SNSで話題「アジフライ専門店」店主が語る40歳からの脱サラ・独立・飲食店開業

最終更新日:2023年05月26日

「脱サラしたいけど年齢的にもう遅いのでは…」という悩みから、最初の一歩を踏み出せずにいる方は少なくありません。

そんななか、今回取材した嶌野 雄太さんは40歳から料理人として修行し、今では人気の「アジフライ専門店」を経営する店主です。

フリーターや大企業の正社員などさまざまな仕事を転々としてきた嶌野さんですが、一体どのような経緯で脱サラすることになったのか。独立の流れや開業資金、脱サラしたい方へのアドバイスなどを取材しました。

目次

黄金アジで地元の良さを広めたい「アジフライ専門店」を練馬に開業

遊んで過ごした20代…「今が一番若いから」と飲食業に初挑戦

「自分にはアジフライしかない」40歳で料理人に弟子入り

年商3,500万円超え!間借り営業やSNS広告で集客に成功

「広告宣伝費は0円」コロナ禍のオープンもSNS集客で乗り切る

「脱サラは1日でも早く始めたほうが良い」けど、覚悟も必要

黄金アジで地元の良さを広めたい「アジフライ専門店」を練馬に開業

メインのアジに加えて、塩や米も地元のものにこだわった「アジフライ専門店」を営む嶌野さん。40歳の頃に料理人として弟子入りし、今では地域に愛されるお店を経営しています。

「20代の頃は遊んでばかりだった」と話す嶌野さんに、脱サラするまでの経緯を伺いました。

どのようなお店を経営しているのか、開業のきっかけなどを教えてください。

嶌野さん「『アジ好きですか』という名前のアジフライ専門店を経営しています。開業のきっかけは、友人たちにアジフライを振る舞ったことでしょうか。

私の地元が千葉県の富津市という場所で、そこでは黄金アジというブランドアジが取れるんです。それで都内の友人たちと釣りをしたときに、黄金アジを振る舞ったら「何これめちゃくちゃうまいじゃん!」とみんなが言ってくれて。それで、これは自分がお店をやらなければと思うようになりました」

使命感みたいなものですかね。開業場所は、富津市ではダメだったのでしょうか。

嶌野さん「千葉は、すでに他の人たちがたくさんアジフライのお店をやっていますから。都内でお店を開いて「富津って面白いな」や「本場のアジフライを食べてみよう」という流れを作りたかったんです」

なるほど。価格を少し高めに設定している理由も気になります。

嶌野さん「材料にこだわっているからですね。富津の醤油に、九十九里の天然塩、さらに地元のお米などを使っています。最初はもっと材料を抑えて安くしようかとも思ったのですが、それは自分がやりたいことではないなと。

地元は小さい町ということもあり、同級生や先輩後輩が漁業関係の仕事をしているので、電話一本でお願いを聞いてくれるんです。みんなが応援してくれて、それで成り立っています」



遊んで過ごした20代…「今が一番若いから」と飲食業に初挑戦

嶌野さんは38歳で独立されたとのことですが、もともと飲食の仕事をしていたのでしょうか。

嶌野さん「最初は溶接の会社に入りましたが、そこは2週間で辞めています。そこから釣具屋や葬式屋など、いろいろな仕事を転々としていました。遊ぶことが主だったので、仕事はもう何でも良いやみたいな。結局10年くらいフリーターをしていましたね」

フリーター後はどうされたんですか。

嶌野さん「とりあえずどこかの会社に正社員で勤めようと思い、千葉県君津市の製鉄会社へ入社しました。製鉄会社の高炉から列車で鉄を運ぶ仕事で、免許も要らないし楽しかったです。大きな会社だったので福利厚生や組合もあり、そこでは結局10年くらい働きました」

安定した会社だったんですね。辞める必要はなかったのでは。

嶌野さん「10年も同じ会社で働いていると、自分の10年後がある程度分かるじゃないですか。それで、この仕事は自分がすべき仕事ではないと感じました。あとは、地元の人たちと考え方がずれてきたのも一つの理由です。家庭やマイホームを持つことが自分の幸せではないんじゃないかなと思うようになりました」

その時点で38歳だと思いますが、年齢的に不安はなかったのでしょうか。

嶌野さん「そうですね。ただ、今が一番若い時期で、明日になればさらに1日歳をとる。それを考えたら怖くて、すぐに行動したくなりました。それでいろいろな人に自分のやりたいことを伝えていたら「歌舞伎町にお店があるんだけどやらない?」と声をかけてもらえたんです」

「自分にはアジフライしかない」40歳で料理人に弟子入り

「自分にはアジフライしかない」40歳で料理人に弟子入り

歌舞伎町で初めて飲食業を始めるんですね。

嶌野さん「歌舞伎町のインバウンドビルの居酒屋部分を、マネジメントする仕事です。学もスキルもないなかで、真っ先に始めるビジネスとして飲食店はハードルが低く感じました」

実際にマネージャーを経験してみてどうでしたか。

嶌野さん「面白かったです。今まで居酒屋にはお客さんとして行っていたので、ギャップは感じましたが、それでも面白かったです。ただ、40歳の頃にその飲食店がダメになってしまい、撤退することに。その居酒屋時代にアジフライに出会い、もう自分にはこれしかないなと」

そこでようやくアジフライに挑戦すると。

嶌野さん「求人を見て料理屋さんに応募し、一から修業という形で始めました。和食居酒屋のような、少し良い会食などに使う居酒屋さんでした。師匠がいろいろと教えてくれましたが、今となってはかなり自由にさせてもらえたと思っています。修行期間は2年間だけでしたが、とても良い店だったので濃厚な2年間でした」

年商3,500万円超え!間借り営業やSNS広告で集客に成功

40歳で料理人に弟子入りし、それからアジフライのお店を一念発起して始めた嶌野さん。コロナ禍でのオープンなどいろいろな苦労はありましたが、戦略で集客を成功させていきます。

開業資金について教えてください。

嶌野さん「500万円が自己資金で、さらに500万円を日本金融公庫から借り入れしました。内装は居抜きでそのまま使ったので、内装には数百万円しかかかっていません」

開業後直後の客入りはどうでしたか。

嶌野さん「もともと友達のお店で間借り営業していたので、そこでの知名度から客入りがありました。あとはSNSで上手く広告できたので、オープンの月はコロナ禍にしてみれば上手くいったと思っています。一気に開業するのが怖かったので、間借りでワンクッション挟んだ形です」

慎重に開業したということですね。今の年商や年収もお聞きしたいです。

嶌野さん「年商は3,500~4,000万円です。年収はあまり把握していませんが、年商からランニングコストの月200万ほどを引いた程度かと。ただ、家賃が高くて月に27万円以上かかっているんですよね。

現在まだ開業2年目ですが、開業してすぐに取材があったり、さらにTV出演や雑誌の取材も続いたりしたので、その力を借りて順調です」

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そもそもなぜ開業場所に練馬を選んだんですか。

嶌野さん「正直たまたまなんですよ。1〜2人で回せるような規模で、住宅までの帰宅路に入るような物件を探していましたが、どこも空いていませんでした。それでいろいろと探していたところ、ここが審査に通った感じですね」

この立地だと、地域住民の方がよく来てくれるのでしょうか。

嶌野さん「そうですね。あとはSNSをやっている私の友達たちが結構発信力があって、それを見て来てくれるお客さんもいました。

広告はInstagramがメインで、CMに一切お金をかけたことがないのが自慢なんです。広告費は本当にダメになったら払おうと思っていて、今のところ無料です。Instagramやツイッターで皆さん拡散してくれて、後はメディアの力です」

嶌野さんのお店は、なぜそんなにメディアに取り上げられるのだと思いますか。

嶌野さん「皆さんアジフライって、絶対に食べたことあるじゃないですか。うちではブランドアジを使っていますが、みんな食べたことがあるアジフライのなかでもワンランク上の珍しさがあると思っています」

材料にこだわっているのも関係しそうですね。
また、今は経営が順調とのことですが、それでも開業当初は苦労されたのでしょうか。

嶌野さん「コロナ禍だったので、夜が本当に暇でしたね。アルコールは出せないし、時短営業。協力金があったので何とかやっていけましたが、それがなければまずかったです。やはり夜は利益率が高いのもありますが、アジフライだけでない料理も出ていますから。本当においしいので、食べてもらいたいですね」

「脱サラは1日でも早く始めたほうが良い」けど、覚悟も必要

脱サラして良かったことをお聞きしたいです。

嶌野さん「良かったことは、もうキリがないくらいあります。製鉄所のほうが金銭的には安定していますが、安定をどこに求めるかが重要ですよね。金銭的に求めるのか、精神的に求めるのか。サラリーマン時代は自分じゃなくてもできる仕事をしていたので、やりがいや存在意義についてずっと考えていました」

精神的に安定したということですね。それでは、逆に悪かったことはありますか。

嶌野さん「開業がコロナ禍だったこと、あと私自身ある程度の年齢なので、もっと早く始めれば良かったなと。動ける時間は限られているので、もっと若い時に無理しておけば良かったです」

なるほど。嶌野さんは、ほかにこれから何かしたいことはあるんでしょうか。

嶌野さん「多店舗展開したいです。黄金アジはブランドアジなので漁獲量の問題で難しいですが、そのほかにもいろいろと良い食材があるので、それらを使って何かできたらなと。

それに、フランチャイズにも興味はあります。ずっと現場には出たいですが、規模を大きくしたい気持ちもありますから。あと、私自身20代はずっと遊んできたので、そういう人たちを手助けしたいとも思っています」

ありがとうございます。それでは最後に、これから脱サラを考えている方にアドバイスをお願いします。

嶌野さん「脱サラしたいと思ったのであれば、1日でも早く始めたほうが良いです。でも、確固たる意志や決意がないのであればやらない方が良い。ただ、僕が脱サラできたんだから、皆さんもできると思いますよ」

20代を遊んで過ごしながらも、紆余曲折あってアジフライ専門店という天職を見つけた嶌野さん。「始めるなら1日でも早いほうが良い」と話す嶌野さんのように、まずは小さなことから脱サラに向けた準備を始めてみてはいかがでしょうか。

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公開日:2023年04月06日