飲食店を開業したいなら、こだわりを捨ててフランチャイズモデルから学べ

最終更新日:2021年10月20日

「料理が好き」「居酒屋が好き」などの思いから、毎年多くの人が飲食業界にて独立開業をしています。ですが、せっかく開業したにも関わらず、険しい経営の道を前に、業界を去る人がいることも事実です。

今回は、人材採用コンサルティング(求人広告や人材紹介やメディアPR)を行う株式会社キイストンの細見社長に、飲食開業の失敗しないコツやフランチャイズ活用のノウハウをお伺いしました。細見社長は飲食業界約1,000社以上の経営者にインタビューを行っており、さまざまな業態の成功・失敗談に基づいた知見を得られています。

細見社長に、これまで出会ってきた飲食開業の裏話をたっぷりと語っていただいたので、飲食店の開業を目指している方はぜひ参考にしてみてください。

<こんな人に読んでほしい>

  • 脱サラして独立開業を夢見ている
  • 飲食業で経験があり、独立して店を構えたい
  • 飲食のフランチャイズに興味がある

目次

人物紹介

料理が好きというだけで開業すると失敗する

飲食業の独立は若いほうが吉だが、40代以上の未経験でも挑戦できるのがフランチャイズ

フランチャイズ活用の良し悪し

開業の店、立地選びで失敗しないためには

独立を目指す若者に伝えたい飲食ビジネスの面白さ

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人物紹介

株式会社キイストン 代表取締役 細見 昇市様
大学卒業後、株式会社リクルートを経て、1992年10月22日に戦略型求人広告代理業務の株式会社キイストンを設立。代表取締役として現在に至る。2008年8月8日、飲食業界に特化した人材紹介会社の株式会社ミストラルの取締役に就任。社長の生き様・理念がわかるメディア『飲食の戦士たち』にて、飲食経営者に取材を行っている。859連載(10月26日現在)

http://www.keys.ne.jp/overview/

料理が好きというだけで開業すると失敗する

料理が好きというだけで開業すると失敗する

先日、とある情報番組で「45歳からの独立」という特集を見る機会がありました。某上場企業の新規事業で飲食経営に成功された方が、会社を辞めて居酒屋開業で独立したところ、たった1年で失敗したというエピソードでした。

この類の失敗談は、今まで何度も耳にしています。中でも、「料理が好き」「居酒屋が好き」「こだわりの自分のお店をつくりたい」と考えて参入する人は、飲食経営に失敗する典型的なケースだと考えています。

なぜ失敗するのか。
1つは、自分が気に入った食材を選んで、よそにないものを作りがちということ。そして2つ目は、こだわりが強すぎて、テーブルや備品、内装などの初期費用にお金をかけすぎてしまうことが挙げられます。その結果、損益分岐点が上がりすぎて、失敗してしまうのです。

私は株式会社キイストンの代表取締役として、今まで1,000社ほど飲食業の社長にインタビューをしてきました。そして取材を重ねる中で、数々の成功・失敗例を見てきています。

では、どんな人なら成功するのか。
意外かもしれませんが、もともと飲食以外の業界で働いていて「IT業界や別業種で開業するより飲食のほうがいけるかも」と考え参入してきた人のほうが、案外上手くいっているのです。未経験で飲食のビジネス形態に関心を持ち、フランチャイズモデルを上手に活用しながら事業計画やマネジメント力を活かして挑戦した人が、成功する傾向にあります。

なぜオウンドメディア『飲食の戦士たち』を運営するに至ったのか

私は今年58歳ですが、リクルートで求人周りの仕事に長く従事していました。株式会社キイストンという私が代表を務める会社は、今年(2021年)の10月22日に丸29年となります。

始めの頃は飲食業に特化していたわけではなく、外資系の大手化粧品&アパレルや電子機器メーカーなどとも取引をしていました。ですがバブルが92~93年に崩壊した後、感覚としては求人市場が4分の1ほどに縮小し、景気の打撃を受けやすいアパレル業界との取引が難しくなりました。一方、不景気にも関わらず、当時の飲食市場は過去最高の25兆円ほどの市場規模だったことを記憶しています。飲食業界は景気が悪いときこそ出店しやすくなる特徴があり、この流れに気付いてターゲットを飲食業界に切り替えたのです。

飲食業と取引をするために私たちが考えたのは、「飲食の戦士たち」という飲食業の社長インタビューを掲載するオウンドメディアでした。外食・飲食業をリードする社長の生い立ちや生き様を赤裸々に取材し、飲食業を目指す人たちのバイブルとして連載を始め、現在859社(10月26日現在)のエピソードが集まっています。

飲食業の独立は若いほうが吉だが、40代以上の未経験でも挑戦できるのがフランチャイズ

飲食業の独立は若いほうが吉だが、40代以上の未経験でも挑戦できるのがフランチャイズ

1,000社ほどの取材、飲食業の社長との対話を続けて積み上げたノウハウの中で、これから独立開業を狙っている皆さまにお伝えしたいことがあります。

  • 飲食業での独立開業は若い方がおすすめだが、40、50代以上の未経験者でも成功は可能
  • 自分1人が儲けるのではなく、マネジメントを行って自分の分身をつくること
  • フランチャイズを賢く利用すること

この3つです。

若さが重要な理由

まず、独立するのは若いうちがおすすめです。
20代や30代前半ではなく40歳を過ぎた年代で家庭を持っている人であれば、子どもの教育資金や両親のケアなどが重くのしかかっていきます。もちろん40代半ばでの開業の場合、ある程度の軍資金や人脈、マネジメント経験などを活かせる点がメリットとして挙げられます。それでも若い人に比べて「成果が出るまで辛抱できる時間」に限りがある点を留意すべきです。

決して若い人だけが成功するという意味ではありません。年齢を重ねてからの開業でも、未経験でも、フランチャイズを利用して成功した人は多数存在します。しかし、自分に高校生や大学生の育ち盛りの子どもがいたり、両親の介護をしたりする状態で半年~1年も事業の赤字に耐えられるか一度考えておくと良いでしょう。

マネジメントで自分の分身をつくる

成功した社長の多くは、料理のスキルよりもマネジメントスキルに長けている方が多いです。いかに「仲間に心地よく働いてもらうか」を意識して、働く人を優先し、自分の分身となる人材を育てていくのです。

反対に、失敗する社長は、いきなり1店舗目で稼ごうとしたり、自分だけ稼げるように欲張ったりしてしまいます。それだと従業員がついてきてくれないでしょう。

働く社員やアルバイトに手厚く還元して、自分の考えや理念などを明確に伝えてください。「この1店舗目が上手くいったら2店舗目をやろうね」と声掛けをしてください。自分1人で店を運営していこうとすると、2店舗目の出店までに5~6年かかってしまいますから。

自分の思いを受け継いだ分身をつくる意識でマネジメントして、2~3年後には次の店舗の開業を目指す、そして先々には10店舗まで広げていこうと目標をもって取り組んでみてください。もしフランチャイズであれば、1~2店舗目はAの業態を試し、3~4店舗目はBの別業態を試すなど、事業拡大の中で複数業態の経験を積むことも可能です。

フランチャイズを賢く利用しよう

飲食で独立をする理由として、「自分のこだわりを詰め込んだお店をつくりたい」という人も多いでしょう。こだわりの料理、接客手法、内装など、夢を詰め込むのは否定しません。複数店舗を運営すれば、自分のやりたい業態・店舗に挑戦できるのも事実ですが、複数店舗の展開では必ず料理人不足に行き着きます。

ですがフランチャイズであれば、多様なジャンルで複数店舗を展開できるうえ、練習すれば誰でも作れるレシピが備わっています。料理人に依存せず、事業を大きくできる魅力があるのです。

居酒屋のようにメニュー数が多ければ、メニュー開発から調理手順のマニュアル化、技術習得に手間がかかります。一方フランチャイズであれば、未経験者でも早ければ1ヵ月程度でお店を切り盛りできるようになるのです。もちろんフランチャイズの中には、一時の流行狙いで長く続かない業態も混在しています。見極めさえうまくいけば、自分1人で行うよりも、横展開しやすいと言えるでしょう。

冒頭でもお伝えしましたが、飲食ビジネスで成功する人は、必ずしも「料理好き」ではありません。

  • 秋田出身なので、どうしてもこの食材を使いたい
  • ワインが好きなので絶対にこのボトルをそろえたい

など、ビジネスが軌道に乗っていないにも関わらず、いつか成功すると夢見て諦めきれず、突っ走る人を多く見てきました。

10年先を見据えてビジネス目線で取り組む人が、勝ち残る世界という点を忘れないでください。事業を成功させるためにフランチャイズモデルの良し悪しを見極め、賢く取り入れるべきでしょう。

こだわりの店を経営して成功したいなら、まずフランチャイズで1店舗目を開業し成功できれば、そこで培った経営経験と資金を元に、2店舗目で自分のやりたい店を経営できる可能性も見えるので、自分の夢を叶えるためにもフランチャイズ経営は有効です。

フランチャイズ活用の良し悪し

フランチャイズ活用の良し悪し

もう少しフランチャイズの特徴や注意点についても補足します。

飲食フランチャイズの利点

フランチャイズの利点としては、主に以下の点が挙げられます。

  • 飲食未経験でも短期間で独立ができる
  • 人材育成、メニュー開発など全てが仕組み化されているので横展開(多店舗展開)しやすい
  • FC本部がメニュー開発や販促キャンペーンなどを企画/支援してくれる

フランチャイズの良いところは、飲食開業が軌道に乗るまでにやるべきことを全てマニュアルとして仕組み化している点です。某ステーキ業態のフランチャイズ店舗は、居抜き物件がうまく当たり、100店舗まで事業拡大して年商50~60億円まで成長を遂げています。

脱サラをして1店舗だけ運営できれば満足という人には不要かもしれませんが、5店舗、10店舗とスムーズな拡大を狙うのであれば、すでに市場に受け入れられているモデルを活用するのが効率的でしょう。集客まわりはFC本部が支援してくれますから、オーナーの皆さんは、来店された目の前のお客様をしっかり覚えて、リピーターとなってくれるよう、魂を注いでサービス提供に集中すればいいのです。

既存店の良いところ、悪いところを効率よく短期間で吸収することができるでしょう。

飲食フランチャイズで失敗するケース

フランチャイズには、少々融通が利かない点があるのも事実です。メニューやユニフォーム、営業時間などを勝手に変えることはできません。求人を出す際は独自性をアピールするのが難しいため、集客に苦戦する場合もあります。

また、ラーメン屋や居酒屋フランチャイズなど、選ぶ業態によっては、早朝や夜間帯、アイドルタイムのスタッフ集めが大変なことも多いため注意が必要です。このエリアは早朝のスタッフ募集が難しいからと営業時間を遅らせたくても、FC本部の方針次第では却下される可能性が高いでしょう。

しかも、「全国に250店舗以上を展開するフランチャイズ店だから絶対に安心!」というわけでもありません。認知度が高かったとしても、グルメサイトの点数が他の250店舗の印象で決まってしまうので、どんなに独自の取り組みをしても口コミ点数を急激にアップできるわけではないのです。

そのため、フランチャイズは、このような独自の制約も理解したうえで活用することが重要です。

開業の店、立地選びで失敗しないためには

飲食業で成功したければ、なるべく若いうちに始め、複数店舗展開を見据えて自分の分身をつくり、ときにはフランチャイズモデルを賢く活用するようにお伝えしました。そのほか、事業拡大のために注力いただきたい点はいくつもありますが、最後に開業時のお店選びで注意いただきたいポイントを2つご説明します。

狭い居抜き物件を探せ

飲食開業には、さまざまなコストがかかります。いずれスタッフ採用のコストも大きくかかってきますから、とにかく初期投資は少なめにする意識が重要です。初めての店舗選びは居抜きの中古物件を探してください。初期コストがかかるほど損益分岐点が高くなり、後々苦しむことになります。

また、物件は狭く、1~3人でオペレーションを回せるサイズが望ましいです。目安としては10~20坪ほどでしょうか。スタッフを採用してもどうしても入れ替わりがあるものですし、店が大きすぎると人手不足で回しきれず、失敗する可能性が高いです。人材の入れ替えがあったとしても持ち堪えられる、小規模の居抜き物件を狙うのが賢いでしょう。

駅前店舗を選べ

飲食店は駅前が一番良いですね。駅前であれば何でも売れます。とはいえ、フランチャイズモデルで開業するときに、いきなり駅前店舗を与えてくれるとは限りません。最初は少し駅から離れたエリアだとしても、駅前を狙えるチャンスがあれば、しっかり狙っていきましょう。

ただし、駅前であっても客層と合わない業態を選べば、失敗のリスクはもちろん高まります。駅前で空きがなければ、客層をイメージできる馴染みのあるエリアを選ぶと良いのではないでしょうか。

独立を目指す若者に伝えたい飲食ビジネスの面白さ

独立を目指す若者に伝えたい飲食ビジネスの面白さ

飲食業で開業する利点は、歳をとっても続けやすいことや、飲食ビジネスそのものが長く続きやすい特徴があることです。それに加え、開業した店舗が大きくなった場合に売却が可能な点も魅力です。

25~30歳の若いタイミングで開業し、10~30店舗・10億円といった目標を目指していけば、社長の収入も大きくなり、銀行の借り入れも可能になります。借り入れをもとに事業拡大を目指すもよし、ある程度の大きさで売却益を得て自分の好きな業態をオープンさせるもよし。基本の仕組みさえ押さえていけば、2~3年の短期間で大きく花咲くことも可能です。

また、飲食業だからといって必ずしも接客や調理の経験がなくても問題ありません。それよりも、飲食をきちんとビジネスとしてとらえ、マネジメント力を発揮しながら、事業拡大の意識をもって挑戦できる人には面白い業界と言えます。

一方で、「上場企業出身だから」「高学歴だから」と、プライドが高く、人に頭を下げられない方は難しいと思います。飲食は、人に感謝しながら向き合う商売ですからね。他のフランチャイズ店舗から成功ポイントを謙虚に聞いて、ひたむきに努力できる人にぜひ挑戦してきてほしいと思います。

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公開日:2021年10月20日