フランチャイズの法定開示書面とは?必要な理由や書面の内容・取得方法も解説

最終更新日:2023年03月01日

フランチャイズでビジネス展開をする際には、フランチャイズ本部とフランチャイズに加盟したい人との間でフランチャイズ契約を結びます。その準備段階で用意されるべき書類が法定開示書面です。

今回は、法定開示書面はどのようなもので何のために必要なのか、どこから取得できるのかなどについて詳しく説明します。

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目次

フランチャイズの法定開示書面とは

フランチャイズの法定開示書面の作成が必要な理由

フランチャイズ法定開示書面の開示項目と内容

フランチャイズ法定開示書面を取得する際の手順

フランチャイズ法定開示書面を本部以外から取得する方法

フランチャイズの法定開示書面とは?まとめ

フランチャイズの法定開示書面とは

フランチャイズの法定開示書面とは

フランチャイズ事業でビジネス展開を行うにあたって、必要となるのはフランチャイズ契約書だけではありません。契約書に加えて法定開示書面の提示も求められるケースがあります。まずは、フランチャイズ法定開示書面の概要や目的、契約締結までの流れについて解説します。

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フランチャイズの法定開示書面の概要

フランチャイズ展開を行う場合、フランチャイズ本部(フランチャイザー)とフランチャイズ加盟希望者(フランチャイジー)との間でフランチャイズ契約を結ぶことになります。

そして、契約前に開示されなければならないのが法定開示書面です。

法定開示書面は中小小売商業振興法に基づくもので、フランチャイズ本部は契約前にフランチャイズ加盟希望者に法廷開示書面を交付して、内容を説明することを義務付けています。

なお、法定開示書面は「情報開示書面」や「契約のあらまし」、または、「フランチャイズ契約の要点と概説」などの名称で呼ばれるケースもありますが、中小小売商業振興法では、フランチャイズ本部は加盟希望者に対して、契約を結ぶ前に法定開示書面を開示することを定めています。

フランチャイズの法定開示書面の目的

法定開示書面は、フランチャイズ本部がフランチャイズ加盟希望者に対し、適切な情報をはっきりと示して説明することにより、本部と加盟者の間で発生するトラブルや訴訟を未然に防ぐことを目的としています。

フランチャイズ契約書の内容は、条文数が多いのが一般的です。さらに、フランチャイズ加盟希望者の全てが、法律の文章を読み慣れているとは限りません。契約書の内容を理解することが難しい場合も起こりえます。

フランチャイズ加盟店は独立した事業者なので、フランチャイズ本部の社員として雇用されるわけではありません。フランチャイズ契約は、フランチャイズ本部と加盟店とが、それぞれ独立した事業者として締結します。そのため、フランチャイズ加盟希望者が自らの責任で契約内容を十分に理解・検討できるような環境を整えることが重要です。

加盟者にかかる義務や責任をきちんと確認・納得した上で契約締結に臨めるようにすることでトラブルの未然防止や取引秩序の確立を図ります。

フランチャイズ契約締結の流れ

フランチャイズ契約は、フランチャイズ本部が加盟者に対して商標や商号を使用する権利を与えたり、物品販売やサービス提供などの経営ノウハウを指導・共有したりする対価として、加盟者が本部にロイヤルティや保証金のような金銭を支払う事業形態です。契約締結までは以下のような流れになります。

1. 情報収集ののち、本部の選定
2. 本部訪問、および、本部と加盟希望者の話し合い
3. 資金面や物件有無などの確認
4. 加盟希望者側からの加盟の意思表示
5. 法定開示書面の説明
6. 物件・立地調査、経営計画書、資金計画の検討
7. 資金調達
8. 加盟希望者側の加盟の意思決定
9. フランチャイズ契約の締結

フランチャイズの事業ならびに契約内容について、たとえ小さくても疑問点があるならば加盟希望者は本部に質問し、本部側は加盟希望者が十分に理解できるまで、きちんと説明を行うことが重要です。検討の結果、契約内容に合意できればフランチャイズ契約締結に至ります。

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フランチャイズの法定開示書面の作成が必要な理由

法定開示書面ですが、全てのフランチャイズ本部は例外なく開示しなければいけないのでしょうか。この段落では、フランチャイズの法定開示書面の作成が必要となるケースについて解説します。

必要要件

法的な観点からすると、フランチャイズ本部であれば必ず法定開示書面を開示しなければならないというわけではありません。中小小売業振興法が定める法定開示書面の交付と説明義務は、特定連鎖化事業(小売業と飲食業のフランチャイズチェーン)の本部が対象です。

さらに詳しく説明すると、小売業や飲食業のフランチャイズ本部のうち、

  • 中小小売商業者である
  • 加盟店に特定の商標や商号などの表示を使用させている
  • 継続的、かつ、定期的に加盟店を指導監督している
  • 定型的な契約より、全ての加盟店と契約している
  • ロイヤルティ・加盟金・保証金などの金銭を徴収している
  • 加盟店に商品を継続的に販売、または、販売をあっせんしている

上記の要件に当てはまる本部事業者に法定開示書面を作成し、契約前に加盟希望者に情報の開示、ならびに適切な説明を行う義務があると定められています。

独占禁止法の考え方

独占禁止法に基づいた「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法の考え方(フランチャイズ・ガイドライン)」によると、小売・飲食だけでなく、全業種のフランチャイズチェーンにおいて、契約前に情報開示が的確に行われることが望ましいとされています。

フランチャイズ・ガイドラインは、独占禁止法違反行為の未然防止やフランチャイズ本部の適切な事業活動の展開に役立てる目的で公正取引委員会が公表しているものです。全業種のフランチャイズ本部が法定開示書面を作成して開示・説明することは、加盟希望者が適正な判断を行う助けとなり、自社のフランチャイズ・システムが実際よりも優れていると誤解させて取引させるような「ぎまん的顧客誘引」の未然防止になります。

また、中小小売業振興法で義務付けられていないフランチャイズ本部事業者でも、法定開示書面の作成や説明を行うことはトラブルや訴訟の未然防止に繋がるため、加盟希望者だけでなく加盟店からの信頼を得ることにも繋がります。自主的に法定開示書面を作成するメリットは大きいといえるでしょう。

フランチャイズ法定開示書面の開示項目と内容

中小小売商業振興法が本部事業者に対し、フランチャイズ加盟希望者へ契約前に交付することを義務付けている法定開示書面の内容の解説です。23の開示項目(令和3年4月の中小小売業振興法施行規則改正 令和4年4月1日より施行)を、本部の概要とフランチャイズ契約の内容との2カテゴリーに分けて説明します。

フランチャイズ本部の概要

まず、本部事業者の概要に関する項目です。

  • 本部事業者の氏名・住所・従業員の数。法人の場合はそれに加え、役員の役職名および氏名
  • 本部事業者の資本金や出資金の総額・主要株主・ほかに事業を行っている場合はその種類
  • 子会社の名称と事業の種類
  • 直近三事業年度の貸借対照表と損益計算書

上記の項目から本部事業者の規模や事業内容、さらに、財務状況などを知ることが可能です。

  • フランチャイズ事業の開始時期
  • 直近三事業年度における加盟店数の推移
  • 周辺地域の立地条件が類似する店舗の直近三事業年度の収支
  • 直近五事業年度におけるフランチャイズ契約に関する訴訟の件数
  • 営業時間・営業日と休業日

加盟店数の推移はフランチャイズ事業の将来性などを評定する手がかりになり、訴訟の件数は本部事業者と加盟店の間の信頼関係を判断する材料になります。また、営業時間や営業日は自分のライフスタイルと合っているのか、従業員を雇う場合は採算が取れるのかなども検討します。

フランチャイズ契約の内容

契約内容に関する項目は以下のとおりです。

本部事業者が加盟者の店舗の周辺エリアに、同一または類似の店舗を他人に営業させることに関する規定の有無とその内容

テリトリー権の有無です。テリトリー権が認められていないケースでは、近隣の出店計画はどのようになっているのかの確認が必要です。

  • 契約終了後にほかのフランチャイズ事業への加盟禁止、類似事業への就業制限、そのほか、加盟者が営業を禁止されたり、制限されたりする規定の有無とその内容
  • 契約期間中・契約終了後に、フランチャイズ事業について知り得た情報についての開示を禁止したり制限したりする規定の有無とその内容

契約が終了してからも、秘密保持義務や競業禁止などでいかなる制限がかかるのかも契約前に理解しておきます。

定期的に加盟者から徴収する金銭に関する事項

ロイヤルティに関しては、計算方法や根拠をしっかりと理解し、徴収時期や徴収方法なども把握するのが重要です。

  • 加盟者から定期的に売上金の全部または一部を送金させるケースではその時期および方法
  • 加盟者に対する金銭の貸付または貸付けのあっせんを行う場合、それに係る利率または算定方法およびその他の条件
  • 加盟者との一定期間の取引により起こる債権債務の相殺によって発生する残額の全部または一部に対して利率を付ける場合は、利息に係る利率または算定方法その他の条件

本部が経費を立て替え、売上金のなかから相殺していく会計処理システムであるオープンアカウントのように、本部事業者と加盟店間の相殺勘定・会計処理の方法が複雑な場合は、理解し納得できるまで説明を受けます。

契約違反の場合のペナルティ

どのような契約義務違反があり、どのようなペナルティが課されるのかを明確に理解・確認しましょう。

  • 加盟に際し徴収する金銭についての事項
  • 加盟者に対する特別義務
  • 加盟者に対する商品の販売条件についての事項
  • 経営指導に関する内容
  • 使用される商標・商号・その他の表示
  • 契約の期間・契約の更新・契約の解除に関する事項

契約の期間や契約の更新、契約の解除に関する事項では、どのような解約にどの程度の違約金がかかるのかについて十分に確認しておくことがポイントです。

以上が、法定開示書面に記載されるべき事項とされています。

フランチャイズ法定開示書面を取得する際の手順

フランチャイズ法定開示書面を取得する際の手順

法定開示書面を取得する段階の詳細説明です。

1.本部が作成し加盟店に交付する

法定開示書面は、加盟希望者が複雑なフランチャイズ契約の内容をきちんと理解し、十分に検討できるようにするための書類です。本部事業者は、少なくともフランチャイズ契約締結の1〜2週間前に作成し、加盟店に交付します。

2.本部が加盟店に内容を説明する

本部事業者が法定開示書面について説明する際には、書類上の文章を読み上げるだけでなく、具体的な例を挙げるなどして丁寧に行うよう心がけることが重要です。この作業を怠ると加盟店サイドから損害賠償を請求されるリスクが出てきます。

3.加盟店は法定開示書面の受領印を押す

なかには、加盟希望者に書面を開示しただけで、説明もなく受領印を要求する本部事業者もいますが、それでは義務を果たしたことにはなりません。前述のとおり、中小小売業振興法では契約締結前に法定開示書面を開示し、内容を説明することを義務付けています。

さらに、中小企業庁は、本部事業者が情報の開示と説明を適切に行っているのかを確認するために報告徴収を実施しています。受領印はそれが目的です。フランチャイズ本部事業者は責務を果たす必要があります。

フランチャイズ法定開示書面を本部以外から取得する方法

フランチャイズ法定開示書面は、本部事業部以外のルートからも入手することが可能です。

日本フランチャイズチェーン協会から取得

一般社団法人 日本フランチャイズチェーン協会(JFA)では、会員各社が中小小売業振興法および独占禁止法のフランチャイズ・ガイドラインに基づいて「フランチャイズ契約の要点と解説」を作成し、情報開示しています。
参考:JFAホームページ

JFAフランチャイズガイドから取得

フランチャイズビジネスの健全な発展に貢献するため、日本フランチャイズチェーン協会はフランチャイズ情報の総合ポータルサイト「JFAフランチャイズガイド」を公開しています。
参考:JFAフランチャイズガイド

フランチャイズの法定開示書面とは?まとめ

フランチャイズの法定開示書面は、フランチャイズ加盟希望者が複雑なフランチャイズ契約書を正しく理解して納得できるようにすることを目的とし、フランチャイズ本部事業者が作成・開示する書類です。

法的な開示義務がない本部事業者であっても、自主的に法定開示書面を作成して開示することによりトラブルの未然防止や加盟希望者との信頼関係の維持に役立ちます。さらに、そうすることが円滑なビジネスにも繋がるため、法定開示書面を作成するメリットは大きいといえます。

公開日:2022年10月26日

よくある質問

Q 法的開示書面の契約内容に関する項目の「経営指導に関する事項」では、具体的にどのようなことを確認したら良いでしょうか。 回答を見る
Q 法定開示書面とフランチャイズ契約書の内容が異なる場合、どちらに従えば良いでしょうか。 回答を見る

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