大企業の会社員が「古民家のパン屋」で独立・脱サラ!リノベーション費用は?

最終更新日:2023年05月26日

最近はおしゃれな古民家のお店が流行っていますが、物件の探し方やリノベ費用などはあまり知られていないもの。

今回取材した伊藤 洋一さんは、未経験から40代でパン屋を開業しただけでも驚きですが、地方移住や古民家リノベーションも実現した興味深い経歴の人物です。

「東日本大震災が移住のきっかけ」と話す伊藤さんに、未経験からパン屋で脱サラした方法や開業資金、地方移住の良さなどを詳しく聞いたので、地方移住やパン屋開業などに興味がある方はぜひ参考にしてみてください。

目次

40代で脱サラ!パン屋の「5日間の研修制度」を活用してスピード開業

古民家リノベーションの開業資金は?自宅開業で出費を抑えて黒字化

震災で移住を決意…古民家改修の難しさは「実際に剥がないと分からない」ところ

「物づくりがしたかった」パン屋経営の面白さと苦労

パンが美味しいのは当たり前…他店とは「接客の質」で差別化

「何を始めるにしてもお金はかかるもの」脱サラするなら自己資金の準備が大切

40代で脱サラ!パン屋の「5日間の研修制度」を活用してスピード開業

もともとは、SONYでソフトウェア開発を担当していたという伊藤さん。大企業を辞めて愛媛県でパン屋を開業した理由には、東日本大震災が関係しているといいます。

未経験からどのようにパン屋を開業したのか教えてください。

伊藤さん「岡山県にある「岡山工房」という会社が「5日間研修すればパン屋になれる」という広告を出していたので、それを利用しました。研修費は、5日間10万円だったと思います。

パン屋で開業するためには、どこかのパン屋で何年か修行するのが一般的ですよね。ですが、私は40代になってからパン屋を始めようと考えたので、開業にあまり時間をかけられなかったんです」

その研修では、どのようなことを学んだのでしょうか。

伊藤さん「初日は座学で、2日目はトレーナーがパンを作るところを見せてもらいました。3日目と4日目に実際にパンを作って、5日目は販売の研修。この5日間で、パン屋について一通り研修できるスタイルになっていましたね」

古民家リノベーションの開業資金は?自宅開業で出費を抑えて黒字化

なるほど。開業準備や開業資金について知りたいです。

伊藤さん「岡山工房と契約するのに300万円かかりました。フランチャイズに加盟する場合はロイヤリティの支払いがあると思いますが、岡山工房の場合はこの300万円のみです。

この300万円で開業前の店舗づくりをサポートしてもらい、開業日にも何人か店舗へサポートに来てくれました。レシピの提供などもあり、そんなに悪いシステムではなかったのかなと」

手厚くサポートしてくれるんですね。最終的にどのくらいの費用がかかったのでしょうか。

伊藤さん「開業資金は総額800万円ほどでした。ただ、工房を全部ゼロの状態から作ったので、古民家をリノベーションするのにさらに1,000万円以上かかっています」

やはりリノベーションするとなると、かなりの費用が必要なんですね。月々の費用はどのくらいかかっているんですか。

伊藤さん「仕入れが10~20万円で電気代が5万円くらい。オーブンを使っているので、普通の家より電気代は高いです」

ランニングコストは20~30万円くらいですね。それで黒字になっているのでしょうか。

伊藤さん「黒字です。自宅でお店を営業しているので、テナント料に苦しめられないのが大きいです。年間の売上高は700万円くらい。サラリーマン時代の年収が700~800万円だったので、そこからあまりブレてはいません」

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震災で移住を決意…古民家改修の難しさは「実際に剥がないと分からない」ところ

alt震災で移住を決意…古民家改修の難しさは「実際に剥がないと分からない」ところ

伊藤さんは会社員時代、SONYでソフトウェア開発をされていたそうですが、大企業を辞めて脱サラしたきっかけが気になります。

伊藤さん「きっかけは、2011年の東日本大震災です。もともと田舎でのびのびと子育てしたい気持ちがあり、その思いが東日本大震災で加速しました。それで、移住先を探していたときに妻から「伊予市でツアーがあるよ」と教えてもらって。寮費が無料の移住交流イベントに参加するために、初めて伊予市に来ました」

それで伊予市を気に入ったんですね。

伊藤さん「海も山も近くにあって良いところだなと思いました。それにツアーのとき、団体の方々が古民家の良いところだけでなく現実を見せてくれたり、すでに移住してきた人たちから話を聞く機会があったりしたのも良かったです」

なるほど。ちなみに、今の家はどのように選んだのでしょうか。

伊藤さん「もともと空き家を探していたのですが、住めるような空き家は実際あまり多くないんです。当時、選択肢が2~3軒しかなくて、この家はそのうちの1軒でした。子どもたちがこの家を気に入ったのが一番の理由です」

住める状態の空き家は少ないんですね。実際に家を見つけて、すぐに住むことはできましたか。

伊藤さん「移住はそれから先です。雨漏りなどしていて、改修だけで950万円かかりました。さらに屋根を後から追加しているので、結局1,200万円くらいかかっていますね。古民家は、実際に剥いでみないと状態が分かんないものなんです」

「物づくりがしたかった」パン屋経営の面白さと苦労

想定よりかなり費用がかかったということですね…。そもそも、パン屋で独立しようと思った理由は何だったのでしょうか。

伊藤さん「伊予市に何度か来ているときに、地域の人から「この町には焼きたてのパン屋がない」という話を聞いて、それをヒントにしました。それに私は、会社員時代には半田ごてを握って小さな部品を触ったりしていて、手先が器用なんです」

手先に自信があったということですね。それでも、未経験でパン屋に挑戦するのはすごいと思います。

伊藤さん「要は物づくりがしたかったんですよ。例えばパンは焼くだけでなく、最後の成形でパンの表情がいろいろと変わります。自分で勉強して仕上がりを向上させていくのが、物づくりに共通しているのではないかなと。

ただ、自分で身を入れてできる仕事としてパン屋を選びましたが、脱サラ前に仕込みの時間をしっかりと考えられておらず、実際は想定よりも長い時間を取られています。

仕事の時間が思ったより長いですし、そもそも残業代もない。会社員の場合は時間を切り売りしてお金をもらっていましたが、個人事業主はそう上手くいかないのが大変ですね」

フランチャイズで実現できる「パン屋」開業についてご紹介します

パンが美味しいのは当たり前…他店とは「接客の質」で差別化

altパンが美味しいのは当たり前…他店とは「接客の質」で差別化

実際にパン屋を経営する上で、何か大切にしていることはありますか。

伊藤さん「パンが美味しいのは当たり前なので、接客を特に大切にしています。研修を受けた岡田工房もそうですが、流行っているお店のパンはどこでも美味しいですから。他店との違いを出すために必要なのは、やはり接客ですよね」

接客は奥様が担当されていますよね。

伊藤さん「彼女の接客が最大の武器になっていると思います。彼女はもともと会社で人事をしていたので、対人関係を作るのが上手なんです。それに、結婚して子どもができてから気づいたのは、彼女はほかの家庭の子どもへの対応も抜群に上手だということ。妻の接客技術をベースに事業計画立て、そこでほかと差別化しようと考えて開業しました」

なるほど。ちなみに伊予市で開業するとき、地域の団体から何かサポートはあったのでしょうか。

伊藤さん「住民団体と地域おこし協力隊がサポートしてくれて、そのときに地元のテレビ局や新聞から取材がありました。団体の方々が地元のメディアとつないでくれて、想定以上に華々しくスタートできたと思います」

すごいですね。そのようなサポートは誰でも受けられるものなのでしょうか。

伊藤さん「当時は伊予市に地域おこし協力隊が3人いて、彼らも住民団体に入っていたんです。それで彼らが住民団体へつないでくれて、そこからほかの移住者とも関わることができました。

オープン時は長蛇の列でかなり大変でしたが、移住者の方々がうちの子どもをみてくれたり、駐車場の看板を作ってくれたりもしましたね」

「何を始めるにしてもお金はかかるもの」脱サラするなら自己資金の準備が大切

都会と違って地域の関係が密なのが地方の良いところですね。
実際に移住してみて、何か生活面で良いことはありましたか。

伊藤さん「サラリーマン時代はほぼ家にいませんでしたが、今ではほぼ家にいるところでしょうか。真逆の生活をしていて、それが面白いです。工房の目の前に学校が見えたり、四季の移り変わりが分かったりもする。私は今、朝4時に起きてパンを焼き続けていますが、通勤がなくなったのもメリットだと感じています」

通勤がなくなったのは脱サラならではのメリットですね。
生活面だけでなく、脱サラして良かったことも知りたいです。

伊藤さん「脱サラして良かったことは、全ての数字を全部自分で把握して組み立てられることです。サラリーマンだったらスーツ1枚でも経費にできませんが、個人事業主は業務を遂行する部分を全部経費にできます。要は自分の生活を豊かにしながら投資もできるので、その部分はやはりメリットだと思います」

ありがとうございます。それでは最後に、脱サラを目指す方へメッセージをお願いします。

伊藤さん「何を始めるにしても、お金はかかるもの。最初に突っ走るのも良いですが、自己資金をしっかりと準備して始めることが大切です。しっかりと準備して進めないと、中途半端になって自分の理想からかけ離れてしまいますから。自分の理想からかけ離れるとどこかで躓いてしまうので、資金面についてはしっかりと準備をしてほしいですね」

パン・スイーツのフランチャイズ

公開日:2023年04月21日