新小岩の1校目はスタッフにある程度運営を任せて、4校目に私が入っている状態です」
教育事業は「やりがい」があるから、この脱サラに後悔はない
- 加藤さんの脱サラでは「お金」と「やりがい」のどちらが大切でしょうか。
「やりがいが圧倒的です。会社員時代は役職に付随する収入を意識していましたが、チャイルド・アイズの事業では教育事業で次の世代を担っていく人材の育成にやりがいを感じています。
教育業は、想いが重要なビジネスなんですよね。収入云々よりも、満足感でしょうか。お金も入ってきますが出ていく分も大きいので、利益率としてはそんなに高くありません」
「また、スタッフの気持ちを理解しなければ教室はうまく運営できません。人を動かすことや動かし方が会社員時代とは大きく違ったため、自分でもかなり勉強しました」
紆余曲折さまざまな苦労があった加藤さんですが、フランチャイズでチャイルド・アイズの事業を手がけたこと自体に「後悔はない」と話します。今後は、次の世代を育てる人材を育成するために、同じ気持ちを持つオーナー成功者を増やす活動をしたいそうです。
これからフランチャイズで独立を目指す方は、加藤さんのエピソードを参考にしてみてはいかがでしょうか。
公開日:2022年08月26日