副業の年末調整は必要?手続き方法や確定申告が必要なケースとは

最終更新日:2023年03月10日

年末調整は、勤務先が所得税を正しく計算するための制度です。副業をしている場合、所得額など条件によっては確定申告が必要なため、正しく理解して対処する必要があります。

この記事では、副業で年末調整が必要な人の条件や提出書類などを解説します。副業のダブルワークなど、ケースごとに年末調整や確定申告の必要性について詳しく紹介しますので、会社員やアルバイト・パートの人で副業収入がある方はぜひ参考にしてください。

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目次

副業している会社員は年末調整は必要?

副業の確定申告が必要なとき

年末調整とは

副業の年末調整・確定申告のさまざまなケース

副業のアルバイトやパートが年末調整の対象外のケース

年末調整に必要な書類

年末調整が必要な副業か確かめて手続きしよう

副業している会社員は年末調整は必要?

副業している会社員は年末調整は必要?

副業している会社員の方が年末調整が必要かどうかは、所得額や雇用契約のある企業数などの条件によって変わります。年末調整ができる人と、確定申告が必要な人に分かれるため、どちらに当てはまるのかを理解して対応しましょう。

副業の確定申告が必要なとき

副業で確定申告が必要となるのは、所得額が20万円を超える場合です。給与所得や退職所得以外の所得額が20万円を超えた場合、確定申告が必要です。

副業の確定申告における大まかな流れは、下記の通りです。

  1. 副業所得の種類を確認する
  2. 確定申告に必要な書類を揃える
  3. 期間内に確定申告を行う

確定申告の対象である所得は10種類あり、それぞれで税金の計算式が異なります。副業で多い所得は、下記3種類です。

  • 給与所得(アルバイトやパート、派遣社員など)
  • 事業所得(自営業)
  • 雑所得(SNS広告収入、原稿料、講演料など)

自分の副業所得がどれに該当するかは、源泉徴収票や支払い調書などで確認できます。一般的には、報酬の支払い先から源泉徴収票を渡されたら給与所得、支払い調書の場合は雑所得と判断します。

副業の確定申告に必要な書類は、給与所得の場合は本業と副業それぞれの源泉徴収票と、それ以外の場合は本業の源泉徴収票と経費の領収書です。アルバイトやパート以外の副業では、経費の領収書を保存しておきましょう。

確定申告の申請期間は、通常翌年の2月16日〜3月15日の1ヵ月間です。期間内に申告手続きをしないと、無申告加算税というペナルティの対象となるため注意しましょう。

住民票のある自治体管轄の税務署に書類を提出するほか、オンライン上で24時間手続きできるeTaxでも確定申告ができます。利用には事前登録が必要です。

副業の確定申告の条件や詳しいやり方など、確定申告に必要な知識については下記記事で解説しています。併せてご覧ください。
副業の確定申告はいくらから必要?副業時の確定申告のやり方や基本

年末調整とは

年末調整は、企業が従業員に支払った1年間の所得税を調整するために行います。給与や賞与の所得税を計算し、各種控除を反映した所得税額との差額を調整します。

所得税は、毎月の給与から「所得税及び復興特別所得税」として源泉徴収(天引き)されています。扶養家族の追加などにより、1年分の合計金額と実際の納税額とに差が生まれたり、生命保険や地震保険の控除を行ったりするため、納税額を改めて算出しなおす必要があります。

納税額の再計算として年末調整は通常、毎年12月の給与支払いに合わせて実施されます。11月下旬までには必要な書類を揃えなくてはなりません。

なお、正社員だけでなくアルバイトやパートの雇用形態でも年末調整の対象です。ただし、条件によっては年末調整の対象外とされます。年末調整の対象者については後ほど詳しく紹介します。

ダブルワークをしていても年末調整は1社のみ

アルバイトやパートを複数掛け持ちしている、いわゆるダブルワークの場合、年末調整を行う勤務先は1か所のみです。年末調整に必要な書類の「扶養控除等申告書」は、1か所にしか提出できないと決まっています。

2か所以上で年末調整を行うと、控除の重複などにより納税額が適切に計算できない可能性があります。ダブルワークの場合は、収入が最も多い勤務先を本業とみなし、年末調整の手続きを行いましょう。

もし2か所以上で年末調整が行われた場合は、本業とする勤務先以外で年末調整の取り消しを依頼します。その後、それぞれの源泉徴収票を使い、本業以外の給与について確定申告を行います。

副業の年末調整・確定申告のさまざまなケース

副業の年末調整・確定申告のさまざまなケース

副業のさまざまなケースにおける、年末調整や確定申告の手続きについて解説します。まず、副業で年末調整の対象となるケースは下記の通りです。

  • 1年を通じて勤務している従業員
  • 年の途中で入社し、年末まで勤務している従業員
  • 著しい心身の障がいが理由で年の途中で退職し、年内の再就職が見込まれない場合
  • アルバイトやパートを年の途中で退職し、本年の年収が103万円以下
  • 海外転勤や移住などで非居住者となった場合

上記に該当する場合は、勤務先へ「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する必要があります。会社は、所得税法に基づき、扶養控除等申告書を提出した従業員に対して年末調整を行います。申告書を提出していないと、年末調整ができない点に注意しましょう。

アルバイトやパートで給与所得が年103万円以下の場合、基礎控除と給与所得控除の関係により所得税額はゼロとなります。ただし、企業側には扶養控除等申告書を提出していれば年末調整を行い、源泉徴収票を交付する義務があります。

上記のほか、年末調整ができないため確定申告が必要なケース、いずれも不要なケースに分かれます。次から詳しく説明していきますので、自分がどれに該当するかを判断し、必要な対応を行うためにも参考にしてください。

副業所得が20万以下のとき

副業所得が20万以下の場合、本業は年末調整の対象であり、副業収入についての確定申告は不要です。本業が企業の従業員で、副業がアルバイトやパート以外のクラウドソーシングや内職であっても、副業収入から諸経費を差し引いた所得が20万円以下であれば確定申告の必要はありません。

ただし、住民税は所得額を基に算出されるため、副業に対する住民税については別途申告が必要です。副業所得が給与所得なら源泉徴収票、事業所得なら帳簿や領収書といった書類を揃えて、各自治体の窓口へ提出します。なお、確定申告をする場合は住民税の申告は不要です。

副業所得が20万を超えるとき

副業所得が20万を超えた場合は確定申告が必要です。アルバイトやパートなど雇用契約による給与所得はもちろん、雑所得や事業所得も該当します。収入金額から経費を差し引いた所得が年間20万円を超えている場合は、確定申告を行いましょう。

副業がアルバイトやパート(ダブルワーク)のとき

副業先がアルバイトやパート(ダブルワーク)の場合、原則として本業の方で年末調整を行います。先述の通り、年末調整は基本的に1社でのみ可能です。複数の勤務先がある場合、最も所得が多い企業を本業として年末調整をしてもらいましょう。

本業以外の所得額の合計が20万円を超える場合、勤務先から源泉徴収票をもらって確定申告をする必要があります。確定申告によって、副業の給与における税金の過不足分を調整できます。期間内に確定申告を行わないと、無申告加算税や延滞税が発生するリスクがあるので注意しましょう。

なお、以下の条件を両方満たす場合は確定申告は不要です。

  • 給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下
  • 給与収入額の合計から、雑損控除、医療費控除、寄付金控除、基礎控除以外の各種所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下

副業のアルバイトやパートが年末調整の対象外のケース

副業のアルバイトやパートが年末調整の対象外であるケースとして、次のような条件が挙げられます。

  • 年収2,000万円以上
  • 災害による源泉所得税等の納税猶予や還付を受けている場合
  • 年末調整までに「扶養控除等申告書」を提出していない場合
  • 今年に中途入社で、前職の源泉徴収票が提出できない場合
  • 日雇労働など、継続して同一雇用主に雇用されない場合
  • 年の中途で退職し、対象者に該当しない場合

年収2,000万円以上の従業員は、確定申告が義務付けられているため年末調整の対象外です。また、今年分の源泉徴収票がないと、前職での給与を把握できないため年末調整ができない点に注意が必要です。

年末調整に必要な書類

年末調整に必要な下記書類から、該当するものを全て勤務先に提出する必要があります。

  • 扶養控除等申告書
  • 基礎控除申告書
  • 配偶者控除等申告書
  • 所得金額調整控除申告書
  • 保険料控除申告書
  • 住宅借入金等特別控除申告書

企業では毎年12月の給与支払いに併せて年末調整を実施します。準備が始まる11月下旬を目処に必要書類を準備しましょう。規定の用紙がある場合は、時期に合わせて勤務先から配布されます。特に決まった型がない場合、国税庁のホームページでダウンロードして使うことも可能です。

給与所得者の保険料控除申告書

「給与所得者の保険料控除申告書」は、年末調整における保険料控除を申請する書類です。生命保険や地震保険に加入している場合、必要事項を記入した申告書と証明書類を勤務先に提出することで、保険料控除が受けられます。

生命保険や地震保険、小規模企業共済等掛金については、支払い金額を証明する書類の添付が必要です。社会保険料のうち、国民年金保険料のみ支払い金額の証明書類を添付します。生命保険は新制度、旧制度の区分や控除額などの記入が必要なので、国税庁ホームページの案内や控除額計算ツールなどを活用しましょう。

給与所得者の基礎控除申告書

給与所得者の基礎控除申告書は、正式には「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」と呼ばれます。年末調整において基礎控除や配偶者控除、所得金額調整控除を受けるために必要な書類です。

基礎控除は、全ての納税者に無条件で適用される所得控除の1つで、通常は課税所得額を算出する際に差し引かれます。従来は所得額問わず一律38万円でしたが、令和2年度の税制改正より、所得額が2,400万円以下は一律48万円に変更され、それ以上は段階的に減額、2,500万円以上は基礎控除の適用外となりました。

配偶者控除等申告書は、本人の本年中の所得合計額が1,000万円以下、かつ配偶者の本年中の合計所得額が133万円以下という条件を満たした場合のみ、提出が必要です。また、控除対象配偶者として見なされる条件に当てはまっていることも確認しておきましょう。配偶者の所得が48万円〜133万円の給与所得のみの場合、申告書を提出すると配偶者特別控除が受けられます。

所得金額調整控除は、年末調整の対象給与額が850万円を超える人で、次のいずれかの条件に該当する場合です。

  • 本人、同一生計配偶者または扶養親族が特別障害者
  • 23歳未満の扶養親族がいる

給与収入額の判断が難しいタイミングでも、所得金額調整控除申告書に必要事項を記入して提出しておきましょう。

年末調整が必要な副業か確かめて手続きしよう

年末調整は、1年間の活動を通して正式な納税額を決定するために重要な手続きです。本業以外の副業収入では、年末調整や確定申告を通して所得税や住民税を調整します。控除後の所得額や給与の種類などの条件で必要な手続きが変わるため、自分がどのケースに該当するか理解しておきましょう。

アルバイトやパートを副業で掛け持ちするダブルワークでは、本業の1社のみで年末調整が可能です。ほかの収入については、経費を差し引いた所得額が20万円を超える場合確定申告を行います。副業収入に関する年末調整や確定申告の仕組みを正しく理解し、スムーズに対処できるよう準備しましょう。

公開日:2022年06月16日

よくある質問

Q 年末時点で副業アルバイトをしていない場合の年末調整は? 回答を見る
Q 副業のダブルワークは会社に相談すべき? 回答を見る

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