大企業部長が飲食店開業!45歳で安定を手放し「居酒屋の経営」で脱サラ&独立
最終更新日:2024年09月20日
いつかは独立したいと思いつつも、長年勤める会社を辞めるのには勇気がいるもの。会社員の安定した地位と収入を手放せず、不満を抱えながら会社で働き続ける方は少なくありません。
そんな方に紹介したいのが、東京の御徒町で居酒屋を経営する二瓶 耕太さんです。大手の子供服メーカーで部長にまで出世しましたが、45歳で会社を辞めて「日本酒・焼酎ダイニング 二瓶」を開業しました。
どのような経緯で居酒屋を開業したのか、独立の流れや開業資金、脱サラのメリット、これから脱サラする方へのアドバイスなどを取材したので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
30歳で部長にまで昇進!上司に退職願を3回出して独立
二瓶さんはもともと会社員をされていたそうですが、前職について詳しく教えてください。
二瓶さん「前職で勤めていたのは、子供服のアパレル「ミキハウス」です。入社後は企画部門に配属され、素材の仕入れで国内外いろいろな場所へ出張しました。その後、広告部門や法人営業部門、ライセンス部門などいろいろ経験させてもらって、30歳のときに広告宣伝と法人営業の兼任部長になりました」
30歳で部長ですか?かなり早い出世ですね。会社員として成功されていたようですが、なぜ退職を決意したのでしょうか。
二瓶さん「実は、退職願を上司に3回出しているんです。1回目が仕入れ部門で7年間働いていたときで、7年も続けるとさすがに飽きてきたのが理由でした。2回目は、広告宣伝と法人営業の兼任部長をやっているときです。部下も一気に増えて、1日7~8件のアポに夜の会議、接待などで猛烈に忙しくて、それで白旗を上げました」
なるほど。それで最後の3回目は、居酒屋を始めるために辞表を出したということですね。
二瓶さん「はい。辞表を出す3回目のタイミングが、ちょうど勤続20年。年齢も45歳で元号も平成から令和に変わるタイミングで、いろいろな意味で良い節目だったので「次こそ本当に辞めます」と言いました。昔から憧れだった飲食店をやろうと決めたのが、そのタイミングですね」
「家賃が安く好立地」な御徒町を開業場所に選定
もともと居酒屋をやりたかったとのことですが、居酒屋開業を思いついてから辞めるまでには、どのくらいの期間があったのですか。
二瓶さん「2018年6月に「次の8月で辞める」と伝えましたが、上司からは12月まで残ってほしいと言われてしまって。上司には「その12月までの期間は居酒屋の準備もして良い」と言われたので、12月まで残ることにしました。結局、辞めると宣言してから半年くらい会社で働きながら準備していましたね」
働きながら開業準備を進めるのは、かなり大変そうですね…。それから開業して、初年度の売り上げはどのくらいでしたか。
二瓶さん「あまり誇れる売り上げではないので詳しくは言えませんが、赤字ではありませんでした。初月は仕入れがかさむので赤字でしたが、2ヵ月目から今までずっと黒字です。年収は、サラリーマン時代は1,000万円ほどありましたが、今はその半分ですね」
従業員も雇っているんですよね。
二瓶さん「今はスタッフ1人と私の2人体制です。満席のときは大変ですが、あと1人さらに雇ってしまえば赤字になるので」
やはり、経費を抑えるために御徒町という立地を選んだのでしょうか。
二瓶さん「脱サラなので新宿や池袋、銀座などの華やかな街はオペレーション的に到底無理でした。御徒町は上野や東京駅からも近くて、家賃も比較的抑えられます。家賃は30万円で、六本木や銀座のような一等地と比べたらかなり安いですね」
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開業資金は1,300万円!準備で最も大変なのは「物件探し」
開業準備で一番大変なのは物件探しだと聞きますが、やはりかなり探しましたか。
二瓶さん「少なくとも物件探しに6ヵ月はかかると言われている世界ですから。かなり探しました。さすがに会社で働きながら物件探しはできなかったので、会社員期間中はインターネットで少し見る程度でしたが。1月に探し始めてから4月にこの物件が見つかって、5月に工事、6月にオープンといった流れです」
3ヵ月で物件が見つかったのはすごいですね。開業資金についても知りたいです。
二瓶さん「開業資金は、自己資金が1,000万円ちょうどくらいです。さらに、この店舗の大家さんから300万円の出資を受けています。もともとこの場所にはインドカレー屋さんがあり、内装が少しチープで居酒屋仕様のレイアウトじゃなかったんです。内装を全てやり直すとなると、1,300万円かかってしまう。それを大家さんに伝えると「300万円は僕が出すよ」と言ってくれました」
かなりありがたい話ですね。その300万円は、具体的に何に使ったんですか。
二瓶さん「内装工事費と厨房機器、机、椅子、テーブルですね。運転資金は自己資金の1,000万円とは別に200万円ほど残していました」
愛されるお店を作るため、お客さんに合わせてメニューを提供
「日本酒・焼酎ダイニング 二瓶」の魅力や売りを教えてください。
二瓶さん「1つは、お客さんから居心地が良いとよく言われることです。あとは珍しい日本酒をかなり置いてるので、全国から人が来てくれることでしょうか。それに私自身、人に喜んでもらうことが好きなんです。うちの店に来て仕事のストレスを発散して、次の日もまた頑張ってもらいたい。このお店では、そういう気持ちを感じ取ってもらえるのではないかなと」
なるほど。接客以外にどういう仕事があるのか、1日のスケジュールが気になります。
二瓶さん「午前11時頃に買い出しに行って、お昼ご飯を食べてから仕込みをします。オープンが17時で、クローズは23時。常連さんが8割なので、いかに日替わりメニューを回転させていくかが大切です。定番メニューだけでなく、旬のメニューも必ずありますし、料理のレパートリーは500種類くらい増えました」
そのレパートリーのなかから、お客さんに合わせて出しているという感じでしょうか。
二瓶さん「誰が何を注文したのか全部データで記録して、お客さんごとに料理をカスタマイズしています。この前はこれを注文したから今回は違うお通しを出そうなど、意識して出しています」
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脱サラするなら「サラリーマン経験はあったほうが良い」
脱サラしていろいろな苦労もあったかと思いますが、良かったことについて教えてください。
二瓶さん「良かったことは、ストレスが全くないことです。一人親方なので、サラリーマンと違って自分の責任でやりたいことを決められるのが良いですね。毎日を積み重ねて、今日のお客さんに満足してもらう。そして明日のお客さんに向けて、どういう料理を出すのかシミュレーションしています」
逆に悪かったことは何かありますか。
二瓶さん「悪かったことは、多分ないですね。税金や保険の支払いなども、頭を使わず機械的に処理するだけですから」
二瓶さんはサラリーマンを20年間続けられましたが、振り返ってみて、サラリーマン経験は独立後に活きていると思いますか。
二瓶さん「もちろんです。人間関係もそうですし、経営的なスキルもそう。それに、法人営業で磨いた接客力やトーク力があってこその今だと思います。脱サラをするのであれば、サラリーマン経験はあったほうが良いでしょう」
貧困家庭の子どもを助ける「子ども食堂」もスタート
二瓶さんはこの居酒屋のほかに、子ども食堂も運営されていると聞きました。
子ども食堂とは何なのか、そのお話もしていただけますか。
二瓶さん「もともと私は大学時代、ネパールやインド、ミャンマー、カンボジアなどアジアを放浪していたんです。そこで貧しい子たちを目の当たりにしたのですが、その子たちは貧しいのにとても明るかったのが印象的でした。
それから就職して大阪の郊外に引っ越したら、近所の子や娘の友達など、貧困家庭の子が日本にも意外と多いことに気づきました。ただ、同じ貧困でも、アジアの子たちと比べて日本の子たちはとても暗かった。それにどこか後ろめたさを感じながら生きていたので、それをどうにかしたいと思ったのがきっかけです」
それで居酒屋だけでなく、一緒に子ども食堂も始めたんですね。
二瓶さん「居酒屋をやるのであれば、どうせなら同じ場所でメシを作るわけだから「子ども食堂」をやってしまおうというのがきっかけです。私が店にいる限りは基本的にいつ来てもらっても大丈夫で、子どもは無料で食べられる仕組みです」
かなり有意義な活動だと思います。貴重なお話ありがとうございました。
最後に、これから脱サラする方へメッセージをお願いします。
二瓶さん「逃げるように辞めるのだけはやめてほしいですが、もし本当にやりたいことがあるならぜひ挑戦してほしいです。私は45歳で独立しましたが、その年齢でも遅いということはありません。むしろサラリーマン経験を活かせば、失敗する確率は下がると思います。たまたま生まれた1回きりの人生なので、やりたいことをやらないともったいないと思いますね」
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公開日:2023年06月16日