開業資金の経費はどう申請する?対象となる費用・仕訳方法を解説

最終更新日:2022年04月26日

独立や開業を目指す人のなかには高額になる開業資金を経費として扱い、節税対策を行いたいと考える人もいるでしょう。
この記事では開業資金のうち、経費の対象になる費用や仕訳方法について紹介します。
開業資金を経費計上することで、節税対策にもつながります。

開業資金を上手に経費計上し、開業の負担を減らしましょう。

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目次

経費・開業費とは

経費の対象となる開業資金

開業資金の経費として申請できないもの

開業資金の仕訳方法

開業費用の償却方法

開業資金の仕訳を理解して節税対策をしよう

経費・開業費とは

開業費とは事業を始めるために必要となる費用のことです。所得税法施行令第7条1項1号では、「開業費とは、事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用」と定められています。

また経費とは事業で使用する費用のことです。たとえば交通費やスマートフォンの利用料、出張旅費などは全て経費として計上できます。

開業費を経費として計上することには大きく2つのメリットがあります。1つ目は経費計上することで税金をおさえられることです。事業上の税金は事業所得といわれる収益から経費を差し引いた額に税率をかけて算出します。そのため、経費の額が増加すれば、自動的に事業所得が下がり、税金も減るのです。

もう1つのメリットは、開業費は「繰延資産」として扱われ、単年ではなく複数年に分割して経費計上ができる点です。開業初年度以降も節税効果が得られます。

開業や開業日の定義

まず開業の定義について確認しましょう。個人で独立や開業をする際には、所轄の税務署に開業届を提出する必要があります。開業届で開業日を記載することが求められるため、希望の開業日を記載します。つまり、会社を辞めた日が開業日になるのではなく、開業届に記載した日が開業日となります。

開業届は開業してから1ヵ月以内に提出するのが義務となっています。仮に1ヵ月を超過して提出しても罰則はありませんが、開業届の提出は「義務」であり、青色申告を行うためには必要な手続きとなります。

経費の対象となる開業資金

経費の対象となる開業資金

経費の対象になる開業資金は具体的にどのようなものがあるか下記の一覧をもとに紹介します。

経費対象の開業資金
テナントの家賃
開業・独立のために参加が必要なセミナー参加費用
市場調査などのために利用したガソリン代や旅費
携帯電話などの通信費用
打ち合わせにかかった費用
取引先、営業先への手土産の代金
開業までの借入金に対する利子
チラシ、パンフレットや名刺の費用
開業に必要なPCなどの備品
書籍や文房具代
開業に必要なWebサイトの構築費用

開業前に必要となった資金の多くが、開業費として経費の対象となります。ただし10万円を超えたものは開業費ではなく、固定資産として減価償却費として計上されるので注意しましょう。たとえばPCやWebサイトなどが該当する可能性があります。

なお開業費の対象となるのは営業を開始するまでに支払った費用です。営業開始後に名刺を作った費用は開業費に計上することはできません。

次に代表的な開業資金について、1つずつ紹介します。

PC・周辺機器の購入費

事業の準備に必要なPCやプリンター、コピー機などの周辺機器の購入費用は開業費として経費計上が可能です。ただし購入費用が10万円を超える機器については開業費ではなく、固定資産として減価償却費の対象となります。各機器の耐用年数に応じて毎年経費として償却処理を行います。

通信費

取引先や関係者との連絡手段である、電話やインターネットなどの通信費も開業費として計上が可能です。ただし通信費は営業開始後も常に利用が想定されます。開業費として計上できるのは会社設立後から営業開始までの間の通信費です。

事務所家賃

事務所やテナントを賃貸する際の家賃も開業費として計上ができます。ただし事務所やテナントを借りる際に発生した敷金や礼金は、開業費として計上できないため注意が必要です。敷金は事務所やテナントを退去する際に返却されるため、経費ではなく資産として扱われます。

印刷代・デザイン費

名刺やチラシの印刷代・デザイン費も開業費として計上ができます。印刷代だけでなく、デザイン事務所にデザインを依頼してつくる場合も開業費に含めることができます。ただし営業を開始した後は広告宣伝費に該当し、開業費に含めることはできません。開業費に含めることができるのは、設立後から営業開始までの名刺発注やチラシ制作です。

調査費

独立や開業にあたって必要な調査費も開業費に該当します。調査費は多岐にわたり、商品や製品の販売状況を調べたり、消費者の動向調査を行う際に調査会社へ支払う手数料のほか、市場調査のために購入した書籍や業界紙なども開業費として計上できます。
調査費もほかの費用と同様に、営業開始後の支出は開業費に含めることはできません。

開業資金の経費として申請できないもの

開業資金として利用した全ての資金が経費として計上できるわけではありません。開業経費に含めないものについて紹介します。

先に紹介した事務所やテナントの敷金や礼金は開業経費に含むことができません。また10万円以上で購入した備品も同様に開業経費として計上ができず、固定資産として扱います。PCやコピー機など高価な備品が該当する可能性があります。

商品やサービスを提供するために仕入れた商品や材料についても開業経費に含めません。商品や材料は、営業活動を開始したのちに顧客に提供し売り上げにつながります。そのため、売上原価として計上する必要があります。

開業日前の費用は経費にできる?

開業日前の費用についても、開業のために用いた費用であれば経費として計上することが可能です。開業費用に計上できる期限は営業開始日までと決まってますが、計上開始できるタイミングについては明確な定めはありません。

理論上、何年前の費用であっても、開業のための費用であれば開業費に計上することができます。そのため、開業日前の費用も経費としての取り扱いが可能です。
ただし、数年前の費用を開業費として計上する場合は、確定申告の際に「開業に必要な費用であったこと」を説明しなくてはいけません。

開業資金の仕訳方法

開業資金の仕訳方法

経費として計上できる開業費ですが、会計上は経費としてではなく「繰延資産」という資産として取り扱われます。

一般的な経費は、経費を使用した年度内で会計処理を行うため、年度をまたぐことはありません。

繰延資産の場合、一旦は資産として計上し、毎年決まった額を経費として精算します。
開業した年度のみで処理をせず、複数年にわたって経費として計上する理由があります。開業準備をしたからこそ、開業した年だけでなく2年目以降も継続して仕事ができると考えられます。
そのため開業資金は開業年度に加え、それ以降の年度にも影響を与えるので、開業年度以降も経費として計上していくべきとの考えからこのような処理を行います。

なお開業費の仕訳を行うときは、明細ごとに入力することが望ましいですが、開業費の詳細の明細は別途まとめれば、仕訳の項目を開業費としてまとめて入力してもかまいません。

開業資金の仕訳例

4月1日に開業し、開業前に以下の通り現金を支出した場合の仕訳方法を例として紹介します。

  • 3月25日 打ち合わせ交通費 1,320円
  • 3月28日 文房具 1,210円
  • 3月28日 書籍 1,680円
借方勘定項目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
開業費 1,320円 元入金 1,320円 3/25 打ち合わせ交通費
開業費 2,890円 元入金 2,890円 3/28 文房具、書籍

※仕訳に登録する日付は開業日を記載します。
※個人事業主の場合、開業日前の貸方勘定項目は「元入金」を使います。
※まとめて入力する場合、1行にまとめて仕訳をおこない、摘要欄に詳細な支出や「開業準備 別紙明細」のように記載します。

開業費用の償却方法

最後に開業費の償却は定額法と任意償却の2つの方法があります。各償却方法について次に紹介します。

定額法

定額法とは毎年同一の金額を経費として計上する方法です。開業費は償却の期間が決められており、所得税法施行令第137条第1項第1号、第3項により60ヵ月で均等に計上するように定められています。

任意償却

任意償却とは当該年度に経費として計上する開業費を0円から開業費の全額のうちから納税者が自由に決めることができる償却方法です。

なぜ開業費について任意償却を認めているかというと、開業した年度ならびに開業から日が浅い年度では経営が苦しく、赤字が続く可能性があります。赤字が続くと開業費の節税効果が薄れてしまうため、利益が出た年度にまとめて経費として計上できるように任意償却を認めているのです。

開業資金の仕訳を理解して節税対策をしよう

開業後、利益が出始めたらできるだけ税金はおさえたいと考える人も多いでしょう。開業費を上手に仕訳し、決算の状況に応じて償却方法を選ぶことで大きな節税効果が期待できます。
経費となる開業費を把握し、事前に仕訳をすることで利益を最大限受けられるよう、開業前から準備を進めておきましょう。

公開日:2022年04月26日

よくある質問

Q 個人事業主と法人で開業資金の扱いに違いはありますか。 回答を見る
Q 開業日までに注意しておくことはありますか。 回答を見る