会社を守るFC(フランチャイズ)法律コラム(4)加盟申込金とは

公開日:2015年03月24日

FC(フランチャイズ)本部とFC(フランチャイズ)加盟希望者との間で加盟契約についての交渉がなされ、加盟希望者の加盟意思が高まってきたときに、本部から加盟希望者に対して「フランチャイズ加盟申込金」の支払が請求されることがあります。フランチャイズ加盟申込金についてご紹介いたします。

記事提供:フランチャイズタイムズジャパン

加盟申込金の意味は必ずしも明らかではありません。多くの本部では「一旦支払われたフランチャイズ加盟申込金は理由の如何を問わず返金されません。」「加盟申込金はフランチャイズ加盟契約締結時に加盟金に充当されます。」としています。その意味で、加盟申込金はフランチャイズ加盟金の一部前払い(内金)といえます。

なお、フランチャイズ加盟希望者側からの返金請求は認められていないものの、本部側から加盟申込金(又はその倍額)を返金して「この話は無かったことにしてください。」と言うことがあります。この場合は、一種の手付金としての意味を持ちます。

その他にも、

(1)フランチャイズ本部が加盟契約前の売上予測や事業計画を立案したり、

(2)フランチャイズ本部が他の加盟希望者と交渉しないことを約束することがあります。

(1)では、フランチャイズ加盟申込金は立地診断の対価であり、(2)では、独占交渉権・優先交渉権付与の対価です。

実際の場面では、これらの一つに特定されるのではなく、いくつかの意味を併せ持っています。ですから、加盟希望者としては、どのような趣旨で加盟申込金が徴収されるかを十分確認してから支払うようにしてください。

一旦加盟申込金が支払われると、たとえ加盟契約が締結されなくても、その返金は認められないことが多いです。そのため、F加盟契約が締結されなかった場合に、加盟希望者とフランチャイズ本部との間で加盟申込金の返金についてトラブルになることがあります(金額が大きくないので訴訟にまで発展する例は無いですが)。

通常、加盟申込金が支払われると、フランチャイズ本部から加盟希望者に対して、そのビジネスを始めるための情報が提供されたり、物件の探索がなされます。その意味で、フランチャイズ加盟申込金には一定の対価性が認められます。

また、そのフランチャイズ加盟希望者に対して独占交渉権や優先交渉権が与えられた場合も、その範囲で対価性が認められます。従って、加盟申込金が返金されないことも不合理ではありません。

しかし、本部が加盟希望者に対して提供したサービスと比較してフランチャイズ加盟申込金が非常に高額な場合や、フランチャイズ本部が他のフランチャイズ加盟希望者との間で並行的に交渉を進めていた場合は、加盟申込金の全額没収は相当でない場合があります。
このように加盟申込金の概念は必ずしも明確でなく、加盟契約が締結されなかったときにはトラブルの元になります。ですから、フランチャイズ本部としては、必ず「加盟申込覚書」を締結するようにしてください。

加盟申込覚書を作成する場合

(1) 加盟申込金の趣旨

(2) 加盟金への充当の有無

(3) 加盟契約が締結されなかった場合の返金の有無

(4) 加盟申込金の有効期間

(5) (4)の期間中に本部が加盟希望者に対して与えるサービス及び効果の具体的内容

特にフランチャイズ加盟申込金の有効期間(4)を明記しておかないと、フランチャイズ加盟希望者との法律関係がいつまで経っても確定しないことになります。また、本部が加盟希望者に対して与えるサービスや効果の内容(5)を具体的に定めておかないと、加盟希望者に過大な期待を与えてしまいます。

ですから、「フランチャイズ加盟申込金をもらっておけば、フランチャイズ加盟希望者の気も変わらないだろうから、とりあえずもらっておこう。」という安易な目的でフランチャイズ加盟申込金を徴収することは望ましくありません。

神田 孝(かんだ・たかし) - 弁護士 -

弁護士法人心斎橋パートナーズ代表社員

チェーンビジネス法務を専門とし、FC(フランチャイズ)チェーン・レギュラーチェーンの顧問を多く務める。

大阪弁護士会所属。(社)中小企業診断協会東京支部フランチャイズ研究会特別会員。

(社)日本フランチャイズチェーン協会講師。

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