賞与引当金って何?損金算入できるの?計算方法や仕訳例などもご紹介!

最終更新日:2020年12月17日

賞与の支給に際して、経営者が事前に済ませておくべきことが「賞与引当金」の計上です。
開業後に「賞与引当金の計算方法や仕訳方法が分からない」と慌てないよう、早い段階で一通りの知識を身につけておくようにしましょう。

こちらでは、賞与引当金の必要性や計算方法、パターン別の仕訳例を紹介しているので、会計処理の方法で迷ったときはぜひ参考にしてみてください。

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目次

賞与引当金とは

賞与引当金を計上する必要性

賞与引当金は損金算入できる?できない?

賞与引当金の計算方法

賞与引当金の仕訳例

賞与引当金計上の注意点

賞与引当金の仕訳パターンを覚えて会計業務に備えよう

賞与引当金とは

賞与引当金とは、「将来的に会社が従業員に支払う賞与の中から、当期に帰属する金額分を計上するための勘定科目」です。

具体的に、下記の会社を例として考えてみましょう。

  • 決算日:毎年3月
  • 賞与支給日:毎年6月と12月の年2回
  • 賞与の査定期間:6月賞与の査定期間(前年12月~5月)、12月賞与の査定期間(6月~11月)

例えば2021年6月に支給される賞与の場合、賞与の金額を決める査定期間は2020年12月~2021年3月(当期)と2021年4月~5月(来期)の2つの期に分かれています。

当期にあたる賞与の金額分は当期のうちに流動負債(※)として計上しなければならず、その際の会計処理に使われる勘定項目が賞与引当金です。

(※)…通常の営業取引で生じる負債、または1年以内に支払う義務がある負債

賞与引当金を計上する必要性

賞与引当金が必要な理由は、引き当てとして金額を計上しなければ、当期に会社がどのくらいの利益を生んだのか正確な数値を把握できないからです。

特に従業員が多い会社や賞与の金額が高い会社では、賞与の金額を含める場合と含めない場合ではトータルの利益に大きな差が生じるでしょう。

賞与引当金は損金算入できる?できない?

賞与引当金は、損金として算入できません。

損金算入できる費用は、債務が確定している(支払い義務が法的に確定している)ことが原則です。
この原則から考えると、賞与引当金として計上する金額はまだ見積段階であり、確定している費用だとは言えません。

業績悪化により賞与の支給が中止となる可能性もあるため、間違って賞与引当金を経費として計上しないよう注意しましょう。

損金算入についてもっと詳しく

賞与引当金の計算方法

下記の会社を例として、賞与引当金を計算してみましょう。

  • 決算日:2021年3月
  • 賞与支給日:2021年6月
  • 賞与の査定期間:2020年12月~2021年5月(6ヵ月間)
  • 当期の引当金として計上する期間:2020年12月~2021年3月(4ヵ月間)
  • 従業員へ支給する賞与の見積額:300万円

上記の会社において、賞与引当金は下記の計算式で求められます。

300万円(賞与の見積額)× 4 ÷ 6(当期の引当金として計上する月数)= 200万円(賞与引当金)

このときに賞与引当金として計上できるのは4ヵ月分のみのため、残りの2ヵ月分は処理せずそのままにしておきます。

賞与引当金の仕訳例

こちらでは、賞与引当金の仕訳例を3パターンまとめました。
引当金額と実際の支給額が異なる場合の仕訳例も紹介しているので、会計処理の方法に迷ったときは参考にしてみてください。

期末に当期の引当金を計上するときの仕訳例

下記は、従業員に支給する賞与の見積額が500万円、そのうち当期に計上しなければいけない引当金額が300万円の場合の仕訳例です。

借方 金額 貸方 金額
賞与引当金繰入額 300万円 賞与引当金 300万円

賞与引当金として当期の賞与見積額を仕訳する場合は、借方に「賞与引当金繰入額」を立て、貸方に「賞与引当金」を記入します。
賞与引当金は必ず「流動負債」に位置するので、間違えないようにしましょう。

賞与の支給が完了した後の仕訳例

下記は、上記で引き当てした300万円、さらに翌期の200万円を合わせた500万円の賞与の支給が完了したときの仕訳例です。

借方 金額 貸方 金額
賞与引当金 300万円 預り金 3万円
賞与 200万円 普通預金 497万円

借方には、すでに計上が完了している300万円の「賞与引当金」と翌期200万円の「賞与」が位置します。
貸方に位置する「預り金」の3万円は会社が従業員の代わりに国へ納める源泉所得税、「普通預金」は源泉所得税を引いて実際に支払った497万円の賞与を指します。

引当金と支給額の間に差額が生まれた場合の仕訳例

賞与引当金として見積もった金額と実際の支給額が異なる場合の仕訳例を紹介します。
下記の表は、賞与引当金として300万円を計上したものの、業績悪化により実際の賞与支給額が250万円となったケースを想定しています。

借方 金額 貸方 金額
賞与引当金 300万円 預り金 3万円
賞与引当金戻入益 50万円
普通預金 247万円

賞与額が予定よりも減った場合は、「賞与引当金戻入益」という勘定項目で処理します。
この賞与引当金戻入益を使うことで、実際に支払うことがなかった50万円分の差額は当期の特別利益として計上が可能です。

賞与引当金計上の注意点

賞与の計上には賞与引当金を利用するのが一般的ですが、場合によっては「未払金」または「未払費用」として処理しなければいけないため注意が必要です。

まず、未払金として処理すべきなのは「賞与支給金額がすでに確定済みで、金額が支給対象期間以外の基準に基づき算出されている」ケースです。
支給対象期間以外の基準には、例えばノルマの達成や資格の取得をした従業員への成功報酬が挙げられます。

そして、「未払費用」として処理すべきなのは「賞与支給金額がすでに確定済みで、金額が支給対象期間の基準に基づき算出されている」ケースです。

賞与支給金額が確定しているかどうか、金額を決める基準が支給対象期間内かどうかによって計上方法が変わるため、上記の区分を覚えておくようにしましょう。

賞与引当金の仕訳パターンを覚えて会計業務に備えよう

一般的に賞与の査定期間は期をまたぐため、賞与引当金として計上する必要があります。

賞与引当金の必要性や計算方法などの基礎知識を押さえ、正しく計上できるようそれぞれのパターンに合った仕訳方法を覚えるようにしましょう。

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公開日:2020年11月26日