「逃げない」からこそチャンスがやってくる。株式会社ウィルフォワード 志村智彦さんインタビュー

公開日:2016年12月21日

東京・目黒駅から徒歩15分ほどの閑静な住宅街にある一軒家。一見すると普通の住宅が、株式会社ウィルフォワードだ。

「世界を一つの家族にする」というスローガンを掲げたウィルフォワードは、採用コンサルティングやメディアプロデュース、Webや映像などのクリエイティブ事業などを手がけている会社だ。

社員が幸せに働けるよう、主婦を中心とした在宅勤務や乳幼児を連れての出社を取り入れるなど、普通の企業とは異なる働き方を模索している。

また、社長である成瀬さんと新卒社員を除く多くの同僚が個人事業主。ウィルフォワードに所属しながらも、個人で事業を行うという形態を取っているのも特徴的だ。

そのウィルフォワードで、企業向けの講演会を行う講師のプロデュース業をメインに行っているのが、志村智彦さんだ。

目次

「アホな」大学生がインドに行って変わった

“逃げた”と思われたくなかった

チャンスは他人から回ってくることが多い

会社を辞めるときは「辞め方」が重要

苦しいところを抜けるまで頑張ろう

80歳まで楽しみながら仕事ができる状態をつくりたい

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「アホな」大学生がインドに行って変わった

志村さんは、立教大学法学部出身。付属高校からエスカレーター式で入学。入学当時は特に将来の展望などはなかったという。

インタビューカット1

「法学部に入ったのも、就職に有利だからという理由でした。放送研究会に所属しましたが、アナウンサーを目指しているかわいい女の子がいるんじゃないかと思ったんです(笑)」

本人曰く「アホな」大学生だったという。しかし、大学1年生のときに自分を変えなければいけないと一念発起。大学2年生のときに一人でインド旅行に旅立つ。これが志村さんの人生を変えた。

旅行先のインドで、たまたま立教大学に通う学生と知り合った。その学生は、アフガニスタンへサッカーボールを送るボランティア活動を行っている団体に所属していたのだ。日韓ワールドカップが開催された年のことだ。

日本に帰ってきてから、志村さんはその活動を行っている学生団体に所属。広報という肩書きで、さまざまな企業から協賛金を募った。

「当時の大学生が、廃墟のようなビルにノートパソコンを持って集まって、企画書を書いて企業にアポを取って営業に行く。こんな人たちがいるんだと思いました。それと同時に、自分の学生生活は何だったのかと思いました」

インドでの旅行、そしてボランティア活動を通じて、志村さんはどうやったら人が動くのかを学んだ。具体的には、目的、目標、概要。この3つを掲げて行動すれば、人の心を動かせると気づいた。

その後、それまでの経験を活かしジャーナリストになりたいと思うようになり、イラク戦争直前のシリア、ヨルダン、イスラエルなどを回った。自分の目で不安定な情勢の国を見て回りたかったのだ。

「当時の世界のニュースを見てみると、アメリカはイラクがよくないと言っているし、イラクの人たちはアメリカがよくないと言っている。このような解釈の違いは永遠に埋まらないのではないか。そう思ったんです」

ヨルダンで出会ったイラク人たちは、志村さんにはとてもいい人たちに映ったという。現地で感じたことと、報道されていることの乖離を見て、思想の溝は埋まらないと感じたのだ。

そのような溝を超えられる手段として、テクノロジーや経済というものに興味を持つようになる。まだこの世の中にない技術や製品を提供すれば、世界を豊かにできるのではないか。

そして志村さんは、ベンチャー企業への就職を考えるようになる。

“逃げた”と思われたくなかった

就職活動時は、サイバーエージェントやライブドアなどのベンチャー企業が勢いのあったときだった。志村さんは、社員20名ほどの人材教育の会社に就職する。小さな会社に入り自分の力で大きくしたい。そのような志を持っていた。

インタビューカットa

志村さんは、社長秘書を4年、その後営業職を4年勤めた。その間に一度辞めたいと思った時期があったという。しかし、そのタイミングでは辞めなかった。その理由とは何だろうか。

「ちょうど東日本大震災が起きて、転職どころの話ではなくなったというのがひとつ。そしてもうひとつが、“逃げた”と思われたくないと思ったんです」

営業職2年目、自分の社内での評価が下がったときに辞めたいと思ったのだが、仕事で結果を残さずに辞めるということに納得がいかなかったのだ。辞めるのならば、年間MVPを取るくらいの功績を残して辞めたい。

志村さんが転職を思いとどまったとき、今度は商品開発部に配属される。具体的には、人材育成セミナーの内容をつくる仕事だ。社長肝いりの会社の歴史に残るメインの研修をリリースし、その3日後に会社を辞めた。そして1ヵ月ほどヨーロッパ旅行に出かける。

このときは、次に何をしようかまったく考えてない状態だったという。

チャンスは他人から回ってくることが多い

ヨーロッパから帰ってくると、元同期ですでにウィルフォワードを立ち上げていた成瀬さんから「何か一緒にやろう」と声がかかった。3年前のことだ。また、前職で講師デビューを手伝ったあな田さんからも声がかかり「ひとり言セラピー協会」の運営にも参加することになる。

インタビューカット2

志村さんは、営業よりもセミナーの内容を考えたり、講師を育成するということに向いていると自分で感じていたため、そのような仕事ができる場を探していた。

ウィルフォワードでは、講師育成のプロデュース業を手がけている。前職での経験を活かし、元劇団四季の佐藤政樹さんや、元マラソン選手の加納由理さんをプロデュース。企業向けセミナーを中心とした講師として、トータル的なプロデュースを行っている。

「佐藤さんは多少講師としての経験がありましたが、加納さんはまったくのゼロからプロデュースしました。それぞれの経験を活かしたプログラムを作成し、話し方やマーケティングまでマンツーマンで指導しています」

もうひとつの「ひとり言セラピー協会」では、セミナー内容をつくるなどの裏方業務を担当。こちらも軌道に乗ってきたという。

なぜ、成瀬さんやあな田さんは志村さんに声をかけたのだろうか。

「会社を辞めて事業を起こしたり、独立したりというときは、自分の力でやってやろうという気持ちが強いと思います。でも、チャンスというのは割と周りの人から紹介されて来たりするものだと思うんです」

それは、会社に勤めているときから感じていたという。一時期会社を辞めようと思うまで思い詰めていた志村さんが、その後大きな仕事を成し遂げたことを、成瀬さんやあな田さんは見ていたからこそ、一緒に仕事をしようと誘ったのだろう。

「仮に、あのタイミングで会社を辞めていたら、周りの人は僕に声をかけなかったのではないだろうかと思います。」

志村さんは「逃げなかった」からこそ、今につながっているのだろう。どん底から這い上がった経験は、必ず自分のためになるものなのだ。

会社を辞めるときは「辞め方」が重要

数々の人材育成セミナーを手がけてきた志村さんに、転職や独立をするときの心構えを尋ねてみた。

「辞め方が重要だと思います。どんなに仕事ができて人格者だとしても、辞めるときに揉めたり問題を残していったりすると、信用が失われてしまう。辞め方に人の本質が出ると思うんです。立つ鳥後を濁さず、ですね」

辞めるからといって、会社の悪口を言いまわったり、無断欠勤の末退社といった辞め方は、やはり後味がよくない。「もう違う業界に行くから」と言っても、人生は長い。どこかで関係者と巡り合うことなんて、割とあることだ。また、噂が転職先や取り引き先などに広まることもよくある。

志村さんは、辞める時はもっとも配慮をしていたという。引き継いだ後輩や同僚に迷惑がかけたくないという思いから、上長には3ヵ月前、同僚には2ヵ月前から退職の意向を伝え、引き継ぎに問題が起きないようにマニュアルづくりを行いながら、仕事を進めた。前述のように大きなプロジェクトを成功させていたため、最後は何のわだかまりもなく辞められた。

苦しいところを抜けるまで頑張ろう

また、辞めた後のことを不安に感じてもいたというが、自分が最高潮のときに辞めたという自信が、その不安を打ち消したという。

「辛い、成績が上がらない。そんな理由で“逃げて”辞めたら、次の仕事をするときに絶対その癖が残ると思ったんです。自信を持って辞めようと心に決めていました」

この経験は、今の仕事にも活かされているという。

「講師育成というのは、結果が出るまでに時間がかかります。最初の1年は売り上げもなくてかなり厳しかったんですが、自分がやりたいこと、楽しいことをやっているので、厳しい状態を抜けるところまでは頑張ろうという気持ちになれたのは、前職の経験が活きていると思っています」

今は苦しくても、いつかは成功する。その体験を持っているからこそ頑張れる。志村さんは、前職で仕事の技術的なノウハウはもちろん、生き方のようなものも身につけたようだ。

80歳まで楽しみながら仕事ができる状態をつくりたい

現在は、佐藤さん、加納さんという二人の講師のプロデュース業をメインに行っている。もちろん、今後第三、第四の講師育成も行うことだろう。

それとは別に、志村さんの個人的な夢は何なのか。

インタビューカット3

「ひとつは、自分自身が幸福感と快適感を持って仕事ができる環境をつくりたいですね。これからは、人間80歳くらいまでは働かなくてはならなくなる時代が来ると言われています。それならば、楽しみながら仕事をしてきちんと対価がもらえる状態をつくっていきたい。このウィルフォワードは、まさにそこを目指しています」

加えて、講師育成やセミナーを通じて、社会にインパクトのある仕事を残したいという希望もある。世の中にいい価値を、上質なものを届けたいという想いがあるという。

「もっと個人的なことを言えば、海外の人との交流を増やしたいですね。そう思って、今英語の勉強をしているんですよ(笑)」

志村さんはそういうと楽しそうに笑った。

ウィルフォワードは、「Will」(意志)と「foward」(前へ)という単語を組み合わせた造語だ。個人の意志を前へ発信していくことで、幸せな未来をつくっていく。そんな想いが込められている。

取材に伺ったとき、社長である成瀬さんはご自身の小さなお子さんを抱っこして迎えてくれた。2階のリビングでは、そんな成瀬さんと社員やインターン生がみんなでお昼ごはんを食べていた。

まるでひとつの家族のような会社。志村さんは、良質なセミナー、良質な講師を世の中に送り出すことで、世界をひとつの家族にしようとしているのだろう。

志村 智彦

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株式会社ウィルフォワード

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一般社団法人 ひとり言セラピー協会

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