脱サラで職人を目指す方法とは?職人の種類と成功ポイントを紹介

最終更新日:2023年02月24日

脱サラをして特定のスキルを習得し、職人になりたいと考えていても、「どのような職人がいるのか分からない」「職人になる方法を詳しく知らない」と悩む人も多いでしょう。

職人は厳しい世界のため、自分に適した仕事を選ばないと、技術を身に付ける前に挫折してしまうかもしれません。

本記事では、脱サラして職人を目指そうとしている人に向け、職人の種類や脱サラの方法、職人として成功するポイントをまとめました。

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目次

職人の定義とは

代表的な職人の種類

脱サラして職人になる方法

脱サラ職人で成功するポイント

脱サラで職人になるときの注意点

手に職をつけて脱サラをしよう

職人の定義とは

職人とは、熟練した技術を身に付け、物作りを職業としている人のことです。たとえば、大工や電気工事といった建築業の職人や、何十年も続く伝統工芸品を作る職人、和菓子やパンを作る飲食業の職人など、数多く存在します。

代表的な職人の種類

建設・建築、伝統工芸(ものづくり)、飲食、装飾、金属加工のジャンル別に分けて、代表的な職人の種類を解説します。

建設・建築

まず、建設・建築業界の代表的な職人の例を7つご紹介します。

大工

大工とは木工建造物の建築や修理を行う職人を指します。広義では船大工、家具大工も含みますが、建設・建築業界で大工と言えば家屋大工、橋梁大工、大道具方、堂宮大工といった職人を指すのが一般的です。

左官

左官(さかん)とは、石灰や土、砂、自然繊維を組み合わせた材料をコテで塗り、土塀、壁、床などを作る職人を言います。日本の左官(日本壁)はユネスコ無形文化遺産の「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」に含まれています。

庭師

庭師とは、庭石や樹木、池、水路、芝などを総合的に使って、庭を製作・設計施工する人を指します。また、植物を管理、剪定する管理の専門家です。

表具師

表具師(ひょうぐし)とは、屏風、掛軸、巻物、衝立、額、画帖などの修理や、襖の張替、新調、障子貼りをする人のことです。表具師になるための必須資格はありませんが、「表装技能士」という国家資格の取得が推奨されています。

建具師

建具とは、部屋や外部を仕切る戸、障子、襖、窓などを指します。建具師になるための資格はなく、職業訓練校で基礎を学ぶ人もいれば、建具を作る会社などに弟子入りして技術を身に付けるのが一般的です。

鳶職

鳶職(とびしょく)とは、建設の際に高い場所で作業をする専門家を言います。鳶職といっても、足場鳶、重量鳶、鉄骨鳶、橋梁鳶、機械鳶など作業によって呼び名が異なります。

瓦葺職人

瓦葺き(かわらぶき)とは、瓦を使って屋根を仕上げることです。伝統の和瓦は特に高度な技術が必要となり、専門の瓦葺職人でなければ仕上げるのが難しいとされています。必須の資格はないものの、瓦葺きに関する資格として厚生労働大臣認定の「かわらぶき技能士」や「瓦屋根工事技士」があります。

伝統工芸(ものづくり)

伝統工芸のイメージ

次に、伝統工芸品の職人の例を確認していきましょう。伝統工芸品とは、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」にもとづき、代表的な伝統工芸として経済産業大臣に指定されたものの総称です。

陶芸家

陶芸家とは、粘土の形を整えて絵付けをし、粘土を窯で焼いて陶磁器を作る人を言います。陶磁器を作る文化は縄文時代に遡り、陶芸は人々の生活を支えてきた伝統工芸品の1つです。東北の大堀相馬焼から沖縄の壺屋焼まで、陶芸の技法は日本各地に存在しています。陶芸家となるには、自身の窯を持ち、個展や展示会を開くなどして社会的地位を築くのが一般的です。

指物師

指物(さしもの)とは、板を差し合わせて作った家具、器具のことです。木と木をつなげる際に釘を使わず、木同士を組み合わせて箪笥や茶道具などを作る職人を「指物師」と呼びます。日本では京指物、江戸指物、大阪唐木指物などが有名です。指物師の仕事は室町時代に大工職から派生し、職人の地位を確立しました。

ガラス職人

ガラス職人とは、花瓶、小物、アクセサリー、コップ、皿などをガラスで作る職人を指します。日本の代表的なガラス工芸・細工として、切子硝子、肥前びーどろ、津軽びいどろ、琉球ガラス、小樽ガラスなどがあります。

組子職人

組子とは、障子、欄間、襖といった建具の一部に組み込む細工を言い、幾何学模様が特徴です。組子の模様は200種類以上あるとされ、組子職人は釘を使用せず数ミリほどの木片を規則正しく組み付け作品を作り上げます。

箪笥職人

箪笥職人は箪笥を製作、修理する人を指し、産地や職人ごとに製造工程が異なります。箪笥職人の仕事は木地づくり、引き出しづくり、扉づくり、組み立て、塗装、金具付けなどです。

畳職人

畳職人とはイグサや藁で畳を製作、修理する人です。手作業で畳を作る職人は減っており、機械で畳を作ることが多くなりました。畳職人として独立するには、10年以上経験を積まなくてはなりません。

石工

石工(いしく・せっこう)は墓石の刻印、設計、設営、石垣の復旧やタイル張りなどを行う職人のことです。国家資格である「石材施工技能士」を取得すれば、自身のスキルを証明するのに役立ちます。

飲食

飲食で職人と言えば、寿司職人やパティシエを思い浮かべる人が多いと思います。その2つに加えて、本章では飲食の職人を5つご紹介します。

寿司

寿司職人として認められるには、10年ほど修行が必要です。寿司職人は新鮮な食材を見極め、旬によって魚の切り方を変えるなど、さまざまな知識と技術を身に付けなければなりません。近年では大手チェーンの回転寿司屋が増え、個人で寿司屋を開業するのが難しいと言われています。

パティシエ

パティシエとは、菓子職人のことです。フランスではパティシエの資格が国家資格に認定されており、社会的地位の高い仕事とされています。日本ではパティシエになる必須資格はありませんが、職業訓練指導員や菓子製造技能士、製菓衛生師資格などを取得するのが一般的です。

飴細工職人

飴細工とは製菓技術の1つで、飴を使って龍や金魚といった造形物を作ります。飴は食べるだけではなく、鑑賞用として展示される場合もあります。飴細工職人になるには特別な資格や学歴は不要です。

パン職人

パン職人は材料の配合、発酵、仕込み、焼き上げといったパンの製造を行う人のことです。作るパンの種類によって配合、製造の方法が違うため、技術の習得には時間を要します。パンに関する知識や技術の習得のほか、世間のトレンドや消費者のニーズを察知して商品を開発するセンスも必要です。

パン職人を検討している人は、ぜひこちらの記事も読んで見てください。

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蕎麦職人

蕎麦職人は石臼でそばの実を挽き、粉をこねた後、生地を伸ばして包丁で裁断して蕎麦を作ります。蕎麦粉と小麦粉の配合、水加減を調整して蕎麦を作るため、経験にもとづいたカンが求められ、一人前になるには10年の修行が必要とされています。また蕎麦打ちのほかにも、麺つゆや天ぷらの作り方も習得しなければなりません。

蕎麦職人になってお店を持ちたい人には、こちらの記事もおすすめです。

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装飾

次に装飾にはどのような職人がいるのか、例を5つ取り上げました。

漆職人

漆(うるし)とは天然樹脂塗料のことで、漆職人は塗料を木製の器などに塗って、「漆器」を作ります。漆器に仕上げの装飾を施すのが、後述する蒔絵師です。

蒔絵師

蒔絵(まきえ)とは、漆工芸技法の一つです。蒔絵師は漆器の表面に漆で絵や模様を施し、漆の上に金や銀の金属粉を蒔いて装飾します。

塗装職人

装飾、保護、防錆を目的として塗装を施す人を、塗装職人や塗装工と呼びます。塗装の対象となるのは外壁や屋根、軒、鉄部、木部などです。塗装職人を名乗る上で必須の資格はありませんが、塗装技能士という国家資格の取得がおすすめです。

螺鈿職人

螺鈿(らでん)は、装飾技法の一つで、漆器や帯といった伝統工芸品を装飾する際に使われる技法のことを指します。夜光貝、白蝶貝、黒蝶貝など内側が虹色光沢の貝を使用し、漆地や彫刻された木の表面に貝殻をはめ込み装飾します。

絵付師

絵付師(えつけし)とは、陶磁器に色や模様を施す職人のことです。絵付師になるのに必須の資格はありませんが、陶磁器製造技能士という国家資格を取ればスキルの証明になります。

金属加工

最後に金属加工の職人についてみていきましょう。

板金加工職人

板金(ばんきん)とは、薄く平らにした金属を指し、自動車のボディ、飛行機の機体、翼、医療用テーブルなど、さまざまな場面で利用されます。板金を加工する職人を板金加工職人と呼び、工業系の学校で知識を習得した後で工務店や板金専門の工場に勤務するのが一般的です。

刀鍛冶

刀鍛冶(かたなかじ)とは、日本刀を作る職人のことです。刀匠(とうしょう)や刀工(とうこう)、刀師(かたなし)とも呼ばれます。なお、現代では文化庁から認可を受けた人だけが刀鍛冶を名乗ることが許されているので、誰しもが刀鍛冶となれる訳ではありません。

銀細工職人

銀細工職人とは、銀製の指輪、かんざし、金具の飾りなどを製作する職人や彫金家のことです。装飾をメインに行う銀細工職人を「銀師(しろがねし)」と呼びます。

旋盤工

旋盤工(せんばんこう)とは、旋盤と呼ばれる機械を使って金属などを切削加工する職人のことです。旋盤工はメーカーに勤務するのが一般的で、金属素材に穴開けやねじ切り、素材を削って加工します。

溶接工

溶接は、加圧や加熱を施し接合する加工技術です。自動車、建築、家具、貴金属、時計といった製品を作る際に溶接技術が使われています。溶接の仕事をしている職人を溶接工と呼びます。

脱サラして職人になる方法

職人と一口に言っても、業界や職種はさまざまです。職種によって職人のなり方は異なりますが、本章では職人を目指す代表的な方法を5つご紹介します。

弟子入りして修行を積む

1つ目は、弟子入りをして知識や技術を習得する方法です。この方法のメリットは、弟子である間は初期投資をせず、機械や道具を使える点です。

ただし技術の習得には、一定の修業が必要で期間は長くなりがちです。修行をするうちに体力が落ち、独立しそこねるリスクがあるのは弟子入りのデメリットと言えるでしょう。

賃金が安かったり無給だったりするケースもあるので、弟子入りの前に条件をよく調べておくと安心です。

初期投資をせず手に職をつけたい人や、師事したい人がいる場合は、弟子入りして修行を積み職人を目指すのがおすすめです。

フランチャイズで職人を目指す

2つ目は、フランチャイズで職人になる方法です。フランチャイズの条件を守れば良く、独立までの期間が弟子入りよりも比較的短い点がメリットと言えるでしょう。フランチャイズで職人になる場合は、スキルやノウハウを研修で習得します。

ただしデメリットとして、フランチャイズ本部の意向に従わなければならず、完全に自由ではない点が挙げられます。

フランチャイズは効率良く職人になれて、初期投資が自分に還元されるので、すぐに職人として働きたい人や、早めに投資を回収したい人にはおすすめの方法です。

たとえば、植木屋のフランチャイズは養成所で技術を身に付けられ、開業後も座学研修などを受講できます。

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一人親方で独立する

会社員時代に最低限の知識や技術を身に付けている人であれば、1人親方として開業するのも、有効な手段の1つです。単価交渉を自分で行え、人間関係に悩みにくいといったメリットがあります。

ただしデメリットとして、仕事が途切れると収入が得られないことが挙げられます。そのため仕事がなくならないよう、技術を磨くだけではなく営業活動を並行していかなければなりません。

人間関係に悩むことなく、自分の裁量で働きたい人にはおすすめの方法です。

専門学校に進学/資格取得する

次に、専門学校に入ったり、資格を取るのもおすすめの方法です。お金や時間がかかるというデメリットはありますが、基本の知識や技術が身に付けられます。

学校に進学するメリットは、企業や個人店からの求人情報を受け取れ、就職支援をしてもらえる点です。また資格を取得しておけば、働くときにスキルをアピールできるので、就職に役立つでしょう。

未経験でも基礎を固めてから職人になりたい人に、向いている方法です。

求人サイトで探す

5つ目は、求人サイトで検索する方法です。「職人/未経験」で検索をすると、以下のような求人がヒットします。

  • 老舗洋菓子店のパティシエ
  • 江戸前寿司の職人
  • 畳職人
  • 包丁研ぎ職人

求人に応募するメリットは、賃金をもらいながら技術を習得できる点です。設備投資や授業料を払うことなく、職人の技術が身に付けられます。ただし、長時間労働や休日なしで働かされるケースもあるため、会社選びを慎重に行わなければなりません。

収入を得ながら職人を目指したい人には、おすすめの方法です。

脱サラ職人で成功するポイント

脱サラ職人で成功するイメージ

ここでは手に職を付けること以外に、脱サラして職人となり成功するポイントを4つ、まとめました。

夢中になれる分野を見つける

1つ目のポイントは、好きな分野や夢中になれるものを選ぶことです。職人は長期間にわたって、厳しい世界で修行をしなければなりません。修行が辛くなったときでも、諦めずに乗り切るためには「好き」「どうしてもやりたい」という気持ちが大きく影響します。

もし手に職をつけたいものの、夢中になれるものが明確でない場合は、職人体験を活用するのが良いでしょう。

さまざまな業界を体験し、肌に合った仕事を探して、夢中になれるものを見つけるきっかけにしてください。

経営について学ぶ

2つ目のポイントは、経営の知識を身に付けることです。職人の種類によっては下積みが長かったり、重労働で低賃金になったりしやすく、独立して稼ぐためには経営そのものを理解し運営スキルを習得しなければなりません。

手に職を付けて職人になれば、お客さんが商品を買いに来てくれると考えている人は多いです。しかしお客さんにお店を見つけてもらい、収益を上げてお金を管理・運用していかないと、事業として成立しません。

マーケティングやお金の管理など、経営に関する勉強をすることが、職人生活を成功させるポイントです。

脱サラのデメリットを知る

脱サラのリスクを理解しておくことも、脱サラ職人で成功するポイントの1つです。職人として独立し自営業者になる場合は、次の点に注意しましょう。

  • 自分が「責任者」になる
  • 会社員と異なり、加入できない社会保険がある

職人として自営業者になったら、責任は全て自分が背負うことになります。自身で付き合う会社を選んだり、好きな時間に働けたりと言ったメリットはあるものの、責任の範囲は会社員よりも広くなるでしょう。

また、自営業者は原則として労災保険や雇用保険、健康保険などに加入できません。万が一体調不良で長期間働けない場合、会社員よりも受けられる生活保障が限られているので注意が必要です。

会社員と自営業の違いについては、こちらの記事で詳しくお伝えしています。

脱サラで自営業を始めるには?会社員との違いや失敗しないコツを紹介

収入の流れを理解する

4つ目のポイントは、収入(給与)の入り方を理解することです。月給制で支払われる職人もいれば、大工や内装工のように施主と契約して報酬を受け取る職人もいます。また住み込みで弟子入りし、修行中はずっと賃金が出ない場合などさまざまです。

脱サラ前に、自身が目指す業界はどのようびお金が入るのかを調べ、準備資金はどのくらいかかるかシミュレーションし、事前に貯蓄して生活費を用意しましょう。

脱サラで職人になるときの注意点

脱サラして職人を目指すときは、次のような点に注意してください。

  • 体力仕事の職人もある
  • 長時間労働、長時間下積み、低賃金の職人もある

「技術を教えてやっている」と考え、従業員を低賃金で働かせたり、長時間働かせたりするところも少なからず存在します。

職人として修行をするのは精神的にも肉体的にも負荷がかかるため、脱サラしてチャレンジするときは、年齢や体力を考慮した上で決断しましょう。職人は厳しい世界だからこそ、好きなこと、熱中できるジャンルを見つけて、一心不乱に突き進んでいくことが大切です。

手に職をつけて脱サラをしよう

脱サラして職人として成功するには、手に職をつけることがスタートラインです。手に職をつけるまでには、10年以上の時間を要することも少なくありません。

途中で投げ出さないためにも、自身が本当にやりたいことが何かを明確にして、脱サラに踏み切りましょう。

今回ご紹介した職人になる方法や、成功のポイントを踏まえて脱サラの準備をし、新しい一歩を踏み出してみてください。

公開日:2022年01月27日

よくある質問

Q 職人になるには、どのような方法がありますか? 回答を見る
Q 脱サラして職人を目指す上での注意点は何ですか? 回答を見る