ベジタリアンの選択がしやすい日本に。ベジプロジェクトジャパン川野陽子さんインタビュー

公開日:2016年09月26日

5b39a4f4b37c1bd7

肉や魚といった動物性のものを摂取しない人たちは「ベジタリアン」と呼ばれる。欧米を始め、日本にも少なからず存在する。海外では、ベジタリアンの思想は浸透しており、ベジタリアン向けのメニューを提供するレストランが当たり前にあるが、日本ではまだまだ数が少ない。

日本のベジタリアンはもちろん、海外のベジタリアンにとっても、日本で食事をするというのはなかなかやっかいなことなのだ。

そんな現状を変えようと、奮闘しているのが川野陽子(はるこ)さん。NPO法人ベジプロジェクトジャパンの代表として、ベジタリアン料理の普及活動を行っている。

altテキスト

今回取材場所に指定された代官山にある「BLU JAM CAFE」はロサンゼルスに本店があるカフェ。ベジタリアンでも食べられるメニューが用意されている。

altテキスト

揚げたトルティーヤに、豆腐、アボガド、グラノーラ、トマトなどが載った「ランチュロス」と、ブルーベリーとバナナのスムージーをいただいきながら、川野さんにお話を伺った。

社会問題への意識がベジタリアンへの第一歩

川野さんは現在ベジタリアンだが、そのきっかけとなったのは20歳のとき。繁殖するためだけの犬、繁殖犬の存在を知ったことだ。

「12年犬を飼っていましたけど、そういう裏の部分、暗い部分は全然見ていなかったと思ったんです。そこから自分の人生が変わったかな」

川野さんは、子どものころからご両親に連れられて地球環境問題などのイベントに参加。それゆえ、地球環境問題などには関心があったという。そして、京都大学農学部森林科学科へ進む。

そして、大学時代にオランダからの留学生と親しくなり、ベジタリアンの概念を知る。

altテキスト

「ベジタリアンになる人は、宗教上の理由や野菜がすごく好きな人がなるものだと思っていたんです。でもそうじゃないんだということに気づきました」

ベジタリアンになるにはそれぞれの理由があるが、そのうちのひとつが「地球環境のため」というもの。家畜産業による温室効果ガスの発生量が全交通機関を上回っていることをから、家畜産業による温室効果ガスの発生軽減を理由に、ベジタリアンになるという人が欧米には多いというのだ。

また、工場畜産という仕組みに反対する意味でベジタリアンになるという人もいるという。

川野さんは、そのことを知ってから変わりたいと思ったという。そこで、自分自身もベジタリアンになることで、社会問題に少しでも関わることができたら。そういう気持ちからベジタリアンになった。

研究職への道はないと気づいたベルギーでのインターンシップ

大学では、有機化学についての研究を行っていた。毒性の強い有機溶剤をもっと環境にいいもので代替するといった研究だ。もちろん、有機溶剤を使って新しい発明をするという研究をしている人も多くいたが、そちらの方面には興味がなかったという。

altテキスト

「研究をするなら、地球がよくなることをしたいという想いがありました。私は異質扱いされてましたけど(笑)」

その後大学院に進み、大学院1年生終了後に休学をし、ベルギーへインターンシップに行く。インクの開発をする仕事に携わっていたが、そこで「自分は研究をする仕事に向いていない」と感じる。地球環境問題に関心がある川野さんにとっては、真逆の仕事だった。

それでもベルギーは、ベジタリアンにとっては過ごしやすい国だったようだ。どのレストランにもベジタリアン用のメニューがあり、なくても頼めば気軽に作ってくれる。このベルギーでの1年間は、川野さんの現在にかなり影響している

そして日本に帰国後、活動を開始する。

大学の食堂にビーガン食を!

帰国後、新潟にある製菓メーカーへの就職が決まった。そして卒業までの約1年間、大学の食堂にベジタリアンメニューを導入する活動を行う。休学をしていた関係で、同期の知り合いはゼロ。しかし、持ち前のポジティブさで3人の仲間を確保し、活動を開始した。

altテキスト

「私が望んだのはビーガン対応のメニューです。ベジタリアンのなかでも、卵など動物性のものを一切口にしない、革製品も着ないという、最も厳格な人たちがビーガン。ビーガン食でも、充分おいしいものは作れるんです。それを提案して生協に採用してもらうという活動をしていました」

活動開始後、初めてイベントを開催。そこでビーガン食を知ってもらうことはできた。しかし、単発のイベントでは意味がない。就職後も川野さんは活動を継続し、今年5月に京大にはビーガンメニューが常設されるようになった。願いが叶った瞬間だ。

ポール・マッカトニーへインタビューを敢行!?

就職先は、新潟の製菓メーカー。海外事業部という輸出や海外展開を担当する部署だったが、それほど海外に行く仕事はなく、東京と新潟を行き来することが多かったという。

当時、「ベジプロジェクト」という名前で、京大や他大学にビーガンメニューを導入する活動をしながら、来日したポール・マッカートニーへインタビューを敢行。ビートルズのメンバーは全員ベジタリアンということで、ぜひ話を聞きたいと思ったそうだ。

altテキスト

「ポールと会うとき、私たちのチームが10人くらい、ポールのチームが10人くらいいました。みなさん、すごくプロフェッショナルなんですよね。カメラマンの方なども、自分の人生を生きているような気がして」

会社勤めをしている自分と比べ、輝いて見えたスタッフたち。そのとき、自分の進路について考えたという。

同じ時期、NPO法人を譲ってくれるという話を持ちかけられたことで、川野さんは独立を決意。会社を辞めてNPO法人「ベジプロジェクトジャパン」の代表となった。2015年9月のことだ。

altテキスト

現在は、英会話のプラベートレッスンの講師をしながら、NPO活動を行っている。そのひとつが、マーク認証だ。ベジタリアン対応レストランやショップ、商品へのマーク認証、ベジタリアン対応がないお店や大学にはベジタリアンメニューの導入サポートを行っている。

このほか、ベジタリアン関係の情報が集積するキュレーションサイト、「ベジタイム」の運営も行っている。

現在は、ビジネスを巻き込んでもっとベジタリアンを発展させていくために会社設立の準備をしている段階だ。川野さんが目指す活動が徐々に形になりつつある状態だ。

100%自分と同じ人は存在しない

川野さんは、終始笑顔で穏やかな雰囲気だが、思いついたことはすぐに行動に移す活動的な面もある。しかし、その裏では辛いこともあるようだ。

altテキスト

「2、3ヶ月前は毎日泣いている時期もありました。もともと楽観的だったんですが、その時期が長すぎて(笑)」

周囲の同年代の女性とは違う生き方を選んだこと、信頼している仲間との意識のズレ。そんなことに、心が押しつぶされそうになった。しかし、そのときに意識が変わったという。

「結局、人に頼っている部分が多かったんですよね。一緒にやってくれているメンバーにも、それぞれ事情があって、気持ちのレベルも違っていたり。そこで、責任は全部自分にある。一人でやっていこうという風に気持ちを入れ替えたら、新しいプロジェクトがどんどん思いついたりして。結局自分自身なんだと思いました」

ビジネスをやる上では、パートナーの存在は重要。しかし、川野さんはパートナーと思っていた人たちとの温度差を感じた。周囲の人が自分と同じ情熱を持っているとは限らない。それに気づいてからは、それぞれの得意な分野を活かし、それぞれが補完し合える関係を築くようにしているという。

「100%自分と同じ人なんていないんですよね」

川野さんはそういって笑った。

成功の法則はないからどんどんやればいい

川野さんは、ビジネス的にはまだスタートラインにも立っていないかもしれない。しかし、自分のやりたいこと、やるべきことは見えている状態だ。あとは、どれだけ環境を整えられるか。あと一踏ん張りというところだろう。

最後に、読者へ向けてのメッセージをお願いすると「信じること」という答えが返ってきた。

altテキスト

「自分が思っていることが、絶対できる、世の中に受け入れられていく価値があるものだと信じられること、信じ続けること。そして、なんでもやってみること。間違えてしまったり、うまくいかないこともたくさんあると思いますが、うまくいくときも絶対あります。その数が増えていけばいいと思います」

川野さんは、このインタビュー中、「3秒で決めました」というセリフを何度か口にした。もちろん3秒で決めたわけではないだろうが、それくらい決断が早いのだろう。そして、次々といろいろなことにチャレンジする。そのバイタリティは見習いたいと思ったくらいだ。

altテキスト

「成功の法則があるわけじゃないですから、やる気があるならどんどんやったらいいと思います」

現在、浅草をベジタリアンの街にするというプロジェクトに関わっているという。浅草にベジタリアンというイメージはまったくないが、老舗の飲食店組合の人たちと協力しながら、いろいろ考えているということだ。

2020年には東京オリンピックが開催される。そのとき、海外から来たベジタリアンやビーガンたちが過ごしやすい街になっていること。川野さんはそう言って、ステッカーを掲げた。

altテキスト

NPO法人ベジプロジェクト / Vege Project Japan

http://www.vegeproject.org/

VEGETIME(ベジタイム)

http://www.vegetime.net/

BLU JAM CAFE

http://www.blujamcafejapan.com/

この記事を読んだあなたにおすすめ

平尾喜昭さん
音楽の道から「統計分析の道」へ。データ分析で世界をハッピーに 株式会社サイカ 平尾喜昭さんインタビュー

徳田吉範さん
9割の反対と1割の賛同。「食器のファッション誌」というブルーオーシャンを切り開く徳田吉範さんインタビュー

神谷政志さん
やりたいことをやればいい。日本とアジアを股にかけて楽しく仕事をする秘訣とは? 神谷政志さんインタビュー

株式会社テーブルクロス 城宝薫さん
20歳で起業した元学生起業家が目指す理想の社会とは? 株式会社テーブルクロス城宝薫さんインタビュー

mogmogはうす 丸山寛子さん
7年間のOL生活から「食」を伝えるシェアハウスオーナーに転身! mogmogはうす丸山寛子さんインタビュー

KAMAROQ株式会社 中村博充さん
釜石の復興支援から社長へ就任! KAMAROQ社長中村博充さんが語る「生き残れる人材」とは?

factry 西原典夫さん
カフェ経営の原点。渋谷「factory」西原典夫氏が創る“ゆるやか”空間とは?

株式会社プリンシパル 七尾エレナさん
元「焼肉部」代表の美女。女性起業家の七尾エレナ氏が目指す次のステージとは?

未来食堂 小林せかいさん
1日1メニューの定食屋「未来食堂」 チェーン店からの学びとは?