介護事業で年商7,000万円!高齢化で注目の「デイサービス経営」で脱サラ・独立
最終更新日:2024年09月20日

高齢化が進む日本において、介護事業は今特に注目を集めるビジネスだと言えるでしょう。
株式会社プレゼンスの三戸 究允さんは、介護士としての経験を活かし、今では2店舗のデイサービスを経営しています。
今回はそんな三戸さんに、デイサービスを始めたときの経緯や実際にかかった費用、赤字を乗り越えたときの話などを詳しく伺いました。
高齢化で介護事業が注目…「デイサービス経営」で脱サラ
デイサービスを2店舗経営する三戸さんですが、どのように開業から黒字化、そして2店舗目の開業に至ったのでしょうか。
どのような仕事をしているのか教えてください。
三戸さん「65歳以上の高齢者に向けたデイサービスがメインの介護事業をしています。施設で食事やリハビリ、お風呂、交流など必要な支援をした後、一定時間を過ごしてから自宅に送るサービスです。
高齢になると社会的な関わりが減ることで、どうしても自宅で過ごすことが多くなり引きこもりがちです。そのような現状を打破するために、うちのような集いの場に来てもらい、必要な支援をしています」
さまざまな設備があるので、引きこもり対策以外にもメリットはありそうですね。
三戸さん「自宅のお風呂は入りにくいので利用したいという人や、バランスの取れた食事を食べたいという人など、個々で目的は違うかと思います」
三戸さんも実際に現場で働いているのでしょうか。
三戸さん「人が足りなければ、私も現場に入って高齢者の方と関わる機会を持たせてもらっています。そのときは、施設がサービスとして成り立っているかどうかのチェックも兼ねています」
「ただの介護士で終わるなよ」父の言葉がきっかけで独立
三戸さんはもともと特別養護老人ホームで働いていたと聞きました。その頃から介護で脱サラしたいという気持ちがあったのでしょうか。
三戸さん「そうですね。私は父をとても尊敬しているのですが、介護士になるにあたり父に「ただの介護士で終わるなよ」と言われたのが心に残っていました。
「ただの介護士にならないこと」を自分なりに考えた結果、自分で事業をすることなのではないかなと。それで、まずは特別養護老人ホームで、介護技術や利用者との関わり方を学ぼうと決めたんです」
なんだかお父様に導かれたかのようですね。それで、特別養護老人ホームでまずは経験を積んだと。
三戸さん「2年3ヵ月働いてから、民間の有料老人ホームに行きました。ただ実際に働いてみて、自分で有料老人ホームを始めるにしても、大きなキャッシュが必要なので難しいなと思うようになって。いろいろな選択肢を考えていたところ、法人内で「デイサービスをやらないか」という話があり、その話に乗ることになりました」
その段階では、まだ社内の事業という感じですよね。
三戸さん「はい。ただ、その話があってから、ありがたいことに対外的なところと連絡調整する役目や、実際に営業する仕事などをもらえたんです。管理職のような形で所長も任せてもらい、このフィールドだったら独立できるかもと気持ちが入っていきました。
このデイサービスの事業を6年くらい続けた後、また有料老人ホームに戻されたのですが、そのタイミングで自分でデイサービスを始めるために退職しました」
赤字からの脱却で最高年商7,000万円を達成
三戸さんは2店舗経営されていますが、1店舗目の開業資金はどのくらいでしたか。
三戸さん「資本金640万円からスタートをして、銀行と公庫から合計1,800万円を借り入れしました。内装工事だけで1,000万円、車2台で150~200万円、あとはテレビやロゴ制作、サイト作成、介護ソフトなどに1,500万円ほどかかっています」
初年度の年商と最高年商が気になります。
三戸さん「初年度は1,000万円近くマイナスでしたね。昨年度が最高で7,000万円くらいでした。従業員への給料ですが、介護業界はどうしても賃金が低いので、パートの場合は350万円から500万円いかないくらいになっています」
ランニングコストは人件費が大きそうですが、どうでしょうか。
三戸さん「人件費が売り上げの55~60%くらい。給料を高めに設定しているので、人件費も少し高めです。あとは、売り上げによってボーナスも発生します。うちは歩合で、管理者たちに年間目標を立たせて、それにいかに近づけて運営できたかでボーナスのパーセンテージを振り分けているんです」
とても手厚いんですね!
三戸さん「そもそも介護は人材を獲得しづらい業界でもあるので、賃金を少し高めに設定しています。数年前に人事評価とキャリアパスの制度を作り、しっかりと評価した上で対価を発生させられるように変わってきたのではないかなと」
3ヵ月で黒字化したのは「サービスの質と仲間」
利益率を教えていただけますか。
三戸さん「一般企業だと、10%あれば優良企業といわれるかと思います。うちのデイサービスは8%くらいなので、ほぼ優良企業なのではと自負しています」
介護業界のなかでも利益率が高いんですね。開業後すぐに黒字化したのでしょうか。
三戸さん「黒字化したのは立ち上げて3ヵ月後です。横浜市港南区でデイサービスをやっているのですが、私はそのエリアで雇われ時代に働いていたんです。その関係で知り合いがお客さんを紹介してくれたので、黒字化は早かったと思います。2店舗目を立ち上げる年に赤字になりましたが、それ以外で赤字はありません」
すごいですね。黒字化できている理由を知りたいです。
三戸さん「サービスの質を落とさないことと、やはりこの業界は仲間がいないと仕事ができないので、社員に恵まれていることが大きいです」
なるほど。ちなみに社員や利用者はどのように集めたのでしょうか。
三戸さん「コアなメンバーに関しては仲間に声をかけて、本当に必要な専門職に関してはハローワークや折り込みの求人などを活用しました。利用者様に関しては、居宅介護支援事業所という施設に営業をかけたり、あとは駅前でビラを配って内覧会に呼び込んだりしました」
“650円の重み”を実感…脱サラで会社員の良さを知る
とても順調に経営されているように見えますが、どのような点に苦労されたのでしょうか。
三戸さん「2店舗目は苦戦しましたよ。1店舗目がスタート段階から人気があったので、同じような形で店舗を展開していけば上手くいくと思っていたんです。ですが、実際はお客さんの紹介があまりなく、軌道に乗るまで7ヵ月間かかりました」
その間は毎月赤字ですか。
三戸さん「毎月赤字でキャッシュも30万円まで減少し、職員に給料を払えないのではと。それで介護保険請求が入るタイミングで帳尻を合わせたり、自分の給料をカットしたり、貯蓄で賄ったりしました。
それからサービスそのものの内容や施設の売り方を全く変えたら、お客さんの紹介が増えてきたんです。1ヵ月で10件ほど問い合わせがあり、一気に依頼がくるように。それで年内中に満床になり、なんとか生き延びたという形です」
なるほど。こうやって苦労した期間を経て、気づいたことなどはありますか。
三戸さん「自分が会社に守られていたこと、あとはお金の重みを痛感しましたね。今までは〇〇会社のデイサービスというブランドによって利用者様が集まっていましたが、独立したら「どこの誰?」となるので。
ブランド力がないなかでも、早く売り上げを出さなければいけない。初めての売り上げが650円だったのですが“これだけ頑張って650円か、でもこれが650円なんだ”と重みを感じましたね」
経営者に不安はつきものだが、脱サラで得られる出会いも
具体的に三戸さんが感じた脱サラして良かったこと、悪かったことを知りたいです。
三戸さん「良かったことは、雇われでは出会えないような同じ経営者の方々と出会えたことです。雇われのときは、社長との繋がりはどうしてもありませんでした。ビジネスの話をする経営者との繋がりが増え、人脈が広がったのがメリットですね。
一方、脱サラしたことで、私が周りの人を守る立場になりました。体を壊したときの備えなどを考えると、会社に守られていたところが多かったと感じます」
保証がないのは、脱サラならではの不安かもしれませんね。
三戸さんは、これから何かしたいことはあるのでしょうか。
三戸さん「コミュニティー作りに興味があり、まずは介護のフィールドから始めていきたいです。たとえば新しい店舗にあえてフリースペースを作って、近隣の人々が交流できるようにするなど。
あとは介護の敷居を下げることですね。誰しもいずれ支援される側になるので、そのときに「ここまで自分たちのことを考えてくれるんだ」と思ってもらえるような介護サービスを提供したいです」
ありがとうございます。それでは最後に、脱サラしたい方へメッセージをお願いします。
三戸さん「迷っているのであれば、やるべきです。失敗しても必ず道があって、もう一回やり直せば良い。チャレンジすることが重要かなと思ってます。チャレンジすれば支援者が現れますし、真剣に真面目にやっていれば道は開けるんじゃないでしょうか」
介護・デイサービス
公開日:2023年04月11日